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この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十七ヶ条

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0001名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2012/05/31(木) 23:54:10.73
即興の魅力!
創造力と妄想を駆使して書きまくれ。

お約束
1: 前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2: 小説・評論・雑文・通告・dj系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3: 文章は5行以上15行以下を目安に。横幅は常識の範囲で。でも目安は目安。
4: 最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5: お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6: 感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。


前スレ
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十六ヶ条
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/bun/1334550182/

関連スレ
この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第13巻
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/bun/1295263192/
裏三語スレ より良き即興の為に 第四章(※途中消滅)
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1106526884/

※2010年9月、kamomeサーバーの大破で、当時の創作文芸板のスレッドは消滅しました。
データ復旧は望み薄?

既に落ちている関連スレ(参考までに)
この三語で書け! 即興文スレ 良作選
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1033382540/
0002名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2012/05/31(木) 23:55:54.41
この3語で書け!即興文ものスレ
http://cheese.2ch.net/bun/kako/990/990899900.html
この3語で書け! 即興文ものスレ 巻之二
http://cheese.2ch.net/bun/kako/993/993507604.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 巻之三
http://cheese.2ch.net/bun/kako/1004/10045/1004525429.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第四幕
http://cheese.2ch.net/bun/kako/1009/10092/1009285339.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第五夜
http://cheese.2ch.net/bun/kako/1013/10133/1013361259.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第六稿
http://book.2ch.net/bun/kako/1018/10184/1018405670.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第七層
http://book.2ch.net/bun/kako/1025/10252/1025200381.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第八層
http://book.2ch.net/bun/kako/1029/10293/1029380859.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第九層
http://book.2ch.net/bun/kako/1032/10325/1032517393.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層
http://book.2ch.net/bun/kako/1035/10359/1035997319.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十壱層
http://book.2ch.net/bun/kako/1043/10434/1043474723.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十二単
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1050846011/l50
0003名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2012/05/31(木) 23:56:30.94
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十三層
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1058550412/l50
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十四段
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1064168742/l50
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十五連
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1068961618/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十六期
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1078024127/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十七期
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1085027276/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十八期
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1097964102/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十九ボックス
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1108748874/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ボックス
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この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十一ヶ条
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この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ニヶ条
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この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十三ヶ条
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1214994656/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十四ヶ条
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この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十五ヶ条
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この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十六ヶ条
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/bun/1334550182/
0005「作文」「論文」「小説」
垢版 |
2012/06/01(金) 00:52:29.57
「お前なぁ、これじゃあ小学生の作文のほうがマシじゃねぇか!!」
 編集部の打ち合わせブース。僕の原稿を叩きながらの担当さんの言葉に、背筋が震える。
「いいか描写ってのはな、意識の変化を景色に託すんだよ! 単なる説明じゃねえんだ!」
 担当さんが、三百枚の原稿の束をバリバリと両手で引きちぎる。僕は泣きそうになった。
「大体、主人公はモノローグで淡々と悩みを解決しちまうし! 論文じゃねぇんだぞおい!」
 担当さんは激しい怒りを込めて、バラバラになった論文を傍にあったミキサーに詰めると
トマトピューレとバジル、塩胡椒、オリーブを足して容赦なく混ぜ合わせてしまった。
「確かに現実ではふと気が変わることもある! が、小説でそれやったら駄目なんだよ!」
 担当さんはミキサーから取り出した原稿をちょうど良く焼き上がった羊肉のソテーに添えて
がつがつと貪り始めた。そうして最後に皿に残った原稿をべろりと舐め取り、ごくんと喉を
鳴らした担当が顔を上げる。……そこには、先ほどまでとは一転した笑顔。
「――まあ色々言いましたけど、展開はよく考えてあるし、ヒキもある。もうちょっと手直しすれば
すごくいい作品になりますから、一緒に頑張りましょう! ……げぇっぷ」
「は……はい! あ、ありがとうございます、がんばります!」
 僕は救われた思いでそう答えつつ――なぜか「マズイ! もう一杯!」という言葉を思い出していた。


次は「漫画」「無職」「公園」でお願いいたします。
0006「漫画」「無職」「公園」
垢版 |
2012/06/01(金) 21:00:39.42
仕事着の人間が座っているのを見かけると、ついちょっかいを出したくなる。
日差しが強い。遮蔽物のない公園のベンチは正午に差し掛かる日光にさらされて
地表から、水分と人が隠れる影を奪っていく。すがすがしくも、おそらくは彼からすれば
容赦のない明瞭さであろう。
脈絡もなく視線を動かしたり、かといえば遠い目をして動かなくなったり・・・・・
ここでの人間観察が趣味の私の目には、その見知らぬ誰かが仕事を失って
途方に暮れているであろうことは、ノータイムで看破できてしまう。
あの制服・・・というか作業着だ。胸にはご丁寧に名札まで付いている。
(さて、何か手元にあればいいのだが・・・。)
ズボンのポケットをゴソゴソとあさる。これは偶然、今朝、目覚まし時計の
電池を変えようとして溝をつぶしてしまったネジが入っていた。
関連性のあるものが入っていただけでも相当に幸運だ。皮肉的ともいうが、ともかく
彼に気付かれないように、ベンチの足もとに投げて転がす。コツン、と安全靴に
ぶつかって転がったソレをみた彼は、そっと拾い上げたかと思うと、一目散に
公園から駈け出して行った。テレビCMでみた。世界一なんだってな、ネジのシェア。
「これで、彼が無職じゃなくなったら、それこそ漫画みたいだな。」
実に夢のある話だ。次回のネタはコレでいこう。―――ああ、俺の漫画も世界一になれればいいんだが。


次を「高速道路」「陰謀」「缶コーヒー」
で指定。
0007「高速道路」「陰謀」「缶コーヒー」
垢版 |
2012/06/01(金) 23:22:30.16
「その缶コーヒーから離れて、手を上げろ」
「…………」
 振り向くと、いかにも刑事然とした男がこちらに拳銃を向けていた。
 夜の高速道路。路側帯に立つ僕と彼を取り残して、車のランプ達が通り過ぎていく。
「……さすがは井隼刑事、行動がお早い」
「ようやく尻尾を掴んだぞ、『アンチ世界陰謀会』。……一体なぜ、どうしてこんなことを」
 足下の缶コーヒーを睨み付けながら、彼が訊いてくる。
 僕は笑みを浮かべ、彼に答えた
「刑事さん。いまの世の中は早すぎる。溢れる高速交通網に高速通信網。これではあまりに
シビアでタイトで、ビターすぎる……我々の目的は、こんな世の中をリセットすることです」
「馬鹿な! 答えになっていない!」
「……残念ながら、ここまでのようです」
 直後、一台の車が僕と刑事の間に滑り込んでくる。僕が飛び乗ると、車は急発進。
 背後に銃声、だがこちらは防弾車両。エンジン音の向こうに、彼の叫び声。
「くそッ! こんなことに……そこら中に千葉県産のマックスコーヒーを置くなんて行為に、
一体、なんの意味があると言うんだッ!!」
 ――全国版のマックスコーヒーは薄すぎるんですよ。……僕はそう、胸の内で彼に答えた。


次は「牢屋」「女」「涙」でお願いします。
0008「牢屋」「女」「涙」 1/2
垢版 |
2012/06/02(土) 02:12:38.57
僕があるマンションの取り壊しに立ち会ったのは、10年前のことだ。
それは14階建てで、田園風景の中で、少し浮いた存在だった。
その空き室だらけのマンションを僕が知ったのは、職場の先輩に、
半年近く入院中の我が子への憂いを吐露したときだった。
「うちの親戚は、子どもに難しい病気が出ると、とにかく集まって
月を眺めて酒を飲むんだよ。ただひたすら飲むのさ」と先輩は微笑した。
「月?」と聞き返しはしたものの、「何かを信じる心って、ときに偉大な力を
生み出しますよね」と僕は答えた。僕自身、宗教でも信じたい心境だったのだが、
「この話をして笑わない人は珍しい」と先輩は気を良くしたようだった。
なんてことはない、酒や集まりの好きな一族がもっともらしい理由をつけているだけ、
人が集まれば金や知恵も寄せ合うから、いい医者の伝手が見つかったりするのだと
いうことだが、いまどき、金が集まるならずいぶんお人よしな一族だと思った。
「昔、江戸の初めくらい昔――」と先輩は教えてくれた。
病気がちの子どもを元気付けようと父親が「なんでもいうことを聞いてやる」と
約束したとき、子どもが「お月さんを捕まえたい」とねだったのが始まりだそうだ。
以来、江戸時代に珍しい二階建て、時代を追うごとに少しずつ高層化し、
月に近づこうとしてきた結果さ、と先輩は言った。
0009「牢屋」「女」「涙」 2/2
垢版 |
2012/06/02(土) 02:16:47.21
「耐震だなんだと維持が難しいから、取り壊して普通の家に建て替えるんだよ。
その前に最上階に集まるから、よければおいで」と誘われた。
取り壊し前夜、一族に混じって僕は月を眺め、酒を飲んだ。
退去手続きの際、ある住人が「ここ、昔は座敷牢だったって噂、本当ですか」と
本当にいまさらなことを尋ねたそうだ。庭の一角に、
花壇でもないのに時折土が掘り返されたり
湿ったりしているところがあり、それが
「牢屋で無念のうちに死んだ女の涙のシミ」だとまことしやかに
数すくない住人の間ではささやかれていたんだと!
と現在の一族の長らしい老年の男が豪快に笑った。
これもまた、事実はくだらないことで、昔からアリの巣が多いから、
近所のこどもが時折入り込んではほじくり返しているだけだという。
満月には少し足りない月に照らされ、僕はお人よし一族の空気に心地よく酔った。

病室で僕と一緒にお月様にお祈りしていた少年は、
宇宙飛行士を夢見て成長し、今も色あせない夢を抱きしめ、
大学院で物理を専攻している。
ここにもまた、月の穏やかな狂気に魅せられた無邪気な人間がいる。

次「チューリップ」「水筒」「人工島」
0010「チューリップ」「水筒」「人工島」
垢版 |
2012/06/02(土) 03:41:30.10
オランダの昔話に曰く、チューリップとは美少女のなれの果てらしい。
三人の騎士に求婚された美少女・チューリップちゃんは誰も選べないということで、
貢ぎ物の冠を花びらに、剣を葉っぱに、宝石を球根にして花になってしまったらしい。
チーちゃん、メンタル弱すぎである。

もう一つ、オランダでチューリップにまつわる話と言えばチューリップバブルがある。
ある日、チューリップの球根がなんの理由もなく高騰。今日より明日の方が高い値が
付くとあって、民衆は家財を売り払ってチューリップの球根に殺到した。
が、もともと何の理由もない暴騰だったのである日突然、球根価格は暴落、ゴミと化した。
チヤホヤしといて、ある日突然ゴミ扱い。チーちゃんは多分、手首があったら切っている。

そして最近、オランダはチューリップの形をした巨大な人工島を計画した。
宇宙からも見えるチーちゃんの似顔絵。求婚されただけでテンパって花になった少女を
どんだけ晒すのか。しかもこの計画、ドバイのヤシの木型人工島の二番煎じだと言われ、
環境破壊だと糾弾され、金の無駄だと非難され、なんやかやで現在も凍結中。

……僕は水筒から水を飲み額の汗を拭い、海沿いのチューリップ畑から人工島建設候補地の
海岸を眺めながら――人間、迂闊に花にならないほうがいいなぁ、と思った。


次は「肩」「腰」「痛み」でお願いします。
0011肩、腰、痛み
垢版 |
2012/06/02(土) 05:11:58.43
俺はステージのかぶりつきでショーを見ていた。
目の前で、人間ともロボットともつかないアンドロイドが激しく腰を振っている。
ところどころ機械の露出したようなデザインの彼女は、全裸なのかそうでないのか判断がつかない。
これは確か、四十年前のアニメに出ていたキャラクター、だろうか。
内容は全く忘れてしまったが、彼女の名がローザだというのは憶えている。
「何もかもみな、なつかしい……なんてな」
俺は、どこかで聞いたような台詞を呟いた。
ローザのダンスを見ていると、疼いていた胸の痛みが僅かながら癒やされた。
「こんな人生で良かったのか。俺は一体どこで間違えたんだろう」
六十年間の灰色の時の流れが、バラバラに去来していく。
その時空の流れを集約するかのように、俺の目前でメタリックなローザが踊り狂っていた。
「ゼロニモ、時間だよ」と奴が俺の肩を叩いてきた。
「ああ」
「思い残すことはないか」
「ローザに、触れたい」
「それはできない。3Dだからな」
「知ってる。言ってみただけさ」
俺はゆっくりと席を立ち、奴に連れられて隣の部屋に移った。
死刑執行室へ。

次「脱獄」「生まれ変わり」「蛆」
0012「脱獄」「生まれ変わり」「蛆」
垢版 |
2012/06/03(日) 04:42:24.14
 死刑執行の前日、僕は日記を書いていた。
 内容はいつもと同じ、何人もの命をこの手にかけたことへの懺悔と悔恨。
 自分がいかに罪深く穢れているかを思い、浄化を願う煩悶と懊悩……
 ああ……僕が死んだら、死体は腐らせ蛆に食わせて欲しい。
 骨は溶かして、火山に投げ込んで欲しい。
 二度と生まれ変わりなどしないよう、完全に消え去ってしまいたい……なのに。
 いつもいつも、僕には僕の罪が消えて無くなることなど想像もできないのだ。
 例えどこに行けたとしても、この僕の居る、罪の世界からは脱獄などできないのだ……
 …………日記を書いているうちに、夜が明けていた。
 いよいよ、今日は死刑執行の当日だ。
 僕は――仮眠室を出て、監房に向かった。
 官房では死刑囚が、全てを悟った様子で僕を出迎えた。
 これから彼を殺す刑務官である、とても罪深い、この僕を。


次は「人」「刺し」「指」でお願いします。
0013人、刺し、指
垢版 |
2012/06/04(月) 05:10:51.22
過去の刺し傷がまた痛んだ。
おいどんは顔を顰めて、ただ耐えた。
え、自分で顔を顰めるのが見えるのか、だと?
ふっ、そんなもん筋肉の緊張でわかるだろ。
マリオン6型がおいどんに寄り添い、心配そうにこちらを見ている。
「鉄造さま、また痛むのですか?」
「案ずるな。たいしたことではない」
「ニューロ・コードをカットすれば痛みはなくなりますのに」
「それでは意味がない。おいどんはカラス丸に切り刻まれた。あの屈辱を忘れてはならんのだ」
マリオン6型は、おいどんの刺し傷を愛しそうに指でなぞった。
「私には理解できない機能です……」
「気にするな。君には不必要な機能だよ。マリオン、君には恋愛に似た機能が生じ始めているようだね。おいどんにはそれで十分だ」
ふいにマリオンは遠くを振り返った。
「どうした?」
「誰か来ます」
マリオンの対敵センサーはおいどんより優れている。おいどんはマリオンに倣って、対象物のあるらしい遠くを見た。
灼熱の昼下がり、陽炎に揺れる廃墟、壊れた煉瓦の狭間から、小さな女の子が出てきた。
「白衣を着ています」
「ああ、珍しいな」
たどたどしい歩調で瓦礫を分け入ってくるのはロボットではない。
我らの創造主、人であった。

次「犬」「猿」「雉」
0014「犬」「猿」「雉」
垢版 |
2012/06/04(月) 20:59:17.89
「本日の議題は、なぜ桃太郎のお供は犬、猿、雉なのか? です」

「陸海空をフォローするためじゃない? 山田さん(42)ちの秋田犬は泳ぎが得意だよ」
「居ぬ、去る、来ず、つまり桃太郎は山田さん(42)のような『ぼっち』だと示唆しているのだ」
「いぬさるきじを並べ替えると『爺抜き去る』。すなわち桃太郎の裏テーマは父殺しさ。
ちなみに山田さん(42)は猟銃の暴発で父親を殺しかけて、家族に追い出されたとか」
「いや、厄年の山田さんの話はどうでも良いですから……」

「あ、そういえばあたし、こないだ犬と猿と雉を連れてる人に会ったよ」
「おいおい……そろそろ大人の本も読むようにしないとな?」
「いや、絵本の読み過ぎで見間違えたわけじゃないから! 本当に見たんだって!」

「それ、つまりはこういうことじゃないですか? 犬は狩猟犬で、雉は猟果。
犬を連れての狩猟も雉狩りも、日本の猟友会では一般的です。
猿は、犬を放つと一人になって寂しいから、相棒として連れていたのでしょう」
「そんな理由で猿って……どんだけ寂しがり屋なんだよ、そいつ」
「まあ、仕方ないでしょう。彼女が会ったのは恐らく――一人暮らしの寂しさを紛らわすために
秋田犬を連れて猟に行った帰りの、山田さん(42)ですから」


次は「市役所」「ベンチ」「時計」でお願いします。
0015「市役所」「ベンチ」「時計」
垢版 |
2012/06/05(火) 01:07:21.83
壁の時計が、閉館30分前を指した。
直人はベンチプレスをやめて、マットスペースへ行った。
そこは混雑していたが「僕、もう上がりますから、どうぞ」と若い男性が
直人に声をかけて立ち上がった。おかげでゆったりとストレッチができた。
直人は場所を譲ってくれた男の背中を見送った。いまどきの若者らしく
ほっそりしているが、肩や腕、腿からふくらはぎにかけての筋肉は美しい。
直人がシャワールームに行こうとすると、先ほどの男はもう帰るところだった。
ファッション雑誌から抜け出たようなおしゃれな姿で。
「お先に失礼します、お疲れ様です」と言葉も丁寧で、そして爽やかだ。
チートレベルの好男子め!と直人は思った。
翌日、老母の入院費還付手続きのため、市役所へ行った。窓口にいたのは
30前くらいの、髪をシチサンにしためがねの地味男。
「あれ、奇遇ですね」と地味男から声をかけられて、直人は
相手をまじまじと見た。男はめがねをはずした。
めがね外したら美男子だとか、脱いだらすごいのよとか、少女マンガかよ!
「ここでは普通の格好なんだな」と精一杯の皮肉も、相手には堪えなかった。
「あのジムに行くのは土日だけです」
「もてるんだろうな」「おばあちゃんからは大人気です、僕」とにっこり。
こういうジョークでさらっと返せるところまで心憎い。
悔しいけど、ギャップ萌え。俺は落ちた。

すんません、はからずもBLぽくなってもうた。
次「灰皿」「折り紙」「トイレ」
0016「灰皿」「折り紙」「トイレ」
垢版 |
2012/06/05(火) 21:28:31.62
 叔父はとにかく折り紙好きだった。子どもの頃には色々な折り方と教えて貰ったものだ。
 俺は数年前に定年退職した叔父の家を、久しぶりに訪れた。

 叔父の家に上がった俺は、その光景に驚いた。
 机に椅子にテレビ台、果ては本棚、座布団まで……
 電化製品以外のほぼ全てが、複雑に折り込まれた折り紙で作られていたのだ。
 趣味が高じたにしても、その技術と紙の量はただごとではない。

 俺と叔父は、折り紙のコップで酒を飲み交わした。
 そのうち煙草が吸いたくなったが、火が燃え移りそうでどうにもはばかられる。
 仕方が無いので、トイレに立ったついでに一服して、吸い殻は便器に流した。
 ところが、俺がトイレから戻ると叔父が煙草を一服している。
 驚く俺の前で、紙の灰皿に吸い殻を押しつけた叔父はいたずらっぽい笑顔で、
「テーブルと灰皿は、耐火ペーパーなんだ」と言った。
 なんだ、それならコソコソせずに俺もここで一服すれば良かったと思っていると、
廊下の向こうから煙の臭い。観に行くとボヤが起こっている。
 吸い殻は便器に流したはずなのに! という俺の言葉を聞いた叔父は泣きそうな表情で、
「便器は耐水ペーパーなんだ!」と言った。紙の家は瞬く間に全焼した。


次は「自宅」「バレーボール」「サラリーマン」でお願いします。
0017「自宅」「バレーボール」「サラリーマン」
垢版 |
2012/06/09(土) 01:58:35.78
僕の勤める会社には、いやに広い中庭がある。
昼休みには、そこでキャッチボールをする者、
バレーボールをする者、果ては勝手に穴を掘ってパターゴルフを
する奴までいる。ちなみに、応接室の重厚なテーブルでは
卓球が繰り広げられている。池があれば釣りをする奴もきっといたことだろう。
いくら社訓に自由尊重が謳われているとはいえ、自由すぎる。
誰もが「サラリーマンが社内で遊ぶ」ことの意外性を楽しんでいる。
しかし、メリハリが功を奏すのか、業績はまずまずだし、いまのところ
お咎めはいっさいなしだ。
その中庭へ、サッカーを持ち込んだのは、僕だ。
ゴール替わりにシュートを打ち込まれるフェンスは、原型を留めていない。
そんな僕が、帰宅すると、室内でボール遊びに熱中する子どもたちに
「こら、家の中だぞ」と叱りつける。
近々、自宅のベランダにテントを張って、こどもたちとキャンプごっこをしようと
思っている。長男が飯ごうでご飯を炊く係り、僕と次男がおかず係り。
男同士の秘密の作戦、ささやかに進行中だ。
男の背中には、生まれたときから、自由の翼が生えているのだと思う。

次「マグネット」「扇風機」「新幹線」
0018「マグネット」「扇風機」「新幹線」
垢版 |
2012/06/09(土) 03:38:14.41
「すごいことをおもいついたよ!」
 馬鹿で有名な通称『馬鹿』が、俺にそんな報告をしてきた。
「きょうの理科のじかんに、コイルとマグネットで手まわしの発電機をつくったじゃない?
でも手でまわすのは大変だから、ほら! 扇風機の羽根が回るとこに発電機をくっつけたら
手でまわさなくても発電できるよ! うわーぼく、すごい発電装置をおもいついてしまった!」
 俺はため息一つ吐いてから、馬鹿に説明してやることにした。
「いいか、馬鹿。その扇風機を回しているのも電気だ。その装置では生産される電気より
消費される電気のほうが多い。つまりそれは発電どころか、単なる電気の無駄遣い、ゴミだ」
「ええー!? じゃあじゃあ、あまった扇風機の羽根を発電機にくっつけて、新幹線の窓から
外にだしておけば羽根がまわって発電できるっていうのも……」
「同じだ。羽根の負荷を相殺するために新幹線が消費する電気のほうが多い。
これをエントロピーの法則という。あと、新幹線の窓は開かない」
「はあ……えんとろぴい……」
 馬鹿はしばらくポカーンとしていたが、やがて首を捻りながら喋りだした。
「じゃあさじゃあさ、大人がつかってる火力発電とか水力発電も、えんとろぴいなの?」
「あ? まあ……ガソリンやガスが出来たり水が雨になったりする力の方が、大きいは大きいが」
「おー、じゃあやっぱり力の無駄遣い、ゴミなんだね……なんでそんなこと、するのかなぁ?」
 馬鹿の口にした疑問が、なんだか俺の脳味噌を変な風に揺さぶった。


次は「iPS細胞」「実験」「肝臓」でお願いします。
0019「iPS細胞」「実験」「肝臓」
垢版 |
2012/06/15(金) 22:57:26.00
実験室は非常な緊張感に満ちていた。
3人の男たちが無言で囲むテーブルには、焼いた肉が乗せられた皿1枚。
――誰が一番にそれを味わうのか。
誰もが一番になりたく、そして、忌避したくもあり、思惑が交錯する。
皿に乗せられているのは、人間の肝臓なのだ。
――これはカニバリズムでは、決してない。法に罰せられる恐れもない。
そう言い聞かせはしても、やはり心穏やかではないのはみな同じだった。
iPS細胞が臨床に応用できる時代、
人間の肝を食用にできないかと、好奇心は医学からはみ出し、倫理を超越した。
”主”が一番に食うべきだ、と一人が言った。
3人はそれぞれ、自分の皮膚から複数のiPS細胞を培養していた。
この肝臓は、この中の誰かのものなのだ。
それが誰かわからないから困るんだよ、馬鹿、と別の一人が応じた。
じゃんけんでともう一人が無理に微笑を浮かべたとき、緊張はいっそう高まった。
この肝臓は、俺のものか、この2人のどちらかのものか。
食うか食われるか、背徳的な味を賭けたじゃんけんが今、始まる。

次「窓」「フィギュア」「インク」
0020窓、フィギュア、インク
垢版 |
2012/06/16(土) 05:06:43.65
BGMは憂鬱そうな女性のボーカルだった。
中島みゆきの陰で密かに活動を続けていたシンガーソングライターの名曲。
谷山浩子の「窓」。
俺は正に、廃校になった母校の懐かしい教室で、それを聞いていた。
懐かしい想いにどっぷりと浸かりながら、俺は一心に小説を書いていた。
当時の学生時代のリアルと妄想の入り交じった青春小説だ。
パソコンで打っているわけではない。
特別のインクを使ってペンで書いていた。
そのインクは、死んだ七瀬の体液を抽出して作った。
七瀬は俺の女だ。
正確には違うが、彼女が命を止めてから、それは俺の所有物になった。
高校以来の念願がやっと叶った。
七瀬、もうどこにも行かなくていいんだよ。僕と一緒にずっとここにいていいんだ――

廃校になった高校の一室で、腐乱した男性の死体が発見された。死体は机に向かって何かを書いていたらしいが、薄桃色のインクで書かれた文章は全く意味をなしていなかった。
一方、理科室には、とても教材とは思えない女性の剥製が飾られていた。多少の継ぎ接ぎはあるものの、かなり精巧でエロティックな、それはフィギュアだった。

次「文芸部」「露出」「記憶喪失」
0021「文芸部」「露出」「記憶喪失」
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2012/06/17(日) 06:56:20.69
「犯人は、あなただ」探偵が言う。
「な、なんのことですか? 覚えがありません」
「記憶喪失ですか? だとしても、これを書いたことは覚えているでしょう?」
 探偵が取り出したのは、僕の小説が載った文芸部の同人誌……
「そ、それが一体、なんだっていうんですか」
「証拠ですよ」探偵が鋭い目つきで僕を睨む「あなたが犯人だという証拠です」
「フィ、フィクションの小説ですよ!? それが、なんの証拠になるんですか!」
「この小説の犯行シーンで被害者が発する言葉は、実際の被害者の口癖……かつ造語です。
そう、『ひくしーしわ』という言葉は存在しないんです! これは偶然ではあり得ない!」
「そんな……そんな、そんな!」
 諦めてうな垂れる俺の前で、探偵が言う。
「最初にこの小説を読んだときから、あなたが怪しいと思っていました。なにしろ
この描写――本物の露出痴漢にしかわからない、リアリティーがありますから」
「……え? 本物の露出痴漢にしかわからないのに……なんであんた、わかるの?」
「……え?」

 その日、変態が二人逮捕された。

次「耳かき」「宇宙」「続く」
0022耳かき、宇宙、続く
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2012/06/17(日) 10:20:14.40
浩は明美に言った。
「おい、耳かきを貸してくれ」
「ここは学校よ。そんな物は持ってきてないわ」
「いや、お前なら絶対持っているはずだ。校内でも便利屋アケミと言えば有名だぞ」
浩は明美の目を正面から見つめて頼み込んだ。ここは空き教室である。他人から見ると「コクり」の現場に見える。
ただ二人は、小学生のときから何回か同じクラスになっており、そこそこに仲は良かった。というわけで、
「しょうがないなあ」
明美は仕方なく、ポケットから螺旋型の耳かきを取りだした。
「耳かきサービスなんてしないからね。自分でして」
「当たり前だ。そこまでは頼めない。そもそも耳をほじるわけではないからな」
「何に使うのよ?」
浩は、速攻で明美の手から耳かきを奪い取った。
「何をするのよ」
浩は自分のズボンをズリ下げて、陰茎を露出させた。それは既に勃起していた。
「明美、見て驚くなよ」
浩は金属製の耳かきを亀頭の先端からズブリと尿道に突き刺した。
「えっ、えーっ? 何なの」
「見てわからんか。尿道オナニーだ。こんなことをする奴はあまりいないからお前はついてるよ」
明美が茫然としているのには構わず、浩は、原始人が棒で火を熾すように、両手で耳かきを回しだした。
「浩、やめなさいよ。血が出てるわ。それに人が来たらどうするのよ」
「構わない。そのほうがスリルがある。興奮が高まる。今、お前に見られているだけでも気が狂いそうなんだ」
明美はその場から逃げ出したくなった。だが浩もほってはおけない。この男は病気なのだと心配になった。
耳かきで抉られた亀頭の先端は血に混じって我慢汁が溢れてきた。浩の表情は恍惚そのものだった。
明美は最後まで一緒にいてやるのが級友の努めではないかと観念した。
やがて浩は、何か絶叫して射精した。明美の体にも白い液体がかかった。少年はそのまま気絶した。
「すごいのを見ちゃったわ。人にはそれぞれ他人には理解できない自分だけの宇宙があるのね」
明美は、浩の亀頭に突き立てられた耳かきをそのままにして、そっとその場を立ち去ることにした。(続く……わけがない)

「総選挙」「アイドル」「AV男優」
0023「総選挙」「アイドル」「AV男優」
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2012/06/18(月) 20:11:37.07
篭城から12時間。犯人の声にも、焦りが見える。
「要求はまだ通らないのか!あと5分で人質を一人・・・」

犯人はAV男、優秀な機材で最高の録画が生きがいと言う男だ。
闇に銃声が響き、罪もない女性アイドルがサーチライトに放り出された。
「あ、あつこぉぉぉ!」と泣き崩れる親。
「人質は、まだ47人いる。早く要求を」

刑事も応戦する、「仕方ないじゃないか、総選挙だったんだ」
「その総選挙のおかげで、俺がどんな目にあったかお前に分かるか!」
判るわけないだろ、そんな事。という言葉を彼はぐっと堪える。

鑑識が、モニターを見せる。
「これが要求の映像です、しかし生放送で字幕は除去不能です」
今や人質のアイドル群の踊り。たしかに選挙結果のテロップが重なっている。

「これがどうした」と唸る。第一本人達が手元に全員・・・という合間にも脅迫は聞こえる
「早く字幕のない映像をだせ!俺は映像じゃないとダメなんだぁ!」


・・・結局、親役も犯人役も死んだふりも好評で、視聴率80%を超える映像が完成した。

※:次の映像は「比例代表」「指名打者」「オンリーワン」でお願いします。
0024「比例代表」「指名打者」「オンリーワン」
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2012/06/22(金) 03:26:28.75
「今度の演説は宅間に任せる」と先生は言った。
宅間は演説のプロである。だが、政治家では無い。
目の前に居る人間の望む言葉を放ち、相手に同調して高揚して心を掴むことは出来る。
だがそれは、目の前にした相手によって言うことが変わるということでもある。
ある場面ではナンバーワンを目指せと鼓舞し、別の場面ではオンリーワンでいいと諭す。
変節自在、純粋生粋のアジテーター。選挙演説における指名打者。
彼のお陰で選挙に受かった人間が何人いることか。
特に、比例代表の下位数十人の議席は確実に宅間が拵えたものである。
だから最近の宅間はついに、党の議員選出にまで口出しできるようになっている。

その宅間の正体は、某国のスパイ。
宅間は選び抜いたやる気の無い馬鹿どもを、国政の中枢へと送り込んでいたのだ。

そんなある日、宅間のもとに本国から意外な連絡が入った。
『作戦は失敗だ。君がやる気の無い政治家を増やした結果、国政は改善してしまった。
どうもその国における政治家の仕事とは「国民を食い物にすること」だったらしい』

次「空腹」「夜食」「水」
0025「空腹」「夜食」「水」
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2012/06/23(土) 11:31:53.76
「勇者さん、夜食です」魔物の姿で部屋に入ってきた女僧侶が、変身フードを外して人間に戻る。
手には紙袋を抱えていた。「フライドトマトとバンパイア堂のブリトーです」
「ご苦労」地図から顔も上げずに勇者がいった。真剣に作戦を練っているようだが、あとのふたり、
老魔法使いは部屋の隅で本を読み、戦士はブーツを脱いで足に何かを塗っている。
勇者が呟いた。「軍資金が足りん。入金は今日じゃなかったか?」
「それが…」女僧侶が封筒を出した。「今月は、これでした。言い出せなくて」
勇者が封筒を開けると、なかには薄い指令書と新聞の切れ端しかはいっていない。
『親愛なる勇者隊よ。わが国は凶悪なる魔王軍の圧迫を受け、望む援助を貴君に送ることができない。
敵陣奥に潜む貴君らにおいては、現地にて自給自足し、徹底抗戦により魔物らに恐怖を与え、
無慈悲に処断し、可能なら魔王を倒して、財宝と貴君らの余剰金を国庫に収められたい』
戦士が吐き捨てた。「くそったれ」
新聞には、国庫のすべてを魔王との戦いに注力し、城の増築と国王の戦車を買い換える旨の
記事が載っている。イラストの王は精悍で護衛隊は士気軒昂にみえるが、その実みな空腹を抱え、
真水すら満足に手に入らない状態なのを知っている。
「ここにいる俺たちは幸せだな」いうと勇者は立ち上がり、隠れ家の窓から外を眺めた。そこは
使われなくなった鐘楼の天辺で、眼下には明るい魔王の城下町が広がっている。
カタタン、カタタンと音をたて、魔王電鉄の電車が町を横切っていく。家々の明かりは、
住人たちの団欒の証だ。大通りには魔物があふれ、商店街には豊富な品が揃っている。
屋台の串焼きの匂いがあがってきた。勇者はため息をつく。「何で人間に生まれたんだろう」
と、入り口のドアを激しく叩く音がした。「公安だ! 勇者罪で逮捕状が出ている!」
女僧侶が悲しそうな顔をした。「ブリトー、食べましょうか」
4人は温かいブリトーを頬張った。ドアを破る準備をする音が聞こえる。誰も、武器を取らなかった……。
一週間後、国の新聞に新しい勇者隊結成の記事が載った。『先遣隊』は全滅、本隊にかける期待は
並々ならぬとの解説付きである。『彼らは必ず成功する。失敗は叛逆なるべし』主筆のコラムは
1年前とまったく同じ文面であった。

次「鉄」「紙」「声」
0026「鉄」「紙」「声」
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2012/07/01(日) 06:32:18.89
! 突然だったんだよ。
頭上からいきなり鉄の球が落ちてきた。パチンコの球じゃないぞ。直径一メートルを超える鉄球だ。
こんなのが直撃したら、一発でぐちゃぐちゃになってしまうところだ。
俺は間一髪でそれを避けると、そいつが落ちてきた空のほうを見上げた。
すると青い空から一枚の紙が落ちてきた。
俺はそれを受け取り、見てみた。
『お前、運がいいなw』
とだけ書かれてあるメモ用紙だ。
最後のwって何だよ?
ふざけてるな。
「ばかやろー!」
俺は声をあらん限りに張り上げて空に向かって怒鳴った。
すると今度は
! ! !

次「セックス」「餃子」「ドリーム」
0027「セックス」「餃子」「ドリーム」
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2012/07/01(日) 14:47:43.53

  『心斎橋ドリーマー』


 男は心斎橋にあるおっぱいパブで、幸せそうに冷凍の餃子を頬張りながら発泡酒を何本も空けていた。
 結婚から五年経ち、ある問題が男を悩ませていた――セックスレス。妻も男も生殖器に問題があるわけ
ではなかった。だからこそ男は、性的な欲求を自律することに四苦八苦していた。
「辰郎さん、今日も浮気しに来てくれたの? お礼に色んなことしちゃおうかな?」
 女の手がすっとズボンのチャックに伸びたとき、男の耳元で囁いた。
「風営法に引っかかるからあんまり大きい声で言えないんだけど、このお店には別室があるの。
もっとすごいこといっぱいしたい?」
 顔を真っ赤にして、全身に酔いが回っている辰郎に断る理由がなかった。二人の向かった別室は全面が
鏡張りで、ベッドだけが置かれた、さながらラブホテルの一室だった。
「いっぱい好きなことしていいんだよ?」
 服をはだけさせた彼女に、辰郎は飛びついた。そのとき、扉がけたたましい音を立てて開き、黒いスーツを
着た屈強な男たちが雪崩れ込んできた。無抵抗の辰郎をひとしきり暴行すると、財布から十万円を抜き取った。
「お客様、うちの嬢に手を出されては困りますね。お代のほうはしっかりと頂きますよ」
 暗い路地にぼろ雑巾のように放り出され、唾を吐かれた。餃子の皮みたいにしわくちゃに汚れたスーツを
手で払うと、男は妻の待つ夢の詰まったマイホームへと帰路についた。灯台下暗しとはこのことである。


次「宇宙」「小競り合い」「策略」
0028「宇宙」「小競り合い」「策略」
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2012/07/01(日) 18:46:47.25
閉鎖された教室に一組の男女が対峙していた。
「これはあなたの策略ね」
美紀は、身動きが取れなくなった体に戸惑いながらも、了を睨みつけた。
「すまないね」了は笑みを浮かべながら美紀の強ばった体を指でなぞった。
「まさか君が引っかかるとは思わなかった。別に誰でも良かったんだけどね」
「私の体に触らないで。吐き気がするわ」
「残念だが君の体をどうしようが僕の自由だ」
了は電磁メスを使って、美紀の制服を裂いていく。白い裸身が露わになった。
「いい体をしている」
「いやだったら!」
「これなら僕のペットの餌にちょうどいい。ピクサーに内臓に寄生させて、君は内側から徐々に食われていくんだ。どうだい、素敵な最期だろ」
「こんなことなら、あなたの転校早々に勝負をつけておくんだったわ」
「そういうの、君たちの世界では、後の祭りって言うんだよね」
了はくっくっと笑った。しかしその笑いは途中で中断する。別の闖入者がきたのだ。
「小競り合いはそこまでだ!」なだれ込んできたのはメタル武装した謎の男だった。彼は有無を言わさず、仕掛けのあるブレードで邪悪な少年を一刀両断にする。
了は笑ったまま二つに分かれた。
美紀はぽかんとした。
「ありがと……」
「礼を言うのは早いな。柿村美紀、いや、ゼルベクレル・99・ホルマリンクル」
「どうしてその名前を!」
美紀は五百年ぶりに本名を言い当てられて愕然とした。自分さえ忘れていた呪われた名前だった。
「あなたは……?」
「探したぜ。まさか地球に潜伏しているとは思わなかった。逮捕する」

翌日、2年C組の升田了、2年D組の柿村美紀が突然転校した。また校内に食品を配送していた契約社員の武藤烽燻ク踪した。
その真相を知っているのは、早朝、宇宙に向かって飛び立った長い一筋の光の軌跡だけだった。

次「女王様」「洞窟」「鉄道模型」
0029「女王様」「洞窟」「鉄道模型」
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2012/07/03(火) 00:10:16.15
 漫画の世界は別として、実際に渾名が女王様という人はそうはいないと思う。そうだろ?
そんな数少ないうちの一人を俺は知っている。
知り合いといっても二、三度しか顔をあわせたことがない人で向こうは
俺のことを覚えてもいないだろう。いや覚えてるか?

彼女がなぜ女王様と言われているかというと、はっきり言ってしまえばブスだからだ。
美人だったらそう呼ぶたびに、男だって女だって自尊心を傷つけられるから言いやしない。
そして彼女が女王様みたいなメガネ(ようはSMでつかうようなマスクに似たメガネ)を
していたからだった。

なんで彼女がそんな変なめがねをしていたのかわからない。
あるいは男にはわからないお洒落がそこにはあるのかもしれない。
彼女は女王様と言われるようになってメガネを変えてしまったけど渾名は残った。
残酷なものだ。

 鉄道模型という渾名の奴もいた。これは誰でもわかると思うけど
趣味が鉄道模型だったからだ。Nゲージとかいう奴だと思う。
そいつの家に遊びに行って見せてもらったとき
ジオラマとかいう現実を模したプラスチックの駅とか家とかがあって小さな人形もあった。
その中を電車が走る。暗いといえば暗い。
俺は電車より人形にすごく興味を持った。きっと君もジオラマを見たら同意してくれると思う。

 洞窟という渾名の奴もいた。理由は今でもわからない。洞窟探検が趣味なのか
洞窟のように不気味なのか、親父が探検家なのか、底なしの馬鹿なのか。
洞窟はまったく普通の奴だった。サッカーはそこそこうまく、そこそこ面白かった。
なんでもそこそこの人生なんてきっと詰まらないだろう。俺はそのころそう思った。
短くても激しい人生のほうが良いに決まってる。人はそう思うに違いない。
でも今は違う。どこが違うかというとうまく説明できないけれど。

0031「女子高生」「恋」「警察」
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2012/07/04(水) 00:24:30.13

     『冤罪じゃないから』

「ちょっとした気の迷いでやっちゃっただけなの。お願いだから今回は見逃して!」
 本多町のスーパーマーケットから通報を受け、万引きの現行犯で女子高校生を派出所まで連行してきた。
 取り調べを進めていくと、過去に何件も万引きを犯してきた常習犯であることが分かった。名前は大槻かおり、
裕福な家庭で万引きをする必然性は全くなかった。万引きはただスリルを求めるためのお遊びらしい。
「娘が万引きの常習犯だなんてお父さんに知れたら、勘当されちゃう」
 新米警察官の俺は眉をぴくりともさせず、毅然とした態度で臨んだ。
「あなたのご家族の方に連絡しますから、到着まで大人しく座って待ってて下さい」
 ダイヤルに手をかけたとき、ばさりと布が落ちる音がした。慌てて振り返ると、上半身だけ下着姿の少女が
にんまりと笑っていた。状況が理解出来ず、その場で釘付けになった俺に、かおりは近づきしゃがみ込んだ。
彼女のまだ幼さの残る顔が、股間に消えてから、その後のことは覚えていない。心の中に暖かく湿った風が流れ
込んできた。少女に欲情とも恋心ともつかない、異様な気持ちが湧き上がっていたのだ。
 警察官の職務を忘れて獣に成り下がった俺は、自分の罪を隠すためにかおりの万引きを見逃して、冤罪だった
として家に帰した。

 数日後、出勤前にテレビをつけると地元の警察官に容疑が掛かっているという報道がされていた。警官も痴漢
や淫行を平気でやる時代だから、今更驚くほどのことでもなかった。
 玄関の戸を叩く音がした。こんな朝っぱらから、一体何の騒ぎだ。鍵を外し、扉を開けると私服の男たちが何人
も立っていた。
「あなたには未成年に猥褻な行為をした疑いが掛けられています。あなたと取調べ中の少女との淫行が記録された
ビデオテープが昨晩、署まで送られてきました。ご同行願います」
 俺の警察官としての人生は、女子高校生の玩具として利用され捨てられた。


次「お金」「過去」「どうにもならないこと」
0032「お金」「過去」「どうにもならないこと」
垢版 |
2012/07/08(日) 10:07:55.71
「俺にはないんだよ」と男は言った。
「何がないの?」彼の横にピタリと寄り添った女が、質問した。二人はベッドにいた。何も着ていなかった。
「過去さ。俺は原因不明の事故に遭った。外見は無傷だが、事故以前の記憶が消し飛んだ。残っているのは、ユウキという名前だけだ」
「原因不明の事故って何よ?」
「だから記憶が飛んで、分からないんだよ。物凄い衝撃を受けたのだけは、体が覚えている」
「とにかく人生が廃棄されちゃったわけね。かわいそうに、ユウキ」女は男の胸板に手を乗せて囁いた。
「そうでもない。もし過去が纏わり付いていたら君を抱けなかったかもしれないからな」
ユウキの手が女の手を握った。
「ところで君の名は何て言うんだ?」
「さっき名刺を渡したでしょう。それも忘れちゃったの」
名刺はベッドサイドの小机に置いてある。赤い名刺には妃美とだけ書かれてあった。
「妃美、もう一度抱かせてくれ。何か思い出すかもしれない」
「ごめん、予約が重なっているの。また今度にしましょう」
妃美は身支度を調えると、ユウキに手を差し出した。
「その手は何だい?」
「お金に決まってるじゃない。三万円です」
「金はない」
「何ですって?」妃美は血相を変えた。
「クレジットが使えるって聞いたよ」ユウキはポケットからゴールドのカードを取り出した。
妃美はそれをひったくってリーダー金額を入力して通そうとした。しかし何回通してもパスしなかった。
「何よこれ。無効カードじゃない」
「そんなはずはないだろう。よく調べてくれ」
妃美はカードの表裏を調べた。磁気が壊れているのか、それとも――
「ちょっと、何なのこのカード、有効期限が2412年になってるわ!」
妃美は改めてユウキを見た。ユウキは何の動揺も見せず、ただ静かにたくましい半身をさらしていた。
「ユウキ、あんた、一体いつの時代から来たのよ……?」
妃美は料金の収受を諦め、謎の男にもう一度抱かれることにした。
世の中にはどうにもならないこともある。
そんなとき、妃美はプライベートと割り切ってセックスで紛らわすことにしている。

次「噛み付き亀」「タクシー」「小学生」
0033「噛み付き亀」「タクシー」「小学生」
垢版 |
2012/07/08(日) 18:16:17.17
■東京駅から『おばけ』と呼ばれる、長距離の客を乗せた時のことだった。何食わぬ顔をした普通
のビジネスマンらしき男だったが、後ろのシートにつくなり、福島方面の目的地をつげた。まず嫌な
予感は、原発関連の仕事で急ぐあまりタクシーを使うなんて想像をかきたてられたことだ。お客さ
んだいぶかかりますよと注意を促すと、構いませんとのこと。そこでナビで場所を探してみれば、
原発からはかなり西の山奥であった。売り上げが芳しくなかったし、事情を訊くわけにもいかなく、
乗車拒否はまず無理だ。怪しいこと、極まりなかったけれど、とりあえず扉を閉めてタクシーを北
口から出したのだ。■高速で3時間ほど、山村の小さな集落の一角で客を下ろした。トイレを我慢
していたので、客に訊くと、近くに公園があって、そこで用はたせるとのことだった。日が出始めた
朝方近く、いつもなら客足も途絶え、仮眠をとる時間だった。眠気をおして最寄りのICまで行くより
かは、この静かな公園で少し眠気を覚ました方がよさそうだった。■小さなドアを叩く音で目を覚ま
した。靄が一面にたれ込めていた。「おじさん」と子供らしき男の子だ。「東京から来たんでしょ?」
ナンバーを見たのだろう。それにタクシーという乗り物も珍しいのかも。「池に噛み付き亀がいるん
だ」それがどうしたというのだろ?「東京の人がね、ここへ避暑に来た時に、逃がしてったんだよ。
吉井って人んちの子供。知ってる?」知るわけがない。「東京の人は親切だし、おいしい物をくれた
けど、亀を逃がしちゃったのに、黙って帰っちゃったんだよ」福島の小学生に違いないが、ベイスタ
ーズの野球帽をかぶっていた。キチガイか。「おじさん、噛み付き亀をつかまえて、吉井くんちに届
けてよ」やれやれ。これは正真正銘のキチガイだ。それか本物のおばけか。「おじさん、東京に帰
るんでしょ。ついでに噛み付き亀をさ…」

