では偶然ここを見た文芸の神が特別に教えてやろう。

文体は読者を意識してこそ確立される。
日常生活を鑑みてみろ。
友人と話すとき、教師やお偉いさんと話すとき、子供や赤ちゃんに向かって話すとき、
それぞれしぜんと口調が変わるはずだ。

読者を意識せず書いていると、文体は定まらない。

しかし裏を返すと、実はそこには、文体を定めたくないという意識が働いている。
読者を限定することは、自分自身の可能性を限定することである。

子供や赤ちゃんに向かって話しているボクの話し方は、本当のボクじゃない。
教師やお偉いさんと話すときの、こびへつらった話し方は、本当のボクじゃない。
友人と話しているボクだって、本当のボクじゃない。本当のボクはもっとすごいんだ!