□3.11 慟哭の記録 P.90
その中の人が「波が見える」と言い始めました。私も見たのですが、雪が降っていて空が暗く、海の境と空の境がよく見えなかったのですが、白い煙のようなものが見えたのです。
(中略)
すると間もなく「シャバ、シャバ、シャバ」と音が聞こえてきました。絶え間なく聞こえてくるのですが、とても静かなのです。

■美しい顔 
それは空の暗い日だった。
朝から時折雪がはらはらと舞ってきていた。
最初に誰かが波が見えると言った時、私には何も見えなかった。何回か海の方を見たけれど、海の境と空の境がよくわからなかった。とても静かだった。

■美しい顔 改稿
それは濁った空をした日だった。(略)
海を見たのは、海の中から入道雲のようなものが白く沸き立っているように見えたからだ。
とても静かだった。
そのうちに誰かが、そのしだいに乱暴に盛りあがって形を変えていく入道雲のようなものを、波だ、と言った。