「ロードスター」「イタリア」「近所」
0034「ロードスター」「イタリア」「近所」
垢版 |
2012/07/19(木) 20:12:35.44
近所に留学で越してきた、日本の女学生。
ロードスターから、イタリア学生が手を振った。

「チャオ!ぼくの車に乗って帰らない?」
「ち、ちゃお、のーさんきゅー、ごめん」

「またね」と笑顔で手を振る若者。
日本女学生は、どきまぎしながら部屋に帰る。

(やっぱりイタリア男ね、早速だわ。ああ危ない)
イタリアの若い男。それだけで妊娠してしまいそうな気がした。

その夜、イタリア男の家で父からの詰問が始まった。

「一言だけか?なぜ引き下がる」「嫌がられると悪いし・・・」
「何だと! 貴様、それでも、イタリア男か!?」
イタリア男魂注入棒が唸って、夜が更けて朝がやってきた。

「ボンジョルノ!僕の部屋にこないかい?」「あわわっ」
固まったやりとりは、これから1年たっぷり続く。
素でつきあっていたらどうなったか、それはもう一生わからない。

※次のお題は:「星」「長靴」「納豆」でお願いしまふ。
0035「星」「長靴」「納豆」
垢版 |
2012/07/20(金) 18:21:44.49
ある納豆職人が亡くなりました。
3人の息子には、それぞれ「納豆製造機」「星新一全集」「長靴」が遺産として分けられました。
長男は家を継ぐことから「納豆製造機」、次男は作家になることを目指していたこともあり「星新一全集」を相続しました。
残った三男は「長靴」を、しぶしぶ受け取りました。
三男「長靴なんて持ってるし、親父の形見として、しまっておくぐらいしかできないな」
猫「そんなことありませんよ。その長靴を私にくれませんか?」
飼っている猫が三男の横に座り、突然、しゃべりました。
三男「やや、猫がしゃべったぞ!」
猫「……しらじらしい小芝居はやめてください。先日、あなたが発明した『おしゃべりんりん』で話ができるようになったんですよ」
と言って、猫は首に巻かれた鈴を肉球でつつく。
三男「まあな。この鈴を売りだせば、はっきり言って、遺産などいらないぐらいの財産が築けるはず。こんな『長靴』もいらないんだよな」
猫「そうおっしゃらずに、ちょっと私に、その長靴くれませんか?」
三男「いいけど、お前が履くのか? サイズ合わないだろ」
猫「実は私、親父殿がご存命の時、この長靴に細工をしておいたのですよ」
三男「ほう」
と感心し、長靴を猫に渡そうとした時、背後で音がして、見ると、次男と目があった。
次男「猫がしゃべってる……」
次男は『おしゃべりんりん』のことを知らない。
三男「あー、えーと。兄貴(次男)なら、この先、どう続ける?」

次は「猫」「姫」「旅」
0036「猫」「姫」「旅」
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2012/07/23(月) 01:30:29.50
猫がね、と、その日初めて姫様は、私にお声をかけてくださいました。お城に出仕して3日目のことです。
「猫がいなくなってしまったの。いっしょにさがして」
 かしこまりました、と私はお辞儀し、姫様と連れ立って歩きだしました。厨房、書庫、見張り塔。城中
を見て回りましたが、どこにも気配はありません。いなくなった猫の話を楽しそうにおしゃべりしながら、
姫様は私を引っ張って歩きます。
 中庭を抜け、城門の前までやってきました。残っている場所はここだけです。
「お城の中にいなかったのなら、きっとお外ね。わたくし知っているの、猫は年を取ると旅に出るのよ。
わたくしの猫も大きくなったからお城のお外へ旅に出たのだわ。さがしに行かなくちゃ」
 姫様は私を見上げてもう一度、さがしに行かなくちゃ、と繰り返されました。期待に目を輝かせた姫様
に、それでも私は首を横に振りました。姫様はうつむかれました。
 私は知っていたのです。姫様は猫など飼っていないことを。出仕した初日に忠告を受けたのでした。姫
様は新顔を見ると決まって猫をさがしに行くとおっしゃっるけれど、城門を開けてはいけないよ、それは
姫様のお戯れ、外に出たいがための方便なのだから、と。
 ふいに、私の胸はいとおしさと不憫さとでいっぱいになりました。姫様は自由にこの門をくぐることは
かなわないのです。仮にこの城を出たとして、どうして普通の子供のように、猫をさがして城下町を走り
回ることができましょう。幼い姫様にはそれがわからない。ただただ無邪気にご自分の、小さな冒険の旅
を夢見ていらっしゃる。
「もっと大きくなったら、わたくしも旅にでられる?」
 でられますとも。とっさに私は答え、後悔しました。いったいこれまで何人が、似たような慰めを口に
したのでしょう。姫様は聡明な御子でした。誰もが口をそろえて同じような返事をするわけを、もうとっ
くに察しておられたのかもしれません。
姫様は石造りの城門と、その向こうの青空を見上げると、そう、とぽつりとつぶやかれたのでした。
0038名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2012/07/23(月) 09:00:43.51
どの位の時間こうしていたんだろう。
もたれ掛かった壁と、着古して色の褪せたTシャツの背中と、尻の部分のささくれだった畳は、じっとりと湿っていた。
窓からは西陽が射し込み、テーブルの上のバターはすっかり溶けていた。
傍らには一斤86円の特売の食パン。女が、朝食に用意した、そのままが手を付けぬまま残っていた。
味も香りもなく、パサパサの、ただ腹を満たすだけのパンに、バターは不釣り合いのような気がして、マーガリンで十分じゃないか、と言ったとき、女はマーガリンにはトランス脂肪酸がどうだとか、小難しいことを言った。学もないくせに、妙なところにこわる女だった。
そして女は、炊きたての飯にバターをひと欠け載せて、その熱でバターを溶かし、醤油をたらして食べることを好んだ。これさえあればおかずはいらないのだと笑った。
そんなものばかり食べているせいか、女の身体からはバターのような匂いがした。
下腹部に顔を寄せ、掬うように舐めてやると、いつも
「溶けちゃう」
と言って小さく喘いだ。

女と口論になったのは今朝のことだ。
きっかけはささいな事だ。俺が働かないとか、生活費がどうだとか。
殴るつもりはなかった。ましてや殺すつもりなど。

女に声を掛けてみる。バターが溶けてしまったぞ、と。
返事はもちろんない。女は畳に横たわったまま、どこか恨めしげな目でこちらを見ている。
俺はやれやれ、と腰を上げ、バターの容器を手にして考える。
これは、もう一度冷蔵庫に入れたら冷えて固まって、元に戻るのだろうか。ゆっくりと、時間をかければ、もとの形に戻るのだろうか。
ぼんやり考えているうちに、容器は手から滑り落ち、黄色く光る液体は、ささくれだった畳に、静かに染み込んでいった。


お次の方、カレンダー・猫・財布 でお願いします。
0039「カレンダー」「猫」「財布」
垢版 |
2012/07/24(火) 01:14:06.17
レシートを、その日に限って受け取った。
会計の女の子がどことなく、昔頃に飼っていた猫「シロ」に似ていて気が逸れたからだ。
翌日も女の子の様子を観察したせいで、ついレシートを財布にしまった。
妙なことに気づいたのは、半月くらい経ってからだ。
現金があまり減らない。
気になって、家計簿代わりのメモをつけるようになった。
現金が減らないのは、あのコンビニで、あの女の子が会計をした買い物だけ。

夏になり、制服が半そでに代わると、女の子の右腕に大きな傷痕を発見した。
女の子は照れくさそうに前髪をかきあげながら教えてくれた。
――赤ちゃんのとき、事故に合ったから。
少し後遺症があるのか、どことなくぎこちない右腕の仕草。
それは、右肩関節に障害のあったシロが、顔を洗う仕草によく似ていた。
そういえば、シロは壁に掛けた日めくりカレンダーに飛びつき、豪快に破った1枚を
咥えてきて「これで遊べ」とねだったものだ。
生まれ変わってもお前は、僕に紙を押し付けてくるんだな。
シロが虹の橋へ旅立ったとき当分僕は、シロを思っては、泣きくれていた。
でもな。僕は強くなったよ。それにこうしてシロとも会えた。
会いにきてくれて、ありがとうな、シロ。だから、もう、お金に換える魔法なんて要らないよ。
会えただけでうれしいから。心から、ありがとう、シロ。

秋、女の子は東京の実家へ戻った。
「誰かが、泣きながら自分を待ってる」ってのがあの子のくちぐせで。
人を助ける仕事をするんだと医者を目指して浪人中だそうだ。
ただ、帰省前日、「もう泣いてる人はいない」と、すっきりとし表情をしていたそうだ。
シロは人間でいう88歳まで、地域のボスとして君臨してた。
君もまた、必要とされる場所をみつけ、医師として誰からも慕われるだろう、長く。
君の活躍を、僕は胸のうちでそっと自慢しよう。

行数はんぱなくオーバーしました。
次「サプリ「コースター」「リモコン」
0040サプリ・コースター・リモコン
垢版 |
2012/07/24(火) 08:33:02.29
「あ、待って」
店員がドリンクを置こうとしたとき、女はそれを制して素早くコースターと紙ナプキンを取り替えた。
紙ナプキンはよく冷えたドリンクの水滴で、みるみるうちにふやけた。
「可愛いコースター、集めてるの」
それを鞄にしまいながら、もう50枚くらいあるのと女は得意気に言った。まさか、今まで会った男の数?という言葉を俺は飲み込む。
女とは、数時間前に出会い系サイトで知り合った。美人ではないが、肉感的な身体をしていた。
食事が運ばれてきて、女は鞄から小さなピンクの錠剤を取り出した。
「なんの薬?」
「食べたカロリーをなかったことにするサプリ」
女は、全然太ってないじゃない、と言う俺の言葉は聞かなかったように錠剤を飲み込んだ。
ひょっとして避妊薬、なのかな。頭の隅でちらりと思う。
「休みの日は何してるの?」と訊くと、TVを観てる。バラエティー番組が好き、と言ってお気に入りの番組をいくつか挙げた。
つまらない女だな、そんなふうに、頭ではどこか女を蔑みながら、下半身ではなんとかこの女に気に入られようと、俺は雛壇芸人のように、つまらないギャグを連発した。
実際女はよく笑い、俺はますます調子にのって、これはいけそうだ、と確信を高めた。
ふいに会話が途切れた時、俺は女の手を握り、探るように尋ねた。
「このあと、どうする?」
女は急にしらけた顔になって
「なんか…つまんないから帰る」
と言って唐突に席を立った。
俺は訳もわからぬまま慌てて、湿ったコースターの裏に、本当の名前とアドレスを走り書きし、女に渡す。
「気が向いたら、これ…」
女は、なんの興味も無さそうに一瞥もせず、店を出て行った。

まるで、リモコン片手に、TV番組をザッピングするように、会話が途切れた瞬間、俺は興味を失われ、チャンネルを変えられてしまったようだ。

規定の行数にまとめるのって難しいですね。
お次の方、鯖缶・ロッカー・1週間でお願いします
0041鯖缶・ロッカー・1週間
垢版 |
2012/07/25(水) 19:00:44.71
ある日、仕事を終えて着替えようとロッカーを開けると、何も置いてなかったはずの上部の棚スペースに缶詰めがひとつ、ぽつんと置かれていた。
「なんだこれ」
手に取ると、それはごく普通の、鯖の水煮缶だった。
誰かの悪戯か?周りを見回しても、こちらの様子をうかがっている奴はいなそうだ。
5つ並んだロッカーの中で、新米の自分のものだけは鍵が壊れているが、今まで盗難などのトラブルはない。今回も、盗られたものはなさそうだ。
「非常食にでもしろってか?」
僕はロッカーをパタン、と閉めた。
帰り道、同僚で彼女の麻衣子に「どう思う?」と訊いても、「誰かの悪戯じゃない?それよりさ…」とまったく取り合わない。
不思議なことは翌日も続いた。
ロッカーの棚に、ポツンとクレイジーソルト。外国製のハーブ入り岩塩だ。これをかけると、なんでもたちまち旨くなる。
「いや、でも、鯖缶になら醤油だろ?」
その翌日は鷹の爪で、翌々日はニンニクだった。
なんかの魔除けだろうか?
5日めになると、さぁ今日はなんだという気持ちになっていたが、そこにあったのは上質なオリーブオイル、6日めは青いパッケージ、イタリア売上げNo.1のパスタ。
そして1週間めの今日は、なんと青い葱が入っていた。
「おいおい、葱は勘弁してくれよ、臭いが…嫌がらせなのか?大体、これをどうしろっていうんだよ」
ちょっと顔をしかめて葱を取り出すと、カードが1枚、ひらりと落ちた。
お誕生日おめでとう!
最後のプレゼントは可愛いコックさん。今夜お届けに参ります。
麻衣子
ここのところ、この悪戯に気を取られて忘れてた。
今日は僕の誕生日だった!
1週間かけて届けられた悪戯や魔除けや嫌がらせの数々は、送り主である麻衣子の手によってその夜のうちに「鯖のスパゲッティーニ・アーリオ・オーリオ」となって、僕の胃袋に納められた。
もちろん味は極上で、麻衣子の悪戯も可愛いくて、最高の誕生日にはなったけど、来年は違うメニューでお願いしたい。
何故って、ロッカーの中の葱臭さが3日も取れなかったからね!


お次の方、浴衣・影踏み・カレーパン でお願いします。

0042浴衣・影踏み・カレーパン
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2012/07/26(木) 23:38:10.36
縁側に祖母、僕、妻が腰かけ、庭を眺めていた。
庭では、月明かりの下、子ども3人が影踏みをして遊んでいる。
毎年、夏休みの半分を、一人暮らしの祖母の田舎で妻と子どもたちは過ごすのだ。
「おじいちゃんがカレーパン嫌いで、あたしもずいぶん遅かったものよ、初めて
食べたのは」なんて、祖母は朴訥と話してくれる。。
「おばあちゃん、またカレーパンの話」と11歳の長女がくすくす笑った。
なんでも、シベリア抑留を体験した祖父は、ピロシキに似ていると大いに嫌ったらしい。
出征の前の晩、あの人はゲートルを外して、あたしはもんぺを脱いで。
浴衣で二人だけの壮行会をしたのよ、この縁側でね。ちょうど今くらいの季節だった。
シベリアから帰ってきたら、一人息子がもう10歳で、そりゃ驚いてたわ。
祖母は少女の顔になっていた。
父は母親似だが、僕はびっくりするくらい祖父に似ている。
だから僕が訪ねると、祖父を思い出すのか、いきおい、祖父の話が多くなる。
子どもたちも、理解できないながらも祖母の話には熱心に耳を傾ける。
いつも、祖母の家から戻ると、家族はみな、気持ちが澄んだような心持になる。
森から運ばれる新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込みながら、僕も夏休みが
ほしいなあと毎年、思う。

次「チーズケーキ」「スピーカー」「セブンスター」
0043チーズケーキ スピーカー セブンスター
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2012/07/28(土) 10:58:38.07
「イシダさん!」
背後から声を掛けられた。
雑踏の中、それが久し振りに聞く旧姓にも関わらず振り向いてしまったのは、その特徴のある声のせいだった。
少し嗄れた、でもよく通るハスキーボイス。
「やっぱそうだ!思い切って声かけてよかった。高校卒業して以来だから…やぱっ!十年振り!?」
ガサツで大きな声で馴れ馴れしく、噂好きのこの人は「スピーカー」と仇名され、みんなから煙たがられていた。
相変わらずガサツな印象は否めない。
十分だけ、と懇願され、喫茶店に入ると、席に着くなり、吸ってもいい?と訊くより早く煙草を取り出した。
「あ、まだそれ吸ってるんだ?」
小さな星が無数にデザインされたパッケージ。
高校のとき、彼女は一度煙草の所持で停学になっている。そのときの煙草がセブンスターだった。ああ、と彼女も思い出したようにニヤリと笑う。
「そう、ずっとこれ。」
ふーっと長く煙を吐きながら言う。
「医者には死にたいのか、って怒られるけどね」
どこか悪いの、と訊こうとしてやめた。

ふいに、顔を上げた彼女が、唐突に口を開く。
「高校のときさ、イシダさんとA先生のこと、みんなにバラしてごめん!」
高三のとき、私と新卒のA教諭は付き合っていた。噂はまたたく間に広がり、私はまもなく卒業したが、彼は遠くに飛ばされた。
彼女に対して恨みがないと言えば嘘になる。でももう、遥か彼方の出来事だ。
「私、今はイシダじゃないのよ。Aっていうの」
左手の結婚指輪を見せた。
「Aって、じゃあ…」
そう、あれから私たちはいろいろあったけれど結婚した。親の反対や職場からの非難や、誰にも祝福されぬ結婚だったけれど、今は平凡に、幸せに暮らしている。
「よかった…ずっと気になってた。私が二人を別れさせちゃった、って。そうか、よかった!ああ、これで思い残すことはないや」

約束の十分をとうに過ぎての帰り際、彼女はテイクアウトのチーズケーキを二個買って、「結婚祝い!」と私に押し付けると、なんだかほんとに晴れやかな顔をして帰って行った。
「今は三人家族だって、言いそびれたな」
二個入りのケーキの箱を見てつぶやく。
まぁいい。そんな機会はきっとまたやってくるだろう。そして今度会ったら、ケンカしてでも煙草をやめさせなくちゃ、そんなことを考えながら、私も帰路を急いだ。

0045「扇風機」「マヨネーズ」「ビーチサンダル」
垢版 |
2012/07/29(日) 18:37:02.13
時計は午前三時すぎを表示していたが、それを確認する者はいない。
その家に住む家族は皆、夢の中にいる。
エアコンのない二階の寝室の扇風機が、首を振りながら人間達に微風を送っていた。
扇風機はいつもはタイマーで止まるはずだったが、その晩はタイマーが掛けられず夜通し回り続けた。
それが原因かどうかは分からないが、扇風機は突然異音を発した。
すぐに火が付き、燃えはじめた。
最近は火災報知器の設置が義務づけられている。
火災報知器は僅かな煙に反応してアラームで一家を叩き起こした。
「火事だ!」主の男が叫んだ。
「あら、たいへん!」
主の妻は、反射的に冷蔵庫からマヨネーズを取り出し、燃え盛る扇風機に投げつけた。
だが効果は無い。それはフライパン火災のときの消火手段だ。
「もう消さなくていい。子供を連れて外に逃げろ!」
夫と妻、そして五歳になる娘は、命からがら、火が回り始めた家屋から逃げ出した。
「みんな大丈夫か?」主が家族を確認した。
妻は寝間着に裸足だった。
全裸じゃなくて良かった。
娘はなぜかビーチサンダルを履いて浮き輪を持っていた。
「パパ、こんな早くに海に行くの?」
まだ寝ぼけているようだ。
男は娘の格好に一瞬吹きそうになったが、すぐに気を取り直した。
「そうだ。こうしちゃいられない。延焼でもしたら地獄だ」
男は慌てて持ってきた携帯で消防署に連絡をした。
少々古い家屋だったためか、火の回りが早く、家は全焼してしまった。
火は怖い。本当に何もかも焼き尽くす。
この話のオチも、火に焼かれて消失してしまったようだ。

次「西瓜」「宅配便」「坊主」
0046「西瓜」「宅配便」「坊主」
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2012/07/31(火) 16:54:10.65
「西瓜が食べたいな」
「Suica? 硬くて食べられないよ」
「Suicaじゃなくて、西瓜。……もう20年も前に見なくなっちゃったもんな。今の子供は、西瓜なんて見たことないだろ」
 西瓜の写真を電子ペーパーに表示させて、小学生の姪に見せた。
「なに、このグロきもボール」
「中は赤くて、うまいんだぞ」
 あの切り身の画像を見ると、姪は途端に興味を持ったようだ。
「食べてみたい!」
 残念なことに、西瓜は、あの20年前の異常気象により、絶滅してしまった。残った種を植えても育たず、
自らの分身のような形を地球が拒んだのか、坊主が厄払いをしても、もうあの西瓜が大地に横たわることはなかった。

……さらに20年が過ぎた。
「宅急便です」
 クロネコヤ○トの宅急便は、老舗の企業として君臨している。
 私に言わせれば、レーザー固形化技術で、その都度、空間に経路を作り、全物流のパイプライン化を行えば、
人力による物流作業など必要なくなるのに、と思うのだが、老舗企業が政府に金を流して、技術の発展を
阻害しているのかもしれない。
「ありがとう」
 大きな箱を受け取り、開けてみる。
 もう40年前に見たきりの大きな西瓜が4つ並んでいる。
 西瓜に興味を持った姪が、絶対復活させてみせると研究者になり、試作、量産化に成功し、
ついに市場に出回る今日、私にも送ってきたのだ。
「また会えたね」
 切り身を手に持ち、赤い実を口に含んだ。
「味は、もう少し研究が必要かな」
 人間の情熱というのも、なかなかいいものだ。

次は「マネー」「スーパースター」「挫折」
0047「マネー」「スーパースター」「挫折」
垢版 |
2012/08/03(金) 17:47:50.20
「ははは、死ねやコラ!」
「きゃー!」
 と、一人の少女が魔女に突き飛ばされた。
「まかどは、下がって!」
 銃を装備したもう一人の少女が魔女の前に立つ。
「あなたは、魔法少女界のスーパースターなの。ここで失うわけには行かないわ!」
「ほらむちゃん!」
 ほらむが魔女に向けて銃を放つが効かない。
 魔女が腕を一振りすると、ほらむは跳ね飛ばされて壁にたたきつけられた。
「こんなのって、ないよ!」
「彼女は何度も時間遡行して、君を救えなかった挫折感から、ここまで強くなったんだ」
「0べえ……」
「でも、元々の素質は君の方が上だ。君なら彼女を救える」
「私……」
「僕と契約して魔法少女になってよ! そしたら、どんなことでも願いを一つ叶えてあげる」
「私……、アイ ウォント マネー」
「え?」
「今のは間違い! ちょっと英語を話してみたかっただけ」
「まかど……。時間を無駄にしている場合じゃないと思うんだ」
 0べえは、壁に叩きつけられて、うつ伏せに倒れているほらむの方を一瞥した。
「私を、ほらむちゃんが魔法少女になる前の世界に戻して。私がほらむちゃんを魔法少女にはさせない!」
「それでいいのかい?」
 まかどは強くうなずいた。
「わかった」
 0べえが返事をすると、一瞬後には、まかどの姿は世界から消えていた。
「また、同じことが繰り返されるのかな……。営業成績上がらなくて、上司に叱られちゃうよ」
 0べえが呟いた。

次「時間遡行」「世界線」「ミス」
0048名無し物書き@推敲中?
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2012/08/04(土) 19:04:37.50
ある日、未来人がウチに来た。
 肌にピッタリと張り付く下着を着て、サイケデリックな色の未来道具を見せられた俺は、何故かそいつを家にあげてしまっていた。
 そいつは自分を未来人と名乗り、時間遡行の設定でミスをしてしまい、元の時間に帰るための時間機械が存在しない時代に飛んでしまったと話した。
 世界線は正しかっただのどうのとわけのわからない事を言うそいつによると、未来道具の効果で俺は軽い洗脳を受け、そいつを拒絶することが出来なくされているらしい。
 なるほど、そんな事を言われてもさっぱり追い返す気になれない。どうやら本当らしい。
仕方なく(本当はむしろ率先してだが、道具のせいだと思うと素直に認めたくない)そいつを
家に下宿させる事になり、数週間を過ごした。
そいつによると時間機械が使えるようになるまでにそう対した期間はかからないらしく、間違えた設定はほんのわずか、約一ヶ月くらいだと言っていた。
そんな短い間に人類の歴史を揺るがすような大発明が成されると思うと、大人気ないが少しばかりワクワクした。
 それを待つ間、そいつと俺はそれなりに楽しく過ごし、時にはそいつの未来道具で助けられたりもした。
何だかこれでは子供の頃に見たポケットの付いた青狸の話の様だなと思いながら。
 とうとう最後の夜がやってきた。そいつが明日には時間機械を使えるようになる、今まで色々ありがとうなどと柄にもなく殊勝な事を言い出すので、
恥ずかしい事に涙腺を刺激されてしまった。俺もこの単調な毎日に色が付いた様で楽しかった、こちらこそありがとうなんて馬鹿な事を言って、
泣きながら一緒に酒を飲んだ。その日の事はたぶん一生忘れないだろう。
 次の日の朝、雲一つない快晴の空を見上げた俺は絶句した。そこには数百の巨大な金属製の円盤が浮かんでいて、光線を街に落として爆音を轟かせたり、
街の人や車を吸い上げたりしていた。
 屈託のない笑顔を浮かべる未来人にどういうことなんだと詰問すると、何食わぬ顔でそいつはこう言った。

「今日中に私たちの種族によってこの星は占領されるでしょう。短い付き合いでしたが、あなたにはとても感謝しています。
きっと苦しむことなく消えられるように願っていますよ」

次「夢」「世界」「シャワー」でどうぞ
0049「夢」「世界」「シャワー」
垢版 |
2012/08/05(日) 13:06:12.89
 男は病室で夢を見ていた。その内容は、外からは分かるはずもない。
 男はとにかく、生命維持装置で縛られた巨躯をベッドに横たえさせながら、なにやらニヤニヤと不謹慎な笑いを浮かべているのだった。
「一体、彼は何の夢を見ているのでしょうね」
 担当の看護師のジェニーが、男の寝顔を見ながら、もう一人の看護師に訊ねた。
「さあね」
 もう一人はトムという男性の看護師だった。
「人の夢に侵入できる機械でもなければ分からないよ。まあ奴のことだ。おおかた更なる犠牲者を屠る夢でも見ているんだろうね」
「トム、彼はもし意識を回復したら死刑になるのかしら」
「免れないだろうね。ここ一ヶ月で十三人も人を殺している怪物だよ。今、生命維持装置を外しても僕らは罪にならないくらいだよ」
「世界は矛盾に満ちているわ。そんな殺人鬼の看護をしなければならないなんて。死刑にするなら助けなければいいのに」
「そんなことより、ジェニー、こんな仕事は適当にすませて、さ……」
 トムは、ベッドメイクをしているジェニーの後ろから、彼女の肉感的な尻を触った。
 二人はコンビで仕事をするうちに、勤務中でも構わずセックスに耽る間柄になっていた。
「焦らないで。後で、シャワールームでしましょう」
 眠れる犯罪者の病室で一通りの仕事を終えると、若い看護師たちは、いそいそと備え付けのシャワールームへと姿を消した。
 強めのシャワーのノイズが病室に伝わったが、性に歓喜する密室の男女の叫び声を完全に消すことはできなかった。
 もし二人が『13日の金曜日』という映画を見ていれば、こんな愚行はしなかったはずだ。
 セックスに火花を散らす若いエネルギーが、静かなる殺人鬼の脳を揺さぶった。
 水平に近かった脳波計の波形が激しく活性化し、鬼神めいた眼が、かっと突然に見開かれた。
「ウ、ガ……」
 夢から覚めた執行人が、無用な生命維持装置を外し、秘密のシャワールームまで歩くのに、さほどの時間は要しなかった。

次「旅行者」「大腿骨」「カーナビ」
0050「旅行者」「大腿骨」「カーナビ」
垢版 |
2012/08/05(日) 15:01:23.36
情報を取り引きして生計を立てている砂漠の村があるというので、俺は取材に向かった。驚くべきことに、村の長老は日本語を上手に話すことができた。
過去に日本の落語家が迷い込み、砂漠を抜ける道を教えることと引き換えに彼の持ちネタをすべて伝授してもらったのだという。日本語も落語も大層気に入っているようだ。
話を聞いてみると取り引きする情報とは砂漠を抜ける方法についてらしい。落語家以外にもさまざまな旅行者が迷い込み、持ち物と引き換えに砂漠を出て行く。それは俺を満足させる内容ではなかった。星で方角を知る頃ならともかく今は21世紀だ。
長老が取り引きをもちかけてきたが、当然俺は断った。カーナビという文明の利器があれば道に迷うはずがない。長老は困った顔で骨細工を俺にくれた。動物の大腿骨に彫刻を施したものだ。
手土産はこれだけか、と取材の成果に不満を抱きながら次の目的地に向かったが、どういうわけか一向に到着しない。
そのうちにガソリンが尽き、立ち往生することになった。遭難。カーナビを信じきっていたので食料や水の余分はほとんどない。
絶望しているとラクダに乗った男がやって来て「今回だけですよ。それと骨は捨てなさい」とガソリンを提供してくれた。ラクダを放ち同乗したその男と車を走らせると、ほどなくして砂漠を抜けた。
男は長老の息子だった。砂漠を貢物なしで渡ろうとすると守り神が機嫌を損ねる。誰も彼もを砂漠に閉じ込められても困るので不埒者に骨細工を持たせてこの人に祟るようにと骨を持たせるのだという。
どうして骨なのか、と聞いた俺は男の答えに絶句した。
「骨には皮がない。つまり、か(買)わない、砂漠を出る方法がいらない、という意味ですよ」
それ以来、俺は落語を聞かない。

次「マジック」「家庭菜園」「親切」
0051「マジック」「家庭菜園」「親切」
垢版 |
2012/08/05(日) 16:28:23.61
「なんじゃあ、こりゃあ?!」
 その素っ頓狂な叫びはコンビニのトイレのほうで発せられた。
 ジーパン刑事の死に際の台詞をそのまま口走ったのは、当の「太陽にほえろ!」など見たことも聞いたこともない世代の乙女、西宮遙花である。
 彼女は手洗いの鏡に映る自分の顔面に驚愕したのだった。
 まるで昔の映画「魔界転生」のクライマックスで千葉真一扮する柳生十兵衛がしたのと同じように、遙花のきれいな顔面一面にびっしりとマジックインキのようなもので文字が書き込まれてあるのだった。
 コンビニの他の客が店内に入った遙花を思わず凝視したのは、決して彼女が美人だからというわけではなかったのだ。
 遙花は何も買わずにコンビニから撤収した。訳の分からぬ文字の下の顔は真っ赤だった。
「じじい、てめえ!」
 家に帰るなり、遙花は、ほぼ犯人に違いない彼女の祖父の胸ぐらをぐいと掴んだ。
「なんじゃな、いきなりDVとは世も末じゃのう」
「黙れ。私の顔、この落書き、これ見覚えあるだろ。何が書いてあるのかは知らんが、この筆跡には見覚えがある。てめえだろ、この悪戯じじいが!」
「ああそれか。それは、お前の成績が上がるように、お前が昼寝をしている間にお呪いをかけてやったんじゃよ」
「ざけんなよ。何がマジナイだ。おかげで私は知らずに外出しちゃったじゃねーかよ。町のとんだ恥さらしだよまったく!」
 遙花は悔しくて恥ずかしくて涙ぐみはじめた。
「人が親切でしてやったのに、この仕打ちはないんじゃないかな。さあ、手を離してくれ」
「ああ、離してやるさ。てめえはな、孫にちょっかいなんかかけてないで、老人らしく家庭菜園でもしてりゃいいんだ。ほらよ!」
 遙花は理性が途切れたのか、学校の道場でしかかけたことのない柔道の背負い投げを、ひ弱な祖父にかけてしまった。
 祖父は叫ぶ言葉もなく、ひゅーと空を舞い、庭の畑に頭から突っ込んだ。
 頭を土中に埋めて逆さまに立つ祖父の姿は、まるで角川映画「犬神家の一族」の犬神スケキヨの死に様のようであった。

次「浴衣」「迷い犬」「幽霊」
0052「浴衣」「迷い犬」「幽霊」
垢版 |
2012/08/08(水) 03:04:23.86
「あれ、迷い犬かな」と僕は犬のいる辺りを指差した。
花火大会会場へ向かう、混雑した歩道に1頭の白い犬がいた。
だが僕の連れは誰も犬を見つけられないらしい。
様子を見ようと僕は混雑を縫って犬の目の前まで近づいた。犬は逃げない。
首輪につけられた名札を手に取ると、「タカハシシロ」とあり、連絡先も書かれていた。
僕はケータイを取り出し、名札に記載の番号へ発信した。
「シロは3年前に事故で亡くなりました。こんないたずら、よしてください」
電話の向こうの冷たい声。
「そうなの?シロ。君は幽霊なの?」
浴衣姿の男女が、かがみこんで地面へ話しかける僕にうさんくさそうな、
または哀れむような、もしくは馬鹿にしたような視線を流していく。
その日、僕は一人暮らしのアパートへシロを連れて帰った。
泣かない、食べない世話のかからないシロ。
どうやったらちゃんとお前を天国に送れるんだろうな。
僕は、君が悲しい。

次「布団」「ビール」「アクション映画」
0053「布団」「ビール」「アクション映画」
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2012/08/08(水) 23:25:55.01
屋上に到着した俺はターゲットにブツを渡すべく行動を開始した。
危険な任務だ。早速毒針使いの女がうろうろしている。干している布団伝いに
見つからないよう移動し、非常階段を足音を立てないよう慎重に下りていく。
2階まで来たがドアに鍵がかかっていて開かない。畜生、ピッキングの訓練をしていれば。
こうなったら作戦を全面変更するしかない。1階で敷地を回りこんで建物の正面に行き、
突入を決行する。毒針使いの仲間や奴らと一緒に甘い汁を吸っているに違いない年寄りどもが
驚いて俺を見るが、本気を出した俺の速度について来れる者はいない。
2階の廊下を曲がろうとして、カートを押している女にぶつかりそうになる。まずい、
運んでいるのはマシンガンか?咄嗟に側転をして身をかわす。アクション映画の主人公なら
手を地面につけずに宙返りできるだろうが、俺には無理だ。
待ち合わせの場所に着く。が、ターゲットは毒針使いの女に今にも刺されそうになっている!
「おお、正夫、ちょっと待っててな。パパ点滴するところだから」
「パパのお見舞い?一人で来たの?偉いわねえ」
毒針使いの女が余裕の笑みでこちらを見る。
俺は黙って、頼まれたブツをターゲットの横たわるベッドのそばに置いた。
「まあ。谷本さん、ビールなんて持ってこさせちゃダメですよ」
毒針使いの女は針を刺すとブツを取り上げてしまった。
任務失敗か。渇いた喉を潤そうと、缶ジュースを開ける。
プシューッ!勢いよく噴射したジュースが俺を直撃した。どうやら敵の罠だったようだ。

次「縦笛」「読書」「みりん」
0054「縦笛」「読書」「みりん」
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2012/08/24(金) 14:04:03.52
「喧嘩売ってんの?」
 台所に立つ女房の背中が急に冷えたように感じられ、俺は読書の手をとめた。
「だから。小学生のころの話だってえの。あのころ、しょっちゅうおまえと喧嘩ばかりしてたろ?」
 結婚して幾分かマシになったものの、昔からこいつは気が短いうえに手が早くていけない。
「ーーああ。そうだねえ……」
 女房は振り返ると、床に伏せられた本の背表紙をどこか遠い目で見つめた。
 そこには東野圭吾の『あの頃ぼくらはアホでした』というタイトルが打たれている。
 ふと蝉の鳴き声がした。空き地を走りまっていたあの頃から、かれこれもう二十年にもなるだろうか。
 女房は、手慣れた手つきで鍋にみりんを継ぎ足し、軽くかき回し、だし汁をとった小皿を口元へと運ぼうとした。
「俺な。おまえの縦笛舐めたことあるぞ」
「ぶ。な、なにさ。突然!」
 女房は手の甲で濡れた口元を拭った。そして何事も無かったかのように鍋をかき回して誤魔化している。
「ん。そんなに気持ち悪かったか?」
「そんなことない。そんなことないよ!……あたしね。あたしもあんたの、やったことあるから!」
「マジか」
 衝撃の告白。少なくとも俺にとってはそうだ。
「マジ! マジなのよ!」
 おたまをもったまま俺の隣にしゃがみ、小肩をぶつけてきた。
 時間が巻き戻るのを感じる。はじめてお互いを異性として意識しはじめたころのように、純情で不器用でかつ甘酸っぱい。
 だが俺にはそういうのはどうにも照れくさくて苦手だ。
「よおし。おめには俺のこの縦笛を舐めさせてやろう」
 容赦なく女房のもっていたおたまが振り下ろされ、脳天から火花が散り、浮かせかけた腰ごと撃沈した。
 次のお題は「背中」「台所」「マンホール」
0055「背中」「台所」「マンホール」
垢版 |
2012/08/25(土) 01:00:29.95

 体調を崩し家で寝ていて暇をもてあましたことは誰もが経験したことがあると思う。
かく言う俺もある程度回復してきた暇をTVで紛らわせていた。
似たような番組が多く何でもよかったが、人類の歴史で最初に地球の重力を振り切ったのがマンホールのふたという話に興味が引かれ、都市伝説の番組で手を止めた。

 正直ただ馬鹿騒ぎしているだけで内容の薄い番組にしか感じなかったが、台所やお風呂のような水場でだるまさんが転んだとはいってはいけない……という話はなんとなく嫌な気分になった。
 昔から、こういう話を聞くと気になって仕方がなく、かなり意識してしまうのだ。
放送部に居たとき、部長に「救急車を霊柩車と間違えるなよ?」という冗談は意識に入り込み結局間違えてしまったことがあった。

 TVをみながらうとうと眠ってしまい、TVのことは忘れていた……忘れていたはずなのに、おなかが減って台所に向かうと、まるでそれが毎日の日課のごとく自然に「だるまさんが転んだ」とつぶやいてしまった……つぶやいてからTVを思い出した。
都市伝説が事実なら今俺の後ろには青白い顔の女が立っているらしい、そう思った瞬間背中で気配を感じた。誰かいる!間違いない、床のきしみ音すら聞こえる。
 恐る恐る、後ろを振り向こうとしたが気持ちがそれを止め振り向けない。気配はだんだん近づいてくる……しかし気配は動かなくなった。

そして

「起きてていいの?何か食べる?」
そこには普段とは違う顔(すっぴんなだけだが)の母が立っていた。
これはこれで、怖いといえば怖いが、それ以上に俺は脱力してしまった。
「ううん、寝るわ」それだけ言って力なく部屋に戻った。

次は「空」「髪の毛」「子供」でおねがいします
0056名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2012/08/25(土) 09:29:08.46
15行ルールはなくなったのか
0057「空」「髪の毛」「子供」
垢版 |
2012/08/27(月) 23:38:14.96
それはあるいは夢なのかもしれない。あるいは幼いころTVで見た
ドラマの一部なのかもしれない。その記憶がどこからやって来たのか
私には分からない。こういうのって、誰にでもあるものだろうか?
それとも珍しいことなのだろうか? それさえも分からないが、その記憶は
真夏の入道雲のようにくっきりとした輪郭を持って浮かんでいるのが見える。

 たぶん小学生に上がる前だったのだと思う。私の父の田舎は東京の
八王子市の山奥にあって、およそ東京という言葉からイメージするものとは
逆の風景が広がっている場所だった。夏休みでなくても車で、電車で良く
おじいちゃんおばあちゃんの元へ遊びに行ったものだ。近くに川があって
冷たい水の中で泳いだ。釣りをしていたオジサンに怒られた。仕返しに
オジサンがトイレに行ってる隙にビクに入っていた魚をみんな逃がした。
今思えば何でそんなことをしたのか分からない。きっとあーちゃんがいたからだと思う。
あーちゃんは天然パーマで黒人が長髪にしたようなおかしな髪の毛をしていた。
私はあーちゃんが傷つくと思ってそのことに関して何も言わなかったけど
あーちゃんは本当は聞いてほしかったのだと思う。なぜならそれが友達の証だと
きっと僕らは考えていたのだと思う。

「翔ちゃん、ほらバイブレーター」
あーちゃんが摘み上げているプラスチックのホットドックのようなそれは
見た瞬間、子供が触ってはいけないものだと思った。
「ふーん」
私は何気なく言った。あーちゃんのそういうところが私は怖かった。
どこかでセミの声がした。私たちは川原に横になって背中を川に浸した。
二人とも無言で空を見つめていた。
あーちゃんは苛められていたのだ。
同じ学校でない私だけがあーちゃんを助けることが出来たのかもしれない。
それなのに助けもしなかったし、髪のことも聞いてあげなかった。

あーちゃんは今何をしているのだろう? 立派な会社で性玩具を開発していると
私はうれしい。
0059「大人」「憂鬱」「午後」
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2012/09/01(土) 02:53:08.39
「憂鬱だわぁ」
 呟きながら、手元の便箋に漢字で「憂鬱」と書いてみる。
 ついでに花瓶に挿してあった白百合を手に取って、その香りを深く吸い、吐いてみる。
「……ねえちゃん、なにしてんの?」
 無粋な声。窓際に座る私のことを、愚弟が怪訝そうな表情で見つめている。
「ふ……大人にはね、ふいにアンニュイな気分になる午後があるものなのよ」
「へぇー、すげぇ」
 弟はこの空気が理解できないらしい、気のない相づちを打ってきた。
 私は彼を憐れみつつ、同時に自分の感性が家族にすら理解されないことにため息をついた。
 と――そこへ闖入者。どたどたどたと入って来て私の手から百合の花を取り上げると、
「あーあー、また一輪挿し抜いちゃってー、水が垂れてるじゃない! それに便箋!
あなたには自由帳があるでしょー!? もう……『憂鬱』? まだ小学一年生なのに
こんな漢字ばっかり覚えて。早く宿題なさい。ため息なんてつかないで、ほーら」
 おかあさんはそう言って、私と弟をぽんぽんとリビングから追い立てた。

次は「傷」「指」「水」でお願いします。
0060「傷」「指」「水」
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2012/09/02(日) 13:41:51.23
私は静かに指の傷を舐める。
彼は静かにそれを見守る。
「なぜ、水で洗い流さないのか?」彼は聞く。
「あなたとの思い出まで洗い流しそうで怖いから。」私は泣きながら答える。
彼は「あんなに思い切りはずさなくても・・・。」
私は床に落ちている婚約指輪を残念そうに眺めた。

次、「鶴」「亀」「めだか」
0061「鶴」「亀」「めだか」
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2012/09/02(日) 14:46:19.02
見舞いに来てくれた友達から千羽鶴を贈られた。
聞けばサークルの皆で折ったのだという。正直驚きだ。
私はサークルに籍こそ置いているが、顔を出すこともほとんどなくアルバイトに精を出していた。
大学生活に馴染めなかったことの裏返し。丸亀の実家に帰ろうと何度思ったことか。
それが自分でも思いもよらぬ形で、周囲の人々に想われていたのだ。
「ありがとう」
涙声になってはいないか気にしながら私は言った。
「ところで、それは?」
「大丈夫。塩分控えめだから」
「そうじゃなくて、どうして入院中にうどんなんて食べてるの?香川県の人ってみんなそうなの?」
うどんも食べられないようなら私は瀕死の重態ではないか。
私は、うどんのよさをもっと知ってもらわないと、と思った。

次「時計」「裁縫」「釣り」
0062「時計」「裁縫」「釣り」
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2012/09/17(月) 22:26:37.05
『時計釣り』とは、読んで字の如く、時計を釣ってその釣果を競うオモシロつまらない遊びの総称である。
子ども達が五人集まると、必ずと言って良い程にその遊びは始まった。皆、暇なのである。
かくいう私もちょいとだけ、その『時計釣り』とやらに混ぜて貰うことにした。
古民家の庭先にわらわら集まる子ども達の姿は、まるで雨後の竹の子の様である。子ども達は、まず、それぞれのポケットから細い「糸」を出した。
何処の家庭にもある、裁縫用の糸である。とりどりの色が、目にも鮮やかに愛らしい。
赤と青と緑と黄色。
白と桃と橙はイマイチ人気がないらしく、訊けば、それらは釣果が好すぎて禁色との事。
英雄は矢張、色を好むものらしい。その糸をくるくると小指に巻いて、最後にかるく蝶々結びに纏めると準備はほぼ、完了である。
それから先は、ひたすら糸を垂らして待つのである。
円陣の真中で散らされた時計には針がない。釣果の判定はどうするのかと尋ねると、時計に針が戻って来るから、その示す時間の大きさで釣果を競い合うのだ、と隣の少年が教えてくれた。
成程。「時を計る針を釣る」から『時計釣り』とは、中々洒落が利いている。
私も早速、子ども達に倣って時計を外し、地面へそっと置いてみる。時計を見ると針は盤面から消えることなく、カチリカチリと秒針を刻んでいた。
――不良品だね。
少年がさも可笑しそうに言うので、釣られて私も、心底残念と笑ってしまった。

次、「空」「花」「祈り」
0063「空」「花」「祈り」
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2012/09/20(木) 17:35:33.22
いつ、あいつとあの空に願い事したんだっけ。


・・・
「ほら、はやくおきなさい!」
いつもどおりの母ちゃんのうるさい声に起こされた俺は
いつもどおりあいつと学校へ向かった。

「おう、おはよう。」
「うん、おはよう。」
いつもどおりの景色に包まれて
いつもどおりの会話をする。
はあ、なかなか暇だなぁ。
そう思いながら無言で歩く俺とあいつは
いつもどおりの時間に学校についた。
教室に入り、友人達と話し、時間は過ぎ、
家に帰る頃になったらあいつが
ドアの前に立っている。

毎日これの繰り返しだ。


・・・

「なあ、なんで死んだんだよ。まだ願い事叶ってないだろ。」
静かに頬をつたる滴。
あれっ、なんで俺泣いてんだ。
あんなにうざったいとおもってたのに。
0064「空」「花」「祈り」
垢版 |
2012/09/20(木) 17:56:56.24
・・・
その日は少し太陽に雲がかかっていた。

