>>289

 先達のシェイスクピア翻訳家の中野好夫や福田恆存は
政治論も骨太で洒脱に満ちてるんだよなあ。

 まさに西洋文学に憧れる田舎の少年少女を立派な市民として
導いていこうという気概と優しさに満ちていた。

 旺盛な翻訳活動で人文知を世間に還元しながら、
学問によって培った大局観で天下国家を論じる。
それをインテリに確かな信頼を寄せた善良な市民が読み、日々の暮らしをよりよくしていこうとする。
これが古き良き戦後の教養文化の源泉だった。

 だが今のさえぼー様がそんな先達の系譜に連なるとは到底思えない。
市民社会が成熟し社会全体で共有できる問題が消滅したとか、
ネットで思想の先鋭化が進行しすぎたとか、戦争体験の有無とか考えるんだが、
この人文村の荒廃ぶりはどう説明できるんだろうか。

 もちろん、実証研究の分野では史料編纂をしたり、古典文献の異同や成立年代を丹念に調べたりと
誰も手をつけない昔の文物を地道に後世に残していく取り組みがなされていることは
知っているのであしからず。