12月4日(火)朝日新聞東京版朝刊文化面・呉座勇一の歴史家雑記

百田氏新作 過激と言うよりは

発売前から予約殺到で話題になった百田尚樹氏の『日本国紀』(幻冬舎)を読んでみた。
さぞかし過激な内容だろうと予想していた私は正直、拍子抜けした。日本は東洋には
属さず「ユーラシア大陸と対峙する一文明圏」であるとぶちあげた西尾幹二氏の
『国民の歴史』(小学館)に比べれば、穏健にさえ映った。

むしろ古代・中世史に関しては作家の井沢元彦氏の『逆説の日本史』の影響を強く
受けているように感じた。百田氏にせよ、井沢氏にせよ、日本史学界の守旧性を激しく
批判し、新しい歴史像の提示を謳っているのだが、彼らの歴史理解は実のところ古い。

(続く)