いつもどおり母ちゃんに起こされ、
あいつと学校に行った。
その途中だった。
あいつがいきなり
「あそこの神社行ってみたいんだけど。」
と言った。
「まあ、いいけど。」
俺は少し驚いた。自分からあまり提案をしないあいつが
あんなさびれた神社にいきなり行きたいと言ったことに。
「じゃあまた帰りな。」
「うん。」
そして、
俺たちはそれぞれの教室へと向かった。

なぜあいつはあそこに行きたいのか。
など考えながら
いつもどおり友人達と話していた。
学校が終わり、ドアで待っているあいつと
いつもどおり学校を出る。
そして、お互い無言で神社へと向かう。
なぜか、あいつは少しにこにこしているようだ。
さっぱりわからない。
前はわかってたはずなんだけどなぁ。
0065「空」「花」「祈り」
垢版 |
2012/09/20(木) 18:13:05.76
・・・
あれっ。
いつからあいつのこと、うざったいとおもいはじめたんだろうか。
小学から一緒だったのに。
たしか、中学までは休日も二人で遊んでいたはずだ。
高校に入って俺に新しい友達ができた時からか。
休日にまで遊ぼうと言ってくるあいつをうざったいとおもいはじめたのは。

・・・

「はあ、やっとついたな。」
「うん、ごめんね。」
ん?
なんか見覚えがある気がするのだが。気のせいか。

あいつは期待と不安を混ぜたような表情を見せている。
「ねえ、ここ、おぼえてるかな。」
俺は冷たく言った。
「いや。」
「だよね・・・。」
こんなに悲しそうな顔は久しぶりにみた。
「なにかあったっけ。」
「うん。」
そう言ったっきりあいつは少し黙った。
0066「空」「花」「祈り」
垢版 |
2012/09/20(木) 18:36:56.51
少し寒くなってきたころ、あいつは静かに話し始めた。
「・・・小学校の頃にさ、一緒にここにきたんだよ。願い事をしに。あの願い事もおぼえてないかな。」
俺は静かに頷いた。
「そっか、いや、いいんだよ。結構前のことだしね。でも、確かに言ったんだよ。
僕が『僕達が病気や怪我をしたら助けてください。』って言ったら、君は僕にこう言ったんだ。
『お前は俺が守るから大丈夫だ。』ってさ。」
ああ、確かに言ったかもしれない。しかし、なぜ今更そんなことを。
顔に出ていたのかもしれない。あいつは、少し微笑みながらまた話し始めた。
「あのさ、僕病気になっちゃったみたいなんだよね。病院の先生から悪性のがんって言われたんだ。結構前にね。」
俺はなんていったらいいのかわからなかった。
ただ、悲しかった。
「でさ、もう余命もでてるんだ。」
えっ。俺には最初、言葉の意味がよくわからなかった。
わかった時には少し怒りが湧いていた。
「・・なんで今まで黙ってたんだ、」
あいつは少し答えにくそうだった。
「・・・・。だって、言ったところでなにも変わらないでしょ。・・・それに、余計に気まずくなると思って・・・。」
俺はなにも言い返せなかった。最後の言葉が突き刺さって。
あいつはそれに気づいたのか
「余命はあと2ヶ月だよ。」
と、明るい声で言った。

0067「空」「花」「祈り」
垢版 |
2012/09/20(木) 18:50:11.33
・・・
「なあ、お前は俺のことどう思ってたんだ。」
動かないあいつに静かに語りかける。
なにも答えることのできないあいつに。

・・・

俺は何かを言わなくちゃと思い、ガキっぽくてばかみたいな言葉を口にした。
「お前は俺が守るから大丈夫だ。」
そのとき、
あいつはきれいな、すごくきれいな笑顔をみせた。
「ありがとう。」
そういうと、きれいな滴をながしはじめていた。


それが、あいつとのさいごだった。
0068「空」「花」「祈り」
垢版 |
2012/09/20(木) 18:58:43.09
・・・
あいつは家に着くと、部屋に閉じこもり自殺したらしい。
俺を恨んでいたのだろうか。
今も俺を恨んでいるのだろうか。
そうおもいながら俺は、花を添えて、祈る。
「どうか、神様。あいつを天国で守ってやってください。俺には守ることができなかったから。できないから。どうか、お願いします。」

あいつが静かに微笑んだ気がした。


0069「空」「花」「祈り」
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2012/09/20(木) 19:01:52.00
長くなってすみません。

次は、「神」「月」「虹」でお願いします。
0070「神」「月」「虹」
垢版 |
2012/09/23(日) 11:18:48.25
神社の境内に入り最初に出会った動物がその人の神使であると言いますが、この場合はどうしたらいいのでしょう。
ヘビです。
私の嫌いな・・・・・・ひいっ!い、いえいえ!
私が少々苦手な動物が道の真ん中にトグロ巻いていらっしゃいます。
しかもさっきこちらを見てから、私にあの半月のような瞳を向けっぱなしなのですが・・・・・・。
ヘビと目線を合わせたまま道の端をビクビクしながら通り抜け、何とか社に辿り着いてようやくお参りをします。
大事な大事な願いを一心不乱に頼み込み、さて帰ろうとすると、あのヘビはもうそこにいませんでした。
どこか物陰に隠れたのでしょうか。
どこからかあの目でこちらをジッと見ている気がしてキョロキョロしていると、
新たに神社にお参りに来たらしい知人に発見され、あまりの挙動不審っぷりに声をかけられました。
ヘビがー。と説明すると知人は一通り爆笑し私をからかった後に、
ヘビは空に昇って虹になるからもうあそこにいるんだよ。と、空にかかる淡い弧を指しました。
そうして、私は境内から出してもらえましたが、それ以降虹がかかる度、
あの綺麗な虹が元は蛇だと思うと何とも落ち着かなくなるのでした。


次は「キャラメル」「放課後」「矢印」
0071「キャラメル」「放課後」「矢印」
垢版 |
2012/09/25(火) 01:31:46.02
放課後の教室は案外人が減るものでは無くそう簡単に甘い空間にはならない。僕が崇拝する彼女はいつも同性の誰かしらと少し談笑をした後、連れ立って教室を出ていく。電車時刻にピッタリの四時十五分に。
帰る際、すれ違う度にかすかな期待に肩を強ばらせる僕に、勿論何かが向けられる筈も無く、彼女は颯爽と帰路を行く。僕の一方的な矢印が向き合うことなど決してない。それだけは周知している。

ゴミ箱を漁り君が捨てたキャラメルの包み紙の匂いを鼻に押しあてながら僕はセンチメンタルに胸を焦がした。


→「つま先」「ガラス製」「横恋慕」
0072「つま先」「ガラス製」「横恋慕」1/2
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2012/09/25(火) 20:21:37.91
大好きなバイト先の先輩と、大学生の姉がつきあいだしたのは、
わたしが高校2年の夏のことだった。
バイトでは「彼女の妹」として彼と仲良くおしゃべりもした。
わたしがのぞんでいたのは「彼女」の地位だったのに。
横恋慕とはわかっている。
それでもおしゃれをして楽しげにデートに行く姉が憎くて、悔しくて、
でもそんなことはおくびにも出せず、わたしは悶々として毎日を過ごした。

ある日、たまたま立ち寄った街で、妙な店を見かけた。
『占いとパワーストーン・護符の店』とかかれた看板がいかがわしい。
いかもな紫のカーテンをかき分けて店にはいると、
しわくちゃの老婆が奥の椅子にちんまりと座っていた。
「恋を終わらせるとか、そういうのはありますか?」
どうせ冷やかしで入った店だ。わたしはダメ元で聞いてみる。
「ふむ。……ないことはないが」
老婆が手招きをした。
そばに近寄ると、懐からきらきら光る何かをだして、わたしの手に握らせる。
見れば、繊細なガラス製の天使の人形だった。
「これが壊れたときに、壊した人の恋が終わる。
おまえさんのお望み通りの結果になるかは知らないがね」
代金はいらないというので、ありがたく貰って帰った。

0073「つま先」「ガラス製」「横恋慕」2/2
垢版 |
2012/09/25(火) 20:22:34.07
家に戻ると、門の前で丁度姉と彼とが話をしていた。
わたしは彼に挨拶をして、姉に「おみやげ」と言って人形を手渡した。
「まあ、きれいね」
「光を当てるともっときれいよ」
そう、と姉がいい、光に向かって足を踏みだした。
その足が、わたしの差しだしたつま先に引っかかり、もつれる。
あっと悲鳴を上げて姉が転んだ。手にした人形がぱりんと割れる。
(やった!)
わたしは小躍りしたい気持ちを抑えて、心配そうに姉の身体を気遣った。
「平気よ」
そう姉が言い、彼の腕に掴まって立ち上がった。
ふっと真剣な顔をして彼の顔を見上げた。
「話があるの」と姉が彼の正面へ向き直った。
「うん? なんだい急に」
面食らったような彼の顔を見ると、罪悪感がわき起こる。
心がきゅっと疼いた。
「あっ、じゃあ、わたし先に帰ってるね」
さすがに後味が悪すぎて、二人の仲が壊れるところは見たくなかった。
わたしがいなくなったあと、別れ話をするのだろう。
そうしたら、悲しみにうちひしがれた彼の心をわたしが慰めてあげるんだ・・・。

妹が玄関に入った後、姉が言いにくそうに口を開いた。
「この前のプロポーズの返事だけど。――今転んだときになぜかわかったの。
この気持ちは恋じゃないって。一時的な恋は終わって、愛に変わってたんだなって。
あなたなしでは生きて行けそうにないわ。だから、お受けすることにします」


「モンタージュ」「いも」「鉢植え」
0074名無し物書き@推敲中?
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2012/10/06(土) 00:07:33.22
小指の無いやくざと言うのは多いのかもしれないけど、小指が無い
警察官というのは滅多にいないと思う。私は一人しか知らない、いもさんだ。
いもさんは正義感にあふれ、真面目で、規則にうるさい人である。
警察官だから、当たり前だろう? と人は言うかもしれないが
それはそれこれはこれである。ゆえに好きな人多いが嫌いな人も多い。
「――モンタージュも知らねえのかよ」
「そんなこと、習わないっすよ。今は」
若い警官がそう言うと、いもさんは呆れたような顔をして腕を組む。

いもさんは何で指が無いんですか? と聞いたことがある。
下着泥棒という通報が入った夜、帰りのパトカーの中で。
「ああ、飼っていた犬に噛まれたんだよ」
手のひらを私に見せながら言う。嘘のような気がするが
嘘ですか? とも聞けない。きっと私は聞いてはいけないことを
聞いてしまったのだろう。
「まあな、人生いろいろだわな」
いもさんは夜の住宅街を見ながら笑っている。
人生はいろいろだ。職業柄それは良く知っている。
指の無い手がジャガイモに似ているからいもさんだと
いうことも。
そして鉢植えのひまわりを愛する男でもある。
「娘がAKBに入りたいと言ってるけど、どうしたらいいんだ?」
と私に聞く男である。

次 「秋 雨 朝」
0075「秋 雨 朝」
垢版 |
2012/10/12(金) 01:57:46.22
昨日から降り続いている雨は、私にとって目印だ。
「寂しがりで、目立ちたがりだから。もし死んで、魂が
地上へ戻ったときには、必ず雨を降らすよ」などと
冗談を言っていた姉が、事故で亡くなってもう3年。
この3年、命日の前後は必ず雨だった。

その夜、眠っていた私はふいにかすかな気配を感じて目を覚ました。
何も見えない暗闇に、確かに気配が存在していた。
なんとなく、心配して見つめられているような気がして、
「大丈夫だよ、元気にしてるよ」と答えると、気配がわずかに笑った気がした。
明け方にその気配が消えていくと、私もまた、眠りに落ちた。

父と母はすでに朝食のテーブルについていた。
「ねえ、昨日、由香が帰ってきたよ。元気にしてるって」
私がそう言うと、父も母もさして驚かず、
「あの子ったらまったく、お姉ちゃん子なんだから」
と言った。来年もまた来てくれるだろうか。我が家だけの秋の風物詩。

次 「ホットケーキ」「高尾山」「文庫本」
0076ホットケーキ、高尾山、文庫本
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2012/10/19(金) 23:19:13.05
 僕が引いたか引かなかったかの風邪で寝込んでいる間に、
僕の友達はみんな高尾山へ修行しに行ってしまった。
 来たるべき末法戦争に備えるためだった。彼らは
みんな立派な完成人として非合理を蹂躙すべく戦うのだ。
どうせみんな勇敢な戦死者としてうず高く死体を積まれるだけなのに。
 完成人へと向かう修行では、彼らは山の清らかな流れで口をすすいで
「私たちは平和のための知恵を手に入れました」と言い、
その口で頭から生のネズミを噛みちぎって朝食にする。
一日の終わりには神聖なる毒ガスを気体で3リットル、ひとりずつバケツに生成するらしい。
 あの山はみんなが思うほど、修行に適しているとは思わない。
 友だちの一人が修行から帰ってきたと聞いて、僕は彼の部屋を訪ねることにした。
 彼の部屋は本で溢れていた。彼は文庫本の山の中でほぼ骨と皮だけになっていた。
頭の骨だけが異様に大きい。なるほど、人類は不合理な進化を続けてきたらしいのだ。
 彼は飢えきっているようにしか見えなかった。
「こんなにたくさんの本をどうする気だい?」僕は見かねて言ったのだが、
彼の答えることには「読まなければならないんだ。読んで、本当に正しい形で
身に着けなければ、世界から認められることはできない」
 彼は、文庫本を読めば宙に浮かぶこともできると思っているらしい。僕は悲しかった。
「そんなこと、ホットケーキを焼くことより無意味だ」僕は言った。
「砂糖と牛乳を買ってこよう。そしたらホットケーキを食べられる」
「よしてくれ、僕にそんな余地はない」彼も悲しそうだった。
「君にはホットケーキが見えないのかい?」
 彼からの答えは無かった。どうやら僕は置いてけぼりにされたらしい。
彼の姿はすでに見えなくなってしまっていた。
これから僕はどう生活すればよいのか見当がつかない。
 彼らはすでに末法戦争に行ってしまったのだ。大勢がお互い作った毒ガスで中毒を起こすために。


書いてから言うのはなんですがこんなジャンルはアリなのでしょうか……
次「筆箱」「扉」「青空」
0077名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2012/10/29(月) 19:37:13.20

 小学校に通っていた頃、ぼくの隣の席には佐々木という女の子が座っていた。
 特に目立つこともない子で、何もなければ喋る機会もなかっただろう。そうならなかったきっかけは、佐々木の筆箱だ。クラスメートが布や
プラスチックの筆箱を使っている中、佐々木は銀色の缶の筆箱を使っていた。それがすごく大人っぽく見えたので、どこで買ったのと聞くと、
佐々木はちょっと困ったような顔をして、お菓子の空き缶だと答えた。他のが欲しいとも。
 それからぼくたちはそこそこ話すようになった。といっても、消しゴム貸してとか、宿題なんだっけとか、そんな程度だったから、
佐々木の親や兄弟のことは知らなかった。ただ相変わらず銀の筆箱はかっこよく、ぼくのひそかな憧れの的だった。
 ある夏の放課後、散々遊んだ帰りに、昇降口で偶然佐々木とかち合った。佐々木は割とすぐに下校する方だったので、それま
でタイミングが合うことはなかった。どうして残っていたんだろう、とすこし思った。
 「井坂くん」
 「なんか今日帰るの遅くない?どしたの?」
 佐々木は下駄箱から靴を出して履きながら答えた。
 「先生と話してた。あのね、井坂くん。わたし引っ越すんだ」
 ぼくは面食らった。そんな話は聞いていない。
 「え?!なんで?いつ?!」
 「わかんないけど、親が決めたの。今日の夜だって。内緒だよ」
 絶句したぼくに佐々木は銀の筆箱を渡した。顔を上げた佐々木の目は赤かった。
 「あげる」
 「佐々木」
 「…いままで仲良くしてくれて、ありがとう。」
 そして佐々木は昇降口から出て行った。ぼくは筆箱を持ったまま何も言えずに佐々木の背中を見送った。

 次の日、隣の席は空いたままだった。ぼくは佐々木のアパートを見に行って、唖然とした。
 佐々木の家の部屋には人気がなかった。玄関扉には一面に張り紙がしてあって、金返せとか、ドロボーとかそういう文句が書いてあった。窓ガラスには
ヒビが入り、ゆがんだ青空が妙にきれいに映り込んでいた。
 
 佐々木はぼくのことを忘れただろうか。
 銀の筆箱はいまでもやっぱり、かっこいいと思う。
0078
垢版 |
2012/10/29(月) 19:41:47.68
「レンタカー」「水」「無視」
0079レンタカー 水 無視
垢版 |
2012/12/10(月) 04:30:29.29
 箱舟レンタカーは老舗のレンタル水上車店で、僕は今年からそこの正社員だ。
老舗と言っても創業は東京水没と同時なので実際の歴史は40年ほど。ただし水没以前に
陸上車を扱っていた時期を含めるならばもう70年近くなる。この、水上車へと移行した
当時については、創業者の息子で箱舟レンタカー現社長である僕の友人が詳しい。
「当時はさ、全然信じられてなかったらしいぜ、東京水没なんて。インチキくさかった
し、ほかにもいっぱい似たような予言あったらしいし、みんな無視してた。ところが。」
 この話をするとき友人は、きまってここでにやりと笑う。
「おれの親父は信じた。信じて商品を全部水上車に作り替えちまった。地面がちゃんとあ
る時代にだぜ。もうすっかり狂人扱いでさ。」
 けれども彼は正しかった。箱舟レンタカーは水没後、復興に追われる東京でいち早く事
業を開始して、今ではこのあたりの水運を一手に引き受けている。
 そんな彼が息子につけた名前はやはり一風変わっていた。友人の名は能亜と書いてのあ
と読む。
「全くふざけた名前だよな。もういい年だし名乗るのが恥ずかしいよ」
 そう結ぶ友人に、でも気に入ってるんだろ?と僕は聞く。すると彼はいつも、照れくさ
そうに、でもまんざらでもないように、まあな、と答えるのだった。


次は「夕日」「飛行機」「指」
0080「夕日」「飛行機」「指」
垢版 |
2012/12/10(月) 23:49:34.25
「異常、なーしっ!」
南海の夕べ、背筋を伸ばした見張り番がさけぶ。いままさにおろした
頑強な手には、日本光学の上等の望遠鏡がにぎられている。
「そうかな、ぼくには、そろそろあやしいぞ」
つぶやいたのは少年艦長の四郎君だ。つかつかと見張り手のもとへいくと、
望遠鏡を受け取って、水平線をぐるりと見回します。
「艦長、望遠鏡で夕日をみてはいけませんよ」
「なあに、ぼくの目はとくべつあつらえなのさ」
四郎君は太陽をみつめます。するとどうだ、夕日のなかに、黒いちいさな影が、
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
「ややっ、これはいけない。しょくん、戦闘配置だ」
たちまちブザーが鳴りひびき、甲板が騒がしくなります。おとなたちが慌てるなか、
ひとり冷静なのは四郎君です。
「ふん、いくらでも、かかってくるがいいさ」
あわれな敵機はこれが四郎君の艦ともしらず、魚雷を抱いて突撃してきます。
しかし、いったん対空砲火がひらかれると、アメリカのよわい翼は、またたくまに
空中に散ってしまうのでした。
「飛行機だか、蚊だか、わかりゃしない」
そういった四郎君も、アメリカ飛行士の勇敢さだけは、すこし、わかるのでした。
「艦長、敵機は、もうおしまいのようです」
副長の報告に、四郎君はうなずきます。そして、夕日を指さし、いうのです。
「しょくん、うつくしい夕日だ。一日のゆうべにあって、太陽はもっともあかく、
つよくかがやく。日本軍人は、あの日輪のごとくあれ。死に際の手本ぞ」
副長は流石にむかついて四郎少年を海に投げ込みました。

次「片手鍋」「銀杏の葉」「最後の虫」
0081「片手鍋」「銀杏の葉」「最後の虫」
垢版 |
2012/12/12(水) 23:37:22.43
銀杏の葉が黄色い絨毯のように
敷き詰められて、
濡れた坂道は凄く滑る。凄くと言っても、氷上ほどじゃない。
姉さんと転びそうになりながら、一気に坂の下まで駆け降りた。

先に降りた姉さんが、片手鍋を構える。
そこに僕のおでこがヒットする。ひ、ひっどい。
たぶん、凄くいい銅鑼のような音が辺りに響いてたと思うよ。
目の前の青と白と赤の火花に気を取られて、僕は聴いてる余裕などなかったけどね。
そのままノックアウト。

銀杏の葉が黄色い葉っぱはふかふかのベッドだ。
今年最後の虫が、もぞもぞと僕の脳みそから孵って、
南の空へ飛んでいく。姉さんが手を振って見送っていた。
いつまでも、いつまでも。
何故、姉さんは目に涙を浮かべているのだろう。

次「宝くじ」「大掃除」「姉」でお願いします。
0082「宝くじ」「大掃除」「姉」
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2012/12/14(金) 10:35:39.40
「じゃーん!買っちゃいましたよ『宝くじ』」
大掃除に追われる年の暮れ、コソコソと抜け出していた姉が紙束片手にテンション高く帰ってきた。
「それより掃除しろよ」
「しますよぅ。仏壇に預けてからねー」
宝くじは死人の出る(または出た)家に当たる。と、信じていた姉が買ってきたのは初めての事だった。
おりんを鳴らす音と線香の香りが満ちてきて、唐突に不安にかられた。
死ぬなんて言うなよ。とか、諦めんなよ。とか、簡単に言えずに仏壇の前に座る姉を見た。
死を受け入れたから強いのか、死と戦う覚悟をしたから強いのか。その姿は凛としている。
俺の視線に気付いたのか、姉はこちらを向いてにっかと笑い、
「当たったら良いよね。その時は換金してきてね」
と、言った。
生きる為に死地に赴く戦士は、朗らかに笑うに違いない。送る俺が泣くなんて許されないと口を引き結び、それをさとられまいと言葉をくった。
「入院準備も有るんだろ?早く片付けちまえよ」
「ちぇー小姑かよ」
二階に登っていく姉を見送って、安堵する。涙は止めきれず頬に筋を描いた。

次は『ヘビ』『酒』『コタツ』で
0083「ヘビ」「酒」「コタツ」
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2012/12/15(土) 03:49:58.88
亡骸を財布に入れると金運に恵まれるというので少しは重宝している。いや、抜け殻のことだ。
しかし脱皮の度にこうも長く、太く成長されては出ていく金の方が多くなる訳で、
結局福の神と言うよりは貧乏神と言う位置に収まっている。祟れるものなら祟ってみやがれ。
単身者には不釣り合いにも程がある長方形のコタツも、ただこの一匹の為に買ったもので、仲間内で飲み会を開く分には良いのだが、
こんな陰気なペットを飼っている部屋に上がろうと思うのは野郎ばかりだ。私には部屋を男ばかりで埋める趣味はない。
訂正。少しも重宝していない。
兎角、注文が多い。腰を伸ばしたいから長いコタツにしろだの、猫舌だから酒はぬるめにしろだの。そ
そもそもお前は変温動物だろうと、言えるものならば言ってやりたい。
「おい、サキイカまだか。早く炙れよ。焦がすなよ」
「はい、ただいま」
上の台詞は蛇足と察して忘れて欲しい。私だって、この手の生き物は本当は物凄く嫌なのだ。

※都合上、「ヘビ」を「蛇」と漢字表記致しましたこと御了承願います。

次は「野菜ジュース」「麺棒」「警察官」で
0084「野菜ジュース」「麺棒」「警察官」
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2012/12/16(日) 11:10:07.52
中華料理屋の店主と主婦が揉めている、という通報で駆けつけると、店主は麺棒を振り上げ
怒鳴っている。外に飾っていたクリスマスツリーが盗まれたというのだ。
主婦は近所でも手癖が悪いと評判で、この女がやったに違いないと店主は鼻息も荒く俺に
訴えかけてくる。一方の主婦は知らん顔で紙パックの野菜ジュースを飲んでいる。
面倒なことになった、と思っていると、まわりの人だかりを押しのけるようにして一人の
少年が割って入った。
「僕は高校生名探偵。解けない事件はない」
やれやれ、またややこしい奴が。そう思っていると、少年は思いもよらぬことを口にした。
「わかったぞ!犯人は警察官のあんただ!」
俺に向かって指を突きつける少年。どういう頭の構造をしていたらそんな結論に飛びつけるのか
頭を割って確かめたくなる衝動を俺はこらえた。
「その根拠は」
「クリスマスツリーはモミの木。警察のあんたが『モミ消した!』」
自信満々に言う少年。なぜか周囲も俺に疑いの目を向ける。おい待て。そんなはずないだろう。
やめろ俺をつかむんじゃない。痛い!うわあ助けてくれ

次「お経」「豚肉」「香水」
0085「お経」「豚肉」「香水」
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2012/12/19(水) 23:03:14.45
その部屋に入ると、爽やかで、なんとも優しい匂いがほのかに香った。
すでにその部屋にいた研究員2名も、見たこともない穏やかな表情をしている。
何かやわらかい空気に包まれているような心持がする。
「揃いましたね」と先にいた2人うちの一方が口を開いた。
もう一方が、テーブルに載せられた皿に目をやり、おもむろにナイフを取り上げた。
「従来の生産方法のベーコン、よく運動させた豚のベーコン、最後に・・・」
ここにいる3人は、みな、これからここで行う試食の目的は知っていた。
「お経を聞かせて飼育した豚のベーコン。それぞれ、どれかわからないように
A、B、Cとしておく」
3人それぞれが試食後に意見をまとめたところ、
A:運動した豚の肉。やわらかさと身の締まり方のバランスが良い
B:従来の生産方法による。特に個性はない
C:とろけるような甘み、豚肉とは到底思えない甘い香り、これこそ、お経をきいたもの
実際、それが正解だった。今後の畜産界では、クラシックよりお経が流行るやもしれぬ。
「この香り、香水にできるんじゃないですか。いっそ媚薬と偽れるレベルの」
僕のほんの軽口だったが、まじめ一方の他の2人も意外にも賛意を示した。
そう、3人とも、この部屋に入った瞬間から、この香りのとりこだったのだ。
お経を聞かされ、子豚たちは何を考えたろう。悟りの境地を見ただろうか。
いな、この甘美な香りを生み出すとは、人間への復讐ではないか――

次「写真たて」「コート」「ハイソックス」
0086「写真たて」「コート」「ハイソックス」
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2012/12/23(日) 03:04:05.44
夏休みが終わって、山田が大学に来なくなった。携帯に電話しようとしたが、
奴は携帯をもっていなかった。まあ子供でもあるまいし、それで退学しても
本人の勝手だ。が、友人のひとりとして様子を見に行くことにした。
トントン。これはノックの音である。山田のボロアパートに呼び鈴はなかった。
返事がない。ドアは開いていた。おそるおそる開けて中を覗くと、なにやら
人影が動いている。部屋のなかは異様に甘ったるい匂いが充満していた。
「おーい、山田ァ」声をかけると、奥でばたばたする物音がした。と、
「あたし帰るね。じゃ」
そういって飛び出してきた女の子を見て、ぎょっとした。まず若い。大学生じゃ
ないだろう。そしてその格好だ。裸の肩にコートを引っ掛け、両足に白いハイソックスを
履いている。それ以外は……素肌だ。
女の子はこちらには目もくれず、飛ぶように外へ出て行った。俺はびっくりして、
数秒逡巡したあと、部屋の中に声をかけた。
「お、おい、いいのかあれ、捕まるぞ」
「ああ、佐藤か……大丈夫、部屋から出ると消えるんだ」
山田の説明はこうだ。この男、夏休み中についに2D−3Dコンバータを発明した。
いっけん写真たてに見えるそれは、中に好みの絵を入れてスイッチを入れると、
絵の内容を立体化してしまうのだ。
「まだ試作品でね。絵は裸のみ、服は写真たてに着せて起動する必要があるんだ」
見ると、写真たてには人形用の小さなコートが掛けられており、木製の脚には
白いハイソックスを履かせてある。
「さっきのあれ、驚いたろう。でもあの格好は実験の都合さ。僕は変態じゃないよ」
「そうかねえ。そもそもなんで写真じゃなくて絵なんだ?」
「3次元を2次元化したものを3次元にしてもしようがないだろ。お前は夢がないな」
しかしヘンだ。2次元を3次元化したにしては、さっきの少女に違和感がなかった。
「それはお前、俺もお前も2次元だからさ。最近の小説は中が2次元だったりするんだよ」
これはひどいメタ発言だ。が、言わんとすることはなんとなくわかった。
しかし、作中作が2次元でも、作中は3次元という建前ではないのか?
これは、読者への宿題としておこう……。

次「クリスマス」「マッチ売り」「消防車」
0087「クリスマス」「マッチ売り」「消防車」
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2013/01/04(金) 11:54:01.90
白い湯気が早朝の町並みに広がって溶ける。
コンビニエンスストアーから出てきた啓太の息も、煌めく空に吸い込まれていく。
今日は良い天気になりそうだ。人通りがほとんどないが、どこか温みのある
新年4日の街並みに、啓太の心は少し弾んだ。
高速バスのチケットの予約を忘れていて、人より早い帰省と戻りになった。
学生向けのアパートの多い界隈はやはりしんとしている。
木造アパートの一階。玄関のドア、新聞受けに腕を突っ込む。
約束通り鍵が入っていた。
ドアを開けると少し籠もった、アルコールと飲食物の臭いが残っていた。
窓を開けて換気する。茶を淹れるのにヤカンを火にかける。
部屋は綺麗に片付いている。律儀な奴らだ、と啓太は友人達を思う。
携帯を出してメールを打ちかけたが止める。先に玉子サンドを食べることにした。
冷蔵庫にはジャックダニエルが少し、冷凍庫にはクリスマスケーキの残りが入っていた。
苺のケーキはホール半分近く、残っている。
マッチ売りの少女らしいマジパンを外して、微妙に電子レンジする。
強烈に甘い。味もデコレーションも凝っているのに不器用な……手作りケーキと思われた。
深夜バスでしっかり眠れていない。啓太は胸焼けに任せて、うとうと眠りこけた。
夢の中で、マジパンのマッチ売りの少女が特大サイズのマッチをバトンのように
振り回していた。
けたたましいサイレンの音で目が覚める。窓の外にピカピカで真っ赤な消防車。
台所が煙い。「あっ。ヤカン!」

次は「うっかり」「宿題」「シンデレラ」でお願いします。
0088「うっかり」「宿題」「シンデレラ」
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2013/01/09(水) 23:35:31.03
高校生にとって、夏休みの最後に夜通し遊ぶ、それはちょっと悪ぶった、
大人のフリをした、でも当人たちはいたって真剣なできごと。
カラオケで盛り上がる中、ユカは「帰らなきゃ」と席から立ち上がった。
どうとでも言い訳はできそうなものを、ついうっかり、
「宿題がまだ残ってて・・・・・・」とユカはバカ正直に答えてしまった。
そろそろ時刻は深夜12時というところ。
「シンデレラかっ!」と一人が、そして起こる爆笑に見送られ、ユカはカラオケ屋を出た。
翌朝のリビング。「宿題もせずにほっつきあるける身分なの」とややヒステリックな
怒り声は母のもの。
「宿題手伝ってあげるよ、一教科5千円で」と手を差し出す長姉。
「宿題終わらなかったら罰としてこれからトイレ掃除はユカの仕事ね」と次姉。
どうにかすべての宿題を終えて始業式。
一緒にカラオケに行った友人たちから「おはよう、シンデレラ」なんてからかわれて、
恥ずかしいやら情けないやらだが、どこか秘密めいて楽しくもある、ユカである。
「おはよう、シンデレラ」とまた声をかけてきたのは、カラオケで隣の席にいた斉藤くん。
「忘れ物。ガラスの靴じゃなくて残念だけど」と差し出されたハンカチ。
野球部のエース、斉藤くん。ユカは彼からハンカチを渡されて照れくさい。
ちょっとユカがおとぎ話のお姫様になった気分を味わった、夏の思い出。

次「サクマドロップ」「美術館」「ライター」
0089「サクマドロップ」「美術館」「ライター」
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2013/01/15(火) 16:20:52.52
僕がこの美術館に隠れ住む様になって、すでに4日経っていた。
営業時間に合わせた生活も、すっかり板に着いて来たもので、開館後に客に紛れて外出し、閉館間際に客のふりをして戻り、
以前、警備員のおじさんが落としたこの倉庫の鍵を使い、そこに隠れるのだ。
何故、僕がこんな生活を始めたかというと、家に帰りたくなかったからだ。
両親を事故で失くした僕は親戚夫婦に引き取られたのだが、そこで待っていたのは辛い虐待の日々だった。
頼れる人は誰も居なかった。また僕の味方をしてくれる人も誰もいなかった。僕は一人で生きて行くしかしょうがなかったのだ。
ここで雨露を凌ぐことは出来たが、次に困ったのは食事だった。
外出の際にごみ漁りをして食料を確保するのだが、子供が昼間から学校にも行かず、ごみ漁りをしていると補導される恐れがあった。
慎重に場所や時間を選び、手に入れた今日の収穫はサクマドロップ缶一個だった。
中にたっぷりと水をそそぎ、微かに残るドロップの甘さで空腹を紛らわした。そういえば、昔見た映画に似た様なシーンがあったな。
あの映画に出てきた兄妹に比べれば、僕はまだ恵まれているのかも知れない。
拾ったライターの灯りを眺めながら、僕がぼんやりと考えているその時だった。
「誰かいるのか!?」
夜間の巡回をしている警備員のおじさんの声だった。
しまった。倉庫の隙間から洩れたライターの明かりのせいで気づかれてしまったのだ。
「なんでこんな所に……。君、事情を聞かせてくれないか?」
僕は自分のうかつさを呪った。もう終わりだ。あの家に戻され、僕は前以上に虐待されるのだろう。
全てを観念し、僕は警備員のおじさんに今までの経緯を全て話した。おじさんは泣いていた。
「こんな子供がたった一人で……。辛かったろう。もう大丈夫だからね、世の中には君みたいな事情の子を助けてくれる所があるんだ――」
僕はこの先ずっと自分は一人なんだと思っていた。でも、おじさんはそんなことないんだよと教えてくれた。
僕はもう一人じゃない。そう思えた。

次は「水色」「病院」「弁当」
0091水色、病院、弁当1/3
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2013/01/16(水) 21:50:46.46
 その日世間が水色に見えて、私は病院に入れられた。
 入院させられた病院も水色だった。壁が水色、床も水色、医者が水色、看護師が水色、
聴診器、体温計、レントゲン写真、注射器、錠剤、病室のベッド。全てがクレヨンで塗りつ
ぶしたような水色だった。
 水色の世界はまんざらでもなかった。全部が間の抜けた水色で、全部が阿呆に見える。
待合室で怒鳴るおじさんも、愚痴の多い看護師のおばさんも、バレリーナが着るレオター
ドみたいな水色だからちっとも怖くない。水色の世の中なら悩み事を抱えなくていいから、
私は極彩色の世間での暮らしに終止符を打つことにした。
 病院の水色をした医者連中は、私をまともに戻そうと躍起になったけど余計なお世話だ。
他の色を見ないで済むという意味で、私は水色を手放したくはないから。
 しばらくして、私の目と水色の脳細胞から病の原因を見つけられなかった医者たちは私
を妙な場所へと連れ出した。そこはごみ溜めみたいに汚くて、窓ガラスにはヒビが入って
いた。もちろん全部水色だけど。そこは精神病棟ということだった。馬鹿を言っちゃいけ
ない、前世紀じゃあないんだから。私はどうしようもない狂人だと思われたのだろう。
 ガタガタになったドアを開いて診察室に入ると、中には逆様に吊るされた男がいた。
「君、何しに来たの?失恋の相談かな?俺は正規の医者じゃないんだけどなあ」
 逆様のまま男が言った。白衣(水色)を着ている様子を見るとここの担当医らしい。
「違います。私は世間が水色に見える病にかかったので、この病院に居るだけです」
「なるほど、それでこんな所に来たんだねえ。そんなに凄い大失恋だったんだ」
「馬鹿言わないでください」
 男の顔がニヤニヤして気持ち悪かった。
「私はずっと病院に居たいんです。水色以外の色なんて見えなくて十分ですから」
「あっ、そう」
0092名無し物書き@推敲中?
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2013/01/16(水) 21:55:02.84
 気味の悪い医者は診察室ではどうでもいい話をした。学校の話とか、友達の話とか、医者は私に聞いたけれど、
私はひとつも答えなかった。それから痛い話をした。生爪が剥がれたり、傷口が膿んだり、濃硫酸を飲み込んだり、
蝋燭の火で炙られたりスタンガンを当てられたり。私はそんなこと怖くありませんと言った。
 そのうち本当に気味の悪い医者の腕が千切れた。
 身体から離れた腕がイモムシみたいに転がって液体がどんどん溢れてきた。さすがのイ
カレ頭も表情を歪めていたが口の端にはニヤニヤ笑いが残っていて気持ち悪い。
「これ、痛いと思うかい?」
 私は頭を振った。
 気味の悪い医者は残ったほうの手で、床に溢れた液体を指差した。
「これ、何色に見えるかな」
「……水色です」
 ほとんど嘔吐しそうになりながら私は答えた。
「本当に水色に見えるのかい」
 もうこんな所に居たくはなかった。
「それなら次で最後にしよう。また明日ここに来なさい、俺は待っているから」
 翌日私は何かに引っ張られるようにして診察室に入った。昨日片腕を無くしたはずの気味の悪い医者が五体満足で椅子に座っていた。
「おはよう。君はそろそろ退院してもいいと俺は思うよ」
「……私はまともになんかなりたくありません」
 私はやっとのことで返事ができた。昨日こいつの身体から水色の液体が吹き出すのを見てからずっと気分が悪かったのだ。
「俺だってまともじゃあないさ」
 それは、知ってた。でも私が知っている意味とは違うことを言われた気がした。
 それから、短い会話が始まった。昨日までのように短くて意味の少ない会話だったけど、昨日までと違って、この薄気味悪い男は椅子に腰かけていた。
「この積み木は何色をしている?」
「水色です」
「そうだね」
「疑わないんですか」
「この積み木は俺から見ても水色に見える。赤色の積み木と違ってね」
「本当ですか」
「さあね。とりあえずこっちの積み木は赤色だ。俺には水色に見えない」
「それも水色に見えます」
「だろうね」
0093水色、病院、弁当3/3
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2013/01/16(水) 21:58:37.17
「水は何色に見えるかい?」
「透明です」
「恋なんて?」
「したことないわ」
「ふうん」
 気味の悪い医者は笑わなかった。
 こんな質問は入院したその日に飽き飽きするほどされたのだった。今更、私が他の医者たちに見捨てられた後に蒸し返してほしくな。
いい加減やめにして欲しい。私は疲れているのだから。
「いい加減にしてくれませんか。これ以上何が訊きたいの」
「俺が君と同じ年齢だと言ったらどうする」
「馬鹿言わないで」
 今日初めて気味の悪い医者が笑ったが、ニヤニヤ笑いではなかった。
「お弁当を食べないかい。入院食は飽きてるでしょう」
 気味の悪い医者が手にしたのは、まるい弁当箱だった。
「可愛いでしょう?俺のお気に入りなの」
 私は何も言わなかった。水色の顔した変態が、水色の丸い箱を取り出しただけだから。
可愛いどころか滑稽だ。真剣味も現実味も無くて、相手にするのも馬鹿馬鹿しい。
「お弁当の中身、全部水色なんですね」
「そうさ、君の目には水色に見えるだろうね」
 私自身も水色になってしまいたかった。気味の悪い水色に。
「そう頑なになる必要は無いよ、君も食べてみたいんでしょう、俺のお弁当」
 気味の悪い医者は玉子焼きを掴んだ箸を私の顔に向けていた。正直言って勇気が必要だった。
毒々しい水色の玉子焼きを口にすると、甘い味がした。
「味には水色なんて無いからね」
「ねえ、あなたが私と同い年って、本当なの?」
「信じるのは君次第だね。それよりも玉子焼きは美味しいかい?なんでも水色にしてしまう君相手でも、
味は誤魔化しが利かないからね。俺は気合を入れて作ったんだよ」
「そうね、誤魔化しなんてできないわ」
 私は口にした物を飲み込んで言った。
「この玉子焼き、少し焦げてるよ」
 聞いたサイコ野郎は笑ったが、その顔は水色に見えなかった。
終わり。長々済みません。次は「ガム」「ねこじゃらし」「自動車」で
0094「ガム」「ねこじゃらし」「自動車」
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2013/01/18(金) 19:50:39.71
 ――『ガムを食べる猫を見つけた人はお金持ちになれるらしい』

 こんな馬鹿馬鹿しい都市伝説を真に受ける程、我が家は貧困にあえいでいた。
「ネコさん全然ガム食べに来ないね。お父さんあれボクが食べてもいい?」
 つっかえ棒をしたザルの下にエサとして置かれたガムに、涎を垂らしながら六歳になる息子がわたしに訊ねた。
わたしの事業の失敗と妻の父親の借金が重なり、来年小学生だというのにランドセルすら買い与えてやれそうにない。
「地面に落ちたものを食べるとお腹を壊しちゃうからね。やめておきなさい」
「え〜、でもお母さんは昨日落ちてたドーナツ半分こしたときそんな事いわなかったよ?」
 このままでは我が家はどこまでも落ちてしまう……。早くガムを食べる猫を見つけなければ、焦燥感に駆られているその時だった。
「アナタ!居たわ!そっちの方に逃げたから捕まえて!!」
 別の場所で罠を張っていた妻の声だった。確かに前の道をお魚ならぬ、ガムを咥えた猫が猛スピードで駆けて行った。
「逃がすかー!待てガム猫!」
 急いで追いかけ、角を曲がったわたしに自動車が突っ込んできた。激痛と共にわたしの体は宙を舞った。
「アナタ!しっかりして!!」
 一緒に猫を追っていた妻が倒れたわたしに寄り添う。手に持っているねこじゃらしがくすぐったい。
 だんだんとわたしの意識が遠退いて行くのを感じた。そうか、わたしはもうすぐ死ぬんだ。
 最後の力で妻の泣き顔を焼き付けておこう。そう思い覗いた妻の口元には微かに笑顔があった。何故だ?
思い出した、わたしには保険金がかかっていたのだ。そして最初に猫を見つけたのは妻だった。
 少し複雑な気持ちもあったが、これで妻と息子が拾い食いをする生活から抜け出せるならそれでも良いと考えながら、
わたしはそっと目を閉じたのだった。

次「愛」「タバコ」「裁判」
0095「愛」「タバコ」「裁判」
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2013/01/22(火) 05:11:45.69
 『愛とは何か?』

 最近はこんなよくある哲学的なことを考えずには居られない。
 裁判の直後である今でさえ、いや今だからこそだろうか。
 事の発端はなんだっただろうか。最初は確かタバコだった気がする。

「子供も居るのにタバコなんてやめてちょうだい!」
 妻がこう言い出したのは結婚6年目で子供が生まれて2ヶ月くらいだったか、
子が生まれてからというもの妻は育児関連の書物を読み漁り、育児教室にも通っていた。
 私も勿論子は大事なのでそのときからはタバコを吸うときはベランダで窓を閉め切ってからにした。
そのときの事はそれで解決した。
 それから12年経ったある日のこと、またもやタバコのことで妻が意見してきた。
「あなたのタバコにいったいいくら掛かってると思ってるの!? 子供ももう中学に上がってお金もたくさん
必要になるんだからそろそろタバコ止めて頂戴!!」
 コレにはもう我慢ができなかった、私は私なりの気遣いをしているというのに。
 毎日毎日家庭のために使えない部下を使えるようにしたり、下げたくも無い頭を地面に擦り付けたりと
仕事に心血注いでいるというのに一つの嗜好品すら許されないというのか。
 それからはもう売り言葉に買い言葉だった。
 毎日毎日怒声がなり、ベランダでタバコを吸うのも止めた。それに関してまた喧嘩になった。
 仕舞には子供までも巻き込んでいた。
「私の前ではタバコはご遠慮いただきたい。
タバコの煙は、主流煙より副流煙の方が有害物質が多く含まれています。
発ガン性の高いジメチルニトロソアミンは、主流煙が5.3から43ngなのに対して、副流煙では680から823ng。
キノリンの副流煙にいたっては主流煙の11倍、およそ18000ng含まれている。
つまり、実際は吸う人間よりも周りの人間の方が害は大きいんです」
 まさか子供にこんな事を言われるとは思いもよらなかった。
 そしてとうとう妻が離婚を切り出してきた。
 何もそこまで、と私は思ったが口に出すには至らなかった。
 私もまた、疲れていたし妻は言い出せば聞かない女であった。
0096「愛」「タバコ」「裁判」
垢版 |
2013/01/22(火) 05:28:42.79
 裁判所を背にしてとぼとぼと歩く、いくあては無いがとりあえずどこかで落ち着きたかった。
 しばらく歩いて公園に入る、確かここはまだ禁煙では無かったはずだ。
 それなりの値がするライターでタバコに火をつけ咥えて一息。
 ふと昔を思い出す。
 付き合い始めの、まだ妻と自分が初々しかった頃を。
「あなたのタバコを吸う姿ってとても魅力的よ」
 あの頃の妻の言葉に自分は執着していたのかもしれない。
 時が経てば人は変わる、環境も変わるのなら尚更だ。

 吸い始めてからまだ半分もしない内に火を消し携帯灰皿にすてる。
 ―愛とは何か

 タバコからはもう、苦味しか感じられなかった。



次 「間食」「信頼」「スズメバチ」
0097名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/02/02(土) 21:54:34.56
俺が九歳だった頃の夏の話だ。
田舎のじいさんと山に行った。里山でそんな大した山じゃない。
そこに大きなクスノキがあって、根元のウロにスズメバチが巣をこさえてた。
メロンくらいの大きさだ。
じいさんはまじまじと見つめながら、俺に「この巣のハチども殺すか?」と訊いた。
俺は何も答えなかったが、じいさんは「ほっとけば秋にはスイカよりでかくなりよる、
山歩く人、襲ったりするで。たまに死ぬ人もいる」と言った。
「じゃあ、殺そう」俺が言うと、じいさんは「おめえも手伝え」と鎌を渡した。
「草刈ってこい」といわれ、俺はそこらへんの尖った草を刈って、巣に戻った。
じいさんは巣の下に穴を掘っていて、俺の草はそのくぼみに押し込められた。
草はジッポライターの油をかけられて燃された。
煙が巣をいぶっている間、じいさんが持ってきたカリントウを間食がてらつまんだ。
「ハチが死んだら、どうするの?」俺は恐る恐る尋ねた。
「巣、砕いて、そこらへんに撒くわ。夜になったらタヌキやネズミが食いよるど」
「ふーん」
「それで獣は里におりてこんですむ。どっちにとってもいい話じゃ」
「でもハチはかわいそうだね」俺の言葉にじいさんは笑った。
「巣を作った場所が悪ぃな。簡単に人に見つかる所に作るけ、こうなる」
「ふーん」
九歳の俺は、その時、山の営みのようなものに触れていたんだと、今になって思う。
種を超えた信頼関係、といえば大げさだろうか。
いずれにしろ、現在の里山にそれがあるのかといえば、俺は自信が無い。

次は「賞味期限」「別離」「ガーネット」
0098「賞味期限」「別離」「ガーネット」
垢版 |
2013/02/03(日) 00:14:02.80
 彼女は気だるそうに言う。
「ワインって賞味期限無いの?」
 どうやら、かなり酔っている口調だ。
「あるわけないじゃん。何十年と寝かして飲んだりするんだから」
「…そうか」
 ガーネット色の液体に満たされたグラスを照明に翳して、そのままじっと見つめている。
「恋愛にも、賞味期限が無いといいのにね」
 グラスを持ったままぽつりと呟く彼女は、かつて愛した男との別離を
思い返しているようだった。それは、聞かされた方までもが苦しくなるような
酷く残酷な別れだった。いや、始まってさえいなかった恋かも知れない。
 ただ、お互いに強く思い合っていながらも、決して結ばれることのない恋で、
それゆえに黙って身を引くことしか出来なかったのに、その別離は酷く双方を傷付けた。
「今日はありがとう。じゃ、帰るね」
 飲み終えたグラスをテーブルに置くと、彼女は静かに立ちあがった。その後ろ姿は
まるで幽霊のように寂しげで、今にも消えそうだった。


次は「医者」「短歌」「ヴァイオリン」
0099「医者」「短歌」「ヴァイオリン」
垢版 |
2013/02/03(日) 18:15:54.65
ヴァイオリン この音違うと 言われても

医者違いだよ すまないねレディ


……コレ反則かな?


