あの子は終始、目線が下にある感じだった。
きっと出会った当初の自分もこんな感じだったのだろうと思った。

あの子は言った。

卑怯ですね。
知らないフリして。

本人から聞くまで知らないフリをする。
それは知ってる人のエゴだ。

あの子にとって傷跡の理由なんて噂は噂でしかないし、現場を見られない限りいくらでも嘘をつける。
ただ親にやられたなんて絶対に言いたくないし、知られたくないのか、親に愛されてない事を認めたくないからなのか、他に理由があるのかは自分には分からなかった。