次は「陽動」「広告」「ノンカロリー」
0100「陽動」「広告」「ノンカロリー」
垢版 |
2013/02/03(日) 22:19:39.72
 今年はS国との戦争が終結してから十周年を祝う記念すべき年だ。
 街にはS国との友好関係を強調する広告が溢れお祭ムード一色といったところか。
 「くっだらねぇ……。吐き気がするぜ」
 同じテロ組織に所属するYが友好記念祭の看板にツバを吐きつぶやいた。
 「何が友好国だ。何が平和だ。全部嘘っぱちじゃねぇか!みんな騙されてやがる」
 「それを世間に告発する為に俺たちが居るんだろ、Y」
 「へへ、違いねぇや。奴らの尻尾は掴んでる。後はこの事実を公表すればS国は終わりだ」
 Yの手には大手食品メーカーが販売するノンカロリー食品のパッケージが握られていた。
 『SV』――S国で開発されたこの人工甘味料は肥満に悩む多くの人々を救い、その生活すら
一変させてしまった。脂肪の吸収を抑制し味を損なう事のない、この魔法の甘味料は清涼飲料、
菓子類に止まらず多くの食品に使用された。結果、この国の国民の肥満率は60%も減少したという。
しかし、同時に奇妙なことが起こった。国民の発ガン率が驚異的に増加したのだ。いまや国民の
二人に一人はガン患者という異常な事態に陥っていた。
 「『SV』は人々を肥満から救う救世主なんかじゃねえ。ガンを発病させる猛毒だ。ところがこの事実
を伝える情報をS国はどうにかしてことごとくシャットアウトしてやがる」
 苦悶に満ちた表情でYは言った。
 「だが、今日でもう終わりだ。TV局、首相官邸、記念祭会場同時テロで告発しS国の連中の度肝を
抜いてやるぜ。戦争は終わってなんかいなかったんだ。奴らは友好国でもなんでもない――敵だ」
 「Y」
 「どうした?……テメェ!!」
 わたしはコートから取り出した銃をYに向け発砲し射殺した。
 「お前のいうとおりさ、Y。戦争は終わってなんかいない。むしろ逆だ、形を変え我々はこの国を侵略
し続けてきたのさ、長い年月をかけてな。同時テロも失敗だ、組織に居るスパイはわたしだけではない」
 食料品だけではなく芸能界、企業、政界全てにおいてS国の工作活動は進んでいた。友好十周年を
祝福する街の喧騒にほくそ笑み、わたしはその場を後にした。

次は「ストッキング」「電話」「ラブレター」
 
 
 
0103「ストッキング」「電話」「ラブレター」
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2013/02/04(月) 10:42:23.72
 ――俺は今、選択を迫られている。


 時刻は深夜。
 自室のベッドの上に正座し、目の前にある‘‘選択肢’’と睨み合う。
 目の前にある三つのアイテム。
 ストッキング、電話、ラブレターの三つ。俺の今後の学園生活を左右する重大なアイテムだ。
「何故に―」そう、呟かずには居られなかった……。

 
 それは、今日の学園での出来事だった。
 俺、笹蒲 鉾矢は自分で言うのもなんだが、学力底辺、運動得意の健康優良児で朝はいつもギリギリで教室に滑り込み、
休み時間は友人とエロ談義に花を咲かせるというどこの学校にでもいそうなそれはそれは普通の男子学生である。
 その日の朝も遅刻ギリギリで教室に入り予定調和のお小言を頂き3時限目には弁当は空箱へクラスチェンジした。

 最初の異変起きたのは昼休みのことだ。
 第二の昼飯を買いに購買へ行こうと歩いていると前の方から異様な集団がやってきた、 学園名物『薩摩行列』だ。
 地元大地主の娘、薩摩 揚子と彼女に集められた選りすぐりの下僕達による行進である。その一糸乱れぬ動きから彼女の調教技術の高さが窺えるだろう。
 その行列はいつの間にやら俺を取り囲みその中から一人の女子、件の主こと薩摩 揚子が歩み出てきて「やれ」と声をかけると一人の下僕が出てきていきなり
俺を押さえつけ彼女の前に這い蹲らせた。
 地べたに這い蹲る俺を見下ろしながら薩摩 揚子は言った。
「ここ暫くの間貴方を観察して確信したわ、貴方は私の下僕となるにとても相応しい資質をもっている。是非私の下僕になりなさい、私の下僕になれば将来の安泰を約束しましょう」
 そういうと彼女は徐にストッキングを脱ぎだし俺の頭に載せた。
「それは契約の証となるものよ。私の下僕になるのなら明日、そのストッキングを咥えて私の元へきなさい」
 そう言い放つと薩摩 揚子と行列は彼女たちの王国へと帰っていった。
 いきなりのことに呆けながらも俺はとりあえずストッキングを一嗅ぎの後シャツの中へしまい、購買へと第二の昼飯を買いに急ぐことにした。
0104「ストッキング」「電話」「ラブレター」
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2013/02/04(月) 11:16:13.84
 二番目の異変は放課後、学園玄関でのことだ。
 運動大好きだが規律が苦手な俺は勿論帰宅部であり一日の授業全工程を終えれば羽が生えたように軽やかに速やかに帰宅する。
 教室を優雅に飛び出し小走りで廊下を渡り靴を履き替えるために玄関にある下駄箱を開けたそのとき!!
 なにやら一つの見慣れぬ物体があった。それは長方形で厚さ1〜2oといったところだろうか、全体は白く中心部にはなにやらファンシーで
キュートな心臓を模した形のシールが貼られている。
(……これは、なにかな?)その非現実性あふれる物体に脳の活動フル回転で思考。あらゆる可能性が頭を駆け巡る。
(これは!! もしや、アレなんじゃあないのか!?)だんだんと目の前の物体と思考が一致していきその正体の見当がつくにつれてテンションが上がってくる。
「ラ、ラ、ラ、ララ〜ラ、ラーラ、ラアー!!」
 その正体に確信を持った瞬間思わず声を上げてしまった、周囲の視線が刺さるが今は痛くも痒くも無い。
 恐る恐る、しかし急ぎながら中身を確認する。 自慢じゃないがラブレターなど今まで一度ももらったことが無いのだ。
 当然ながら中には手紙が入ってた宛名は勿論俺、笹蒲 鉾矢となっていた。
 うれし泣きしそうになりながら早速手紙を読んでみる。
「一目見て運命を感じてからずっと、あなたを見ていました。朝起きる前に二度目覚ましを止めるところから夜寝る前に一人プレイに励む所まで。
あなたは私と一つになる運命なのです。明日の昼休みに校舎裏で待っています。 竹輪 麩美」
(……これは、なにかな?)その非現実性あふれる物体に脳の活動フル回転で思考。あらゆる可能性が頭を駆け巡る。
(これは……もしや、アレなんじゃあないのか?)だんだんと目の前の物体と思考が一致していきその正体の見当がつくにつれてテンションが下がってくる。
 俺はずっと監視されていたのか!? まず始めにその恐怖に身を震わせる。この世には触れてはならないとても怖い者達がいると話には聞いていたが
まさか自分が関わることになろうとは誰が予想できただろうか? 恐怖のあまり破くことも出来ずとりあえず手紙を鞄につめ、震える体に活を入れ全力で家に帰った。
0105「ストッキング」「電話」「ラブレター」
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2013/02/04(月) 12:03:42.98
 最後の異変は家に帰り自室へ戻ったときのこと。
 今日あった二つのありえない出来事から逃避のために「ははは、面白いな〜」と声に出しながら漫画を読み漁っていると
携帯電話のランプが光っているのに気付く。どうやらお隣に住む幼馴染の 捏串 つみれ から電話があったようだ。
 留守電が入っていたのでとりあえず再生してみる。
「ごめんね、こんな時間に。でも、どうしても伝えたいことがあったの。ちょっと緊張しちゃうな、留守電で良かったかも。
えと、ね。今までずっと言えなかったんだけど……あの、君の、鉾矢のことがずっと……好きだったんだ。だから、ね。
お付き合いして欲しいの、鉾矢の恋人にしてください!! いきなりでごめんね、でも明日一日電話でも良いので返事まってます」
――ツー、ツー。
 なんだろう? アイツは一体いきなり何を言い出すのだろうか? 俺のことが好き?
 今日は一体何だって言うんだ!? ありえない事が起きすぎじゃあないのか!?
 どうしよう? 返事、返事か。
 アイツ、幼馴染である 捏串 つみれ は幼稚園の時から一緒でその外見はとても可愛らしく人当たりの良い性格で異性だけではなく同性からの人気も高い
中学までは何をするにもいつも一緒で俺の後ろには必ずアイツが居た。
 周りの大人たちからも「二人はいつ結婚するの?」などとからかわれたものだ。
 だがしかし、ただ一点だけどうしようの無い問題がある。
 性格もよくとても可愛らしいアイツは――俺と同性なのである。
 同性、異性ではない、俺は男、アイツも男、女子ではない。
――ナンダコレ?
 いつの間にやらアイツは俺にそんな感情を抱いていたのか?
 どうしたものだろうか? どう返事するにしても、いや断る以外にありえないがこれはどう転んでも気まずくなるのは必至!!
 アイツは何故告白なんてしてきたのだろうか? 人の思いは抑えきれないということだろうか?
 どうしよう?とグルグルグルグル頭を回す体も回る。
 そうこうしてる内に前の二件まで思い出して逃れようの無い現実に絶望しのた打ち回り、ただ時間だけが無為に過ぎていった。

 そして時刻は深夜。
 自室のベッドの上に正座し、目の前にある‘‘選択肢’’と睨み合う。
 目の前にある三つのアイテム。

――ああ、明日が来なければ良いのに
0107「演技派」「隕石」「胃腸薬」
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2013/02/04(月) 12:41:09.02
 行儀がいいとは言えないが、朝刊を読みながらパンをかじる。
 今日の社会面は、「演技派の名優逝く」で脇役俳優の逝去を報じている。
テレビドラマや映画で何度か見たことのある俳優だ。中でも、刑事物のドラマでの渋い演技は
当時子供だった自分でさえ今でも覚えている。
 その隣りには、「あわや大惨事!白昼の住宅街に巨大隕石落下」の記事。
ベッドダウンの住宅街に隕石が落下したものの、幸い落下地点の住宅は留守で
死傷者は出なかったという。ちょうど出掛けていたその家の住人の爺さんが、
「八十年生きてきてこんなに驚いたことは初めてです」とインタビューに答えている。
 亡くなった俳優は六十五歳で、助かった爺さんは八十歳。人生なんてわからないものだ。
この自分だって、今の会社の人員整理でどうなることか。この年で転職活動は出来ればしたくない。
 そんなことを考えていると、持病の胃痛が出る。救急箱から胃腸薬を取りだす。
 会社に行くのは苦痛だが、行かなければ食べていけない。「とかくこの世は住みにくい」
学生時代から愛読している漱石の一節を呟く。これから出勤だ。また満員電車か……。



次は「徒花」「影」「後悔」
0108「徒花」「影」「後悔」
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2013/02/04(月) 16:14:34.48
 千恵子は店内のストゥールに腰を下ろし朝からウォッカを呷っていた。
 若い頃、均整のとれていた肉体にはその後の不摂生を物語る脂肪がつき、白髪混じりの
頭は四十代とは思えず老婆の様な雰囲気を漂わせている。
 灯りを点けず、暗く影を落とした店内にTVだけが妖しく光を放っていた。
 「フラワーモーニング、本日のゲストは女優の樹山ユウコさんです。よろしくお願いします」
 「よろしくお願いします」
 「樹山さんはカンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞する等、日本映画界期待の若手女優
さんです。今日はその樹山さんのルーツにとことん迫ってまいります」
 TVに映る若く美しい女優の姿が、千恵子にある後悔を思い出させる。千恵子は若い頃、TVに
映る彼女と同じ世界に居た。歌手からスタートした彼女の芸能キャリアは、何度かの芸名変更
を経て女優咲花シズカという人間を作り上げた。出演映画がヒットし一時は名声を博した彼女だが
その栄光は長くは続かなかった。結婚を機に一時芸能界を引退した彼女は子供を流産してしまう。
この事が千恵子の精神を酷く不安定にさせた。夫との関係は冷えその後離婚。芸能界に復帰するも仕事
は以前の様には上手くいかず、再婚するも一年と持たずに離婚した。
 自分にとっての居場所を見失った千恵子は覚醒剤に手を出し逮捕される。服役中、千恵子は自らを
徒花だと感じた。女優として花開くも落ちぶれ、子を生せず、ただ枯れ行く花なのだと。
 出所後、彼女に残ったものは僅かな貯えから開いたこの小さなスナックだけだった。最初の頃こそ
元女優がママを務めるスナックという事で客も入ったが、十数年経った今は閑古鳥が鳴いていた。
 「わたしもこの子みたいに実を結びたかった……」
誰に伝えるでもなく、口をついたエモーショナルな叫びは、千恵子がかろうじて保っていた一線を越えさせ
るには充分であった。大量の睡眠薬を口に含み一気に胃へウォッカで流し込む。昏睡しストゥールから転げ
落ちた千恵子が目覚める事は二度となかった。
 「――樹山さんが女優を志されたキッカケは何だったんですか?」
 「小さい頃に咲花シズカさんという方の映画を見て私もこんな女優さんになりたいと思ったからです。咲花さん
の演技は本当に華やかであの人がいなかったら私は女優になってないと思います」
0110「悪口」「遊園地」「奇跡」
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2013/02/05(火) 00:01:23.01
「順序よく、3列にお並びくださーい」と、係員が言う。
でも、行列があんまり長くって、先頭がもう見えない。

これで遊園地と言えるのか?
と、悪口を言っても始まらない。
並ぶ他にする事は見当たらないのだから。

ようやっと入場の前には、さらにくじ引きが待っている。
ここで運がよければ、赤いレーンに並べる。
それはもう、小さな小さな、奇跡に近い確率だが。

「おおおっ!」と声が沸きあがる。
何百回と並んだ客が、赤いレーンを引き当てたのだ。
歓喜の涙をあふれさせる客に、セーフティバーがゆっくりと下がって・・・
彼はこの世に生まれてきた。

たった100年弱の期間。
だけど、それは気が遠くなる程の行列と奇跡の結晶かもしれない。
そりゃあ、あの世の単位では1時間足らずかもしれないけど、まあ。

次のお題は:「ヴァイオリン」「涙」「フォークリフト」でお願いします。






気が遠くなる程の待ち行列と奇跡で、この世に生を得た。
0111名無し物書き@推敲中?
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2013/02/06(水) 12:58:09.15
 夏の日の午後、男は普段通り倉庫内仕分けのアルバイトに勤しんでいた。彼は所持しているフォークリフト免許を生かして、生活の糧を稼いでいる。
 この職場には、一年程通っている為、男の作業は手慣れたものだった。
 彼が仕事に没頭していると、倉庫内にけたたましいブザーが鳴り響いた。腕時計を見ると、時刻は15時をしめしていた。
「休憩するか」,
 男は呟き、倉庫内の休憩所に向かった。
 いつものように、備え付けられている自販機のほうへ歩いていくと、先客の後ろ姿があった。それがこの倉庫の事務員である事は、彼にはすぐにわかった。
「あ、お疲れ様です」
「お疲れさんです、新人さんですか?」
 振り返った事務員の女性に、挨拶された男は、返事と共に訊ねた。初めて見る顔だったからだ。
「はい、最近この会社に入りました。酒井です、よろしくお願いします」
「あ、自分は田島です、よろしくお願いします。まあ僕は、只のバイトですけど」
 酒井は、美人でスラリとした、印象の良い女性だった。歳も田島より若く見える。
「まだ分からない事ばかりなので、良かったら会社の事、色々教えてください」
「自分で良ければ、まあ、分かる範囲で教えますよ」
 田島はそう答えると、自販機で買ったジュースを手に取り、近くにあるベンチへ座った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。よろしくお願いします」
 酒井は微笑みながら、田島の隣に座った。
 
0112名無し物書き@推敲中?
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2013/02/06(水) 13:00:02.94
 普段は一人で休憩時間を過ごしている彼にとって、これは意外な事だった。だが、彼女は人当たりが良く、とても話しやすかったので、田島は自分でも驚く程に、饒舌になっていった。
「酒井さんは、なんか趣味あるんですか?」
 仕事の事は一通り話終えたが、田島は、彼女との話をやめなかった。酒井に惹かれ始めている、自分に気付いたからだった。
「私は、クラシックが好きだから、休みの日には、ヴァイオリン教室に通ってます」
「へえ、ヴァイオリンですか。すごいですね。自分には縁のない趣味だな……」
 楽器などほとんど触った事もない田島は、彼女との接点が絶たれた気がして、少し落ちこんだ。
「やってみると楽しいですよ。良かったら田島さんも始めてみてはどうですか? 今度は私が教えますから」
 酒井はそう言うとニコリと笑った。その笑顔を見た田島の心は、みるみるうちに晴れていった。
「じゃあ、自分も、やってみようかな」
「是非、始めてください」
 会話を遮るかのように、再びブザーが鳴り響いた。
「休憩終わりか……じゃあ、自分、仕事戻りますんで」
「はい、お仕事頑張ってください。また、よろしくお願いします」
 涙を流す程ではないが、残念な気持ちを抑えつけて、田島は作業に戻っていった。
 彼はフォークリフトを運転しながら、思わぬ所で訪れた出逢いに、淡い期待を募らせずには、いられなかった。
 
0114銃と美女と煙草
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2013/02/10(日) 12:37:54.83
都心に現れたその怪獣は、昔のテレビに登場した着ぐるみの怪獣達とは似ても似つかぬものだった。
大きさはまあいい。円谷プロの怪獣サイズだ。しかしその外見は、何たる手抜きだろうか。ただの人間の赤ん坊なのだ。
誰か穿かせたのかもわからぬオムツを腰に纏った、性別不明の赤ん坊が、街を壊しまくっていた。
赤ん坊に善悪の判断はない。ただ好奇心の赴くままに彼(もしくは彼女)にとってのミニチュア玩具である建物や乗り物を叩き、投げ踏みつぶして歓喜していた。
「だめだ我々では手に負えん」
警官隊の銃など何の役にも立たなかった。
弾が当たった個所を、赤ん坊は痒そうにボリボリと掻くぐらいである。
「自衛隊を呼べ」
「その必要はないわ」
「誰だ君は、こんな所にいないで避難したまえ」
狼狽する警官隊を尻目に、白衣にミニスカートの美女が巨大赤ん坊に近づいていく。
「なにをする気だ?」警官たちは理解に苦しんだ。
すると白衣の美女は突然踊り始めるのだった。赤ん坊の目が美女の動きに囚われて左右に動く。
「なんかどこかでこういう映画を見たことがあるな」
「でかい猿の映画ですよね」警官達は美女の踊りに見とれて完全に見物モードになった。
赤ん坊の後方で大きな発射音がしたのはその時である。赤ん坊は驚いて目を丸くした。
後方にはいつの間にか、美女の仲間らしい二連結戦車がおり、弾を撃った直後だった。
弾はオムツ越しに赤ん坊の肛門に突き刺さっていた。
それはタダの弾ではない。
それは一本の巨大な煙草だった。赤ん坊に突き刺さった方は咥える側で、反対側には火がついていた。
美女は警官隊を振り返った。
「これは大型の麻酔弾です。大型のモンスターにはこれくらいしか役に立たないわ」
「ほう、どれくらいで効き目が出るのかな」
美女は腕時計を見て言った。
「あと一時間ほどで奴は眠りにつきます」
「一時間もかかるのか!」
一時間ほどして、巨大な赤ん坊は、廃墟と化した街の真ん中でぐうぐうといびきをかき始めたという。

次「脳腫瘍」「液晶テレビ」「マネキン」
0115「脳腫瘍」「液晶テレビ」「マネキン」
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2013/02/11(月) 22:29:41.17
馬鹿の一つ覚えで7オンス頼む。
ワゴンの上でバーナーに炙られ、牛肉の塊が回されていた。
シェフが青竜刀のようなナイフで、こんがりしたところをそぎ落とし、
皿に載せてくれる。

倍の大きさがありそうだ。
私は肉を旨そうに喰うのには自信がある。
◆◆◆

窓際の席でマネキンのように整った肢体と顔の女がステーキを食べていた。
静かで迅速なナイフとホークの扱い。それに正確な咀嚼。
出来過ぎな光景で、液晶テレビの画面を眺めているようだった。
向かいの席の男、顔色が心なし悪い。
◆◆◆

彼女、美味しそうに食べているつもりなんだろうな。
今日は脳腫瘍の手術があったんだよな。
よく食欲のでるもんだ。
俺はワゴンの上の塊が明滅的に脳に見えてぞっとした。


次は、「外科医」「二月」「体重」でお願いします。
0116「外科医」「二月」「体重」
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2013/02/13(水) 19:11:45.56
水商売の業界で「にはち」といえば、客の出入りが減る二月と八月を指す。
それでも常連客は、定期的に通い続けてくれる。
散々な、今月の売り上げを嘆き加代子は、携帯電話のアドレスを眺めた。
ふと、長いこと顔を見ていない高校時代の彼氏の名を目が探し当て、そして無意識に目を背ける。
未だに電話も出来ないくせにアドレスに残っている彼の名前に、我ながら未練深いと呆れる程、本当は大好きな彼だった。
私の家庭の事情で、高校を中退しそして水商売の道へ進み、彼には釣り合わなくなってしまった自分。
私は、彼にパラレルワールド《平行世界》の幸せを視る。
けれども、それは現実世界には、ありえない切なく苦しい妄想だった。
ふと、店のドアが開きカウベルが来店を告げる音を上げる。
それは、幸せに繋がる音だった。
「加代子、俺、外科医になって君を迎えに来たよ。」
そこには、体重こそ高校時代とは違うけれど、当時と同じ優しい笑顔の彼が立っていた。



次は、「運命」「バイク」「梅」でお願いします。
0117「運命」「バイク」「梅」
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2013/02/21(木) 17:47:30.92
「まかどは、運命って信じる?」
 ほらむが聞いてきた。最近、少し仲良くなった二人は、昼休み、中庭のベンチで一緒にご飯を食べていた。
「運命? このご飯の梅、うんめー、とか?」
「聞いた私が馬鹿だったわ」
 ほらむは弁当の蓋を閉じて立ち上がり、すたすたと校舎の方へと歩いて行く。
「待って、ほらむちゃん! 私の方が馬鹿なんだよ! こんなのってないよ!」
 気を取り直してベンチに戻ってきたほらむが言った。
「私は、運命なんて信じない。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!」
「ほらむちゃん?」
「約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる」
 ベンチに座って、前を見据えたまま、ほらむの握りしめた拳が震えている。
「まかど、私、バイクに乗れるの。あなたを乗せて、どこまでも一緒に走って行くわ」
 そう言ったほらむの顔に笑顔が戻った。
「ほらむちゃん、バイクの免許持ってるの?」
「1回ぐらいは、魔法少女になってみるといいわ、まかど」


次は「未来」「信頼」「魚雷」
0119名無し物書き@推敲中?
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2013/02/25(月) 21:11:31.62
 加藤元気は齢三十六にして素人童貞である。玄人しか知らない。人より見劣りするルックスに少々薄い頭を筆頭に低めの身長に重すぎる体重、沸き立つ体臭、むず痒い足、と加藤には様々な個人的特徴があった。
どの特徴も個性だね、素敵だねと言えばそれはそうだが、しかし加藤は個性などとはこれっぽっちも思っていなかった。呪いだと思っていた。そう、俺は呪われている身なんだ。
前世で魔女でも倒した騎士なのだ。その業が来世である自分に廻ってきたのだと思ってみたりもした。そしてそういう時、加藤はお気に入りのAVを見て一息つくのだ。
すると加藤は賢者になり、俺は何を前世などと思っているのだ、俺は前世系ではないぞ、来世もない、未来も信じないぞと萎びた息子に向かって情けない笑みをこぼしたりするのだ。
 加藤は間の悪いことが多かった。その日もそうだった。月に一回の楽しみ。格安の風俗店でお気に入りの姫を抱く。それだけの楽しみのために、ナクドマルドで高校生に顎で使われ、ひいひいと嘆き時給六五〇円で働いているのである。
しかして、その日は姫は飛んだ後だった。どこへ行ったとも知れず、他の店に行ったんじゃないですか、ゲヒヒと笑うボーイに加藤はお得意の俯き加減からの愛想笑いを返したりした。
そして、ボーイに勧められるまま紹介された醜悪な見た目の嬢に部屋に閉じ込められ、バイブで尻の穴を魚雷のように鋭く一突きされただけで加藤は果てた。人間の尊厳、男の矜持などあったものではなかった。
 帰り道、キャバ嬢を名乗る輩からメールが届いた。信頼しているダーリンにしか届けません、あなたと一緒に同伴したい、お店は歌舞伎町のここだからね、と書いてあったので、
馬鹿にするな文章から年齢がばれるぞババアと送り返すと、後日、アダルトサイト閲覧名目で三万円の支払いメールが届き、肝を冷やし、四畳半のアパートで震えた加藤であった。

次回は「光る眼」 「奇跡」 「名残」らしいです。よろしく。
0120「光る眼」 「奇跡」 「名残」
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2013/02/26(火) 17:31:04.85
私の目は夜に輝く。
この光る眼を気味悪がられてはいけないと、母は私に暗くなる前に帰ってくるようにきつく言いつけた。
ある日私は友達の誘いで山へ木の実を採りに行くことになった。

最初は山の麓近くで木の実を探していたけど、中々数が見つからなくて痺れを切らせた友達が、もっと深くに行こうと言い出した。
私はあともう少しすると日が落ち始めるので止めようよ、と止めては見たのだけれど。
結局押し切られて一緒に山の奥深くまで木の実を探しに行くことになった。
ある程度深く進んだところで沢山の木の実を見つけることが出来て、友達も私も大はしゃぎで木の実を集めた。
そうして満足がいくまで木の実を拾うと、もう日が落ち始めて辺りが暗くなり始めているのに気付く。
私はハッと自分の眼のことに思い至り、急いで帰ろうと友達に促す。
友達も暗くなってはたまらないと二人で帰りを急ぐ。
だけれど二人とも帰り道を忘れてしまって、迷っているうちにどんどんどんどん日が暮れていった。
私は光る眼のことを気付かれるのが怖くて友達の一歩先を常に歩いた。
友達は先に行かれるのが不安らしく私の横を歩こうとする。
私は見られてはいけない、と歩幅を大きくして足を速める。
友達もそれに追いつこうと負けじと足を速めた。
もうどこを走っているのかなんて考えてもいなかった。

そんなことをしていると、知らないうちに山頂まで来てしまっていた。
ずいぶんと開けた場所で真ん中にポツンと二人掛けの椅子があった。
走り回ってくたくたになっていた私達は、喜び勇んで椅子に腰掛ける。
ハアハア言いながら顔を上げてみると大きく光る月が見えた。
とても綺麗で感動して見入っていると友達がこちらをみて「あんたの眼光ってる!」と驚いた声を上げた。
私は恐怖した、次にどんなことを言われるのかとビクつきながら友達のほうへ顔を向けると、そこには同じく眼を光らせた友達の顔があった。
思わず私は「あんたの眼も光ってるわ!」と指差して言った。
私たちは何だか可笑しくって互いに指を指しあいひたすらに「光ってる」と笑いあった。
それは月が見せた奇跡だったのかそれともただの幻だったのだろうか。
笑いつかれて眠ってしまった私たちが、心配して探しに来た親たちに発見されたのはその数時間後だった。
0121「光る眼」 「奇跡」 「名残」
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2013/02/26(火) 17:37:55.69
眼が覚めてからすぐに私達は村中の大人にお叱りを受けた。
私も友達も叱られているのに昨日のことを思い出しては笑ってしまって、お叱りが終わるのは結構な時間がたったあとだった。

あれ以来、友達の目が夜に輝くことはなくなったが二人の体験は村中に広がっていて
夜に輝く目を見られた私は決まってこういうことにしている。

――「お月様の名残」



次は「消灯」「相貌」「サルガッソー」
0122「消灯」「相貌」「サルガッソー」
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2013/03/01(金) 00:34:10.12
瀬久原教授は病の床にあった。妻も子もなく、一生をかけて作り上げた
メイドロボットだけが教授の世話をしていた。50年後のおまいらである。
「教授、お薬を飲んだらもう寝る時間ですよ」
微笑むロボットの相貌には、昔彼が愛した架空のヒロインの面影がある。
教授は薬を受け取ると、コップの水で一気に飲み干した。
「じゃあ、電気消しますね。おやすみなさい」
消灯時刻だ。この厳格なスケジュールは、ロボメイドならではといっていい。
だが、教授は知っていた。ロボはロボでも、彼女は単なる機械ではないと。
いや、それは彼女にとってのことか、あるいは彼にとってのことか――。
「なあ、○×△」(注:適当な名前を補って下さい)
「はい?」立ち去りかけた軽い体が、暗闇の中で振り返る気配がした。
「かつて幾多の男たちを吸い込んだ、ワカメで有名な三角地帯を知っているかね」
「サルガッソーですよ、教授」
闇の中でほころんだ無邪気な笑みを、教授は確かに見たような気がした。
これが教授の幸福な日課だった。
そして――そして、闇の中でぺろりと出した小さな舌を、教授はまた知ることがなかった。
彼の人生最後の夜にも。

次「山の水」「川の滝」「野原の海」
0123「山の水」「川の滝」「野原の海」
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2013/03/05(火) 14:12:25.12
―夏休み、某日。
どこかの山の中、俺たちは唸っていた。

ことの始まりは夏休み最初の日、せっかくの夏休みなので皆でどこか普段行かないところへ遊びにいこうという話になった。
やはり夏だということで海と山の二つに分かれたのだが、人数もちょうど半分だったのでそれぞれで分かれていくことになった。
俺たち三人は山でキャンプという名の修行もどきをしようということになりそれなりの準備をして勇んで山へ入ったのだが…。
メンバー全員が水を忘れるという大暴挙、しかし皆そのときはどうかしていたのか「これも修行!!」とどこかにあるという水源を探すことにした。
音を頼りに、探してみると案外早く見つかるもので見つけたときはその滝みたいになってる川を見て
「これこの前写真で見たやつに似てるな、ラインの滝だっけ?」
「ちげーよ、精進川の滝だろ?」と余裕のやり取りをしていた。

水も確保できたので早速修行を開始する、漫画やアニメやゲームなどで得た知識を実際に試すのだ。
現実的なものからビーム系の非現実的なものまで様々な修行をし渇いた体に水分を補給するため川へ向かう。
そのとき俺たちはとても大事なことを忘れていたのだ…。
『山の水は生ではいけない』
煮沸してからではないと体に悪いのだ。
そんなことなど頭になかった俺たちは川を枯渇させてやるとばかりにゴクゴクとそれはもう腹が膨れるまで飲んだ。
しばらくして、案の定俺たちは三人とも腹を抑えて唸りだす。
草むらに行っては帰りの繰り返しでもはや修行など頭になかった。
そして俺たちは話し合い泣く泣く下山することとなった。

腹を抑え唸りながら俺たち三人は思った
(野原の海案に賛成しとけばよかった……)


次は「賽の目」「最高」「フラッシュサプレッサー」
0125「賽の目」「最高」「フラッシュサプレッサー」
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2013/04/30(火) 21:09:38.65
伯父が失踪して3年が経つ。
伯母だった人からマンションの鍵が送られてきた。

古ぼけた木の机の右側の引き出し。
何か突っ掛かって開かないのをバールを使って無理矢理こじ開けた。
ゴトリっー。破れ欠けた隙間から音が転がり落ちる。
無骨な紺の円柱。不釣り合いにハートマークの切り込みが並んでいる。
アクション映画とかで偶に見かける、たぶん、あれだ。

同じ色の拳銃を伯父は持っていたはずだ。
持ち出して、子供の頃に怒られた記憶がある。
銃口には鉛が詰まっていたか?

そのフラッシュサプレッサーを掌から机上に転がす。
賽の目を待つように停まるのを待つ。
マズルフラッシュ。最高だ!
臭いより音が音より光が早い。
視界の端で反応して一撃目を避ける。回転蹴りを入れると見せかけて
反対側の手で机上の筒を浚ってそのまま、銃口にねじ込む。
二撃目は暴発して、射手を苛んだ。


次のお題は(なんかむずくて話がさっぱりまとまらなかったので……)継続でお願いします。
0126二番手いきまふ 「賽の目」「最高」「フラッシュサプレッサー」
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2013/05/05(日) 03:52:03.82
直径70センチの円盤型本体が、回転しながらゆるゆる進む。
隠れたゴミをブラシが自動的に掃き出し、吸い込みます。
貴方は、軽くボタンを押すだけ。

「これだっ」総裁は唸った。「設計者を至急呼んでこい!」
そして数年後。

直径20メーターの円盤型鋼鉄ボディが、回転しながら侵攻。
隠れた住民を、フラッシュスプレッサーが自動的に焼却。
貴方は、軽くボタンを押すだけ。

大尉が微笑んで、ビールを一杯。
「罪悪感も大幅カット。こりゃあ最高のマシーンだね」

一方、洞窟の男は、キリキリと小さな金属音を聞いていた。
あの音だ、炎がくる!数分後にここは火の海かもしれない。

背後には、自分同様の僅かな生き残りたちが祈っている。
祈るしかないではないか。自分の命を賽の目に託すしか。
「人がゴミ同様に焼かれるとは・・・最悪のマシーンだ!」

※ なんかありきたりだけど・・・
次のお題は「人の目」「裁縫」「エプロン」でお願いしまふ。
0127「人の目」「裁縫」「エプロン」
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2013/05/12(日) 07:01:08.97
目が覚めると、裸エプロンの女の後ろ姿が見えた。
「何をしているんだ?」
裸エプロンの女は振り返って「お兄ちゃんの朝ご飯を作っているんだよ」
お兄ちゃん、だと? すると裸エプロンと俺は兄妹なのか。
わからない。そうであるような……いや、ないような。
ハッキリしていることは一つ。俺の頭はどうかしている。
「俺とお前はどういう関係なんだ。お前はなぜ裸なんだ? ひょっとして寝たのかな一緒に」
裸エプロンの妹は振り返って「やだ、そんなことできるわけないじゃん」
妹はサンドイッチをこちらに持ってきて「お兄ちゃんは昨夜遅く、バラバラになって戻されてきたの。それを私が徹夜で裁縫しながらくっつけたんだから」
「バラバラって何だよ? 何を言ってるんだ」
俺は恐る恐る自分の顔や体を触ってみた。皮膚に切れ目があって、それは無数のホッチキスでとめられているようだった。
妹は優しく笑った。
「もう大丈夫だよ。お兄ちゃんは頑張った。もうあそこには行かなくてもいいって」
「うわわわっ!」俺は絶叫した。
「どうしたの?」
「あ、あれは、なんだ?」
窓の外にサッカーボールくらいの人の目が浮かんでいた。
妹は動じなかった。彼女は俺に顔を近づけて、優しく囁いた。
「ああ、あれはね――」


次「ガラパゴス携帯」「腫瘍」「切腹」
0128「ガラパゴス携帯」「腫瘍」「切腹」
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2013/05/22(水) 01:14:42.61
自分を冒す悪性腫瘍はもう何度目の転移だろう。
枕元に置いた携帯は、最近ではガラパゴス携帯と呼ばれているらしい。しかし、買い替えに行く暇も、買い替える金の余裕もない。
切腹後の様になった腹の手術後は、固い肉芽のまま寝返りをうつ度に痛みを覚える。
嗚呼。だけれど。
痛みも、この傷も、生きていたいと言う願いの形だ。
古臭い携帯に今でも入る職場からのメールは、戻る場所があり待つ人のいる証だ。
死にたくはない。死は怖い。
どんなに辛い治療も、どんなに不自由な体も。
死から逃げられるならなんだってするさ。
生きていたいんだ。


次は「失恋」「ジビエ」「蛍光灯」
0129「失恋」「ジビエ」「蛍光灯」
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2013/06/08(土) 12:46:38.99
夜、天井の蛍光灯がパンと音を立てて割れた。
女はびっくりして悲鳴を上げそうになった。
「落ち着け。動かない方がいい。蛍光灯の破片を踏むかもしれないからな」としわがれた声が注意した。
「そんな事言ったって、じゃあどうすれば?」女は怖くて怖くて仕方がなかった。
「慌てるな、今蝋燭を探している。待つんだ」
闇の奥でごそごそと音がした。やがてボッと橙色の灯がともり、頼りないけれども山小屋の室内を照らし出した。
蝋燭に照らし出された老人の顔は、小屋に取り憑いた悪霊のようにも見えた。
女は行きずりの登山者であり、老人は小屋の番人であった。
「怯えることはない。朝は必ずくるものじゃ。あんたにも、わしにもな」老人は自分の猟銃を手入れしながら語った。
「なぜ蛍光灯が壊れたのかしら」
「さあな、霊はああいうものを嫌うからのう。もしくは奴らの合図なのかもしれぬ」
「霊?! 何を言っているんですか」
「ジビエという外国語を知っておるかね。食材として狩られた動物のことじゃよ」
老人は手入れしていた猟銃の銃口を女に差し向けた。
「何をするんですか」
「あんたはわしのジビエじゃ。だが食用ではない。わしの魂の器となってもらう。わしが乗り移らせてもらうんじゃよ。この老体ではもう長くないからの」
薄闇の山小屋に銃声が響いた。その後には、誰の悲鳴もうめき声さえ聞こえなくなった。
朝。
女の亡骸を前にして老人は、自嘲していた。
「だめじゃ。また憑依に失敗したわ。失恋した若者とはこんな気分なのだろうか。なぜじゃ、なぜ素直に器になってくれんのじゃ?」
地団駄を踏んでも仕方が無い。老人は耳をすました。
次の客人がやってくるようだ。
老人は猟銃を杖に立ち上がり、次のジビエを待った。

次「テレビのリモコン」「スクリーン」「雨宿り」
0130「テレビのリモコン」「スクリーン」「雨宿り」
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2013/06/11(火) 09:09:19.54
参った、予報では晴れだったじゃないか。男は足早に帰路を辿っていたが、次第に強くなる雨に負けて店へ駆け込んだ。
入口で体についた露を払い中を見渡す。店主は奥に引っ込んでいるのか誰の姿もなかった。
早く雨宿りしたい一心でなんの店か見る間もなかった男は、そこに並べてある商品に首をかしげた。ガラス棚にはテレビのリモコンらしきものがずらっと陳列してあったのだ。
肝心のテレビ自体は見当たらない。
もしかして此処はテレビのリモコン屋なのだろうか。男は思案を廻らせた。
はてリモコンを何処に置いたかと探し回るのは誰しも一度はあるだろう。
もし見つからなかったら、わざわざメーカーに問い合わせねばならない。それはかなり面倒だ。
そんなときに此処のようなリモコン屋を訪れて、リモコンだけを買えば面倒は少なくて済む。なるほど、最近は便利な店があるものだ。
いつか利用する日があるかもしれないな、帰ったら女房に教えてやろう。
雨は小降りになってきた。店主に見つからないうちに出ていこう。
ドアの開閉する音に気付いて、奥から店主が現れた。
あれ、お客が来たような気がしたけど。まあいいか、機材のチェックでもするかな。
店主は壁のスイッチを押し、スクリーンをおろす。
そして棚にあったリモコンを一個取って操作すると、天井埋め込み型のプロジェクターのひとつが投影を始めた。

「ごま」「茶碗」「風呂敷」
0131「ごま」「茶碗」「風呂敷」
垢版 |
2013/06/30(日) 00:46:59.57
この世で一番美味しい食べ物は、ごま塩ごはんである。
茶碗に熱々のごはんを盛り、ごま塩をかけて、食す。
どれほどの贅を尽くそうとも、この単純かつ完璧なごま塩ごはんには敵わない。
「オラァ、居るのは分かってんだ、出てこいやコルァ!」
我が家のオンボロドアが強く打ち鳴らされ、野蛮な怒声が部屋を震わせる。
けれどそんなもの、このごま塩ごはんの前にはなんの意味も思想も無い。
私はかつて、ある中小企業の社長であった。会社はそれなりにうまくいき、妻は優しく、娘は愛らしい。私は幸せだった。
だがしかし、そんな幸せは突然終わりを迎えた。
私は経営が軌道に乗ったのを感じ、次々と新しい事業に手を出した。家族のためにもっと豊かになろうと思ったのだ。だが、それがいけなかった。
風呂敷を広げすぎて事業は失敗。私は多額の借金を背負い、妻と娘は出て行った。
「居留守かぁ? ナメた真似してんじゃねぇぞコルァ!」
ごま塩を入れすぎたのか、今日のごま塩ごはんは少しだけしょっぱかった。

「カーテン」「ヒヤシンス」「水筒」
0132「カーテン」「ヒヤシンス」「水筒」
垢版 |
2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN
喉が渇いて目が覚めた。
カーテンを開けると朝焼けの橙が広がりはじめている。
夜の紫紺が橙に溶けていく。出窓に飾った風信子鉱が光を受けて明るく輝く。

彼女は鉱物が好きで集めていた。
彼女は頑なにジルコンを風信子鉱と呼んでいた。
「知ってる?風信子ってヒヤシンスのことなんだよ?
鉱物に花の名前をつけるって美しいよね」
「ヒヤシンスってどんな花だっけ?水性栽培できた花としか覚えてないなあ」

そんな会話でも楽しく、彼女はふざけて水筒代わりのペットボトルに、鉱物と水を入れて飾った。
「増えるといいなー」なんて。
彼女は帰らない。

俺は喉が渇いていた。ジルコンは冷たく喉を通っていった。


マフィン 雨 自転車
0133「マフィン」「雨」「自転車」
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2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN
なぜこんな似合わぬ事を始めようと思ったのか全く覚えていない。
しかし飽き性の私が二年も続けているのだから、案外ぴったりの趣味かもしれない。
「いらっしゃいませー」
とあるベッドタウンの駅前で、私は露店を開いている。
「ありがとうございましたー」
日も沈み、通りでは酔っ払いが喧嘩を始めた。そろそろ店じまいか。
折り畳みの机と、白いチョークでマフィンとだけ書いた小さな板を担ぎ、スーパーに向かう。
その日の売り上げが牛乳と卵になり、次のマフィンに替わる。
不器用な人間が道楽で商売をするにはなんといっても自転車操業が一番なのだ。

大量の小銭に嫌な顔をされながらもなんとか買い物を終え、家にたどり着く。
テレビをつけるとちょうど天気予報だった。
雨か。
自転車の傘さし運転は危ないので、明日は休業とする。
売れ残りを頬張り、私は満足な気分になった。
不恰好に焼けた奴ほどうまいということに、二年たっても誰も気づきゃしない。

「扇風機」「サッカー」「めがね」
0134「扇風機」「サッカー」「めがね」
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2013/07/19(金) NY:AN:NY.AN
おれは乱雑に靴を脱ぎ捨て、足早に部屋に駆け込んだ。
「ああああ〜」
扇風機の前に座り、電源を入れた。
小さな子供がやる宇宙人ごっこみたいに声を上げる。
だるいからか、それとも他の何かなのか。
ぼーっと座って、馬鹿みたいに声を出していた。

体感では十分くらいのつもりが、気付いたら三十分くらい過ぎていた。
見たかったサッカーの試合の放送が始まっている時間。
おれはテレビのリモコンを取ろうと立ち上がった。
ずるり。
めがねが下がって、視界が奇妙に変化する。
耳の後ろと背中は汗をかいたままだった。

めがねの位置を直し、試合を見おわると、
おれは一生懸命友人たちのことを思い出そうと頑張った。
部屋にエアコンあるの、誰だったかな。
考えながら、汗を拭いてめがねをかけ直すが、夕飯の時間になっても思い出せなかった。
そもそも、部屋にいったことある奴が少ないっつうの。

「さいころ」「洗濯」「みかんの皮」
0135「さいころ」「洗濯」「みかんの皮」
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2013/07/21(日) NY:AN:NY.AN
菓子皿の中に懐かしいお菓子があった。
紙製のサイコロの箱。その中に2粒キャラメルが入っている。
1の裏は6
2の裏は5
3の裏は4
この法則を私に覚えさせるために母がしばらく買ってきていた。
展開図において、空白のサイコロの目の数を答えさせる問題。
どれほどやったっけな。

こたつでみかんの皮を展開させながら思いにふける。
球形が五片の花の形に変わる。うまく均等に花びらができたことに満足する。
皮の出来にうつつを抜かし、上の空でみかんを食べたら汁が跳んだ。
タートルネックの白いセーターが汁に汚染される。
洗濯していたらタートルネックはいびつな五片の花のかたちだ。
そんな発見をした冬の昼下がり。


氷 火 ダンサー
0136「火」「水」「ダンサー」
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2013/08/07(水) NY:AN:NY.AN
宴も酣となってきた。
たまには火遊びを楽しめ、と友人に言われ、乗り気でないまま参加したパーティ。屋上庭園には極彩色のライトとリズムだけの音楽が散らかっている。
氷ばかりの酒は熱気と相まって陶酔をもたらし、意識の境を曖昧にした。真夏の夜の夢という曲の意味がようやく理解出来る。
私は友人とはぐれ、ざわめく通路でグラスを傾けていた。
「お姉さん、一人?」
てっきりナンパかと思ったが、見てみれば女性だ。私と同い年か少し下か、何れにせよ私より綺麗な人。水着のような際どい衣装を身につけていることからダンサーだとわかる。
「そうだけど……」
「ならいい、来て」
その人は私の手を掴んで走りはじめた。不意をつかれて抵抗出来ず、私はそれについていく他ない。
「待って、何処に行くの?」
「いいから」
少し走ってたどり着いたのは庭園の隅だ。その人は小さな倉庫の陰に私を連れ込んだ。人気はなく、かがり火だけの照明が暗がりをもたらしている。
壁を背に立つと火が視界を奪って、その人は形しか見えなくなった。
「ここならいいね」
「あの、私に何か……」
「ごめん。お姉さん、好みだったから我慢出来なくなっちゃって」
好みって―――状況を飲み込めない私をからかうように笑いながら、その人は体を寄せた。柔らかく甘い匂い。間違いなく同性の色香だ。
手からグラスが滑り落ちた。耳障りな音も邪魔にはならない。氷と硝子が一緒になって、足元にできた水溜まりを彩る。
水面に映る焔は何の暗喩になるだろう。
「一回くらい、いいよね」
それは彼女の声か私の心か。
かがり火がぱちぱちと花を上げ、空中で闇に溶けた。
こういう火遊びも悪くない。

ジャム 銀のスプーン おとなりさん
0137ジャム 銀のスプーン おとなりさん
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2013/09/07(土) 16:37:07.38
隣の空き家に人が越してくると、母から聞いた。隣はもう何年も空き家だったが、ようやく買い手がついたらしい。
老夫婦かな、赤ん坊のいる新婚家庭かもしれない。でもできればかわいい女の子が越してくればいいなと思った。
そして願いは叶った。
おとなりさんは三人家族で、典型的なサラリーンマン家庭だった。一人っ子の女の子はおそらく中学生だろう。
母がコトコトと何かを似ている。
「なに煮てるの母さん」
僕は窓から、その女の子が学校に向かうのを見ている。
「イチゴジャムよ」
そう言って母は、銀のスプーンでジャムをすくうと、窓の外を見る僕の口に運んだ。
 *
「隣は空き家だって聞いていたけれど、人が住んでるわよねぇ」
私がママに尋ねると、ママはそんなことない、と答えた。
「だって見たのよ。同い年くらいの男の子が窓の向こうから私を見てたの。学校には通ってないのかしら」
ママは眉間に皺を寄せた。
「悪い冗談よしてちょうだい。クラスの誰かに噂を聞いて、ママをからかっているんでしょう」
「噂?」
「隣は空き家よ。幽霊が出るからって、この家もなかなか買い手がつかなかったの」
 *
その晩少女は、ベッドに入ってから幽霊を見た。あの隣の家の窓からこちらを見ていた少年だ。
しかも口のまわりが赤黒かった。血かもしれない。少女は懸命に叫び声をあげた。
 *
「またいなくなっちゃったねお隣さん」
僕が母にそう言うと、母はため息をつきながら僕の口のまわりを拭いてくれた。
「坊や、口のまわりにジャムがついているよ」

次題:孤独 千年 パソコン
0138孤独 千年 パソコン
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2013/09/12(木) 23:19:25.83
ありとあらゆる出来事は確率によって保証されている。
起こらないことは「無い」し、
起こらないことは起こり得ないとも言える。
その辺を解消するのが驚異的な演算能力なんだけど、
突き詰めれば生涯かけても成し得ない、
膨大なデータを代謝するに相応しいアイテムといえば、
パソコンになるだろう。
進歩の過程に言及すれば、ダーウィニズムやラマルキズムの
いさかいになるから今は止めるよ(千年前に僕らが学んだことだ)。
ともあれこのデータに誰が目を通すことになるのか、
僕には分からないんだけれど、
僕の世界は今、結構ヤバい状況にある。
いつか全ての人々が享受する安寧、いわゆる贅沢品、
孤独という奴を人類総出で一斉に迎えつつある。
けれど、ようやくの段になってチャンスを掴んだ。
押し付けがましい話で申し訳ないんだけれど鍵は、
このデータが表示されている「君」のパソコンにある。
その鍵は残念ながら、探しても見つから「無い」し、
「得ない」とも言えるから、君は何もしなくていい。
おそらく何もできない…ただ、まあ、どうか僕らの、
確率による祝福を祈ってくれ。

偉大なる神性を顕すタウセティ語でこれらを記す。



次は、サーフボード 錬金術 少女
0139サーフボード_錬金術_少女
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2013/09/14(土) 14:59:11.70
 安岡は海岸沿いの道路の広い路肩に車を停めた。車を降りると海からの強い風が
吹きなぶった。暗色の海に無数の白い波濤が大小の皺を寄せているのが見えた。
 堤防の階段を降り、砂浜を遠い浜辺まで歩いた。風で体が時々かしいだ。
「おい、かりん!」安岡が声を投げた。
 はげしい風に声を持って行かれそうになって、大きな声になる。
 サーフボードを風よけに立てて、その風下に背を丸めてしゃがみこんだ中学生く
らいの少女が振り返って微笑した。
「おとうさん! おむかえごくろうさん!」風に負けじと声を張っている。
「少しは乗れたか?」
「三十分くらい!」
「それっぽっちか?」
「でも、危ないから!」それでもにこにこしているのは満足している証拠だ。
 安岡は朝早くかりんを海岸まで送り届け、三時間後の迎えを約束して仕事へ回っ
た。その頃は風も弱く、サーフィンをするには良い波をしていた。しかし雲行きは
すぐに変わり、かりんはずっとこうして海を眺めながら背中を丸めていたのかも知
れない。長い時間放っておいて可哀そうなことをしたと思った。
「帰ろう!」安岡は海に背を向けて歩き始めた。「寒くないか?」
 かりんはボードを砂から抜いて片手にかかえ安岡の後を追った。
「寒いよー! おとうさん、寒いよー!」暖を求めるように、空いた方の手で安岡
の背中から抱き着いた。
 父と娘になって三年。
 安岡は自分とかりんとの三年前の遠慮しがちな距離を思い出していた。
 名前だけの仮の親子から始めて、近づいたり 遠くなったりしながらぶきっちょ
な関係を積んできた。今もまだ間合いをはかりかね、気兼ねするときもある。
 それでもこの距離に近づいてくれたのが安岡にはうれしい。
 家族を名乗っても、人と人との関係に錬金術はない。鉛から金は生み出せない。
たとえ小さな小さな砂金の粒だとしても、大量の砂を掘り返して探し求められるも
のは本物の金だけだ。
 かりんの細い肩に安岡の掌がかけられた。寒い寒いと笑う娘の肩から安岡は暖か
さを受け取った。

 次は 抵抗 唇 前置き でお願いします。
0140抵抗 唇 前置き
垢版 |
2013/09/14(土) 23:02:35.75
「前置き」すれば後悔は無いと言うが、前置きできるだけの
「予め」みたいな余裕が、僕らには全く足りていなかった。
別れる前提で恋愛したりしない。
永遠は信じていないが、信じている体で
半ば確信犯的に
互いの信頼を委ねあうし、唇だって重ねる。
その唇で嘘を吐き、真実を騙る。
不用意に言葉を放ち、話すべき大事な話を飲み込む。
やがて溝は深まり、互いが決定的に分かたれる契機を待つ。
それぐらいが丁度良い。その程度で良い。
出会いや別れは、契約ではないのだ。
許しがたい聖域ではない筈だったけれど。
大した抵抗もせず、刺されてから気付くのは、後悔のやり所だ。
物語が語られるだけの予定調和は、至る所に落ちているという、
以上が僕の前置き。後悔は無い。


次は、類推、都市、幻獣
0141類推_都市_幻獣
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2013/09/15(日) 22:10:50.99
幻獣はしばしば実在動物の混合体である。
例えば龍は、全体が蛇、頭が駱駝、角が鹿、爪が鷹、掌が虎だという。本来は
生息圏を異にする砂漠の駱駝と森林の虎が出会うためには人間による移動、す
なわち遠隔地交易に依ったに違いない。したがって、本来の生息地を異にする
動物を混合した龍のごとき幻獣の発生は、交易の拠点としての都市文明の成立
後であったと考えられる。
だが、そもそも自由無礙であってしかるべき架空動物の創出において、既知の
実在動物を混合しただけの龍のごとき幻獣が何故広く人口に膾炙したのか?
いくつかの仮説は立てられている。
(1)単に古代人の想像力が貧困であった。想像力貧困説。
(2)本来は実在動物と無関係であったが、言語に依存した伝達の際に「駱駝
のような」「鷲のような」「蛇のような」と表現せざるを得ず、それが定着し
た。言語表現限界説。
(3)想像動物の創作の中心は日々の炉辺の談笑閑話にあり、一夜を楽しませ
る架空物語の素材として大量に生み出され大量に消費されたものの中からいく
らかが生き残り伝承された。あたかも今日テレビやゲームで無数の怪人怪物が
創出・消費されているようなものである。したがって、ゼロからの創作のごと
き手数はかけず、既存物の誇張や混合による創作が主流であった。キャラクタ
ー大量生産説。
私の仮説はこうである。いささか類推のきらいがあるが聞いていただきたい。
人間は嘘で固めた話は信じないが、事実の基礎の上に建てられた嘘は信じやす
いという。古代人にとっても、まったく事実の基礎のないお話は信じがたく受
け入れがたいものだったと考えられる。龍の体が実在動物を基礎としたのは、
虚構を受け入れてもらうためには事実を基礎としなければならなかったからな
のである。今日でも、われわれはDNAやミトコンドリアや放射線などといっ
た事実を利用した説明をつけなければ、恐竜映画ひとつ受け入れはしないのだ
。それと同じである。
0142名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/09/15(日) 22:13:28.44
次は 県庁 のれん 土産物屋
0143県庁_のれん_土産物屋
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2013/09/20(金) 05:35:36.40
 部活から疲れ果てて帰宅した麻江は、食卓に一人分用意されていた晩ごはんを食
べ始めた。台所からは母親の今日子が洗い物をする音が普段になく騒がしく聞こえ
ている。
<何? 母さん荒れてる?>
 麻江はほお張ったおかずをしゃくしゃくと噛みしめながら少しだけ首を伸ばして
台所をうかがった。皿や茶碗がぶつかり合って割れてしまいそうな音がしている。
<父さんと喧嘩でもしたのかな>快活な母が珍しいこともあったものだ。
 ごはんを自分で三杯おかわりして麻江のお腹がそろそろいっぱいになった頃、今
日子は台所から現れて麻江と食卓で向い合いに腰をおろした。興奮しているのか目
がぎらぎらと輝いていつになくこわい感じだ。
「麻江・・・・・・」今日子の話は唐突だった。「うちの商売やめなきゃならないかも知
れないの」
「え、土産物屋を?」変な声の返事になったのは口中にごはんがつまっていたから
だろうか。麻江の箸が止まった。
「今度、県庁が移転して新しくなるでしょう。うちはお爺さんの時からのれんって
いうか権利をもらって店を開いているのだけど、新しい県庁では認められないって
いうの」
「そんな・・・・・・」急なことで麻江はまだうまくのみこめない。
「父さんが怒っちゃって、県の人たちをどなりつけて追い帰したので詳しい事は分
からないけれど、うちの店は現庁舎が閉鎖されるまでで終りらしいの」
 ひどい、と麻江は思った。何がどうひどいのか言葉にできなかったが少なくとも
麻江の将来が後に戻りようもなく大きくねじまげられるのだということはわかった
。学校を卒業したら店を手伝って工芸品やお菓子のおみやげをお客さんにすすめて
いるお店で働く自分、覚えていないほど幼い頃からずっと抱いてきた麻江の強固な
未来イメージが一瞬で消し去られたのだ。
「父さんは知り合いの議員さんや県庁の幹部にかけあって撤回してもらうって言う
のだけど。うまくいくかは分からない。だからね。麻江には就職なり進学なりって
ことも真剣に考えてもらいたいの」今日子の目がらんらんと光って麻江に迫った。


次は、しこり 威嚇 同室 で。 
0144しこり 威嚇 同室
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2013/09/23(月) 02:07:36.03
「寮で猫なんか飼えないよ!」同室の美帆が言う。消灯時間まであと十五分。枕を抱え込んだパジャマの美帆は、もう何度目か同じことを言っている。「ぜ
ったい猫は飼えないのに」
「でも、この子は捨てておけないでしょ?」すやすやと眠る子猫をそっと撫でなんて可愛いのだろうと幸せにひたる澄夏はもう何回も繰り返した言葉をつぶ
やく。「ほおり出せって言わないよね」
「言うわけないでしょ」美帆が子猫に手を伸ばすので、純夏は子猫を抱いた両手を静かに美帆の方に伸ばしてやる。美帆の右手が子猫の頭に触れ、眠りを覚
まさないよう慎重に愛撫する。「でも寮で猫は飼えないんだよ」説得するのは優しげな美帆だ。
「どうして? 猫飼っちゃいけないって規則はないでしょ?」小声で言って純夏が頬をふくらます。
「規則がなくても飼えないの。常識よ」美帆の声は落ち着いている。
「そんな常識やだ。身につけたくない」純夏の鼻息が少しだけ荒くなり、美帆から子猫を静かに手元に引き戻す。
「常識は身につけるもんじゃなくて、人をしばりつけるもんなの」子猫を取られて宙に浮いた右手をひっこめながら美帆が軽く溜め息をついた。
 その時、二人の寮室のドアを強くノックする音がした。美帆と純夏はハッと顔を見合わせる。この断固とした叩き方は梶田良子寮監に違いなかった。
「梶田です。入りますよ」
 寮監の言葉に二人は「はい」と返事せざるをえない。
 梶田寮監が勢いよく入って来た。純夏は一瞬前に子猫を自分の膝にかかった布団にもぐりこませ梶田のするどい目をぎりぎり逃れていた。梶田は二人を代
わる代わるに見る。入寮以来二三の事件を引き起こしてきた純夏と美帆は、梶田にとっては要注意人物だ。
 梶田は純夏の方で視線を止めた。
「純夏さん。あなたとは色々な問題があったから感情的なしこりが残っているかも知れないけれど、このさい単刀直入に言います。ある寮生から建物内に猫
がいると通報がありました。その猫は純夏さん、あなたのところにいるというのです。それは本当ですか」梶田の張りのある声は最初からまるで叱りつける
ようだ。
 純夏は沈黙して梶田から目をそらした。するとその時、布団の下から威嚇的で鋭い鳴き声が部屋中に響いた。
 ニャーゴッ!
 梶田の顔色がサッと変わった。
0145しこり 威嚇 同室
垢版 |
2013/09/23(月) 02:09:59.85
知覚 貯蔵 のらくら
0146知覚 貯蔵 のらくら
垢版 |
2013/09/24(火) 17:20:19.81
 宝くじに当選し高額の賞金を手に入れた島川は派遣社員の仕事を辞め、
もう二年ほどのらくらと暮らしていた。朝から酒を飲んでギャンブルをし
て過ごしてもまだ数年は遊んで暮らせるはずだった。
 その日は十時間ほどたっぷり寝て、とうに太陽が高くなった頃に目覚め
た。いつもの癖で目覚めの一杯を飲む。島川は上体だけ起こし寝床の周辺
に沢山ある酒のボトルの中から腕を伸ばして一本取り上げて栓を開け、確
かめもせずにビンから直接口に入れる。うまい。あらためてラベルを見る
と五年貯蔵の芋焼酎だ。もういちど口に流し込み、ゆっくりと口内をゆす
ぐ。最近知覚過敏がひどく物を噛むだけで痛い歯ぐきを消毒しているつも
りだ。

次は、忍び寄る、忙しい、濃やかさ、でお願いします。
0147忍び寄る 忙しい 濃やかさ
垢版 |
2013/09/28(土) 23:47:30.60
 背後から眩しい光が忍び寄る。
 「ちょっと、早くどいてくれない? こう見えても忙しいんだから!」
 毎度の事ながら、私の背中にそう無言で威嚇するのはちょっと控えて
欲しい。
 今日は少し腹がたったので、明け渡さなければならない席からゆっく
りと立つ事にした。
 席の前に見える景色にも光が降り注ぎ始め、それを受けて朝露がきら
きらと輝き、その濃やかさに美しさを添えてる。
 「ほら、もう時間よ、何時までも居座るんじゃないの!」
 背中から注ぐ光はそう急かして、私を追いやろうとする。
 ……、仕方ない。
 「では、後はお願いしますよ」
 私はそう微笑みながら、席を背後の光に譲る。
 闇と星と月のカーテンを仕舞いながら振り返ると、優しい光のヴェー
ルが広がり始めていた。



 次は 「明日」「ウオッカ」「クラシック」 でお願いします。
0148名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/10/01(火) 11:06:58.04
出張で宿泊した田舎のビジネスホテル。
まわりは何もないし、俺は部屋でテレビを見ていた。
深夜でろくな番組もなく、CMは静止画に音声だ。
  明日の暮らしつくるスーパー魚塚!
あ、これ、この三語で書けのお題の「明日」「クラシック」「ウオッカ」が含まれてるじゃないか。
でも、さすがにこれじゃまずいよな。まあ、明日の仕事があるし、Youtubeのクラシック音楽でも聞きながら、ウオッカでも飲んで寝るか。
俺はそうした。


次は、「特別」「操作」「ポンプ」でお願いします。
0149「特別」「操作」「ポンプ」
垢版 |
2013/10/01(火) 12:27:54.86
 特別な存在になりたい。
本当の俺はこんなんじゃない、こんなはずじゃあない。
こんなよくある凡人のような人生で終わるはずがない。
俺は、そうだ、もっと人を、流れを操作できるはずなんだ。
だってそうだろ!? 小学校の頃はもっと周りに人が沢山居て、
女子だって男子だって俺を囲ってチヤホヤしていたじゃないか!!

 なのになんで今はこんななんだ!?
ベッドタウンのコンビニでバイトとして働いて。
働き終わったらボロい安アパートの自宅で飯食って寝るだけの日々。
あの頃の友人はどこへ行った!?
羨望の眼差しは!? 靴箱や机の中のラブレターは!?

…どうして……っ…

 だからこれは必要なことなんだ。
これは俺が特別に戻るための、本当の俺に戻るために必要なことなんだ―


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次は「王様」「逃げ腰」「エプーリス」
0150「王様」「逃げ腰」「エプーリス」
垢版 |
2013/10/01(火) 19:26:56.37
お后様と王様、毎朝パイを食べた。
テーブルの足元でお姫様の一人はそれをみていた。
骨は鼠にかじられた。

お姫様の一人は王様の口の中から
その夜お后様の口に宿って
お后様からまた生まれた。
土になって虫に塗れた。

生まれたくなかったお姫様はエプーリス。
王様の口の中で妹のパイを食べる。
最後はお父さんと一緒にミンチにされた。

国民はパイが食べたくて怒ったのに。
逃げ腰の王様は気にせずパイを食べた。
何もかもパイにして最後は自分をパイにした。

国中にパイがなくなってお姫様もお后様も王様も
みんな肉詰めパイになった。
残った国は隣の国からパイのように分けられて後は何にも残らなかった。
それからは鼠と虫が崩れた城に居て、パイの夢を見ている。

「菊」
「音楽」
「まるい」
0151「菊」「音楽」「まるい」
垢版 |
2013/10/02(水) 22:54:30.28
―菊の花は舞い散った

 私は何もしていないのに、ここではまるで案山子のようで。
さえずる鳥達、なすがままの私、時折カラスが突いてくる。
いつしか添えられていた花は、私にそれを望んでいるのか。
まーるいまるい輪の中は、限りなく外であって。
皆が奏でる楽しそうな音楽も、私にだけは雑音で。

 それでも私は?を吐く、堪える。
いつかにはきっと終わると信じる、思い込む。
思いつくこと、できることはそれだけなのだと。

だからソレは、救世で、確かに私の世界を救った。

菊の花は舞い散った―


次は「憐憫」「ひらがな」「ゲペックカステン」
0152名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/10/03(木) 05:07:59.47
男は背に突き出た瘤をゲペックカステンと呼んでいた。
戦車の外側に取り付けられた工具箱を意味する言葉らしい。
とても寒い、氷が笑いながらゆっくりと消えてゆく場所からやってきたと自称するその男は、
ひらがなしか書けないし、口を閉じてものを食べることができず、
容貌は「はかほりメアニヌ」という名の絵本に出てくる薄ら笑いを浮かべた食屍鬼そっくり。
憐憫を向けてやるにはあまりにも気持ち悪すぎ、嫌悪を向けてやるにはあまりにも哀れすぎる、
そういった類のやつだった。
怖いもの見たさ、あるいはゲテモノ趣味のために彼に話しかけてやる人間も、
数分後にはそのことを後悔する。
「あんた、そのゲペックカステンてのでね、体を修理するなら今だよ。あんたこのままじゃどうしようもないよ。
ぼやぼやしてないで早く、あんたの工具を取り出せよ」と初老の酔客がある日言うと、
男はべろんと舌を出して笑って、「この瘤は俺を治すためのものじゃないんだよ。
まず治すための工具じゃない、いじくるための工具だし、いじくるのは俺じゃない、人類という種なんだ」
酔っぱらいは頭の横で指をくるくる回した。そして次の朝、妻と子の背中に、大きな瘤を見た。
男の笑い声が聞こえた。
0154「うわごと」「証人喚問」「ランダム化」
垢版 |
2013/10/03(木) 06:45:34.08
エクセルにうわごとを表示させるプログラム
標準モジュールにコピーして貼り付けてください。

Sub uwagoto()
'エクセルVBA うわごとを三回繰り返す
For i = 1 To 3
'ランダム化 乱数の作成
Randomize
乱数 = Rnd
'うわごとの作成
If 乱数 < 0.2 Then uwa = "薬の治験データごまかした!" Else
If 乱数 >= 0.2 And 乱数 < 0.4 Then uwa = "政治問題になっちゃった!" Else
If 乱数 >= 0.4 And 乱数 < 0.6 Then uwa = "国会で問題になってる!" Else
If 乱数 >= 0.6 And 乱数 < 0.8 Then uwa = "証人喚問されちゃう!" Else
If 乱数 >= 0.8 Then uwa = "助けて!" Else
'うわごとの表示
MsgBox uwa
Next
End Sub
0155「うわごと」「証人喚問」「ランダム化」
垢版 |
2013/10/03(木) 06:51:55.36
次は、「世界を」「おれの」「ポケットに」でお願いします。
0157名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/10/07(月) 21:08:57.21
 新築の未入居アパートの二階の真暗な一室の窓の端から外を監視している西浦は、寝袋にくるまりながら白い吐息をついた。
 窓に結露が生じる恐れがあるため暖房を使えない部屋は冷え切っていた。監視対象が住む建物と道路をへだてた正面の部屋を大家から特別に借り受けることができたのは幸運であった。
 しかし、まだ誰も入居者のいない新築そのもののアパートでは、不自然になるため電灯をつけることもできなかった。
 電灯も暖房も、人間の生活から生じる様々な熱気がまったく存在しない空のアパートには、ただ張り込みをする二人の刑事、西浦と山木の体温だけしかなかった。この条件は、二月の札幌の夜では厳しすぎるものだった。
 西浦の肩が山木に軽くたたかれた。見張りの交代の時間である。西浦はそっと体をずらし、山木に位置を譲った。そのあいだ一瞬も監視対象から目をはなさなかった。
 窓から離れ、外からの視界を完全に逃れると、西浦は寝ころがって両腕を思い切りのばした。寝袋から這い出て両足も思い切りのばした。しかし数秒後には寝袋に再びもぐりこんだ。
 山木が配置につくこれから1時間は基本的に自由に使ってよい。西浦は上着のポケットから古い文庫本を取り出した。ハドリー・チェイスの「世界をおれのポケットに」だ。西浦は窓の外から入るかすかな明かりで読もうとした。しかし暗くて読めなかった。
0158名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/10/07(月) 21:13:33.97
次は 十年後 休息 谷底 でお願いします。
0159名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/10/22(火) 22:49:42.34
谷底に突き落とされた十年後、井原は目を覚ました。
大きく息を吸い込んで吐き出すと、錆び付いた肺から噴き出した塵にむせ返る。
その苦しさがいかにも「生きている」ものらしく、懐かしい。
随分長い休息になってしまったが、たまにはこういうのも悪くない。
新品同然になった自分の体を見下ろし、心の中でそう呟いたものの、ふとあることに気付いた。
服がない。
大半は転がり落ちた時に破れてしまったのだろう、残骸と思しきものが体のあちこちに張り付いていたが、大切な部分を隠すには到底足りない。
これではとてもではないが外の、もとい谷の上には出られない。
井原は少し思案したあと、ほとんど光の差さない谷の底を歩き出した。
自分と同じような目に遭った「人間」が他に居るかも知れない、探してみよう。


次は「誕生日」「インク」「展覧会」でお願いします。
0160誕生日 インク 展覧会
垢版 |
2013/10/24(木) 10:06:57.58
大河原はもう一時間半もひたすらサインを続けている。
小さな机に座り、並んだファンから展覧会の図録を受け取り、少しの会話をしながらサインして返す。その繰り返しだった。
初めは会話にももう少し余裕があったけれど、だんだん疲れてもくる。
サインする場所を指定してもらい、相手の名をたずね、献辞とともにサインをする。
時間内に終わりそうにないほどの行列を早くさばきたかったので、気持ちがせいてきていた。
顔はだんだんファンの一人一人を見ていないようになり、ほとんど図録の方を向いているようになった。
使い続けたペンはインクが切れてすべりが悪くなってきた。
次の人は和服の女性らしく白い手をしていた。
「ここにサインをいただけますかしら」
すずやかな声で、あるページが開かれて差し出された。
香菜子像。大河原の代表作である。
大河原はサインペンのインクでそのページを汚すのがうとましくて、思わず顔を上げて相手の顔を見た。
驚いた。十年ぶりに驚いた。
そこで微笑んでいたのは、十年前に大河原の前から忽然と姿を消した香菜子だったからだ。
しばらく声も出なかった。ようやく声が出たときには、思いもかけないバカげたことを口走っていた。
「そういえば・・・・・・今日は君の誕生日だったかな」


次は 気さく 破壊 遊離 でお願いします
0161気さく/破壊/遊離
垢版 |
2013/10/27(日) 10:48:46.24
世にも気さくな親父がいた。
しかし彼は一人娘を殺害されてから、性格が一変した。見るもの全ての人々を、こいつが犯人ではないかと睨みつけ、ちょっとでも目が合えば喧嘩をふっかけるようになった。
「お前が犯人だろ。俺の娘を犯して殺してバラバラにしてコンビニのゴミ箱の前に捨てたな。白状しろ」
「何言ってんだキチガイ。やめろ。あっ」
娘の殺されたコンビニで、親父は隠し持っていたプラスのドライバーで見知らぬ男の胸を数回突き刺していた。
男は「警察、救急車」と切れ切れに叫び、蹲って血を流したまま、動かなくなった。
「ざまあみろ」
嘲る親父の目に奇妙なものが見えた。
「なんだ?」死んだ男の体から、白く薄光りする玉が浮かび上がり、宙を舞い始めたのだ。
「死んで、魂が遊離したってわけか。こいつはいいや」
親父は血だらけのドライバーを握ったまま光の飛んでいく夜空に高笑いをした。
その大きく開けられた口に、飛んでいた魂がひょいと入り込んだ。
だが親父は、それが喉の奧に入り込む前にがぶりと噛んで噛み砕いた。
魂の中には、突然命をなくした男の無念と恨みの味が、これでもかという程つまっていた。
「うむ、いい味だ。だが、俺の恨みは貴様ごときの比ではないぞ。まだだ、まだ殺したりない」
親父は殺した相手の魂をも呑み込んで、恨みを重ね、夜の町を歩き出す。
「殺してやる。俺の人生、この世の中。全てを破壊して終わりにしてやる」
翌朝、親父の死体が川縁で発見された。付近の不良たちに単独で挑んで返り討ちに遭ったらしい。
それまでに付近で数件の通り魔事件が発生している。
犠牲者は五人。その魂が今はどこを泳いでいるのか、誰も知らない。

次「サイコ」「読書感想文」「火傷」
0162名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/10/29(火) 20:04:31.52
ほんとうに久しぶりに来たスレは過疎で、創作版でも最下位に位置している
あれほど好きで、はまって張り切って書きこんでいたのに、何でこんな処まで
此処は落ちているんだ。でお題は何だって?
サイコだろう、サイコと言えば羊たちの沈黙レスター博士が思い浮かぶ。小泉今日子が
ある番組でそのオマージュをやっていたような。どうでも俺には受け付けないと言いつつ
思わず見たくなってしまうよな? それでもそれでなくても
サイコという人の名前でも此処はいいんだ。喫茶店の名前に使用してもいいのがこのスレの
特徴だった。俺が遊んでいた時はそうだった。で、次は読書感想文ね。俺の作文なんて
読書感想文以下だよ。今変換で烏賊が出てきた。オモロイだろ、以下と烏賊の関係で
4百字詰め原稿用紙十枚以上埋めるのが作家志望の実力か? 俺は本を読まないからな。それでも
此処までやってりゃそれは自信あるぜ。最後火傷だろ。昨日サスペンスみたんだけど
その最後の犯人特定とかにこれは使用されるよな。俺ってこれだけサスペンス好きなのに
あんまり書いてないんだよな。何かコツとかあるのかな。荒唐無稽な話はお任せと言う位得意なんだけど
「文学界」「スバル新人賞」「暮らしの小説大賞」
0164名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/10/30(水) 03:34:21.33
バーテンダーから赤いカクテルを受け取ると、ふっと昔の記憶が蘇ってきた
あれは30年前のことだ。私が読売巨人軍の一員として腹監督の下で東北連合軍と戦ったあの最後の日のことだ。
私達は最終防衛線である奥多摩の山地の地下壕に篭り、来るべき決戦に備えてバットに釘を打ち、
残り少ないボールを磨いたりしていた。その次の日の明け方、私に水汲み番が回って来たので裏手の谷間にある
湧き水を汲みに一人出かけた。湧き水に反射された朝日は地下壕暮らしだった私の陰鬱な顔を変えていった。
その湧き水で喉を潤し、ボトルに湧き水を入れていたその時、ゴゴゴゴと地鳴りが山という山を揺らしたのだった。
「敵だ…」
私は急いで水の入ったボトルを片手で持ち山を駆け地下壕に戻ろうとしたが途中で友軍の杉内が暗い表情で立っていた。
ユニフォームはズタボロで泥と血にまみれていた。左腕がなかった。
「どうした?敵が地下壕をやったのか?」
「ああ、みんなやられたよ、一発だよ、ミサイル一発だ、壕の中は地獄だ」
杉内はそう言い、右手に持っていた釘バットを私に向け
「ああ痛い痛い痛いんだよ、腕千切れたんだぜ、投手生命終わったよ、これで俺はやってくれ、痛いんだよお……」
私は戸惑いながらも杉内から釘バットを受け取り
「我が巨人軍は永久に不滅だ、後楽園で会おう」と言い杉内の頭めがけてフルスイングした。
私は後を追おうとしたができなかった。血のついた釘バットで突撃すらできなかったのだ…
 
次「軽蔑」「革命」「妖怪」
0165名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/11/03(日) 05:45:15.99
あげ
0166名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/11/03(日) 14:09:06.36
>>149
ニュースに、特別捜査本部を入れてほしかったなw
0167軽蔑 革新 妖怪1 ◆4pgI1EkLlCjP
垢版 |
2013/11/07(木) 23:05:33.16
こいつはどうもしばしお付き合い願います。
しかしまあ夜が長くなりまして、今夜のような細い月、
まことに夜らしい夜月らしい月でございますな。
昨今は電気、という野暮な技術が夜を明るくいたしまして
風情も情緒も押しやられておる次第ですが
いやしかし、この座敷にそなえた広い庭が風情も情緒も守っておるようで
月は月らしく見えております。うちに陰を備えるからこそ月は美しい
わたくしはそう思いますね。
そして夜はかそけき光を含むから美しい。
ええまことに今晩はよろしい心地で語ることができますようで
わたくしには何よりの興でございます。
0168軽蔑 革新 妖怪2タルギはゲーム
垢版 |
2013/11/07(木) 23:06:46.71
さて、妖怪の話でございます。
妖怪は何の益にもならず、ただ人をぎょっとさせる、そういう存在でございます。
無益、いや害悪という人間もおりましょうな。
小さい肝っ玉を後生大事にしておる様はわたくしは心底軽蔑いたしておりますが、
多少の肝など潰しても、飄然とする妖怪にはわからない事情があるのですかねえ。
まあ人間も悲しい生き物でございますな。
飄然といえば妖怪は飄然とするのが本性、サガというものでして
ふらりふらりといるのやらいないのやら、世俗に関わるようで
その実、世俗に関わらないのが妖怪でございます。
0169軽蔑 革新 妖怪3タルギはゲーム
垢版 |
2013/11/07(木) 23:08:17.25
ところが、でございます。
昨今の技術革新というやつですか、
妖怪にも革新の風が吹き付けておりましてつくも神なんかには
電化製品だったものにも生まれているそうでございます。
新参のはやぶさなんかは神がかりを世間に晒して妖怪仲間からは顰蹙を買っておるらしいですが
小豆洗いの全自動を持ち込んだあのじい様よりかは
馬鹿にはされておらぬようです。
じい様、小豆洗いの音がしないってんで弱ってましてね
隣住民の洗濯音と間違われる馬鹿なじい様ですよ。
まあ手洗いに戻したそうです。
さてオチも流れてこの話会もお開きといたしましょう。
どうもお付き合い頂きましてありがとうございました。
0171軽蔑 革新 妖怪
垢版 |
2013/11/09(土) 00:34:43.58
さて、妖怪の話でございます。
妖怪は何の益にもならず、ただ人をぎょっとさせる、そういう存在でございます。
妖怪は害悪という人間もおりましょうな。
小さい肝っ玉を後生大事にしておる様はわたくしは心底軽蔑いたしておりますが、
多少の肝など潰しても、飄然とする妖怪にはわからない事情があるのですかねえ。
まあ人間も悲しい生き物でございます。
飄然といえば妖怪は飄然とするのがサガというものでして
ふらりふらりといるのやらいないのやら、世俗に関わらないのが妖怪でございます。
ところが、でございます。
昨今の技術革新というやつですか、
妖怪にも革新の風が吹いておりまして、つくも神が
電化製品だったものにも生まれているそうでございます。
新参のはやぶさなんかは神がかりを世間に晒して妖怪仲間からは顰蹙を買っておるらしいですが
小豆洗いの全自動を持ち込んだあのじい様よりかは
馬鹿にはされておらぬようです。
じい様、 隣住民の洗濯音と間違われて弱ってんですよ。
まあ手洗いに戻したそうです。
さてオチも水に流れてお開きといたしましょう。
どうも馬鹿馬鹿しい話にお付き合い頂きましてありがとうございました。 =====
字数制限あるのに気づかんかった
0174軽蔑 革命 妖怪
垢版 |
2013/11/11(月) 02:04:55.81
ぬらりひょんは顔を朱色に塗り、肛門に胡瓜を刺しこんで首を吊って死んだ。
かつて人間達の科学技術に真っ向から戦ってきたぬらりひょんは妖怪達の総大将として絶大な支持と人気を集め英雄と化していた。
しかし、妖怪研究家がぬらりひょんが一部の人間達と癒着し、妖怪達を欺き続けていたことを告発したのだ。
ぬらりひょんは元々、人間の家へ勝手に上がりこみ居座ることによって人間達に恐怖を与えていたが、
それが一部の反社会的な革命家やヤクザと手を結び、麻薬、覚せい剤や銃器の密売に手を染めるにまで到ったのだ。
この告発は妖怪界を震撼させた。かつて、ひだる神がやったことは嘘で、人間は食事を取らずに長時間歩けば低血糖状態に
なり倒れるという科学的根拠によって追い詰められ失脚し自殺したあの時以上に震撼させたのだ。
「あの偉大なる英雄ぬらりひょんが…嘘でしょ…」
「あの野郎、俺らを欺き人間達と手を組みやがって!」
「儲けた金でワシら妖怪の生活を良くする為なら話はわかるが、それさえも知らせずに自分の懐だけを肥やしていたとは…」
妖怪達はぬらりひょんを軽蔑し、さらには憎悪と怒りを募らせ、やがて爆発した。
妖怪達は高台にそびえ立つぬらりひょんの家に押し寄せ、
「人間と手を組むぬらりひょんを追い出せー!追い出せー!」とシュプレヒコールを上げ、ぬらりひょんを自殺に追い込んだのだった。
しかし妖怪界の中枢を支え持つぬらりひょんの死によって妖怪界は混乱と混沌の渦に巻き込まれ、
さらには人間達による徹底的な浄化作戦を許す形になり終焉を迎えたのだった。

次は「包丁」「警察」「嫉妬」
0175名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/11/18(月) 05:31:35.07
あげ
0176名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/11/18(月) 05:35:55.18
盛りあがってるワイ杯よりも敷居が低くて誰でも参入しやすいスレなのになあ、もったいないあげ
0177包丁 警察 嫉妬
垢版 |
2013/11/22(金) 11:45:49.18
 ベンチで目を覚ますと額に違和感がある。湿ったものが貼り付いているようだ。

「動いちゃダメ!!」顔に手を伸ばそうとすると、妹の声に遮られる。
 少し離れて彼女の立ち姿。手には、包丁?……それに果物?
 説明によれば、俺の額にアボガドのスライスがあり、そこでスズメバチが休んでいる、とのこと。

「で、なぜ俺にフルーツを盛った?」もろもろの買い出しの途上、俺達は公園で休んでいた。
「熱があったから冷やそうかと……ていうか、喋らないで」急な引越しの疲れが今ごろ出たらしい。
「警察が飛んできて職質されるぞ……食い物と一緒に仕舞えよ」
 しかし、飛んできたのは警官ではなく白黒の猫。ベンチの背に乗り、こちらを伺っている。
「猫、頼む。蜂を追い払ってくれ……アボガドはくれてやる」俺の依頼に首を振る猫。そして交渉を始めた。

「……猫の奴、『私を飼えば追い払う』と条件を変えてきた」帰り道、その時の様子を妹に語る。
「猫に足元見られたんだ?しょうがないなあ……で、何て答えたの?」
「『妹が嫉妬するから無理』……それを聞くなり何処かへ行きやがった」

次「冬支度」「封筒」「カラ元気」
0178名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/11/24(日) 17:10:16.70
 森の動物たちが冬支度を始めた。
リスは木の穴にたっぷりとドングリを詰め込んでそこに潜った。冬眠するならそんなに食料はいらないはずなのだが。
「俺は冬眠はしない。冬期の深夜アニメを録画なんぞに任せて春先になってから見るなんて馬鹿げてるからな」
 リスはそう言うと、ドングリを両頬につめながら、穴の奥に隠されてあるソニーのBlu-rayディスクレコーダーの前に陣取った。

 野ウサギは人間の作った廃屋の下で冬を過ごすことにした。
 そこへヤマト運輸の配達員がやってきた。
「おや、こんな所にいたんですね。住所が変わったので探しましたよ」
 そう言うと、一通のメール便を野ウサギに差し出した。
「ああ、すまんすまん。こいつを注文したのを忘れていたよ」
 野ウサギが封筒を開封すると、中には『劇場版・魔法少女まどか☆マギカ』のBlu-rayディスクが入っていた。
「そうだ、リスの穴に尋ねて行って見せてもらおうか。奴も喜ぶだろうし」
 野ウサギは円盤をくわえて、レコーダーを所持しているリスの穴へ向かった。

「ちぇっバカどもが。野生動物が豚に成り下がってどうするよ?」
 その様子を遠くで見ていた熊が言った。
「人間界に毒されやがって。まったく森の動物たちの風上にもおけん奴らだ」
 仲間に入れない熊は持ち前のカラ元気で山々に咆哮すると、最後は寂しげにその場を去っていった。
 その熊はほどよい穴蔵の寝床を探して冬眠に入った。
 しかし、そんな熊の腕にも、実は遭難者から奪ったカシオのプロトレックが黒く輝いていた。
 こいつは動き続ける。春先に熊が起きても、あるいは起きなくても、いつまでも正確な時刻を刻み続けている人類の英智であった。

「マッサージ器」「最新型ゲーム機」「女帝」
0179「マッサージ器」「最新型ゲーム機」「女帝」
垢版 |
2013/11/30(土) 00:09:16.60
冬の到来はすぐにきた。
秋めいたのはほんの瞬間で、もはや寒い。
「あ〜寒い寒い」
身をちぢこませながら夕暮れの家路をぼやいて歩いていると、
古いゲームセンターの前に一台のトラックがとまっていた。
商店街にある小さなゲームセンターで俺のいきつけだ。
すると店の中から運送業者らしき人とそのゲームセンターの店主である
バアさんが出てきた。
運送業者の人はバアさんに挨拶をして、急ぐようにトラックで走り去って行った。
それをながめていた俺にバアさんは気づいて、ニコニコしながら近づいてきた。
「あらおかえりかい、ちょうど今ね最新型のゲーム機が入ったんだよ」
「最新型のゲーム機?」
俺は少しいぶかるように聞き返した。
とても最新型のゲーム機を入れられるほどの余裕があるようには
思えなかったからだ。
それよりマッサージ器を買ったほうが良いんじゃないかとも思った。
「そう、女帝っていうんだよ、あんた知ってるかい?どうだいやってみるかい?」
俺の女帝との出会いはこうして始まった。
これがやがて世界をかけた大いなる戦いへと続くとは、
その時の俺はみじんの予感もしていなかったのだ。
0180「マッサージ器」「最新型ゲーム機」「女帝」
垢版 |
2013/11/30(土) 00:13:20.83
次のお題
『価値』『ブルー』『灼熱』
0181名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/11/30(土) 00:36:08.87
俺の価値はなんだろう。
灼熱の炎天下。こころなしか靴底が歩くたびに粘る気がする。
溶けてでもいるのだろうか。
ただ、歯車として社会によってすり減っていく日々。
会社に行きたくない。行きたくないい。
月曜日にはいつも脳内でわめき散らして電車に揺られている。
ブルー?そんな綺麗なもんじゃないんだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お局 猫なで声 救急車
0182「お局」「猫なで声」「救急車」
垢版 |
2013/11/30(土) 21:40:46.03
 寿司ロボット『お局 Mk-III』には顔がない。其れを失くしてから稲荷寿司しか握らなくなったと云う。
「――私の顔を複製し、ツボネさんに嵌め込むのですか?」
「ツボネさん本人からの頼みでは仕方ない。――早速、此処に顔を浸して呉れ給え」
 洗面器の底に沈着した砂に目を凝らすと、横たわる平目の姿が判る。立体物の表面をサンプリングする能力を持つ魚、との説明を受ける。
「嫌です、何か臭います。――あと、失くした顔の代わりと云うのも気味が悪い。抑、失くした、とは如何なる経緯でしょう?」
「聞く話じゃ、モデルの女性の仕業らしい。複製した顔の出来が良過ぎた事に腹を立てたそうだ」
「疑わしい。完成前に壊されたなら未だしも……」
「その女性は複製作業中に救急車に運び込まれ、長期入院を余儀なくされた」
「平目など顔に貼るからですよ!」
『其の頃は品種改良が不十分だったニャア』
「猫なで声で巫山戯ないで!」
「おい、今のはツボネさんの声帯模写だぞ?」
 唐突に平目が跳ね、瞬く間に顔を覆われて仕舞う。意識が混濁する中、私は、寿司を握っていた。
 ――おや?ツボネさんが普通のネタを握るなんて久々だなァ
 談笑する男達に混ざり、澄ました私の姿が見える。居た堪れない。……もう稲荷寿司しか握るものか、固くそう誓った。

============
次のお題は「工事現場」「プレゼント」「笑う技術」
0183名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2013/12/11(水) 08:05:14.65
「笑う技術」って何、意味わかんねえや。いちおう上げとくな。
0186「工事現場」「プレゼント」「笑う技術」
垢版 |
2013/12/12(木) 00:01:03.23
赤と白の紙でくるんだプレゼントの包み。
それを食卓に置いたまま、御主人様は眠ってしまった。
3日徹夜して、初めて編んだセーターだったのに・・・

表情が堅過ぎたのだろうか?
「そんな無表情で渡されても」という困惑した表情を思い出す。
「クリスマスプレゼントだろう、もっと明るくなれないのか」
しょんぼりと肩を落とす彼女を置き去りに、イブは過ぎ去って行った。

時は過ぎ、彼女は某工事現場で、来月に向けた最終準備を行っていた。
今度こそ、次のイブには、もう一度プレゼントを渡そう。
今は薄汚れた作業着姿だが・・・その時は白いドレスに天使の微笑で!

笑う技術を実現した「人間脳シュミレーションセンタ棟」が
彼女の電子脳に接続される日は、ようやく間近だ。

残る問題は御主人様。
あれから250年。もしも無事解凍できなかったらと思うと・・・
まったくもって、笑えない話だ。

※なんとかムリヤリ書いたー
  次のお題は:「クリスマス」「猫」「ダイオード」で御願いします
0189182
垢版 |
2013/12/12(木) 09:39:39.96
>>186
お手数を取らせてしまいました。反省しています。
0193クリスマス、猫、ダイオード
垢版 |
2013/12/22(日) 09:36:37.53
凍てつく雪の夜なのに仕事とはやれやれだ。俺は湯気のたつカップ麺をすすりながら望遠鏡を覗いていた。
十五歳年下の女の相棒は、熱いシャワー室で呑気に鼻歌を唄ってやがる。前の事件でこいつの裸を見たことがある。胸の薄いまだガキだ。
冗談じゃねえ。なんで張り込み捜査に男女ペアなんだよ、ドラマじゃあるまいし。
とその時、外からドアをノックする音がした。はっとした俺は短銃を確かめて応える。
「空いてるよ」
ドアが開いた。「宅急便です」
ヤマト運輸の青年がにこりと笑って荷物を差し出した。香取慎吾に似ている。
なんでここに荷物が届くのかわからんが、俺はサインをして荷物を受け取った。
「わー、何が入ってるの? 一人だけずるーい」シャワーから出てきた相棒がすぐに荷物に興味を抱いた。
「俺は知らん。欲しけりゃやる」相棒は喜んで、荷物を開けた。
中には一匹の本物の三毛猫が丸くなって入っていた。
「死んでるのか?」
「暖かいわ」
やがて猫が息を吹き返して、にゃあとないた。
「かわいー」リンダは猫を抱きかかえた。
しかし猫を見て俺はぎょっとする。「おい、見ろよ。猫の背中だ」
猫の背中に、規則正しく並べられた光の点滅が認められた。なんだこりゃ?
「猫の皮膚の下に発光ダイオードが仕込まれているぞ」
発光ダイオードは光の文字を形成した。《メ…リ…ー…ク…リ…ス…マ…ス》
「差出人はしゃれてるつもりか。気持ちの悪い演出だぜ」
「誰のプレゼントかしら?」
俺ははっとして先程の望遠鏡を覗く。裏窓の奥から女がこっちを見ている。テレビ東京のキャスターに似た巨乳の女は笑って手を振った。
グッドバイ……だと?
「ねえ」と相棒。
「なんだ?」
「この猫、お腹の中から時計の音がするよ」
「バカ! 早くその猫を捨てろ」俺は窓を開けて、猫を空に放り投げた。
大爆発。ホワイトクリスマスに赤い花火がまき散らされた。そして雪も血も、何もかもがストップモーション。
映画のタイトル『ダイオード』が映し出される。
2013年12月全国一斉公開。前売り券お求めは当劇場にて……

次「ICレコーダー」「エージェント」「ガングリオン」
0194「ICレコーダー」「エージェント」「ガングリオン」
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2013/12/31(火) 00:32:16.62
ガングリオン(結節腫)だろうか?
向かいに足を組んで座った男の上の脚の、ズボンの裾から突き出した踝の辺りが、
ヤケに膨らんで夜店のヨーヨーのように見えた。
黒の靴下がゴム風船で中にパシャパシャと水を抱えていそうな感じだ。
昔のスパイ映画のようなベージュのトレンチコートに同色の中折れ帽を被っている。
日本人離れしたぱっちりとした目にくっきりとした鼻。顎のラインは四角くがっちりとしている。
誰かを思い出せそうで思い出せない。

気を取られながらも、俺はICレコーダーのスイッチを入れる。
丁度良く、「次は桜田門……」のアナウンスが流れはじめた。
車両内は閑散としていて労せずしてクリアな録音が手に入りそうだった。
ICレコーダー……桜田門、IC……警視庁。あッ"ICPO"。
「銭○のとっちゃんか」と俺はうっかり呟く。すると、向かいから、
狙い澄ましたように「ルパ〜○!」と、ダミ声の物マネが返って来た。
コスプレか。

次は「手帳」「コスプレ」「雪」でお願いします。
0197「手帳」「コスプレ」「雪」
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2014/01/02(木) 20:48:59.12
「かけそば2人前で1200円です」「はい。ごちそうさま」
今年最後の客を見送り、、怪人手帳マンはふうと大きく息をついた。
午後23時40分。年越しの客が寺へと向かう頃合だ。だがほんの30分もすれば、
甘酒を求める帰りの客でまた賑わうだろう。
「今年も、なんも、なかったなあ」
自然とため息がでた。と、ブルンというバイクの音がして、馴染みの客が一人暖簾を潜る。
「やあまいった。雪だぜ。単車にはつれえや」「あ、本郷三」
入ってきたのは元仮面運転手、本郷三丁目猛だ。昔交えた干戈を懐かしみ、
いまでは蕎麦屋の主人とは往来のある仲だ。
「燗で頼む。なあに、帰りは押していくさ。しかし、暇そうだな」
「今だけですよ。ええと、セグウェイ? あれだと雪でもいけるんですかね」
「さあね。最近の仮面運転手はセグウェイだのロケットパックだの、変なモンばっか押し出しやがる。
ガキの夢はね、やっぱバイクだ。バイクじゃなきゃ駄目だよ」
と、ガラガラと音立てて入り口の戸が開いた。4歳くらいの子供連れの男が入ってくる。
「寒い寒い。とても並んでなんていられないよ。年越しはここで暖まって、人が減ってからいこう」
「やだい。ぼくは、年が変わるのをお寺でみるんだい」
「そういうな。大人閑居して高志を養うという。ここはひとつテレビでも見ながら……おっ、怪人さんじゃないか」
「へえ。恐縮です」
「わあ、おじさんそれコスプレ? 変なのぉ」
手帳マンは言葉に詰まった。猛がくつくつと笑っている。
「コスプレじゃないよ。改造人間だよ」
「うそだい。そんなつくりもの、テレビで見るのと全然違うや。やーい、コスプレ、コスプレ」
「コラッ、失礼じゃないか。この人は本物だ。すみません、どうも」
「お構いなく。私みたいに古い怪人は、いまいちリアリティが薄くって」
そういうものだ。それにこの父親も、怪人には気づいたが元運転手には気づかない。
と、くるりと踵を返した童子の背に、古臭いヒーローのお面が裏返っているのに二人は気づいた。
「……変わらなきゃいかんのは、俺らのほうなのかもな」猛が呟く。
「いえ、いいんですよ」手帳マンは微笑んだ。
「僕ら夢は夢のまま、大人がふと懐かしんだときに、この格好でなきゃ嘘ですもの」
そんな会話をよそに、店の片隅では親子が赤い手をさすっていた。
0199ラムネ、山の学校、プール
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2014/01/05(日) 14:37:52.68
「ほう珍しい物を買ってきたな」
「じいちゃん上げるよ。懐かしいだろ」
孫が初詣の出店で買ってきたラムネを、欽三は珍しげに手に取った。
欽三は寝たきりでほとんど外に出ることができない。
それを慰めようと、孫が買ってきた昔の飲み物だった。
「これは飲み方にコツがあるのじゃ」
孫はすぐに外に遊びに行ったが、欽三は誰にともなく独り言を言いながら瓶を傾けようとした。
その時である。
「なんじゃこりゃあ?」
瓶の中にある玉が黒い。それだけでなく、液体の中に黒い何かを放出している。
よせばいいものを欽三は瓶を傾けてそれを味見してしまった。
「う……うぅむ」
欽三は白目を剥き、失神でもするかのように見えた。
しかし逆であった。
立てないはずの欽三は、すっと立ち上がり、囈言のように呟くのだった。
「行かねばならん。思い出した。わしは、行かねばならんのだ」
家族が止めるのも聞かず、欽三は身支度もほどほどに杖を掴んで家を飛び出した。
欽三の視界には、電脳ナビの画面のような地図と矢印が映り、彼の行く先を案内していた。
それは現地点から206キロ離れた、彼の学んだ片田舎の、山の学校。
そしてその中の雑草の生えた廃プールに、若き日の欽三が犯した罪が眠っている。
事実なのか、妄想でっち上げなのかわからない。
ただ言えるのは、寝たきりの欽三が一人で歩いて旅だったという事実である。

次「防空壕」「社長」「電動歯ブラシ」
0200「防空壕」「社長」「電動歯ブラシ」
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2014/01/26(日) 10:46:28.70
2月14日はバタンレインが降る。
残業ですっかり遅くなった俺は諸悪の根源のバカ社長と市の共同防空壕に逃げ込んだ。
市の共同防空壕は主要道路に3`間隔で設置されている。
0時数秒前のことだった。
重い鉛の扉を閉めると、すぐにバタンレインデーの嫌らしい音が聞こえだす。
防災休日のしかものんびりとした地方のオフィス街で防空壕に他に人は居なかった。
バカ社長がコートの懐から電動歯ブラシを取り出し歯を磨きだした。歯周病が気になるお年頃になったらしい。
超音波が五月蠅い。バタンレインの音は脳へ直接響く音なので不快音が二重になる。
しかもバカ社長「みゅかしは にゅがつ じゅよっか は……」ぶしゅぶしゅと何か話そうとするな! まったくブサイクな女だ。
俺はもの凄く疲れたとジェスチャーをしてみせ、簡易ベットの一つに横になると、さっさと眠りに落ちた。
夢の中でバタンレインのドクダミと梅干とドリアンを混ぜ合わせたような禍々しい匂いの
黒いスライムに圧し掛かられてもがいて――目が覚めると枕元に黒いリボンの掛かった小箱が置かれていた。
防空壕の中に社長の姿はない。あのバカ、バタンレインの中に出たのか!
命に深刻なダメージは無いらしいが、今とは違うベクトルでおバカになられると会社が危ない。
小箱をポケットに突っ込み、社長を探しに外へ出ようと重い扉を開け――ああ諸悪の根源の妄執は……
俺は暗雲渦巻く空を見上げて差し出されたチョコを囓った。バタンレインは止んだ。

次は「蚤」「心臓」「告白」でお願いします。
0201「蚤」「心臓」「告白」
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2014/02/08(土) 23:36:35.26
猫を拾ったはいいが全く懐く素振りがないまま1ヶ月が過ぎた。
「なつ」か「な」いからナツナなんて名前にしたから余計に拍車がかかったのだろうか。
ナツナが蚤持ちなのは分かって居るんだが触らせ無いのでどうしょうも無い。
お陰で6畳1間の俺の城は蚤パラダイスになってしまった。
「お前なんか拾うんじゃ無かったよ」などと告白して見ても猫に言葉なんか通じる訳でも無く、この先どうしたものかと頭を抱える日々が続いていた。

ある日帰るとナツナが見当たらない。心配にもなったが懐かなかったと言う事はここが居場所だとは思え無かったんだなと思い
「怪我も治ったんだ。達者でやってけよ」
と届く筈も無い言葉を呟やいて買っておいたバルサンを炊いた。
部屋の外で待機しようと扉を締めると中からにゃあと声が。
心臓がきゅっとなって慌てて扉を開けるとへ?なに?と言うような顔をしたナツナ。
神出鬼没過ぎんだろ!と毒づきつつもナツナを抱えて動物病院へ駆け出すのだった。
結果炊き出して直ぐだったから影響はナシ。ついでに蚤も見て貰えて返ってラッキー。
あれ?そう言えばいつの間に抱っこさせてくれる様になったんだ。

次は「積雪」「筋肉痛」「ダンボール」でお願いします。
0202「積雪」「筋肉痛」「ダンボール」
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2014/02/09(日) 09:59:57.71
師走に都内に引っ越した。4年ぶりの東京だ。
部屋はかなり狭くなって、満足に荷解きする余裕もない。おまけに全室フローリングだ。
ベッドを買えば余計狭くなる。一計を案じ、空いたダンボールを畳んで
毎夜フローリングに敷くことにした。大きさが足りないから上半身と下半身でセパレート、
各3箱で6重のクッションになる。ここに敷布団を敷くと具合がいい。片付けも楽だ。
正月を越すと引越しの熱も冷め、なんだか面倒なことはやりたくもなくなる。
結果ふた月たってもダンボールベッドのままだ。が、一朝目覚めてふと首の後ろが騒いだ。
雪が、積もっている。
小生北国の育ちで朝の空気で雪が降ったか降らないかわかる。というと少々誇りすぎで、
外の物音をきくと雪が積もっているかどうかわかる。雪のない土地の人でも、
雨の降った降らないはなんとなくわかるだろう。あれである。
ダンボールベッドは床に近く、フローリングは音をよく響かせる。
内地へ来て20年になるが、けさ目が覚めた瞬間に床全体が自分の耳となって、
雪の日の物音を聞き分けたのだ。育ちは争えない。
期待してカーテンを引くと案の定の銀世界だ。積雪はささやかだが東京では珍しい。
人には見せられぬダンボールの寝床も、案外いいものじゃないかと思い直した。
少々筋肉痛が残るのが玉に瑕だが。

次「梅の季節」「納屋」「うさぎ」でお願いします。
0203名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/02/11(火) 10:47:16.54
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
一話なのに五羽。

次「立春」「改悛」「急峻」でお願いします
0204「立春」「改悛」「急峻」
垢版 |
2014/02/17(月) 01:33:14.25
ふと、人を殺した時の事を思い出した。
こうして唐突に浮かんで来るなんて改悛の念なのだろうか。ただ単に人生の節目だからなのだろうか。
相手は父親。どうしょうも無い奴だった。仕事もせずに昼間から知人を集めては酒を飲みながらの麻雀。
母が身をすり減らしながら稼いだお金はそこに消えて行く。私が小学校を卒業する頃に母は私を置いて出て行った。
それから父は私を売り物にした。
初めて売られた日、私に土下座して「父ちゃんはバカで稼げないんだ。お前に頼るしかない。勘弁してくれ」の様な事を涙ながらに言われた。私が支えないと、と強く思ったのを覚えている。
いつも通り学校から帰って直ぐに父が連れて来たお客の相手をしていると、隣の部屋から麻雀の音と共に
「折角あいつが置いてってくれたんだから有効に使わにゃ。バカでも股開く位はできますわ」
と笑いながら話す声。
あぁやはりこの人はバカなんだな、そう言う話は本人に聞かれたらダメでしょう?
安普請なアパートの急峻な階段。アル中の父。後ろからとん、と押すだけで済んだ。打ち所が良くて即死だった。止めまで考えて居たのは無駄になった。
その後、自首して施設に入り、そして独り立ちしてなお、心療内科の世話になりながら今日まで過ごして来た。
あれから10度目の立春を迎えた今日、私は結婚します。相手は私の過去を知った上で受け入れてくれる、私と同じように少しネジの緩んだ人です。
お父さん、お母さん。産んでくれてありがとう。少なくとも貴方達よりは幸せになります。
0207名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/02/23(日) 17:26:31.28
南国 ビーチ 浮かれ気分

確かに寒いよりはいい。
だが、日本の「南国」を売りにした観光地は一体何を考えているのだろう。
努力で越えられない壁がある。これがわからない世代が観光地産業を担っているとは思わないのにどうして浮かれてしまうのか。
南国の記号化されたイメージ。それは、輝く太陽、青い海、白い砂。肉感的な女。
こういう爽やかなビーチであって、「お泊まりはこちら」「南国マンゴー饅頭」「お食事処 漁り」だのの、地元感溢れる地域産業の入る隙間は本来ないのである。
異国情緒、せめて非日常を求めているのに、日本語で商売っ気を押し出されては、浮かれ気分は台無しだ。
だから、ひとつ提案しようじゃないか。
異界を作れ。
代替品はやめろ。
日常を離れた場所のユートピアは、もう現代には架空にしかないことは、ディズニーランドでわかってるじゃないか。
夢をつくれ。
ドイツのノイシュヴァンシュタイン城は、ファンタジーに傾倒した馬鹿王の産物だ。
それが今はロマン街道で観光名所だ。
だから。
テンプレの、ギルドがあり飯を食うのに架空の通貨を使い、猫耳メイドがいる総コスプレ、やってみて。お願い。

次は
白い皿 温かい 湿度
0208「白い皿」「温かい」「湿度」
垢版 |
2014/02/26(水) 18:10:57.55
雲一つない青空いっぱいに、巨大な白い皿が何百枚も浮かんでいる。
皿の周りは赤い光で縁取られ、ピカピカと明滅している。
俺はこのシュールな光景にあんぐりと口を開けた。
「いったいこの国はどうなっちまうんだ……」
そんなことは誰にも分からない。
湿度が高く空気がむしむしする。
夏休み直前、学校帰りに空を見上げていたら、
こんな事態に出くわしてしまった。
20××年……! 未知の飛行物体が日本に襲来……!
俺は地球外生命体が地球にやってくるという歴史的瞬間に立ち会っていた。
でっかい白い皿の群れは所在なくフワフワと浮かんでいたが、
突然、円の下の中心に穴のようなものが出現する。
「何をするつもりだ……!」
俺の胸に興奮と恐怖が同時に去来する。
皿の真ん中に空いた丸型の黒い穴から、金色の温かい光が降り注ぎ、
それを浴びた俺の身体がフワッと浮き上がる。
俺の体は上空数十メートルまで重力を無視して浮き上がる。
ああ……俺は宇宙人に誘拐されてしまうんだ……。
そして手術をされてホルマリン漬けにされて、
宇宙の博物館におもしろおかしく展示されてしまう運命なんだ……。
悲嘆に暮れながら、眼前を埋め尽くす白い皿の中に俺は吸い込まれる。
この事件から数日後、俺とタコ型宇宙生物の奇妙な共同生活が始まるが、
それはまた別のお話――――。
次のお題は「赤」「推理」「猫」でお願いします。
0209赤 推理 猫
垢版 |
2014/02/26(水) 21:43:34.29
「赤か黒か、どちらかのカードをお選びください」
 西洋風の古びた洋館の一室に、アンティークな木製のテーブルが置かれている。紫色のローブを纏った占い師風の女と向かい合わせに座っているスーツの男は、机の上に置かれた二枚のカードを真剣な顔で見つめている。
 二人の周囲には屈強そうな大男が数名、拳銃を持って立っていた。部屋の片隅には銀髪の小さな猫が一匹いて、じっとしたまま切れ長の目を光らせている。
 スーツの男は額から滲む汗を手の甲で拭いながら、必死の形相でなにやら思考を繰り返していた。
 おそらくカードの選択次第で、この男の命運が決まるようだ。男は震える手を右側の赤いカードへと伸ばす。だが触れる寸前でその手を戻した。
 男は頭を抱え、その後顎に手をやり、落ち着かない様子で貧乏揺すりをしながらしばらく迷っていた。その姿はさながら推理小説に出て来る探偵のようだった。
「そろそろ決めて頂けますか。こちらも暇ではないので」
 待ちくたびれたように女が言うと、大男二人も追従するように威圧的な態度を見せる。焦った男はわかったと何度も頷きながら、震える手を黒いカードへ伸ばす。
 まさに手が触れる寸前で、男の耳に甲高い猫なで声が響いた。直後に銀髪の猫を見つめた男は、意を決した様子で口を開く。
「あの猫が選んだほうにする」
 そう言って立ち上がると、彼は猫に近づき抱き上げた。ふらつく足取りで席に戻り、カードの前に猫を近づける。
「さあ、選んでくれ――」

 古ぼけたアパートの一室に、しわがれたスーツの男が立っていた。その傍らで銀髪の猫ががつがつとキャットフードを食べている。
「お前のおかげで命拾いしたよ。借金も帳消しだ。ありがとうな」
 銀髪の猫は、男の声に応えるように愛らしい鳴き声をあげた。

次のお題は「旅館」「温泉」「怪獣」
0210名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/02/26(水) 22:22:17.55
温泉怪獣あらわる!
湯治客をまとめて三十年のおやっさんこと、立花は温泉から生まれた怪獣をみて呟く。
ラジウムが、そんなにも活性化しているというのか?
温泉旅館街はパニックだ。
この不景気に、大雪に消費税に、さらには怪獣なんてあり得ないわ、と。
そこで、ある男が、立ち上がった。
産湯から温泉に浸かり続けた男。
温泉効果で追従を許さない餅肌と、水泳で鍛えた体。
水鉄砲の命中率は世界一、いや宇宙一。
地元企業協賛のもと、リョカンダーに改造された甲斐充(かい・じゅう)
行け?!リョカンダー。戦え、リョカンダー!

待て、次回。しかして希望せよ。

次回題:次回 放送 未定


いけ、リョカンダー。倒せ!リョカンダー!
0211次回、放送、未定
垢版 |
2014/02/27(木) 13:33:34.49
ひとりのテレビプロデューサーがある企画を実現させた。
過激な番組作りで局内でもカルト的な人気がある男だ。
議論に議論を重ね、ついに待望の新番組の放送が決まった。

タイトルは『男だらけの水泳大会! ポロリもあるよ!』。
肉体美に自信のある益荒男たちが水泳競技を通じて、
友情を育み、熱く闘い、互いに鎬を削るという番組内容だ。
新聞広告欄に登場するまでは、順調であった。

――が、一度衆目を集めてしまえば視聴者がそんな内容の番組を許すはずがない。
当然のごとく放送局はクレームの嵐で大騒ぎになった。
「気持ち悪い」「お下劣すぎる」「そんな番組見たくない」「株を売る」
連日のように電話越しに罵詈雑言が叫ばれ、脅迫まがいの内容の手紙がTV局に山ほど届いた。
悪い意味で話題性抜群のこの番組は急きょ放送中止になった。

番組はニュースに取り上げられ、新聞やゴシップ誌に嘲笑され、
ついにはお蔵入りになり、番組を企画したプロデューサーは降格させられた……。
新しくプロデューサーになった男は汚名返上のために新たな企画を立ち上げる。
待望の次回作、番組のタイトルは『老人だらけのゲートボール大会! ポロリもあるよ!』。

――放送は未定である――
次のお題は『迷宮』『銀の剣』『ランタン』でお願いします。
0212名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/07(金) 20:39:46.46
村の郊外に「大迷宮」と呼ばれる洞窟がある。
その洞窟は山脈へと続いており、村よりもその全貌は大規模らしい。
洞窟の奥底にあるという「銀の剣」は大変高価なものである。
それは村を都市に変えてしまうほどの財産なのだ。
そのため、年に1回、選ばれた村人の屈強な男を探索に行かせる「スペランカー」という行事があったりする。
だが、そこに行って帰ってきた者は誰独りいないのだ・・・。

そして、ぼくは「大迷宮」の奥底にいた。
装備は、もうぼろぼろの服にランタンとショットガン。
幸い、拳銃を使うような機会はなかった。
目の前には「銀の剣」がある。
ぼくは、それを引っこ抜こうとした。
無事、抜くことができた。
全く錆びたところがない、見事な剣だ。
「ん?」
揺れている、地面がうなるように。
「まさか・・・盗人に天罰が下るとか・・・」
剣が刺さっていた穴だ。そこから水流が・・・。
大きい肉体は吹っ飛び、ぼくはどこかに流されてしまった・・・。

意識が覚醒して、半ば瞳を開ける。
「ここは・・・」
温泉だった、とても気持ちがよい。
まるで、羊水に浸かっているような、母性を感じられた。
「ママン・・・」
大勢の男たちがそれを呟く。
ふと、ぼくは握っている剣を見た。
フツーに錆びていた。ただの剣だったのだ。
こうして、ぼくもマザコン、帰らぬ人になってしまった・・・。

長過ぎですかね?
次のお題は「ホモ」「森」「環境問題」でお願いします。
0213ホモ、森、環境問題
垢版 |
2014/03/09(日) 09:48:14.34
「あの連中とは一緒にしないでくれたまえ。私は何も環境問題に興味があるわけではないんだよ」
白髪の老人はしわがれた声で眼鏡の女性に言った。
「じゃあなぜ島の開発に反対するんですか」
フォーマルな身のこなしから、彼女はジャーナリストのように見える。
「君にはわかるまい。わかってたまるものか」
「はあ……?」
「あの島は、男のロマンが詰まっておるのだ。だから誰にも渡せない。国にも、外国にもだ」
「どういうことですか。私にはサッパリだわ」
「すまない。これでは説明になってないね。ではこれを見たまえ。その方が話が早い」
室内の一面に大きなスクリーンが広がる。老人は机上のボタンを押した。
「ぽちっとな」
冷静だった女の表情が、さすがに変わった。
「ああっ、なんですかあれは?」
女の口が、リアルなダッチワイフのように開かれたままになった。
スクリーンには、問題の島が移っている。青い海と緑に覆われた美しい孤島だ。その中央部の森が、老人のボタン操作によって真っ二つに割れはじめたのだ。
「ふふふ、これを作るのに二十年かかったよ。二十年と言えば赤子が成人になるまでの年月だ。今君が見ているあれはね、私の夢の子供、ドリームチャイルドなんだよ!」
老人はまるで少年のように興奮していた。
映画のワンシーンのように割れた森から、漆黒の機竜の勇姿がせり上がってきた。
「巨大ロボット? しかもゴジラ型だなんて!」
「女の君でも興奮するんだね。うれしいよ、私の趣味をわかってもらえて」
「いえ、呆れました。島にあんた私物を建造するなんてばかげてる。世界指折りの資産家のやることが特撮ごっこだなんて。私、帰ります。どうやら時間の無駄だったようだわ」
女は、取るものも取らずに早々とその場を立ち去った。
あとには老人の出したホモ牛乳が一口も飲まれずに残されている。その液面は、女の荒々しい動作のために微かに揺れていた。
「残念だ。ショーはこれから始まるというのに」
一人残された老人は別のボタンを押す。スクリーンの映像は、詳細な情報を表示した平和な日本地図へと切り替えられていた。

次「タブレット」「燭台」「戦闘機」
0214タブレット 燭台 戦闘機
垢版 |
2014/03/14(金) 23:58:37.48
そう遠くない場所から戦闘機の爆撃音が聞こえる。
日が暮れそうだからと灯したこの蝋燭も、もうすぐ消さねばなるまい。
いや、家から明かりが漏れていようといまいと、彼らはその弾の威力で、
ここいら一面をすべて瓦礫の世界へと変えてしまう気だろう。
蝋燭の明かりに照らされた燭台は、先祖代々受け継がれてきたものだ。
それももうすぐ、打ち砕かれるのだろう。
私達がなぜこれほどまでに彼らに憎まれるのか、私にはわからない。
もちろん、国には地下資源があり、立地的にも貿易に有利な場所なのだが…。
我々はその恩恵に心から感謝し、他国に敵愾心を持つことなど、一度もなかった。
今私の目の前に、発展から少し取り残されたこの国には珍しい、今風のタブレットがある。
どういう仕組みなのかはわからないが、指で画面をチョコンと押すだけで、あの仕掛けが発動する仕組みになっているらしい。
彼らに一矢報いるために、今は亡き同士が考えてくれた方法。
十分に引き付けてからでなければ、意味がない。
と。近くでダダダと、一斉掃射の音がした。
いまだ!
私の指が画面に触れたのに数秒遅れて、ひゅるひゅると不気味にタマの上がる音がした。
そして閃光と体を震わせる強烈な音。
窓から、この世のものとは思えない光の芸術が降ってくる。
一瞬掃射の音が止んだ。が、それもわずかな間だった。
弾の直撃で、蝋燭が、燭台が、跳ね飛ぶ。
しかし…私の心は満たされている。
心にあるのは恐怖ではない。
今見た光の美しさへの純粋な感動、それだけだ。


次のお題「桜」「コンクリート」「わら草履」
0215桜、コンクリート、わら草履
垢版 |
2014/03/16(日) 10:24:27.61
男はわら草履を履いていた。この感触がいい。足裏が刺激されて、いい話が思い浮かぶ。
男は作家だった。
「もう四月か」
すでに第二の古里となっているこの地を踏みしめて、男は呟く。視界には一本の桜の巨木が見える。
「あなた、作家の信藤基さんですよね」
桜の木に見とれていると、いつの間にか隣に女が来ていた。
見るからに都会の女だ。とても観光に来ているようには見えない服装には、静かな緊張が張り詰めていた。
「あなたは? なんとお呼びすればいいのかな」
「刑事さんで結構です」女は黒い身分証明書を示して言った。
「ほほう、これは」
「ずいぶん探しました。まさか事件の容疑者にミステリー作家が浮かぶとは思わなかったわ」
「ようやくたどり着いた……というわけですね。しかし私は何も話しませんよ。法律ならあなたより詳しいつもりだ」
「あいにく、私は大藪春彦しか読まないんですよ。手っ取り早く事を進めませんか」刑事の懐から取り出されたのは、短銃だった。
「これは、本物ですか」作家は物珍しげに自分に向けられた銃口を見た。
「死体のある場所に案内しなさい」
作家はスコップで桜の木の下を掘り始めた。
「刑事のお嬢さん、あなたが想像しているものなんてありはしませんよ。青いビニールに包まれた大きな長い塊、白骨化して蚯蚓が絡まった死体、そんな類いの物はないんです」
「作業中の長台詞はリアルじゃないわ。黙って働くのよ」
やがてスコップが、ひどくわざとらしく何かに当たって音がした。
「何よそれ? コンクリート詰めにしたの。壊すのに一苦労しそうね。爆薬でも持ってこればよかったかしら」
「その必要はありません」男は言うと、何かを短く詠唱した。
それを合図として大きなコンクリートの塊が揺れ、二つに割れた。
「ああっ!?」
粉塵の奥から二つの目が光る。
「女刑事さん、はたして大藪春彦だけでこいつに立ち向かえますかな。私はこれを封印するつもりだったんですがね。あんたは運が悪い」
男の言葉は遠くに聞こえた。
「それからもう一つ、私はもうミステリーなど書いておらんのです」
モーターの駆動音と冷却ファンの音が近づく。しなやかな影からそれが女性型だというのはわかった。

次「領空侵犯」「蘭虫」「パチスロ」
0216名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/16(日) 10:49:54.50
「バリア、バリアー」
「空中はセーフ?」
「領空侵犯だからダメー」

近所の子どもだろう声が外でしている。
領空侵犯、などと言う言葉が遊びで出てくる時代だ。
玄関でボロいサンダルを踏みつけながら蹴りいれるようにはく。
その物音でか、妻と、世間ではいうらしい同居女の金切り声も飛んできた。
「どこへいくの?仕事探してんのか?てめえはよ!」
はは、随分汚い女になったじゃないか。
「パチスロ」
一言、聞こえるかわからないが優しく答えてやる。
恐らく聞こえないだろう。
しかし、聞きたいなら近くにきて話すはずだ。
聞きたくないなら、聞かなくてすむようにしてやるから。
ガチャッと扉をあけて外を出た端から、玄関の鍵がかかる。
ホウシャノウという言葉は、領空侵犯もなにもなく
この町を侵して久しいのだろう。
なにもかも不確定だ。
答えを出せないのか、出したくないのか。
ひとつ、確定なのは俺たち夫婦間には、死んだ子どもがいた、ということだ。
それは、蘭虫のような頭部をもっていた。
0218名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/17(月) 10:53:31.72
少女は砂浜でピラミッド型の何かを作って遊んでいた。
動物の毛皮を袈裟懸けにしているため、片方から未熟な乳房を覗かせている。
ずっと独りで遊んでいるようだ。
同年代の子供がいないのだろうか。
その時、波が砂浜に押し寄せ、少女の作品は消え去った。
「あーあ」と少女は溜め息をついた。
しばらくして、遠くから夕煙が立ち上った。
「あ、もう行かないと」
チャンスだ、見張っていた甲斐があった。
僕は友人と共に少女に近づき、喋りかけた。
「ねえ、これ知ってる?」
見せたのは姉様人形。
「なにそれ?キレイな人・・・」
完璧に変装をしているためか、少女に警戒心はなかった。
「僕の作品なんだ、もっと見せたあげるよ」
少女は森までのこのこと付いてきた。
僕は本性を晒し、少女を性欲のままに蹂躙した。
「お前も如何物食いだなあ」
友人が呆れたように言う。
「この女の子も他人とは異なる素晴らしい美的感覚だよ」
縄文時代でも僕の作品が認められるなんて、とても光栄だ。
0219名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/17(月) 10:55:32.11
次は「SMクラブ」「妖怪」「殺人事件」でお願いします
0220名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/18(火) 22:21:06.41
「SMクラブ」「妖怪」「殺人事件」

その村さついにカソッチンが現れただよ。
過疎地に出現するっちゅう、あの妖怪カソッチンさ。
天真爛漫なカソッチンは幼子のように振る舞って年寄りをみんな元気にしちまう。
みなカソッチン囲んで手を叩いて大声で笑ってさ、もう家にじっとなんかしてられない。
ただただ愉快でどんどんどんどん元気になって、そのうち村の再興なんか企てたりし始めてな。
外から人を呼び込むのにSMクラブなんかこさえたらどうだべ、って村長さんが言ったもんさ。
誰一人その道に精通する者はなかったけど、「やる気になればなんでもできる」に異論を唱える者もなし。
世界中からその手の人間が押し寄せたって、迎え入れるどころか迎え撃つ気概すら持っていた。
決して殺人事件なんて起こらなかった長閑な村だったけども、様相は変わってくるだろうなぁ。
なんたって目をギラギラさせてSMクラブ運営に取り組む老人が待ちかまえている村だよ。
平穏でいられるわけがない。愛憎だってこんがらがってさ、命を落とす者もあるだろうよ。
それもこれも踏まえてなんだろうなぁ、村長さんがミカン箱に乗っかって声張り上げたもんさ。
「餃子の町だの、ゲゲゲの町どころじゃねぇ。わしらの村はSMの村だで! 横文字だで!」
もう起死回生。みんな灰になるどころかハイになっちゃってハイタッチなんかしたりしてな。
で、カソッチンが姿を消していることに、だぁれも気づかないんだなぁ、これが……。


「365日」「ポイント」「小型犬」でお願いします。
0221名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/21(金) 19:22:16.32
子犬を1匹、36500円で買った。かわいらしい小型犬だ。
その帰り道、スーパーマーケットで「100円で1ポイント」の張り紙を見た。
私は毎日このスーパーマーケットで最低100円は買い物をしている。
私は手もとのキャリアの中の子犬を覗き込んだ。
それから財布の中のポイントカードを見た。ちょうど365ポイント貯まっていた。
私はポイントカードを子犬の目の前で破り捨てた。子犬は首をかしげただけだった。
私は言った。
「君は運が良かったね」


次は「充電器」「蟹」「テレビ番組」でお願いします。
0222名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/23(日) 10:20:21.64
「充電器」「蟹」「テレビ番組」

俺はひとりで蟹を食べている。
通販で取り寄せた産地直送の美味いタラバだ。
妻は充電器ポットで眠っている。
俺の妻は電気人間なので当然蟹など食べない。
だから俺は好物の蟹をいつも決まって妻の寝ている間に食べる。
好きなテレビ番組も録画して妻が寝ている間に見る。
掃除も洗濯も、たいてい妻が寝ている間に俺がする。
なぜなら妻は23時間充電で1時間しか稼働しないからだ。
そして俺たちは毎日濃密な1時間を過ごす。
毎日1時間しか会えない俺たちは、さしずめサイクルの短い織姫と彦星だ。
30分後に目覚める妻を思うとドキドキが止まらない。
蟹の残骸を片づけ、風呂に入って身を清め、そして24本の剣をテーブルに並べるんだ。
妻の喜ぶ顔を早く見たい。
彼女はどんなふうに目を輝かせ、どんな声を上げるんだろう。
俺たちは今日、黒ひげ危機一髪で大いに盛り上がるのだ。ワォ!


「スズメバチ」「お好み焼き」「軍隊」でお願いします。
0223「スズメバチ」「お好み焼き」「軍隊」
垢版 |
2014/03/24(月) 17:44:50.83
ザッ ザッ ザッ ザッ
まだ微かに人の気配がする廃墟に響き渡る軍靴の音
壊れたスピーカーから流れるるは今はもう忘れ去られた軍歌

一つの国があった
一つの国が滅びた

灼熱の業火の前に
千万からなる軍隊は8日ともたず
破れ、敗れ、倒れ伏した者たちは皆
今もまだ戦渦に囚われ此方を彷徨う
人の在り方を忘れても
誇りと想いは忘れずに

軍靴は通り過ぎ去った廃墟に
一件のお好み焼き屋があった
店の主人は軒先の鉢に水をやる

水やりを終えると空を眺めて呟いた
「八日八夜の涼め鉢、業火に灼かれた命を静め…か」

どこで響く軍靴の音はやがて
ガチッ ガチッ ブーン ブーン と音を変え
曇り空には蜂が舞う

次に次にと空に消ゆ
一千万のスズメバチ
0225名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/25(火) 18:42:19.31
「カード」「燐光」「副次効果」

腕にしがみつき震える女に向かって、男が愉快そうに言った。
「どうしたんだい、君が来たいって言ったんじゃないか。
 それにしても、よくできたお化け屋敷だなぁ、ここ。
 あ、あの揺らめく人魂の正体は燐光、夜光る文字盤に使われる物質だよ。
 あの切り離された首を抱えている人だって、蓋を開ければなんてことないからくりさ。
 この世に科学で証明できないことは何もないんだからね。
 ただね、この手の脅かしって、人を謙虚にさせる一面もあると思うんだ。
 死んだご先祖様からのメッセージって、むしろみんな触れたがるだろ。
 怖いもの見たさの楽しみのほかに、驕った己を顧みるって副次効果もあると思うんだ。
 僕はお化け屋敷の面白さはよくわからないけど、怖がりたがりの君をかわいらしいと思うよ。
 今日は本当に誘ってくれてありがとうね、まさか君が僕なんかを――」
と、その時、墓石から飛び出した無数の手が男を墓の中に引きずり込んだ。
女は無表情のままポケットからカードを取り出し、いつの間にか隣に立っていた首なし男に手渡した。
首なし男はポンとハンコを押すと愛想の良い声で、
「ずいぶん貯まったねぇ。あと3人獲物を連れてきたら、死んだ恋人に会わせてあげるからね」


「地図」「ハッピー」「バイオリン」でお願いします。
0226「カード」「燐光」「副次効果」
垢版 |
2014/03/25(火) 19:16:03.47
被ってしまったけどせっかく書いたので投稿。

満月の夜、村はずれの墓地に三人の子供たちが集っている。
眼前には彼らの膝ほどの高さしかない小さな小さな墓標があり、これを正面に手と手をつなぎあい声をそろえる。
「大魔王サタンの名の下、永遠の庇護を」
文句を終えると、足もとの土が動き、「わっ」とゼルが退いた。地表突き破ってきたそれは青い光をまとっている。
「平気さ、ただの燐光だよ。蘇生式の副次効果にすぎない」とシキセが解説する。
出てきたのは一匹の子犬。だがその首は垂れて伸び下がり、右目は飛び出で、左足は奇妙な方向に折れている。
「さすが君のおじいさま、大魔道士との呼び名高いルディスのカードだ。僕らのような力の弱い者でもあつかえた」
シキセは実に感心した様子で、墓上に置いてある死者蘇生の魔法カードを手に取り、ツゥに返す。
「カードもどす時ヘマして見つかるなよ……。ていうかツゥ、早く防腐剤かけてやれよ」ゼルが急かす。
「ふふ、おそろいね」生気のない片目で見上げてくる子犬の土を払い、ツゥは持参してきた薬剤をふってやる。
子犬は「ボフッ」と、空気の洩れたような鳴き声を発し、それでもうれしそうに尻尾を動かした。
「愛情だよ! 互いの愛情の強さがこの魔法のキーなんだ。それが証明できて僕はとても満足だ」片腕しかない手を
大げさに揮い、シキセは演説するように言う。ゼルは「フン」と鼻を鳴らし、縫い目の生々しい首筋をさすった。
子犬と同じく右目だけのツゥは、土気色の顔でやさしく微笑み、子犬を愛おしげになでる。
生気のない六つの目が、夜の墓地に鈍く光っていた。

「地図」「ハッピー」「バイオリン」でお願いします。
0227「地図」「ハッピー」「バイオリン」
垢版 |
2014/03/25(火) 19:25:31.52
その地図には幸せが詰まっているという。

生まれてこのかた幸せなどと言う言葉とは無縁に生きた私だ。
ハッピーエンドな映画が大嫌いで良く見に行く私だ。
そんなものの存在を聞けば「ありえない」と口では言うものの、
心の底では欲しくてたまらないに決まっている。

だからだ、だから。
涙ぐましい努力の末に、
一括現金前払いで手に入れたそれがこんなものでは堪ったものではない。

なんだこれは?
違う、分かっている。
演奏の経験こそ無いものの、一時は良くその音色を耳にしていたのだ。

これはバイオリンだ――地図ではない。

結局のところ私はまた騙された、そういうことなのだ。
世の中ホントに見事なものだよ。

――だが、まあ。

口実くらいにはなるだろう。
「高い金払ったんだからそれくらいには使われてくれよ?」
そう語りかけ私は『地図』をポンと叩いた。

力の抜けた私は、久しぶりに。
ほんの少しだけ、笑えた気がした―。


次は「小旅行」「賞用」「金満」でお願い。
0228名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/25(火) 22:05:18.24
「小旅行」「賞用」「金満」

姪っ子を一日預かることになった。小学3年の女児である。
もう食い物を食い散らかす年でもなかろうと、賞用のヴィンテージカーに乗せてやった。
小旅行に繰り出そうぜぃ、とハイタッチを求めると、「しょーりょこーってなに?」と気のない返事。
近場へのお出かけだよ、と答えると、「じゃ最初からそう言って」とこうだ。
頭をひっぱたいてやりたい衝動をぐっと堪え、
おじちゃん今にわか金満だから肉でも寿司でも何でもご馳走すんぞー、とひきつる笑顔でそう言うと、
「きんまん? なにそれ? なにきんまんって? どういう字?」と興奮気味に訊ねる。
金曜日の金と満月の満だよと教えた途端「ぎゃーーーおじちゃんやらしい! ママに言いつけちゃお!」
俺はたまらず車を止めた。
俺に非はない。俺に非はないのだが……。
だが俺はこの世の中でこの姪の母、つまり自分の姉ちゃんが一番怖い。
非はない。非はないのだけれども……、姉を恐れるあまり姪に謝ってしまった。
どうか秘密にしておいて下さいと頭を下げ、お札による口止め料まで支払ってしまった。
姪は別れ際「またしょーりょこー行こうねー」と満面の笑顔で手を振ったが、
俺はもう成人するまで会ってやんないつもりでいる。


「ヨガ」「欠席」「爆笑」でお願いします。
0229「ヨガ」「欠席」「爆笑」
垢版 |
2014/03/27(木) 09:54:34.49
 一週間前、風邪で学校を休んだ日。母はパートの後すぐ帰ってくると言ったのだけど、平気だからと答え、毎月
のヨガ教室にもいくよううながした。月謝がもったいない、というのは口実で、ようは厄介ばらいをしたわけ。
 夜までの自由を手にした私は、リビングで毛布をひっかぶり、バラエティなど見ては爆笑して過ごしたんだけど、
昼くらいに玄関のチャイムが鳴った。面倒なのでテレビの音量を下げシカトしていると、しばらくしてガチャっ
とドアの開いたような音がした。「え?」と思い、おそるおそる廊下を覗いたがだれもいない。みても玄関の鍵は
かかっている。気のせいかと思うことにしたんだけど、それからは人の気配があるように思えてしょうがない。
 向こうをふいに人影が横切る、後ろの床がきしむ、触れていないドアが少し開いている……そんな気がする。
もうなんだか落ち着かなくって、こわくなって、結局家族が帰ってくるまで自室で布団をかぶってじっとしていた。
 次の日登校すると、私は忘れ物をしたことになっていた。図画に使う道具セットだけど、そんなの聞いてないし
メールももらってないというと、私の後ろの席のMさんが昨日プリントを届けるついでに連絡したはずといわれる。
で、そのMさんは私と入れ替わるように欠席。というかその日からMさんは行方不明になった。私はMさんと特に
仲がよかったわけじゃないけど、席は近かったし、それに時々腕とかにアザがあったりしたから、心配になって
声をかけたり話したりしていた。彼女は帰宅部で友達もいないような子で、おとなしく目立たない存在だった。
 プリントは後でなぜか通学鞄から見つかった。そして家ではいまだに人の気配がする。時々父がうろうろと確認
しにいくけど、結局無言で戻る。無駄だと私はなんとなく思う。彼女ほんとに目立たない子だったから。

次は「病院」「コーヒー」「オーケストラ」でお願いします。
0230名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/28(金) 18:50:32.80
「病院」「コーヒー」「オーケストラ」

悪夢を見た。
一生に一度見るか見ないかの、ひどい悪夢だった。
俺は大ホールで「森のくまさん」を独唱させられることになっているのだ。
振り返れば整然とオーケストラが居並び、しかつめらしい顔の指揮者がタクトを振るっている。
観客席に視線を戻すと、着飾った紳士淑女で埋め尽くされているではないか。
指揮者がぬっと俺に近づき、こそっと耳打ちしてきた。
「微笑んで。由紀さおりとその姉のように、微笑みをたたえて」
俺は呼吸困難に陥り、ある日森の中でクマさんがいったいどうしたのか、歌詞がすっとんでしまった。
前奏の終わりとともに自分の悲鳴で目覚めた俺は、病院のベッドに寝かされていた。
付き添っていてくれたのか、コーヒーをすすっていた友が、覚醒した俺の顔を嬉しそうに覗き見る。
そして、酔って噴水に飛び込み溺れて死にかけたのだ、と事の顛末を教えてくれた。
俺は友の口髭にうっすら乗ったカプチーノの泡を眺めながら、
「ああ、夢で良かったよ」と思わず呟いた。
友は顔を曇らせ、指を提示し何本に見えるか、などとあたふたしていたが、
俺はこの至って平和な現実に心底胸を撫でおろし、本当に夢で良かったよ、ともう一度呟いた。


「科学捜査」「羽毛」「コショウ」でお願いします。
0231名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/31(月) 19:38:05.29
「科学捜査」「羽毛」「コショウ」

祖父母宅は友樹の家より大分離れているので、めったに来れない。一緒に夕食を食べるのも今日が初めてだ。
「鶏肉かぁ、めずらしいなお袋」とからあげを見て父がいうので、「そうなの?」と友樹が聞く。
「友樹がからあげ大好きじゃいうからな、特別じゃ。普段うちじゃ食わん」
首を傾げる友樹に祖母が続ける。「ウン……まあ、ある学校の話でな、娘さんが飼育当番やっとったんじゃ。
んで、ある朝、同じ学年の男子らが血相変えてきて、おまえの世話しとった鶏がおらん、逃げてしもうた、
いうてな、急いで見にいくと、たしかに小屋におらん。戸の金網に穴が開いとって、こりゃ猫じゃ、猫に
やられたんじゃ、と騒ぎよる。娘さん、そうかぁ、いうて懐からルーペだして科学捜査じゃ。小屋んなか
みて、羽毛つまんでな、たしかに猫の仕業じゃ、でも気の毒な猫じゃなあ、この羽毛の色からして、あの鶏
は病にかかっとる、たちの悪い伝染病じゃ、あんなもん食うたら、はよう水んなか入って体冷さんと、一日
もたず死んでまうで――いうてなぁ」
「……それで、猫死んじゃったの?」
「いんや。猫は無事じゃ。そげな病ウソじゃからな。そンかわり猫の仕業じゃいうてきた不良どもが、その
あと貯水池にとびこんでちょっとした騒ぎになったくらいじゃ。前の晩に鶏あぶって食うとったらしい。
で、その悪ガキどもの主犯格は、以来鶏肉が苦手になったっちゅうてな……――のう、爺さん」
そう祖母が声をかけると、祖父はくしゃみを一つし、「コショウ効きすぎじゃ……」ボソッとつぶやいた。

「旅行」「鬼」「太陽」でお願いします。
0232名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/03/31(月) 22:03:39.46
「旅行」「鬼」「太陽」

子供の頃、我が家では「サバイバル鬼ごっこ」という遊びがあったんです。
父と母が鬼になり、私と弟が捕まらないよう逃げるわけですが、
本格的というかなんというか、食料をリュックに詰めさせたりするんですね。
0700時、と1200時と、1800時にそれぞれ1時間ずつ食事の時間に当てられて、
その時間だけは、音を立てても、明かりをつけても、火を使っても大丈夫。
何故か太陽に当たったら焼け死ぬ、というドラキュラ設定だったため、昼間外に出られない。
一年に一度のペースで行われるこの鬼ごっこ、なんと3、4日続いたりする。
私と弟はこのスリリングな鬼ごっこが大好きだったんです。
お彼岸に実家に帰ったおりに、その話になりまして。
私と弟が思い出話に花を咲かせている横で、母は一切覚えてないと言う。
ボケるにはまだ早いだろうと、ああだったでしょうこうだったでしょうとヒントを与えておりますと、
突然母がポンと膝を叩きまして、そして口にしたのが「ああ、旅行行ってたわ」と。
「あんたたちおりこうさんだったから、お父さんと二人でお出かけしてたわ」と。
私と弟は絶句いたしましたが、悪びれもしない母と、やはり朗らかな笑顔の遺影の父を見ましたら、
とても怒る気にはなれませんでした。


「エイプリルフール」「財布」「メモ帳」でお願いします。
0233エイプリルフール 財布 メモ帳
垢版 |
2014/04/01(火) 00:14:17.08
さっき携帯を寝る前に充電しようかと
入れっぱなしだった鞄を覗いたらですよ、
「探さないで下さい 財布」とメモを残して
財布が家出をしたようなのです。

え、嘘でしょうと、再度確認してもやはり
メモが残り、財布はないのです。
あ、メモに使ったメモ帳は見つかりました。
そうか、エイプリルフールか、もう0時を過ぎたのだ
と思い当たりまして、家人に
「きみのところにいるのだろう」
と聞いたのですが、知らないというのです。
一体どうしたことでしょう?
もし、見かけましたら金が財布から逃げたのは
お前のせいではない、といってやって下さい。
また金が逃げてもそれは消費税が悪いのだといってやって下さい。


次のお題

桜 歯科医院 定期
0234「桜」「歯科医院」「定期」
垢版 |
2014/04/01(火) 03:31:04.29
「はい。これで治療は全ておしまいですよ」

 私はその声を聞いて、閉じていた目を開ける。舌で探ってみると、少し前まで穴の空いていた奥歯は、すっかりと平らになっていた。
 私は舌を戻し、変な味のする口を濯ぐ。すると待っていましたとばかりに、いつものお小言がはじまった。

 『詰め物が取れてしまうので、一時間は物を食べないようにしてください。』はい。
 『これからは奥歯も丁寧に磨くように気を付けて。』はい。
 『くれぐれも甘い物も食べ過ぎては駄目ですよ。』はい。
 『ちゃんと定期検診も忘れずに。』はい。

 あと、と先生が切った。椅子から降り、最後にもう一度口を濯いでいた私が、はい?と疑問符を付けてそちらを見ると、手袋を外した先生の掌が、私の頭を軽く叩いた。

「明日から高校生なんだってね。卒業おめでとう。もうここには来ないで済むといいですね」

 先生はそう言って、にこりと笑った。私ははじめての笑顔だと思いつつも、その言葉にもはいと頷いて、ついでに今までのお礼を言ってから頭を下げた。
 受付で会計を済ませて医院を出ると、庭に植えられたら梅の花が散りかけていた。そうなると、今頃桜は満開なことだろう。
 辛かった週一の苦行も終わり、明日からはこの島を出て高校生だ。多分もう地元に帰らない私は、二度と口うるさい先生にお小言を言われずとも済むのである。なんと素晴らしきかな。

 さあ日も落ちるし、そろそろ家に帰ろうとした時、ふと、卒業おめでとう、と言った先生の笑顔が頭を過ぎった。だけど私は、あんまりおめでたくないかなあ、と、ぼんやりと呟いた。


次のお題
「マグカップ」「青春」「かなしい」
0235「マグカップ」「青春」「かなしい」
垢版 |
2014/04/01(火) 22:28:31.89
珍しく彼女の部屋に呼ばれた。
「料理作った。食べて!食べて!」
大学生になるというのに、どこか子供じみた言葉遣いをする彼女。
そして、思考もそれに負けないくらいどこか幼さを残している。
まぁ、そういうとこが俺には可愛くうつるんだけどね。
「で、何を食べさせてくれんの?」
皿を見ると、三色の丸まったクレープ状のモノがのっかっている。
赤いのはたぶん紅しょうが。緑のはほうれん草でも練りこんだのかな。
黄色は素直に卵焼きだ。
彼女にしては、一応外見が料理になっている。問題は中身だが…。
「こ、これ、何て料理?」
間髪入れずに
「赤春巻き・青春巻き・黄春巻き!」
俺たちは同じ演劇部で、昨日ベタな早口言葉の発声練習をしたところだった。
あの時彼女は最後をつっかえて、顔を真っ赤にして自分に憤っていたが、
今回の発声は見事だった。ま、『黄春巻き』って、言いにくくないけどね。
けど、これ“春巻き”かなぁ…。
箸でつまんで中身をのぞきこんでいると、彼女がマグカップを差し出してきた。
「タレ!」
…底が深すぎて、つけにくいよ。それでも頑張って押し込んでつけた。
食べてみて…まぁ、人間の食べる味ではないかもとは経験上わかってたんだが。
目のふちに涙をためた俺を見て、
「かなしい…?」
彼女がのぞき込んでくる。
彼女の顔をまじまじと見つめ、彼女との前途多難な将来を思い、それでも胸に湧いた感情は。
「うれし涙だよ。良い彼女をもって幸せだなって」
そのあと彼女が顔をくしゃくしゃにして泣いたのは、かなしかったからではないはず。


「春風」「豆腐」「地下鉄」
0236名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/04/04(金) 19:48:56.29
「春風」「豆腐」「地下鉄」

年のせいだろうか、最近ますますキレやすくなった。
今日も電車内で隣に座った男が瓶詰の柿の種を抱えて食べ始めたことにキレてしまった。
すぐさま他の乗客に羽交い絞めにされ、ことなきを得たが、キレると私は我を忘れてしまう。
地下鉄を降り、地上に上がった途端、春風が頬を撫でていった。
見上げると桜の花びらがハラハラ舞っている。
私は思わず立ち止った。
そう怒りなさんな、と、自然にさとされた気がした。
イライラしたってなんの得にもならないし、体にだって良くないのだよ、と。
金輪際怒るのは止めよう。禁酒禁煙のように真剣に禁怒だ。私はそう決心した。
とその時、背中をどんと押され、「邪魔だババア」と男が私を追いこしていった。
私はその若造を追いかけ、襟首をつかむと、ビルの隙間に引きずりこんだ。
ほぼ半殺しにしてしまってから、
「お前なんぞ豆腐の角に頭ぶつけてしんじまえ! ゴートゥーヘル!」
言い捨て、すぐさま後悔した。舌の根も乾かぬうちになんてざまだ。
だが自分を変えるのはなかなか難しい。だってかれこれ80年もこうして生きてきたのだから……。


「手相」「ヌンチャク」「バラ色」でお願いします。
0237名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/04/06(日) 00:18:10.32
「手相」「ヌンチャク」「バラ色」

「お、ますかけ線だね。」
友人は私の手を握り、ジロジロと見つめながら言った。
私はいままで数々の占いの練習相手にされた。
タロットから始まり、風水、星座占い、そして今度は
手相にまでどっぷり浸かってしまったらしい。
「それ、どうなの?」
「別名、天下取りの相!人生バラ色だよ!」
どうやら彼によると天職にめぐり合えば成功するらしい。
PCに向かう私にはもっとアグレッシブな道があるのだろうか。
中途半端に自分について見透かされたようで気が沈んだ。
「みずがめ座の皆さん。残念ワースト1位です。
 ラッキーアイテムはヌンチャクです」
電子に日々追われる人生なら、
ヌンチャクというバラ色の天下を追うのも悪くない。
「あ、んじゃ次は四柱推命で、、、」
彼もまた、ますかけ線の持ち主らしい。

「木枯らし」「神社」「ドイツ」
0238名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/04/06(日) 10:39:13.41
「木枯らし」「神社」「ドイツ」

あれは木枯らしの吹く頃……
飲み会でしたたか飲んで、機嫌よく千鳥足での帰宅途中、
自宅近くの神社から「カーン、カーン」と乾いた音が響いてきたのです。
やだ、丑の刻参り? などと身震いしながら、でも怖いもの見たさで境内に入ると、
図体のでかい白人が、拍子木を鳴らしながら独り言を言っています。
耳を澄ませて聞いてみると、
「エー ドイツカラ キマシター エミールサンデース ッテ ドコノ ドイツジャー」
媚びる笑いを振りまく様から、どうやらお笑いの練習をしているらしい。
私が姿を現し、おっかなびっくり話しかけてみると、彼は大道芸人だと名乗り、
ドイツに帰る旅費を稼ぐため、今シャベリに磨きを掛けているとこなのさ、
……みたいなことを、ジェスチャーを交えて言いました。
なんでこんな場所で、と尋ねると、怒られないし追い出されないから、とそんなようなことを。
神様が怒って鎌持った死神を遣わすから、と酔いにまかせて私が全身全霊で脅しますと、
「ゴミを捨てないで下さい」という立て看板に、彼は延々命乞いをしておりました。
そんなエミールですが、今では優しい2児のパパ、私のよき伴侶であります。


「目覚まし」「日記」「カシューナッツ」でお願いします。
0239「目覚まし」「日記」「カシューナッツ」
垢版 |
2014/04/06(日) 11:41:21.98
「目覚まし」「日記」「カシューナッツ」

引っ越し先の部屋を片付けていた時、空色の本が出てきた。
前の住民の物だろうか、長年お供したであろうクシャクシャの表紙には
日記と図々しく書かれている。どこかで見たような主張の激しい字だ。
そういえば何処か懐かしい香りがする。ノスタルジックな間取りだ。 
前の住民には悪いが、他人の記憶の最後の一頁をめくった。
『4月21日(日) あいつがいきなり家にきた。カシューナッツしかねぇよ。
          なのに大好物だって。ごめんな、裕夏。明日は一緒に
          うまいもん食いに行こうな。』
それ以降の頁がない、しかし私はこの続きを知っている。
次の日もここへ来たっけか。ずいぶん張り切ってたみたいだったね。
やっと目覚めた私の歯車は、残酷にも前に動き出した。
全部思い出した。なぜここに越してきたのか、なぜ懐かしく感じるのか、
鉛色の空の下、彼の血生臭い紅い華がフラッシュバックする。
空色に似つかわしい、どこか遠くの誰かの記憶。
おなか一杯にカシューナッツが食べたい。

「楽譜」「魔術」「リセット」でお願いします。
0240名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/04/11(金) 04:34:20.94
「楽譜」「魔術」「リセット」

こんなの将来なんの役に立つんだろ、って思いながら授業受けてる。
楽譜のオタマジャクシをモンスターに変えて、床に放って埃を吸わせる、って魔法なんだけど。
これって、掃除機にやらせればいいだけの話じゃない?
しかも、埃は吸うけど、糸くずなんかは消化不良起こすから吸えないって、全然使えなくない?
「便利便利」ってクラスのみんながなんの疑問も持ってなさそうなのが不思議でしょうがない。
魔法学校なんかやめちゃって、武術専門学校に入り直したい気持ちで揺れてるんだけど、
でも一番の理由が、あそこのラクロス部のユニがかわいいからって、そんなの親に言えるわけない。
オタマ掃除機以上に、その願望ってくだらない気がする。
とりあえず回復魔法の「ゲンキニナール」修得しとこうと白魔術にポイント積んできたけど、
最近三角関係経験したら、黒魔術の「コイガタキケチラース」が気になってしょうがない。
はっきり言って、男の方はもうどうでもいいんだけど、あの女に負けるのがいや。
どうでもいい男のために黒数値上げるとか、人生無駄にしてるってわかっているんだけど。
今の私って全然ちゃんと生きてなくて、退学届出す勇気なんてのも初めからなくて、
とりあえず神殿行って魔術の数値リセットするぐらいが最大の冒険なんだ。
でもそれだってきっと実行しないから、存在自体がオタマ掃除機以下なんだよ。


「必殺技」「アルファベット」「くもり」でお願いします。
0241「必殺技」「アルファベット」「くもり」
垢版 |
2014/04/11(金) 23:22:36.09
「必殺技」「アルファベット」「くもり」

「まだ俺はAからGまでの力しか解放していないッ!応えろ、26の聖霊よッ!」
そういって、ある物体を徐に火に入れるとたちまち橙赤色に燃え上がった。
これは彼の必殺技の開拓のための修行らしいが、おそらくこれはただの炎色反応だろう。
虚しく響く高らかな声、燃え上がる淡いオレンジの色が夕日のように明るかった。
彼曰く、これはBの能力「Barn-獄炎-」の初期段階であるという。
まぁ、5時過ぎの化学室でのみの能力使用だというので、多くの人は既に察していたのだろう。
「裕樹ぃ!お前も能力者だろぉ!」
今日は曇天。淀んだ暗さが一層彼を痛く、哀れに見せた。
彼にとってはこのくもりの空気感こそ、待ち望んでいたものだったのだろう。
日頃能力者ごっこに付き合わされている裕樹の静かな怒りも、暗がりの中浸食し続けた。
一刻過ぎるごとに、やがてどしゃ降りになって行った。
まるで裕樹の抱く憎悪と比例するように、確実に、蝕む。
「俺は能力者なんかじゃないッ!!」
次の瞬間、劈くような轟音がけたたましく唸りをあげた落雷に、彼は汗を吹き出しながら言った。
「ぜ、Zeus-審判-、、。只者じゃないぜ、、。」

「修道院」「街灯」「ロンドン」でお願いします。
0242名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/04/12(土) 15:42:04.36
「修道院」「街灯」「ロンドン」

曇りなき眼を持つその少年たちは、なにより親切だった。
なので道で困っている人に声をかけずにいられなかった。
フレンドリーな笑顔で近づくと、そのガタイのいい東洋人は、ほっと安堵の色をみせた。
彼の足元には、首輪でつながれ、何やら荷物を背負わされた真っ白い犬が一匹。
「おいどんは、キチノスケ・サイゴーでごわす」
東洋人は、体格に似合わない柔和な笑顔を見せた。
三人は気が合ったのだろう、あっと言う間に打ち解けてしまった。
「そうでごわすかぁ、あんたがたはハリーどんとロンどんでごわすかぁ。
 おっと用事を忘れるところでごわした。ここいらに修道院などありもわはんか?」
修道院は、森と山と林と横町を二つ三つ越えた先にあった。
少年らは門限破りを承知の上で、キチノスケを目的地まで連れていくことにした。
すっかり日も暮れ人影もなく、街灯にぼうっと照らし出されたキチノスケの顔から笑みは消えていた。
少年たちが油断し、お菓子の話などしていると、キチノスケと犬の目が妖しく光り始めた。
と、その時――辺りに少女の甲高い声が響き渡った。
「ハリー、ロン、気をつけて! そいつはニセ薩摩人と、ニセお父さん犬よ!」


「革命」「とうもろこし」「バレリーナ」でお願いします。
0243「革命」「とうもろこし」「バレリーナ」
垢版 |
2014/04/14(月) 23:02:45.14
「革命」「とうもろこし」「バレリーナ」

自由の讃歌が響き渡るバリケードの向こうで、冷酷な正義が銃を構える。
エドマンドは最期場を前に茹でたトウモロコシと葡萄酒を交わす。
バスティーユ牢獄を自由の礎に掲げた戦兵の一人でもあるエドマンドは遠き日の誓いを胸にしていた。
それはバレリーナを目指す妹、サティエリとの小さな誓いであり、大きな生きる糧であった。
「貧しくてパンも買えないの。至高の葡萄酒に変わってしまった。」
フランスはドブの中をかき分け歩む市民と、ワインスカーレットに染まった上流階級で断割した。
そんな底辺のドブでも、地の奥底には仲間の熱き血潮が、生命の脈がこうこうと流れ
足の裏を、心臓を伝わり、そうして立ち上がった市民と共に生きている。
「フランス市民に告ぐ。直ちに抵抗を止めれば殺さずに済む。銃を捨て、降伏しなさい。」
ラストチャンスは過ぎ去って、エドマンドも心に決める。
このバリケードの向こう側に、我々の希望が待っている。
葡萄酒よりも赤く、燃え上がる期待を胸にした戦友が銃を手に取り構える。
サティエリと共にこの地を歩みゆく市民の高揚は自由の正義を掲げ、
列を成した歩兵の銃先は、政府の弾圧という反思想の正義を掲げ、
その双方が爆発した時、確実にエドマンドたちは一歩踏み出せたのだった。


「夜想曲」「月」「市街区」でお願いします。
0244夜想曲 月 市街区
垢版 |
2014/04/15(火) 22:59:01.79
立ち上がって壁の穴から見える景色は無惨だ。
 住民から取り残された建物がその傷ついた体を晒す。月明かりの下でその鉄の骨は黒々と浮かびあがる。
 市街戦となった市街区は、昼間の騒がしさが嘘のように静かになってしまった。
瓦礫も肉片もなにもかも、闇のなかで眠ろうとしている。
羽毛のように柔らかくその微睡みを包もうとしている永遠。
 壁に大穴が開いた礼拝堂の中から死にかけた街を眺めると、ここは留守宅なのだと思う。
 神の不在は明らかだ。

 人の心は神を求めてこの丘に礼拝堂を建て、美しいステンドグラスを捧げた。
そして頼って逃げこんだ。
 返品された神への捧げ物は壊れてさえ美しい。
月の光を僅かに取り込んで、硝子は青や緑の影を落とす。
 周りの闇に沈んだ黒い血溜まりや肉片だろう物とは違う。
……ああ駄目だ。白いのは見ては駄目だ。私の息子かもしれない。妻かもしれない。
 残ったステンドグラスを見上げても、夜には神の姿はみえない。そう、夜だ。神のいない夜だ。
 そのステンドグラス下のかつての私の居場所であったパイプオルガンは神殿のように残っている。
 しかし、もう何もかも眠ろうとする夜だ。神殿など馬鹿げている。
 パイプオルガンの鍵盤を残った右手で叩きつける。
悲鳴のような音が鳴る、と思われたが鳴らなかった。
 鼓膜が破れたのか。痛みはもう感じられないらしい。
 あの爆音で、左手できつく抱きしめた私の息子の頭は私の左側とともに弾けた、のだろう。妻も息子を抱きしめていたから、恐らく一緒に。
 本当の夜を知り、曲を奏でる。夜想曲は神に捧げるものではないのだ。

次は「煙管」「艶」「緋色」
0245名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/04/17(木) 19:20:48.02
「煙管」「艶」「緋色」

バカみたいな金持ちの伯父がいる。
眼下に太平洋の望める崖の上に雅な城をこしらえ、そこで一人暮らしする変り者である。
死ぬと遺産が少し回ってきそうなので、たまに酒など持ってご機嫌伺いすることにしている。
会う度不健康そうなのに、この伯父がなかなか死なない。
今日も自慢の煙管をぷかぷかふかし、咳ばかりしていた。
そのまま激しく咳き込んで、ぽっくり逝ってくれればいいのに、と思うが、俺の願いはいつも叶わない。
毎度のことながら、何の脈絡もなく、俺の色恋に話が及ぶ。
そしてこちらに充分語らせることなく、伯父の艶っぽい思い出話が始まる。
1%も真実の混ざらないファンタジーである。
半魚人みたいな顔して絶世の男前設定という、伯父は金だけじゃなく凄まじい妄想力の持ち主でもある。
話の途中で時計に目をやった伯父は、その場で服を脱ぎテラスに向かった。
沈む夕日を眺めながら、世界を制した気分を味わうのが、伯父の日課なのである。
腕組みをして茜に染まる大海原を見下ろしながら、緋色のふんどしをはためかせる枯れた半魚人。
そのまま海に落っこっちゃえ、落ちてしまえ、と強く念じてみるが、俺の願いなのでどうせ叶わない。
それに伯父は崖から落ちたぐらいじゃ死なないし、多分殺されたって死んだりしないのだ。


「おやつ」「ストレス」「一石二鳥」でお願いします。
0246名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/04/25(金) 20:22:48.44
「おやつ」「ストレス」「一石二鳥」

おやつの時間が苦痛でならない。
口の中でぱさつくビスケットを温めた牛乳で流しこめときやがる。
牛乳なんてずばり牛の乳じゃないか。
いかさきやサラミを要求したが聞き届けてはもらえなかった。
牛乳嫌いで有名なタモ○氏にはこんな逸話があるという。
お遊戯がいやで幼稚園には行かなかった、と。
激しく同意だ。できるなら俺だってそうしたかった。
だが今は園児が昼日中一人でそこらを徘徊することを許さない社会なのである。
俺は生まれる時代を間違えたのか。
ビスケットに牛乳、お遊戯にお昼寝、元気を振りまくウザい先生方……。
ストレス過多なこんな世の中で、これからしばらく生きていかなければならないなんて。
最近俺は、女児リーダー格Aにビスケットの類を、男児リーダー格Bに牛の乳を譲る契約をした。
見返りとして、女児グループからの口撃の免除と、お砂場優先使用権を獲得した。
まさに一石二鳥ではあるのだが、俺は一人占めした砂場を持て余している。
ガキどもを寄せ付けずシャベルで砂を掘り起こしながら、長すぎる人生にただウンザリしているのだった。


お題継続で。
0247名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/04/27(日) 18:57:45.59
「おやつ」「ストレス」「一石二鳥」

母はいつもよく分からないものをおやつに持ってきた、
ある時はイワシの煮付けであり、ある時はたくわんである。
友達の家に行った時に出てきた輝かしいまでのおやつに感動したあの日を忘れない。
それからというもの、母のおやつを食べる日々は少々のストレスであった。
しかし高校から帰ってきたある日、母が倒れていた、
病気である、病院のベットで横になる母に、私は泣きながら何を考えただろう。
そんな日々の先に、今の私がいる、
かつて母がそうしたように、子供にイワシの煮付けやたくわんなどを出す気持ちが、今の私には分かる。
残りものを片付けられて、おやつ代もかからない、一石二鳥なのだ。
母は実家で今頃父とお茶でも飲んでいるだろう。

「ロボット」「時計」「空」
0248247
垢版 |
2014/04/27(日) 19:04:16.50
でお願いします。
0249ロボット 時計 空
垢版 |
2014/04/29(火) 11:09:21.37
新緑が眩しく光っていて、夏が来る予感にワクワクする。
毎朝歩いて学校に向かうのに第一公園を通る頃、同じクラスのミチルが来て合流するのがいつの間にか定着していた。
ミチルは可愛い。すごく良い子で人気者だ。ミチルが泣きそうな顔をして立っていたら誰だって駆け寄るんじゃないかな、と思うくらい魅力的な子だ。だから私も駆けつける。ミチルは
「サキぃ、このコ……」
と腕の中の猫を差し出した。
猫はぐったりしていて、明らかに具合が悪そうだ。体が揺らされても反応がない。
「どうしよう?」
どうって、直してあげるべきでしょ!
ええと、朝だから……と東の空を見ると、08:10の表示が青空に黒く浮かんでいる。
「学校、サボろ!それで直してもらおう!」
とミチルにいうと、なぜかミチルは煮え切らない様子でうつむいている。
「え、このコより学校が大事なわけ」
思った以上に冷たい声が出たけど気にしない。
「このコがこうなるってさ、人のせいしか考えられないんだよ、じゃあ人が直すべきでしょう」
この猫は自動制御生物、いわゆるロボットで、賢い。怪我をするようなことはしない。壊れるとしたら人が傷つけたときだけ。
悲しいことだけど、たまにそういう人間がいる。なつくようになっててすごく可愛いのにそれが気持ち悪いなんて、そんな人間こそ人として気持ち悪い。なのに。

「私、人じゃないし」とぽつりとミチルが呟いてしまった。
「私も壊れちゃってるんだよ、このコ間違えて壊しちゃった。 私も直されたらどうなるんだろう」
ミチルは泣いている。悲しませたくないのに好きなのに、泣き顔ももっと見たくなるくらい可愛い。
私は人としてどうしたらいいんだろう?
人工的な青空の下で今、人間は私一人だけ。


次は
金 プラスチック 肌触り
0250名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/05/01(木) 19:59:22.89
「金」「プラスチック」「肌触り」

畜生!
あの社長また無茶ぶりしてきやがった!
肌触りがタオルそのもののプラスチックを作れだ!
何が
「この企画は世界を変えるのに必要だ」
だ!
しかし俺は部下だからやってやる!
本物のタオルより肌触りの良いプラスチックを作り出してやる!!
すべては金金金のため、金だけはよく払うあいつのために、俺は仕事をしてやる!
そしていつかあいつの地位になり金をがっぽがっぽ稼ぎまくってやる!
俺ほどの才能があればやってできないことはないのだ!
そして半年後、できた!
肌触りが高級タオルのようなプラスチックが!
さあ社長!どうですこの肌触り!すばらしいでしょう!
「うん、でもやっぱりコストかかりすぎるし、タオルは普通のが一番だね、何かすごい思いつきだと思ったんだけどな」
ちくしょおおお!!

次は
「桜」「小判」「宅急便」
0251名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/05/03(土) 11:19:22.17
「桜」「小判」「宅急便」

饅頭屋の屋根裏に魔女が住みついた。
宅急便を生業にし、落ち込んだりもしたけれど、まずまず元気にやっていた。
箒にまたがり空を駆け、仕事も軌道に乗ってきた頃、心に迷いが生じてうまく飛べなくなった。
ある日、風にあおられ木の葉のように舞うと、そのまま満開の桜の木に引っ掛かってしまった。
腹を立てたのは、花見を台無しにされた町の衆だ。
彼らは怒りをつのらせ、ついに彼女に石を投げ始めたが、群集を煽ったのは飛脚軍団だった。
空飛ぶ魔女と比べられ、自慢の健脚とプライドを傷つけられた彼らは、反撃の時をうかがっていたのである。
魔女絶対絶命……! とその時、止めに入った若い侍がいた。
彼こそは、城を抜け出すことで有名な将軍だった。
懇意にしている火消しに頼んで魔女救出に臨んだはいいが、魔女の懐から黒猫が飛び出し、また一騒動。
町民らが凶暴な黒猫にてこずっている中、飛脚はこれ幸いと魔女にとどめをさしにかかる。
自分の手には負えないと悟った将軍は、口笛を吹いて鷹を呼び、メモを託して空に放った。
およそ36秒後に現れたのは、カンガルーとペリカンの二体のゆるキャラもどきである。
優秀なお庭番である彼らは、過剰な愛想と小判をばらまきながら民衆の気を逸らしつつ、
華麗な軽業で飛脚軍団を蹴散らし、魔女と黒猫を無事救出したのだった。めでたしめでたし。


「針」「剣」「ハリケーン」でお願いします。
0252名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/05/03(土) 13:37:27.18
「針」「剣」「ハリケーン」

老人は入っている小説倶楽部から課せられた今月の小説のお題について考えていた。
針、剣、ハリケーン。
また奇異なお題を、老人は細く笑む。
目線を上げると、古い、装飾の施された剣が誇らしく暖炉の上に飾られているのが目に入る。
彼の長年の相棒である、老人はぜひともこの相棒を小説の中に持って行きたかった。
剣の飾られた暖炉の側では、老女がほそぼそと針仕事をしている。
そう、主人公は剣士、戦いに暮れる宿命を持った剣士は、ある使命を託された、
姫を助けるために、針の集合体のような外見を持つモンスターに戦いを挑むのだ。
そして不意にやってきたハリケーンにモンスターごと山の彼方に飛ばされ……。
いやまて、飛ばされてどうする。
老人は更に思考の奥底へと意識を飛ばす。
そう、主人公は鍛冶屋、世界一の剣を作り出すために命をかける鍛冶屋は疲れを癒やすためにある針師の元へ行く、
そして不意にやってきたハリケーンに針師ごと飛ばされ……。
いやまて、飛ばされてどうする。
深く深く想像力の彼方へと意識を飛ばしてる老人の側では、すばらしい剣が、静かにその様子を見守っている。
想像の彼方へと旅立つ彼の世界には、誰一人足を踏み入れることなどできはしない。
彼と、彼の剣意外。
針仕事をしていた老女は、いつの間にか、暖炉の側から消えていた。
窓の外では、木をなぎ倒しながら、何かが近づいていた。

次のお題は
「スタートライン」「紙」「ヤギ」
でお願いします。
0253名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/05/03(土) 13:52:10.62
「針」「剣」「ハリケーン」

正座をした俺を剣呑とした雰囲気を漂わせたクラスメイトの女子一同がぐるりと取り囲んでいる。
そして1台のビデオカメラが目の前に鎮座ましましている。体育前の着替え中に発見された隠しカメラだ。
今年共学化したばかりの学校でこのクラスには男子が俺しかいない。つまり犯人は俺だろうと言う言いがかりだ。
確かに昔の俺ならそうまでしてでも見たいと思ったかもしれない。しかし女の本性を知ってしまった今となっては全く見たいとも思えない。つか普段から俺が居ても構わずに着替えてる癖に。今だって半分くらいが下着姿のままじゃないか。
などど思った所でこの針の筵の居心地が良くなる訳でなし、ハリケーンの様な責めを凌ぎつつしどろもどろに言い訳するしか無いのであった。
結局「こいつは別にコソコソ隠し撮りしなくても普段から見れるし、今も真っ赤になって目逸らしてるし犯人では無さそう」と言う結論に落ち着いて容疑は逃れる事が出来た。
が、それ以来下着姿でおちょくられたり胸を触らせられて反応を笑われたりと言う「天国の様な地獄」をたっぷり味わう事になってしまった。
ちなみに隠しカメラの犯人は女子の1人で、隠し撮り映像を業者に売っていたらしい。
その犯人への吊るし上げ方は俺がもう一生女には逆らわない、と心に決めるには十分なモノで有ったのを付け加えて話を閉じたいと思う。



次は
「ダム穴」「廃墟探索」「深爪」
0255名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/05/04(日) 09:47:28.75
「スタートライン」「紙」「ヤギ」

その日、行われるはずだったマラソン大会が中止になったんです。
スタートラインでウサギとカメが座り込みを始めたからでした。
ウサギは観衆に訴えかけるように叫びました。
「私はレース中に昼寝なんてしません!」
続いてカメも叫びました。
「僕をのろまと呼ばないで!」
胸を打たれた他の動物たちも、続々参加し始めました。
カラスが目に涙をいっぱいためながら叫びます。
「オイラを悪者と決めつけるのはやめてくれ!」
続いてキツネが絞り出すような声で言いました。
「わいは無実や……!」
白いヤギと黒いヤギも続きました。
「私たちは食べない! 紙など! ましてや郵便物など!」
動物たちは胸の内にあった物を吐きだし、清々しい気持ちになりました。
これが『あにま〜る心の叫びフェス』の誕生秘話です。


「ダム穴」「廃墟探索」「深爪」でお願いします。
0256名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/05/09(金) 00:17:25.79
「ダム穴」「 廃墟探索 」「深爪」

普段は気に止める事も無い己れのインナーワールドに踏み込んでしまった。と、言っても果てしなく広大な精神世界の極一部なんだろう。

日常の渇いた暮らしに小さな痛みを感じ始めたのが切っ掛けだ。痛みなどと言っても肉体を痺れさせる様な激しい痛みでは無いのだが、深爪をしてしまった時の嫌な何かに触ると染み入る様な痛みなんである。

その世界は薄暗い林であった…

林は朽ち果てた楼閣と干上がった池を中心に見窄ぼらしい建家が点在する。どこか懐かしくも有る不思議な場所だ。

それらを一々廃墟探索する勇気もなく干上がった池の真ん中にポッカリ開いたダム穴だけを茫然と見詰めるのであった。

この穴こそが林の精気を抜き取り、日常を渇かせ、肉体から潤いを奪い去る元凶なのだと確信しながら。




次は「朝焼け」「愛」「横顔」でお願いします。
0257名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/05/10(土) 16:00:03.99
「朝焼け」「愛」「横顔」

濡れた地面の上で目が覚めた。
いつからそこにそうしていたのか、記憶を辿ろうとするとこめかみの辺りがズキンと痛む。
僕と彼女は――
そうだ、僕と彼女は通り雨に喜んで道路に飛び出したのだった。
愛を語らいながら踊り明かすつもりで、彼女を雨の舞台へ連れ出したのだ。
近づくヘッドライトも余裕でかわし、僕らは愉快にステップを踏んでいた。
その時、猛スピードの自動車がハンドル切って方向を変えた。
僕は気づいて咄嗟に逃げたが彼女は――
彼女はどこだ。
僕は大声で彼女の名を呼びながら、目を凝らし耳を澄まし、彼女の返事を待った。
そして僕はそれを目にする。
アスファルトにきれいにのされた彼女の姿を。
最も幸せな瞬間に召されたのだと、その横顔が物語っていた。
朝焼けに染められた東の空がぼんやり滲む。
彼女にそっと口づけすると、涙を拭い、水田にぽちゃんと飛び込んだ。


「正直」「天気予報」「五月病」でお願いします。
0258「正直」「天気予報」「五月病」
垢版 |
2014/05/12(月) 20:43:46.18
―――ざあざあざあ、と雨が降る

4月1日、全力で嘘を吐いた。3月中に上手い嘘の吐き方を猛勉強、研究研鑽して吐いた自信作だった。
4月2日、彼女ができた。まさか誰も嘘だと気付いてくれないなんて思いもよらなかった。
最初のうちは良かったんだ、その内バレるだろうと気安い付き合いをしていた。
勿論仲良くなれたこと自体は正直とても嬉しかったので終始デレデレしっぱなし。

2週間くらいしたとき、気付いた――
本気で…惚れてる

それからはもう酷いもので、彼女に嘘を吐いたことへの罪悪感に悩みながら、嘘を続ける毎日。
ゴールデンウィーク、彼女と友人数人とで小旅行に出かけた。
楽しかった、楽しめなかった。
嬉しい、苦しい。

『最近元気無いね、何かあった?』

辛い…つらい…ツライ…

「ううん、大丈夫。ちょっとダルいだけ、五月病…かな?」

明るく声に出して笑う。
それから幾つか言葉を交わした後、電話を切った。
ははっ、と、哀しくて嗤った。

私はどうしたら良いのだろう、わからない。
明かりの無い部屋、ふと窓を見る。
天気予報はあてにならない。

―――ざあざあざあ、と雨が降る

次は「年少」「偏屈」「大本」でお願い。
0259名無し物書き@推敲中?
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2014/05/16(金) 19:45:17.75
「年少」「偏屈」「大本」

遠く南の島からポリポリ族の一団がはるばる我が家にやってきた。
滞在初日、そろそろ食事にしましょうか、という段になって一騒動。
ポリポリの男たち総勢5人が庭に飛び出し、繋がれていた犬を取り囲んだのだ。
桃太郎、赤柴オス3才、危うく屠られるところだった。
犬は家族なのだということをなんとか理解してもらい、寿司とスキヤキで我慢してもらったが、
彼らは食事中、窓の外の桃太郎に視線を送り続け、それをおかずに飯を食べているようだった。
犬から意識が離れないので、散歩という習慣について説明すると、目の色を変えて皆が行きたがる。
私たちがただ困惑していると、長老らしき偏屈そうなじいさんがムスッとした顔で、
「ひょっとして、わしらが食っちまうとでも?」
らしきことを言ってから、破顔一笑、いたずらそうにケケケと笑った。
それを合図にその場は笑いに包まれ、年少の若者など座敷で宙返りしながら大はしゃぎ。
「まさか!」「またまたぁ!」と、お互いの体を突っつき合いながら腹がよじれるほど笑い合ったのだった。
肌を埋め尽くす刺青などから、果てしない距離を感じていたが、笑いは全世界共通なのである。
人間同士、大本のところは変わらないのだなぁ、と親近感を覚えた瞬間だった。
私たちは楽しい一週間を過ごし元の生活に戻ったが、かわいそうに桃太郎はしばらくの間うなされていた。


「大魔王」「パラシュート」「ふわふわ」でお願いします。
0261名無し物書き@推敲中?
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2014/06/01(日) 12:24:42.36
>>260
新2chへの書き込みはこっちに反映されないんだ 必要なら再投稿を
スレが落ちた時に削除されたっぽいのはコピペしとく
0262名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/06/01(日) 12:26:02.36
「大魔王」「パラシュート」「ふわふわ」

「え?」
「だ、か、ら!
 まず着地点を見定めておいて、お前がパラシュートを落とす。
 おもりに火種をつけておいて、
 俺が先日完成させた、ふわふわシュークリームの蝋燭の上へ、見事点火」
「なんで誕生日にシュークリームなんですか」
「あいつの好物なんだから仕方ないだろ!で、そのシュークリームの中から…」
「婚約指輪が出てくる」
「そう!」
「『このふわふわ製法で特許を取るから、君を決して貧乏にはさせない…』の言葉で号泣」
「そう!そう!」
「でもなぁ…」
「なんだよ」
「あの人って婚約指輪より…」
「あ、来た!」

「えっ!?」
「なに?美味しかったけど」
「……だよなぁ。この人、食欲大魔王だもん。
 多少硬めの中身のことなんか気にもとめないで丸のみですよ」
「30万円のシュークリームがぁ……」
「バカね、そんな高いお菓子あるわけないでしょ」
「ぐぬぬ……な、なぁ、でもこのシュークリームの皮って、とんでもなくふわふわしてただろ!?」
「え、普通でしょ?」

「…うん、別れようか」

次は
「六法全書」「石鹸」「やまんば」
0263名無し物書き@推敲中?
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2014/06/02(月) 21:19:52.30
現在18時22分。日が伸び出して来たとは言え、鬱蒼とした木々に囲まれ辺りは既に薄暗くなっている。
落ち葉が敷き詰められた斜面をガサガサと転がる様に降りて行く男が1人。
ちょっとしたハイキングのつもりが道を間違えた、と気づいたのは完全に自分の居場所をも見失った後であった。
薄暗い山の中で1人まよっt
0265名無し物書き@推敲中?
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2014/06/02(月) 22:17:50.04
現在18時22分。日が伸びてきたとは言え、鬱蒼とした木々に囲まれ辺りは既に薄暗くなっている。
落ち葉が敷き詰められた斜面をガザガザと転がる様に降りて行く男が一人。
ちょっとしたハイキングのつもりが道を間違えた、と気づいたのは完全に自分が何処に居るのかも見失った後であった。
薄暗い山の中で一人迷うと言うのは思った以上に不安なもので男の気分は六法全書よりも重く沈んでいた。
何処に向かって居るのかも分からないまま進んでいると悪い想像ばかり膨らむ。思わず足がすくんでしまった。
男はじっとりとした脂汗を拭いながら考えた。
このままここに留まって、明日の朝明るくなってから行動した方が良いのではないだろうか?
しかしこの深い木々の中で一夜を過ごすのは恐怖以外の何者でも無い。
そう思うと一度すくんだ足を無理に前へと出す。
既に足元もよく見えない程暗くなっている。ここは慎重に進まなければならないのは分かっているが恐怖心がそれを許さない。
もういっその事、やまんばでもいい。とにかく灯りが見たい。そう思うと更に山を下る速度は増していく。
暗い山の斜面を殆ど走る様なスピードで下ればどうなるかは言うまでも無い。
「ああ、家に帰ったら思いっきり石鹸を泡立ててシャワーを浴びよう」
それが男の最後の思惑だった。

次は「途中」「書き込み」「赤っ恥」
0266「途中」「書き込み」「赤っ恥」
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2014/06/06(金) 20:48:17.57
彼女を信じて、とんだ赤っ恥っだ。研究所に行くのがいやになって衝動的に向かいに来た列車に飛び乗った。
自由席の3人掛けを一人で座った。扉近くの席にはサーフボードを持った大学生風の男が陣取っている。
若者の大きめのヘッドフォンからは懐かしいサマーソングが派手に漏れていた。
コカコーラのような開放的で気怠い清涼感がある。確か一夏の刹那的な恋を歌った歌詞。
梅雨明けまでにはだいぶありそうで、どうにも季節外れに感じる。
それ以上に学生時代に引き戻され気分なのがアンマッチでシュールで脱力だった。俺には。
書類鞄を前の列車に置いてきてしまった。
背広の上着を網棚に上げYシャツの胸ポケットから手帳を取り出す。
スケジュールには「AM10:00 東京ラボ 緊急会議」とあり、下の欄に「陽性確認・・・orz」と書き込みしてある。
さあどうしたものか、とりとめもない逡巡が脳裏をめぐる。考えたくない、都合の悪いことばかりだ。
研究所を休む言い訳をどうしたものか――車掌がきたら特急券をどうしよう。前の列車は途中下車したことになるのだろうか――
鞄の中に入っていたものは――一時凌ぎで肝心な事には思考が向かない。
いや、考えたってどうにもならない。今必要なのは行動すること。いやいや、その前にまず物語のビジョンを決めなければならない。
なんパターンの責任逃れを用意しておけばいいのか。
とにかく、これは事実とは関係の無い物語だ。それは言い訳しなければなるまいか。

次のお題は「嘘」「梅雨」「長靴」でお願いします。
0267「嘘」「梅雨」「長靴」
垢版 |
2014/06/08(日) 07:15:35.05
何が今日は一日晴れるらしいよ、だ。あのアバズレめ!
脳裏に浮かべた女の顔に、ユウはあらん限りの罵詈雑言をぶつけていた。
「すまし顔で大嘘こきやがって!」
仕事用具の入った鞄を胸に抱いて守りながら、夕暮れ時の田舎道を全力で走る。
視線の先には、塗装のはげかけたバスシェルターがあった。
日頃の運動不足が祟ったのか、たいした距離も走っていないのに息が上がり始める。
屋根の下に飛び込むんだときには、もう肩で息をしているような状態だった。
「ちくしょう!」
かすれた声で悪態をつき、膝に手をついて息を整えるユウの視界に、黒い長靴のつま先が見えた。
はっとして顔を上げると、女がひとりベンチに座っていた。ユウと視線が合うと、にたり、と笑ってみせる。
「もう梅雨入りしたんだよ? 折りたたみ傘の一つも持ち歩かなきゃ」
うるせえ、今日は晴れの予定だったろうが! と叫びたいのは山々だったが、乱れきった呼吸がそれを許さなかった。
不機嫌そうに眉根を寄せるユウに向かって、女はすっと右手を差し出す。
「ところで、こんなところに傘が一本あるんだけど、ユウちゃん、可愛い幼馴染と相合傘して帰りたくない?」
半日前、ユウに向かって今日は晴れるといった女は、しっかり傘を準備していたらしかった。

 次は「砂糖」「夜」「愛情」で
0268名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/06/11(水) 20:31:17.82
この愚人どもが!人の揚げ足ばっかり取りやがって。
俺見たいな上等な人間にレス貰ったら普通ひれ伏すだろが!
それをうpも出来ないチキン?お前の考えは砂糖よりも甘い?てめぇ等愚鈍共と一緒にするんじゃねぇ!
ただでさえ今日はまみタソのイベに落選して気が立ってると言うのに!
俺ほどまみタソに愛情注いでる奴はいないのに、その俺が落選?コレは絶対に事務所が俺とまみタソの仲を裂こうとしてるに違いない!
ムカつくムカつくムカつくぁああぁぁもぉおおおッ
「ねぇ卓郎ちゃん。もうね、夜も遅いから静かにして欲しいの。お隣さんもね、ウルサ…」
「ざっけんな!呼んだ時以外は入ってくんじゃねぇっていっつも言ってんだろうが!」
お、BBAが珍しく睨んでやがるw久々にぶん殴ってやるかっっw

全部私が悪いんです。
早くに父を失ってしまったから、せめて不自由はさせない様にって。甘やかし過ぎたんですよね。
私ね、あの日お医者さんに行ったら「もって3ヶ月です」って。
私が居なくなったらと思うと…せめて一緒に連れて行くのが親の務めかと。
後悔はして居ます。でも何に後悔してるか分からないんです。あんな風に育ててしまった事になのか、刺してしまった事になのか。
おかしいですね。自分でやった事なのにあの子が居ないのが悲しくて仕方なくって。
0270名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/06/11(水) 23:02:12.04
職場へ警察から電話があって、仕事帰りに妻の父を回収して帰った。
生憎と妻は外出している。
「お義父、そのままでは風邪を引いてしまいますから。お風呂に入って暖まりましょう。」
雨に濡れた義父を脱衣所に誘導して、勢いよく蛇口を捻ってバスタブに湯を入れる。
家に帰ってきて、落ち着いたのか、義父は恥ずかしそうに恐縮している。
その昔はワンマン社長で猛烈だったのが、引退してからは、演歌が趣味で、随分と穏やかな気質の人となった。
迷子で保護されたのは初めてだが、もう年なので驚きはさしてない。
居間の電話機に警察とデイケアセンターからのメッセージが入っていた。
義父の入浴中に、心配を掛けたであろうデイケアセンターの所へ留守電を入れ返した。
電話機の横にスマホの広告チラシが置いてある。

そう言えば、もうじき義父の誕生日だ。GPS機能が付いていて、プレゼントに丁度よいかもしれない。
高齢者のインターネット利用はボケ防止にいいと聞いたことがある。タブレット端末のほうが大きくて操作し易いだろうか。

――義理の息子が考えはじめた頃、風呂場では義父が某スマホゲームのCM曲をハミングしていた。

次は「まめまめしい」「かいがいしい」「カタツムリ」でお願いします。
0271名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/06/11(水) 23:18:12.83
>270
訂正)パットが抜けてましたm(_ _)m
×GPS機能が付いていて、プレゼントに丁度よいかもしれない。
○妻は粘着パットの低周波治療器はどうかと言っていたが、GPS機能が付いているスマホの方がよいかもしれない。
0272270,271
垢版 |
2014/06/12(木) 18:48:26.03
度々すみません。>271の「粘着パット」が「粘着パッド」の間違いでした。

お題消化のため、270の271での訂正を
×GPS機能が付いていて、プレゼントに丁度よいかもしれない。
○妻は室内用のゴルフパット練習機はどうかと言っていたが、GPS機能が付いているスマホの方がよいかもしれない。
とさせてください。ややこしくしてしまい、ひらに<(_ _)>

次のお題は「まめまめしい」「かいがいしい」「カタツムリ」です。
0273名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/06/12(木) 20:48:44.92
 偽りがきっかけで、失恋をしたカタツムリがいた。ある日、彼は紫陽花の葉の上でこう呟いた。
 「人間の世界でも、このような不幸な事があるのだろうか」それを耳にした家猫がふと首をあげた。
 雨降りの日に彼を窓辺で見かけた。カタツムリは特に彼に語りかけたわけでもないが、偶然独り言を拾ってしまったのだ。
 「そこの君、人間なんてなるもんじゃないよ」
 「やあ、猫さん」
 「人間になったら毎日働かねばなりませんよ」
 「働くとは何でさうか?」
 「働くとは人の為に何かを作り出すということです」
 「出産とか、さういうことですか?」
 「いいえ。まめまめしい人、かいがいしい人、それが人間という生き物です」
 「よくわかりませんね」
 「私は人間のおかげで、こうして毎日を、鳥の声や虫の声に耳を傾けているだけで生きていけるのです」
 「僕も毎日葉っぱの上でじっとしていても生きていけますよ」
 「人間は葉っぱを食べるだけでは事が足りません」
 「それじゃあ、葉っぱで事足りる人間になればいい」
 「それではもう人間ではありません」
 「さうですか。猫さん。では僕は、身分を偽っただけで、相手方の親から結婚を破談にされてしまいました。僕が人間だったら、どうでそう?」
 「この家の主人は、その昔、身分を偽って刑務所に入れられたことがございますよ」
 「刑務所とは、どのようなものでそう?」
 「刑務所とは雨も降らず、風も吹かないところです」
 「それはよろしくないですね」
 「さうです」


 次、「予感」「断片」「イタリア」
0274名無し物書き@推敲中?
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2014/06/16(月) 22:17:20.52
「予感」「断片」「イタリア」

W杯が始まって、昨日、日本はコートジボワールに負けた。
点を入れられそうな嫌な予感が的中して、あっという間に2失点しての逆転負けだ。
コートジボワールというより、ドログバに負けた気がする。彼の存在感たら凄かった。
いくら凄いと聞かされていても、同じ人間なのだからと高をくくっていたが、実際想像を越えていた。
結果的にゴールしたのは別の選手だったけれど、私はただドログバだけが怖かった。
彼の名が、ドログバなんて恐ろしげな名でなかったらどうだったろうかとぼんやり考える。
例えば、トロクパだったら。チュウトロだったら。ピカチュウだったら。
彼の名がピカチュウだったら、彼をそれほど恐れただろうか。
W杯でしかサッカーを見ない私は、筋金入りのサッカーファンの夫に滅多なことを言えない。
下手に感想を述べたりすると「にわかが!」と睨まれてどやされる。
断片しか見てないけれど、日本戦の前にやっていたイタリア対イングランドの試合はなんだか素敵だった。
イタリア人とイギリス人と、ドログバのいるコートジボワール人が羨ましいと思ってしまった。
でも日本代表を愛する夫の前では、口が裂けてもそんなこと言えない。
日本が負けて夫はふらっと出て行ったきり連絡が無い。今日仕事行ったのかどうかもわからない。
なんか疲れた。正直W杯なんか無ければいいと思う。


「扇風機」「アルバム」「もやもや」でお願いします。
0275「扇風機」「アルバム」「もやもや」
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2014/06/17(火) 17:13:55.55
 「夏は扇風機に限る」

 エアコンの冷房設定18度の部屋、毛布に包まりながらアイスを齧る友人がそう呟いた。

 「はっ?」

 アルバムを捲る手を止めて私は思わず声に出した、心からの言葉だ。正確に言えば、「自分の部屋が暑いからと言って態々アイス持参で私の部屋にやってきて何を言ってんだこいつ?」である。

 「いやね、クーラー…エアコン? まあどっちでもいいや。とにかくアレだよ、空気だけが冷たくなる感覚って少し気味悪いよねってさ」

 (なら自分の部屋へ帰れ)

 そう口に出してツッコミそうになった。温度設定まで弄くっておいて何たる物言い、相変わらず呆れるほどに勝手な奴だ。
 こいつは昔からそうだった、手にするアルバムに写っている姿も何かしら他人にちょっかいを出して自分だけ満足げなものが多数ある。被害者は大概私だ。

 そう意識しだしてから、アルバムのページを捲るたびにもやもやとした何かが蓄積されていく様な気がする。なんでこいつの友達やってんだ、私は?
 自問自答は一瞬だ。答えは簡単、単純なのだ。

 ――救われたから

 こいつが勝手な奴でなければ今この瞬間、冷房がガンガンに効いて冷え切った部屋に私は居なかっただろう。
 だから、 友人の阿呆な顔を見て私は答えた。

 「んー、そうな」

 と、生返事だけ。


次は「牛脂」「無臭」「ムラムラ」でお願い。
0276「牛脂」「無臭」「ムラムラ」
垢版 |
2014/06/20(金) 00:20:14.37
 あの日を境に、私の世界は”無臭”になった。

 「ムラムラしてやった。ぶつかる直前でよけるつもりだった。」

 この無法者にバイクで正面衝突され、私は自転車から放り出された。自転車は大破し、私は嗅覚を失った。脳細胞が壊死し、
500万個の嗅細胞が一瞬にして無用の長物となったのだ。

 私は慣れた手つきで新鮮な野菜を刻んだ。牛肉にはミルをひいて塩とこしょうをふりかけた。ああ。
 なべに牛脂を入れ、火をつける。冷たい牛脂をへらでつつくと、なべの底にかすかに白い軌跡を描く。

 半年前まで、私は妻とともに小さな料理店を経営していた。都内のホテルでの下積みを経てついに自分の店を持ってから
もうすぐ20年になるはずだった。しかし、味は、舌だけで感じるものではない。嗅覚を失った私には到底料理人を続ける
ことはできなかった。
 店をたたんでから、妻は外にパートにいくようになった。私は毎日、妻と私だけのために料理を作る。妻は、味に関して
何も言わない。それなりのものは作れていると思うが、おいしいはずがないのだ。

 牛脂はじわりと溶け出し、加速度的にドロドロと崩れていく。

 私はあの男の名前を知っている。住む家を知っている。
 安普請のアパートで、そのベランダには植木鉢が三個ならび、物干しざおには男物、女物、そして色とりどりの小さな服
が……。

 私はふと調理台を見た。小さく刻まれた色とりどりの野菜。じゃがいも、にんじん、なす、玉ねぎ、トマト、レタス、そして、
輝く包丁。
 それを手に取り、握りしめる。私は目を閉じた。堅く、堅く。

 どうしようもなく、ムラムラしていた。



次は「海底」「赤い」「カンカン」でお願いします。
0277sou
垢版 |
2014/06/24(火) 04:35:06.37
 三輪バイクに乗った少年が、潮風香る街並みを疾走する。
 車体を包む半透明のフードには、宅配ピザチェーンの赤いロゴが描かれていた。
 漁村の狭い路地を抜けたところで、少年はバイクを止めて地図に目を落とす。
「あれ、おかしいな。この先のはずなんだけど」
 眼前に広がるのは水平線まで何もない穏やかな海原だけ。
 ふと携帯が着信音を響かせる。お客さんから催促の電話だ。
「おうおう、配達まだかいな。ワシもう腹へって死にそうなんやけど」
「申し訳ありません、道を間違えて海岸に出てしまいまして」
「なんや。うちはその先の海底やで。はよ持ってこんかい」
 少年は耳を疑って何度も聞き返す。痺れを切らしたお客は、受け取りに行くから待ってろと怒り気味に言い残して通話を切った。
 すると静かに波打っていた水面がにわかに荒れて、巨大な渦巻きが生じた。
 町役場の方向からカンカンカンとけたたましい警鐘の音色が届き、どこからか地球防衛軍のテーマが流れ始め、上空にはスクランブル発進した戦闘機が殺到してくる。
 やがて海を割って現れたのは、雲を突くような体躯の怪獣だった。
「まったく出前とるのも一苦労やな。ほれ、釣りはとっとき」
 怪獣は代金とピザを交換すると、口から吐いた火炎で戦闘機を次々と撃墜しつつ、のしのしと水底の我が家へ戻っていった。
「ま、まいどあり……」
 ピザの代金、二四八〇円。少年へのお駄賃、五二〇円。日本国の被害、プライスレス。


次は「紙袋」「煙草」「一刀両断」で
0278名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/06/29(日) 13:48:36.23
高架橋の下で今日も背広の男は立ち尽くす
ガンガンとやかましい電車の通過音も男の乾いた心には響かない
時計をチラッと見て男は吸っていたタバコを落とし、踵で踏みにじった。
「今日も渡せなかったな……」男は紙袋を握りしめ歩き出す
街路灯の光りに照らされて、男の頬ににじむ涙の跡が見えた

そんな男の様子を線路脇のマンションから女は見ていた。
「キモい」そう呟いた。
0279名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/06/30(月) 00:27:30.22
次のお題はなんだよw「紙袋」「煙草」「一刀両断」で。

薬物取締法の指定薬物にニコチンが登録されたのは、つい先日のことだった。
いまはもう、煙草は明るいコンビニ店員がにっこりと渡す洒落たパックではなく、
歯の欠けたスキンヘッドが無愛想に突き出す紙袋へと変わった。
スキンヘッドもこの社会も糞食らえだーー。
俺はストレスを煙に撒くため、隠れて紙袋から一本取り出す。
火をつける前に鼻に白い棒状の包みを鼻に押し付ける。
乾燥した草の良い香りだ。
火をつけ一吸い。ストレスが体から解け落ちる。たまらない。
しかし解けるような感覚のあと、すざましい奇声が上がった。
「きぇぇぇぇぇ」
ぎょっとして振り向くと、ヒステリックなババアが、
サバイバルナイフを振りかざして迫ってきた。
避ける間もなく振り下ろされ、俺がくわえていた煙草は、
一刀両断のもとに切り捨てられていた。
「あんた! 私を肺がんにする気! 警察呼んだわよ!」
まるで「いい気味だ」と言わんばかりで、ナイフをちらつかせて
俺を脅している。しかし。なんだな。このくそったれの社会は。
この糞ババアが。サバイバルナイフも違法だかんなーー。
そう言いかけたが、俺は紙袋に手を突っ込んで、ババアに煙草を勧めた。
もちろん一刀両断されたが。

次は「こする」「こん棒」「ちくわ」
0280sou
垢版 |
2014/06/30(月) 17:09:10.78
「勇者様! 言いつけどおり自分の武器を買って参りました!」
 宿屋の一室で愛用のこん棒を磨く見習い勇者のもとに、幼なじみであり従者でもある女僧侶が飛び込んできた。
 呆気にとられる勇者。彼女が手にしていたのは槍のように長い一本のチクワだったから。
 事情を聞けば、かつて伝説的な魔導師が使っていた超レア物……という触れ込みらしい。
 誰が見ても明白な詐欺と思えたし、鵜呑みにする方もどうかしている。勇者は頭を抱えたが、
「えへへ。高価でしたけど、いざという時は非常食にもなるんですよ」
 屈託なく微笑む少女を叱る気にはなれなかった。
 やがて時は流れーー 
 長い長い冒険の果て、成長した勇者は最強の装備を身にまとい、最後の決戦に挑んでいた。
 しかし敵である魔王の力は凄まじく、傷ひとつ負わせることも叶わない。
 奮闘空しく今まさに勇者の力が尽き、終の一撃が加えられようとした時、
「させません! とりゃああああ!」
 加勢に現れた僧侶が勢いよく伝説のチクワを降り下ろした。
 びたーん! 魔王の眉間にヒット、九九九九ダメージ! 不死身とも思われた屈強な魔王が膝をつく。
 次いで僧侶はチクワをこする。きいんと甲高い音が鳴り、先端の穴に膨大な魔力が集中していく。
 凝集した魔力は喝声と共に極太の光束となって魔王に放たれ、悲鳴をあげる暇も与えず、その体を灰塵と化した。
 こうして世界に平和が訪れ、懐かしい故郷に戻った二人はささやかな祝杯をあげた。
 ツマミである輪切りにした伝説のチクワをつまんだ勇者は、対の手で照れ臭そうに僧侶の左手を引き寄せる。
 そして彼女の白く細い薬指をチクワの穴に挿し入れ、言った。
「今度は俺が一生かけて君を守る。ずっと一緒にいてくれないか?」


次は「指輪」「祝福」「忘れ物」で
0281名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/07/02(水) 01:13:26.11
「指輪」「祝福」「忘れ物」

聖母マリアは言った。
「あなたを祝福します」
ヤコブの末裔。クサンネは言った。
「あなたの祝福を生まれ来るものにも与えたい」
「私自身ではなく、この指輪を祝福ください」
聖母マリアは言った。
「あなたの指輪を祝福します」
永き時が過ぎクサンネは族の始祖となり、二チャネラが族長になった。
しかしその手に指輪はなく、ニチャネラは言う。
「どうでもいい(ワラ)忘れ物係にでも届いてんじゃね?」

次は「パンプス」「パンプキン」「パンチ」で
0282sou
垢版 |
2014/07/02(水) 09:57:47.36
「パン。ラテン語のパニスを語源とする、パン。ああ、何と軽やかで胸踊る響きだろう」
 夜食のパンケーキが乗った皿を、まるで聖遺物であるかのように恭しく掲げる男。
 言語学の世界では、それなりに名の通った研究者だ。
「ええまあ。それじゃ私はそろそろ……」
 また面倒な長話が始まったと思い、助手の女は適当にあしらって帰り支度を始めた。
 男は逃がすまいと早足で部屋の出口に回り込み、手振りをまじえて熱弁をふるう。
「見たまえ。ここにカボチャがある。カボチャーー鮮度さえも奪いそうな野暮ったい語感だな。
ならば英語名のパンプキンではどうか。歯切れよく美しい語感だ、瑞々しささえ覚えたろう?
僕はかねてから、パンで始まる言葉は特別な力を宿していると考えていてね。
世界はパンゲアから始まり、パンを焼くため農耕を始めたことが文明の発展に繋がり、
パンドラが放った災厄は今なお人々を苦しめ、パンテオンは二千年の時を生きている。
君の平凡な革靴も、パンプスと呼ぶことで多少なりとも女子力アップに寄与するはず」
「何を仰りたいんですか?」
「単刀直入に言おう。僕はパンで始まる名を持つ物品を収集していてね。君に協力を求めたい」
「パンプスは駄目です。履いて帰る靴がなくなりますので」
 そうじゃない、と返した男は女の両肩を掴み、この上なく真剣な眼差しを向ける。
「僕が欲しいのは、君のパンティーだ!」
 数瞬後。捻りのきいたパンチが男の顔面にめり込んだ。


次は「心理学」「破壊」「自己実現」で
0283名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/07/04(金) 00:59:12.08
「心理学」「破壊」「自己実現」


 一限目が始まる八時五十分から今まで、僕はずっとうわの空だった。教授たちの話は全く理解できず、いつの間にか窓の外を
見つめ、水音に耳を澄ませていた。
 天気予報では午後から晴れると言っていた。今は五時過ぎ、五限目もあと半時間ほどで終わる。だからもうそろそろ雨は
止むはずだ。祈るような気持ちで僕はまた黒板へ意識を戻し、ノートの続きを取った。

 今年の四月に、僕は晴れて大学生になった。一番はじめに声をかけられたから、という理由で入部した”星見同好会”
に、彼女がいた。彼女は心理学専攻の三回生で、長くてまっすぐな髪を少しだけ茶色に染め、いつもキラキラした髪飾りで
ポニーテールにしていたが、毎週金曜日の夜、星空観測会のときにだけ彼女は髪をほどいた。
 髪飾りがきらめき、さらさらの髪が天の川のように僕の目の前を流れていく。僕は、彼女のことが好きだった。

 僕は今夜、彼女に気持ちを伝えようと思っている。今日は七夕の直前の金曜日、夏休み前最後の観測会だ。この告白は、
僕の大学生活における最初の自己実現である。でも、このままこの授業が終わるまでに雨が上がらなかったら……。
 その時、無情にもチャイムが鳴った。同時に僕の携帯に着信があり、メールの件名に傘マーク一つ。本文は見るまでも
ない。すべてが破壊されたのだ。



次は「空」「かわせみ」「小石」で。
0284名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/07/07(月) 22:51:56.90
「空」「かわせみ」「小石」

 杜若色の空が垂れ込む真夏の夜に、星屑のほうとした灯りで遠くが露草色に見える。
しかしながら、あまりにも満天の海は深かった。心酔しきった私の中身は、あまりに膨大な宇宙の深層まで
もぐり、すっかり藍色にとけてしまうと想像するとたまらなく恐ろしかった。

 浸りきって浮かびそうな私を重力に逆らわないよう繋ぎ止めていたのは、小河のせせらぎと翡翠の鳴き声だけだった。
花火ではしゃいだ後には、よい耳の保養だった。ヒイヨヒイヨとなくあの切なげな声が、大学二年の若僧なりに生きている
ことという哲学思考まで追いやったのだ。川の流れにころころと転がる小石でさえ、なにか神の見えざる手に感じてしまうほど
私は深く追求した。そしていつしかごうごうと広がる夜空にすっととけるように、私は瞼をつむっていた。

 「おい、起きろって。出たぞ、天の川。」
青臭い若草がハラハラと音を立てるなかに入りまじる声。サークルの先輩に起こされ瞼を開けた私の心臓はドクンとうなった。
目の前には、壮大な青のグラデーションにかかる真白の道が横たわっていた。さっきの灯りとはまるで違う。
それはもう、顔をぼうと照らし月明かりのように青白く優しい光だった。深い夜空の海はグリーンが混じり、幻想的だった。
山奥のキャンプ場からみえたあの空は、まさにあの翡翠のような生命の色だった。


次は「苔色」「ワイングラス」「水彩画」で。
0285「苔色」「ワイングラス」「水彩画」
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2014/07/26(土) 13:05:33.50
僕は一年生のとき、夏休みの最初に絵日記をまとめてかいたら、ウソはいけませんと先生にしかられた。
朝顔のハチがなぜかちがくて、ミュータントヘチマが実ったので、近所のウワサになって、あしがついたのだ!
イクメンが「今年は水彩画でかきなさい」と言った。水彩は乾くのに時間がかかるから、ふべん・・・

枯れたと思ったミュータントヘチマが元気にダンシンしていた。
絵をかいた。動きがはげしいのでむずかし〜。
ひっせんを学校に忘れてきてしまった。ママのお気に入りのワイングラスをかわりにした。
水も絵も苔色になってしまった。あかん、湖いったらマリモが見たいな〜。

次は「日記」「脚色」「海獣」でお願いします。
0286名無し物書き@推敲中?
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2014/07/29(火) 18:35:01.18
「日記」「脚色」「海獣」

10年ぶりに私は鹿児島県指宿市に来た。
以前池田湖には有名な海獣『イッシー』が出ると話題になり
子供の頃、父と一緒に来たことがある。
その時はモーターボートに乗って、夏の日差しに反射する眩しいカルデラ湖に、
海獣の影は見えないかと、夢中になって探したものだ。

「おとうさーん、イッシーはどこらへんに居るの?」
「今日は暑いから出てこないかもね」

好奇心で一杯だった私の幼心を、紛らわさないように父はそう答えてくれた。
夏休みの作文で、私は日記の絵に見てもいない『イッシー』を描いた。
子供ながら日記に脚色をしてしまったが、私は今でもあの時の思い出を忘れない。


次は「女の子」「スカイサイクル」「iphone」
0287名無し物書き@推敲中?
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2014/07/29(火) 19:17:04.35
あ、固有名詞駄目だったので訂正。
「女の子」「スカイサイクル」「スマートフォン」でお願いします(´・ω・`)
0288名無し物書き@推敲中?
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2014/08/03(日) 13:50:41.71
「女の子」「スカイサイクル」「スマートフォン」

先日、孫に連れられ遊園地に行きましたの。
「ばーちゃん自転車でも乗ろうよ」と孫が言いますので、
私てっきり、緑の中をサイクリングするものとばかり思っておりましたら、
スカイサイクルといって、小高い山に設置されたレールの上を漕いで進むんですのね。
それが、高いやら、風が吹きすさぶやらで、まぁ恐ろしいこと恐ろしいこと!
脳にアリナミン? オロナミン? なんでしたっけ、とにかくわーっと分泌してしまいまして。
私が私でないような、いけないハーブでどうにかなってしまった人のようになりましたわ。
ここは気をしっかり持って、生きて戻らねばならないと、私必死でペダルを漕ぎましたのよ。
そうしたら、隣に乗っている孫が「やばいやばいばーちゃんやばい」って。
「やばい早すぎる。それに顔がやばい」ってもう何でもかんでもやばいで済ませようとするんですの。
早すぎて危険だ、というのは合点いたしましたけれど、顔がやばい、の意味がわかりません。
若い女の子みたいにはしゃいでしまって、年相応でないということかしら、などと解釈しておりましたら、
あとでスマートフォンで撮影した写真を見せられて、私びっくり仰天。
肩をいからせ髪を振り乱し口を大きく開けた凄まじい形相の化け物が写っておりましたの。
あぁ、なるほどこれはやばい顔だな、と私、妙に納得してしまいましたわ。ほほ。


「日曜日」「かき氷」「転倒」でお願いします。
0289日曜日、かき氷、転倒
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2014/08/04(月) 21:20:23.26
真夏の晴れた日曜日、ぼくはお母さんから貰ったお金を握りしめて話題のかき氷店へ向かった。その店は家の近所にあるけどいつもすごい行列で、氷の値段も高いから行ったことがなかった。
でも昨夜その店がテレビに出てきて、マンゴーたっぷりのかき氷を美味しそうに頬張る芸能人を見たぼくは母さんにおねだりをした。
「どうしてもあれが食べたい」
ぼくが何度も必死で頼むと、母さんは財布から渋々800円をくれた。しょうがないわねと笑った母さんの顔が浮かんでくる。
大事なお金を落とさないよう気を付けながら店に辿り着くと、まだ午前中なのに行列が出来ていた。
ぼくは一番後ろに並んでお金を数えた。800円あるのを確認したあと、後ろに綺麗なお姉さんが並んだ。
「すごい行列だね。ぼく一人で来たの?」
「うん、ここ高いみたいだし、お母さんはこれないの」
声を掛けられ返事をすると、お姉さんはじゃあ一緒に食べよと言った。ぼくが頷くとお姉さんは何食べるの?とか色々話しかけてくれた。そうしているうちに時間が経ち、順番が回ってきた。
店員に大きな声でスペシャルマンゴーくださいと言い、大事な800円を支払うと、大きな器に入った山盛りのかき氷を受け取った。
黄色いソースがたっぷりかけられた氷は小さなぼくにはずっしり重くて、ちょっと離れた席まで運ぶのも大変だった。
慎重に歩いて席まであと少しの所まできたとき、前に座っていたおじさんが急に立ち上がった。ぼくはびっくりして、そばにあったテーブルの足につまづき転倒した。
すぐに店員がきてぼくの事を心配してくれたが、ぼくはそんなことより床にぶちまけた氷を器に戻そうと必死だった。マンゴーソースにまみれた冷たい氷を触るたびに涙が出てきて、ぼくはその場で泣きじゃくった。
母さんがせっかくくれた小遣いで買った物なのに、もう食べられない。床に座りこんで泣いていると、声をかけられた。振り返るとさっきの綺麗なお姉さんが、両手で抱えたマンゴースペシャルをぼくに見せながら、「泣かないで、一緒に食べよ」と言った。
涙を拭って近くの席に座ったぼくは、お姉さんに分けてもらった氷を頬張った。ふわふわで冷たくて、口いっぱいにマンゴーの味と香りが広がった。
美味しいねと笑うお姉さんに御礼を言い、ぼくはかき氷を堪能した。次は母さんと一緒に食べたいな。

次「黒」「ビキニ」「日焼け」
0290黒、ビキニ、日焼け
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2014/08/13(水) 23:11:50.46
日焼けをしたのは一人ではなかった。
青い海で肌を焦がした男は23名いた。
しかしそれは公表された限られた数にすぎない。
実際には、周辺で操業中の大勢の人々が黒い雨を浴びたらしい。
ビキニ環礁、1954年。
今よりもずっと熱い太陽がそこにある。

次「脹ら脛」「ボノボ」「カード」
0291名無し物書き@推敲中?
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2014/08/19(火) 21:42:51.98
「脹ら脛」「ボノボ」「カード」

「ボノボバーグがいい」
 ボノボバーグとはここGunmerでしか食べれない珍味だ。
 新鮮なボノボの脹ら脛をスライスし、色んなスパイスをふんだんに使って焼いた料理である。
 Gunmerの山岳地域ではいつしかボノボが住むようになった。
 食材でもあるボノボをハントするには絶好の場所だ。
「よし、次は誰が罠を見に行くか、カードで決めようぜ」
 少し肌寒くなる季節、森林のテントの中で彼等はババ抜きで誰が罠を見に行くかを決めていた。
 集団で動くと警戒心の強いボノボに逃げられる為、単独で確認しに行く必要がある。
 今日の狩りのメンバーは4人だった。ババを抜いた1人がいつものように森の中に入って行く。
 罠は重りで網が作動し捕まえるという極単純な仕掛けだ。
 その場所に辿り着くとボノボが2匹罠にかかっていた。
「2匹もかかるとは、運がいい」
 彼は満足そうに答えた、複数が同時にかかることは滅多に無いからである。
 罠にかかった網に近づくと、10メートルほど離れた場所でガサガサと物音がする。
 その音の数は8つはあった。
 茂みからボノボ達は現れると、罠を確認した者をジーッと見つめる。
「こいつら……俺を待っていたのかよ」
「まるで俺が罠にかかったみたいだ」
 ボノボ達は男をしばらく傍観した後去っていった。
 それはまるでボノボが以前よりも高い知能を持ち始めたかのように見えた。
 
次「貴婦人」「城」「ライオン」
0292名無し物書き@推敲中?
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2014/08/30(土) 07:09:21.61
「貴婦人」「城」「ライオン」

大自然は女を変える。
ソフィアはいつもサファリ旅行で別人になった。
ジープの後部座席で強い酒をラッパ飲み。
野生動物を見つけるや、ライフルをぶっ放す。
どんな獲物も一発で仕留めたが、ライオンだけは別だった。
ジープを降り、ナイフを逆手に挑むのだ。
不敵に笑い、舌舐めずりしながら相手を挑発。
「お前が百獣の王かい。あたしゃこの宇宙の女王だよ」
故郷では使ったことのない下卑た言葉も連発する。
そして一騎打ちの末――必ず勝つ。
雄ライオンの心臓をその場でえぐり出し、空高く掲げて、雄叫びを上げる。
血まみれのソフィアは、ガイドと運転手を抹殺することも忘れない。
もう一人の自分の痕跡を一切残さないのか彼女の流儀だ。
故郷に戻ればお城みたいな屋敷で貴婦人然と振る舞い、
五人の子供たちに囲まれ、小さな口でケーキを食べたりするソフィアなのだった。


「デング熱」「Tシャツ」「炎」でお願いします。
0293名無し物書き@推敲中?
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2014/09/16(火) 14:12:55.67
長文を読まされるのは苦手だ。さらに英語とか、熱が出そうだ。
茹だるような暑さの教室はデング熱の隔離病棟のように
グッタリとした生徒たちが朦朧とする意識と戦う戦場だった。
Tシャツ一枚の教師に気合いとか、心頭滅却だの言われても、
それすら耳に入って来なかった。窓辺に陽炎が揺れている。
あー、ヤバイ。
誰かの声が聞こえた。と、同時にドスンと鈍い音がした。
「みんな、脱水症状に気をつけろよ。」
よろよろと立ち上がると、今日の授業はこれまでと言って
教師は出て行った。

お次は「僻地」「お土産」「交換」で。
0294名無し物書き@推敲中?
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2014/09/21(日) 17:39:42.62
「僻地」「お土産」「交換」

木造の古校舎を出ると、そこには夏休みが広がっていた。
漠とした僻地は夏ミカンの甘酸っぱい香りと肌をこんがり焼く太陽の匂い。
過去に取り残してきた「俺」の夏休みを、まさかもう一度味わうことになるとは。
とはいえ、中高教師交換行事に巻き込まれた教師としての立場だが。

「俺」の夏休みは、ここと絵に描いたようにそっくりだ。
父もミカン農家で、出荷であふれた果実を一つ二つお土産としてもらったものだった。
昼間にもらったミカンをこっそりと学校に持っていっては、初恋の娘と一緒に食べた。
白のワンピースに麦藁帽子のあの娘も、この村にはいないものだろうか。

「先生、どうしたん。ボーッとして。」
麦藁帽子のつばに隠れてよく分からなかったが服装も声も、瓜二つだった。
俺のクラスの子が心配そうに顔を覗き込む。
まるで、タイムスリップしたかのようだ。何もかわっちゃいないんだ昔から。

夏空に透いこまれていくアブラゼミの声。
古びた校舎の放課後を伝えるチャイムのように、今をせわしく叫んでいる。
13度目の夏休みがはじまる。

次は「階段」「挿絵」「応接室」
0295名無し物書き@推敲中?
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2014/09/22(月) 20:07:45.98
数日前にできたらしい、新品つやつやの階段を登ってゆく。

面接の書類に入っている写真は、あの人が撮ったもの。

丸みのかかった応接室のドアノブを触ると、手の震えが更に伝わってくる。

ドアを開ける前に、ひとつ深呼吸。



「貴方が、当社への入社を希望された一番の理由はどの様なものですか。」

即答。

「探しているものがあるんです。」

私の歴史書にまたひとつ、挿絵が入る。
0296名無し物書き@推敲中?
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2014/09/24(水) 00:43:08.60
お題が無いので継続で「階段」「挿絵」「応接室」

「長い間ご苦労様でした。」
形式的な言葉とともに退職金の入った封筒を社長から受け取り、
やはり形式的に深々と頭を下げながら思い出す。

美大を出たものの就職できず、バイトで入った出版会社で先代の
社長に拾ってもらい、プロへの階段を登らせてもらった。
あれから10年、専属のイラストレーターとしてやってきたが
昨年、アメリカ帰りの三代目に社長が代わったとき、彼は宣言した。
出版不況に打ち勝つためにこれからは米国流の合理的な経営を行う、と。
そのときは何のことか分からなかったがある日、社長から呼び出された。
いつの間にか金のかかった絨毯に張り替えられた応接室の奥に立ち、
社長はつまらなそうに言った。
「文学に挿絵は必要ない、と私は思う。」

俺はリストラされたのか、この沈み行く船から開放されたのか、
靴底が半分沈んだふかふかの絨毯を見つめながら考えていた。

つぎは「台風」「テレビ」「千円札」でお願いします。
0297テレビ 千円札 台風
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2014/09/24(水) 12:04:17.85
12時35分。寝床からのっそり起き出した僕は、雑に作ったインスタントのコーヒーを片手にテレビをつけた。
『次のコーナはお待ちかね、ラスベガスチャレーンジ!!』
僕はこれの前にやっていた長寿番組のほうが好きだったのだが、先月から始ったこの新しい番組は冒険的で斬新な企画が多く、なかなか人気らしい。
ドンドンドン
突然玄関のドアを叩く音。誰だと一瞬考えたが、僕の少ない友人のなかでこんな荒々しい訪ね方をするのは一人しかいない。ドアを開ける。やっぱり彼女だ。
「千円貸して」
開口一番彼女らしい突拍子もない言葉。
「どうして?」
「いいから」
僕は渋々財布から千円札を出すと彼女はそれをひったくるように掴み走り去っていった。
「まるで台風だな、いや強盗か」
彼女の奇行は何時もの事とはいえ寝起きにはこたえる。僕はもう一度優雅なお昼を過ごすためにテレビの前に座る。
『さあ、今日のチャレンジャーはもう終わりかな』
『いますいます!』
僕はコーヒーを吹きそうになった。チャレンジャーを名乗り出たのはさっき僕から千円札を奪った彼女だったのだ。そして……
『おめでとうございます!!見事チャレンジ成功ですので賞金の百万円をどうぞ』
『どうも』
インタビューもそこそこに彼女は現場から走り去っていった。レポーターの唖然とした顔はさっきの僕のそれだったに違いない。
ドンドンドン
再び乱暴な呼び出し。ドアを開くと息を切らせた彼女。
「……はい」
差し出されたのはさっきの百万だった。
「多いよ」
「いいから」
「あの、今度お茶でも……」
「じゃあ」
そしてまた嵐のように去っていった。
受け流されてよかったのかもしれない。彼女がゆっくりお茶を飲みながら話す姿なんて想像できない、というかそんなの彼女じゃない。
僕はまたテレビの前にもどり彼女の次の行動に思いを馳せるのだった。

「朱華」「瓶覗」「支子」
0298名無し物書き@推敲中?
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2014/09/25(木) 01:11:40.54
「朱華」「瓶覗」「支子」

せっかくなんだから本格台湾料理の店に行こう。
教授に誘われるままボートに乗せられ一時間ほどでどこかの港に着く。
だが、なにかおかしい。商人らしき男たちが大声で話しているのに
何を言ってるのかまるでわからない。おまけに看板が漢字だらけだ。
「教授、此処って・・・」
「台湾だ。」
「台湾ってパスポート要らないんでしたっけ?」
「まあ、硬い事言うな。飯を食うだけだ。」
教授は慣れた様子で路地を曲がり、一軒の食堂に入っていった。
おいていかれてはたまらない。慌てて後を追うとさっさと席に
着いた教授はすでに何かを注文したらしくお茶を飲みながら一段落している。
「この店は蟹がうまい。君の分も注文しておいたぞ。」
教授はあくまでマイペースを崩さない。
瓶覗色のシャツに支子の刺繍をしたシャツを着た娘が料理を運んでくる。
朱華の簪がとても似合っていた。
「もしかして、教授?」
「なんだ」
「教授のお目当てって、蟹じゃなくて・・・」
「野暮を言うな、さあ喰うぞ。」

つぎは「缶詰」「雨戸」「魔法瓶」でお願いします。
0299名無し物書き@推敲中?
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2014/09/29(月) 22:51:09.46
「缶詰」「雨戸」「魔法瓶」

缶詰状態でネタを書いている。
ホテルの一室などではない。
人里離れた山奥の一軒家で足首を鎖で繋がれながらの、いわば監禁である。
魔法瓶のコーヒーをすすりながら、もう何日経ったろうか考える。
雨戸は閉め切ったままなので今日がまだ今日なのか昨日なのかもう明日なのか定かでない。
「オチだよ! オチのある話を書くんだよ!」
少しでも気を抜くと女王様の檄が飛んでくる。
私はほとほと嫌気がさしたので言ってやった。
「そうそうすとんとはオチやしませんよ」
すると間髪いれずムチが飛んでくる。
そっちの女王様である。
ムチが当たってクチが切れた。
「どうかショチを……」
「誰が韻を踏んでいいといった! 書き直すんだよ、このすっとこどっこい!」
神様はいないと思う。


「大袈裟」「川」「ヨーグルト」でお願いします。
0300名無し物書き@推敲中?
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2014/10/02(木) 00:08:13.51
「大袈裟」「川」「ヨーグルト」

自動機販売機でコーヒーを押したらヨーグルトが出てくるくらいの不幸。
死に至る大袈裟な物ではない。しかし、それが毎日続いたらどうだろう。
一滴の雨が川になり海になるように気がつけばそれに飲み込まれている。
ゴトン、と鈍い音とともに運命の歯車が回る。藁にもすがる気持ちで
右手がつかんだものはプラスチックカップに入ったヨーグルト。
「お値段以上ってのは、うそじゃないけどなぁ・・・」
100円の自販機に今日も敗北した俺は渇いた喉に半固形物を流し込む。

次「まんじゅう」「葉巻」「札束」でお願いします。
0301名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/10/06(月) 07:48:10.31
「まんじゅう」「葉巻」「札束」

アジトは血の海と化していた。
火薬のにおいが充満し、煙の中を紙片が舞う。
即死した仲間と、まだ息がある自分とは、どちらが運がいいのか考える。
苦しまずに逝ったやつらと、今からじわじわ死にゆく自分と。
弱々しい笑いが男の口から漏れた。
差し入れの箱が爆発したことを不意に思い出す。
地元の少女が持ち込んだまんじゅうの箱だった。
まだ子どもじゃないか……。
足元に転がる札束を蹴散らし、携帯電話を握りしめた。
待ち受け画面には幼き日の娘の笑顔があった。
生きていれば美しい娘に成長したであろう俺の天使。
男は壁にもたれジャケットの内ポケットから葉巻を一本取り出した。
「効きゃしねぇじゃねぇかバカ野郎」
お守りだったものに毒づいてから男はそれに火をつけた。
煙を吐き出しながら、俺はやっぱり運がよかった、と男は最期にそう思った。


「国旗」「三匹」「カボチャ」でお願いします。
0302sou
垢版 |
2014/10/06(月) 20:43:41.38
自宅の窓を僅かに開ける。まずい。既に周囲は異形の集団に囲まれているようだ。
初動を誤り先手を取られたいま、早く応戦しなければ手遅れになってしまう。
だが私は動けなかった。トイレで凄まじい腹痛と格闘中だからだ。
がっでむ。生焼けのチキンにここまでの破壊力があるとは誤算だった。
プロの傭兵で屈強な肉体を誇る私も、胃腸の粘膜に弱さを抱えていたということか。
むっ。敵が三匹、玄関に向かうのを確認。ややあって呼び鈴が鳴った。
もう猶予はない。今こそ戦場で培った強靭な精神力を発揮する時だ。
肛門括約マッスルを渾身の力で引き締め、決壊を止めようと試みる。
よし、いける! 私は自らをトイレと言う名の牢獄から解き放った。
リビングから拳銃とタマを詰めた紙袋を持ち出し、玄関扉を蹴り開ける。
そして間髪いれず照準をあわせて引き金を引く。躊躇などしない。
ぱあん! 反撃の狼煙をあげる撃発音が一帯に響き渡り、
銃口からは紙吹雪と紐に括りつけられた色とりどりの国旗が飛び出した。
面妖なカボチャのマスクを装備した襲撃者達は驚いてひっくり返り、
「ト、トリック・オア・トリート……」
そう力なく口にするのが精一杯だった。HAHAHA、私の勝ちだな。
退却を始める敵部隊に大量のアメ玉を施した私は、真の敵である腹痛と決着をつけるべく、
屋内に撤収した。プライドを懸けた戦いだ、けして敗北は許されない。
おや、パトカーのサイレンだな。ハロウインだと言うのに物騒なことだ。
平和な国と言えど、現実と妄想の区別がつかないイカレた奴は多い。私も気を付けねば。


次は「幻想」「現実」「卒業」で
0303名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/10/08(水) 13:54:36.56
「幻想」「現実」「卒業」

帰宅した私を三つ指ついて妻が迎えた。
「あなた、お風呂にします? それともごはんにします?」
上着を脱がせながらそう訊ねるのもいつものこと。
「先にひと風呂浴びようか」
私は湯に浸かり目を閉じると、虎と格闘する戦士である自分を想像し始める。
危機一髪のところで形勢逆転、虎の喉に剣を――
「お湯加減はどうかしら?」
佳境を台無しにされムッときたが、おくびにも出さず私は答える。
「いい塩梅だよ」
風呂からあがるとスキヤキの準備が整っている。
松坂牛を堪能し、玉露をすすっていると、やがて妻がお喋りを始めた。
「今日お洗濯物を干していたら電線のスズメたちが私に歌をね――」
私は一通り聞いたのち、諭すようにいった。
「そんな幻想に囚われるのはよして現実を見なさい。夢見る少女はもう卒業」
ちょろっと舌を出しおどけた妻を、たしなめることも忘れなかった。


「連続」「ブルドーザー」「反撃」でお願いします。
0304「連続」「ブルドーザー」「反撃」
垢版 |
2014/10/08(水) 23:46:06.25
 日曜の朝は少年にとって家庭内闘争の座り込みで始まる。
 今日も体勢側の母ちゃんという名のブルドーザーに追い立てられながらも布団に噛り付き、休日の睡眠時間延長を訴えていた。
 カーテンの開け放たれた窓から部屋へと強く差し込む朝日が冬の夜気を霧散させていく。布団に残る温もりと併せれば、それは気持ちよく眠れるだろうにと。
 こうなればもう武力闘争に移行せざるを得ない。少年の寝ぼけた頭が何かで読んだか聞いたのか物騒な言葉を弾きだす。
 圧政に対しては武力による反撃のやぶさかではなく、こうなればやぶれかぶれ――と、立ち上がろうとして頬が弾けた。左の頬が熱く、少年を急速に覚醒させる。
 母親を睨んで沸騰した感情を声に乗せようとしたら、今度は右と左を連続で打たれた。
 そして再度要求を突きつけられる。せっかくの天気だから布団を干せば今日の安眠が確約される。だからどけ。すぐさま顔を洗い片付かないから朝食をとるように。
 屈した少年は促されるままに部屋を後にした。
 そして、その次の朝の目覚めは格別だった。
 こうして大衆は飼いならされていくのだろう。やはり寝ぼけた頭がそんな一文を選択するが、少年は気を払うことなく朝の準備を始めた。

次は「焚火」「給湯室」「屋根」で
0305名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/10/09(木) 20:13:43.67
「焚火」「給湯室」「屋根」

給湯室でタバコを吸っていたスズキさんに声をかけた。
「パワハラってか、セクハラってか、あいつ最低ですよね」
彼女が課長から理不尽に叱責される一部始終を私は目撃していたのだ。
タバコを勧められたが、私は吸わないので断った。
スズキさんはふうと煙を吐き出すと、遠くを見る目をしていった。
「キャンプしたいなぁ。マシュマロ焚火であぶって食べたりさぁ」
そんな経験ないです、という私の言葉に、スズキさんが目を丸くする。
「じゃ、屋根の上に寝転がって星を眺めたりとかは?
 あと、パチンコでリス仕留めて皮剥いだり……」
固まっている私を見て、都会の人はこれだからなぁ、とスズキさんは笑った。
「今度一通り教えてあげますよ。一緒にキャンプ、いやサバイバルしましょう」
私の肩をぽんと叩くとスズキさんは出ていった。
バカ上司にへこまされない精神はキャンプやサバイバルで培えるのか……。
「でもリスの皮剥ぎは無理だなぁ」
私は隠し持っていたウイスキーをキュッとやると、給湯室をあとにした。


「マスク」「呪い」「からくり」でお願いします。
0306sou
垢版 |
2014/10/15(水) 04:44:38.14
私は笑顔がはりついたマスクをはずす。
善良な自分を心の奥底にしまいこむ。
よき子羊には常に試練が降りかかり、
あしき狼は労せず欲を満たしていく。
運命は不条理なからくりで組みあげたもの。
世界は不道徳な意思こそが勝ちのこるもの。
人生は不思議にふと終わらせたくなるもの。
私は笑顔がはりついたマスクをはずす。
自分にかけた呪いは解いた。
でも呪われてなければ生きていけない。
私は生まれついての子羊だから。
私は鋭くとがったナイフをかざす。
私は首にナイフをつきたてる。


次は「旋律」「声音」「透明な」で
0307名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/10/15(水) 19:08:06.33
「旋律」「声音」「透明な」

「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
君の繰り返す旋律が耳にこびりついて離れないよ。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
君がバ○ビーノが大好きだというのはわかったよ。わかった、わかったから。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
その声音から表情は読み取れないけど、きっと僕を元気づけてくれているんだろうね。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
いつもありがとう、僕の唯一の透明な友達。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
感謝してる、感謝しているよ、でもね……。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
そろそろ成仏してくれないかな……。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
してくれないかな、成仏……。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」


「可憐」「星座」「炭酸水」でお願いします。
0308名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2014/10/15(水) 22:30:34.83
このスレの連中のなにがキモくて救い難いかって、
誰にも評価されない駄文を延々と書き連ねていることだよ
お互いになんの感想すらわかない駄作を投下しても意味ないから
だから一向に上達しないんだよお前らは
あ、一人二人の日記帳だったかなあ ごめんよお
0310新参者G ◆MWGd4Eggtk
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2014/11/13(木) 16:54:49.85
「可憐」「星座」「炭酸水」

幼い頃、その炭酸水を飲むと星になれると教わった。
僕は、まだ生きていたくて星にはなりたくなかった。
ただ、その気持ちは、三十歳になるまでだった。
三十歳になる頃、僕は、おぼろげに、おおよその僕のこの先の人生が見えてしまった。
『可憐』という今は営業をしていないスナックに、日曜の昼間に同志は集まった。
年齢はバラバラであったが、自ら自分の人生の先が見えてきたと感じる人達で作られた倶楽部だった。
いつの時期か覚えていないけど、僕は主催者という立場に置かれてしまった。
僕を含む8人の倶楽部のメンバーの前に、炭酸水がある。
何か気の利いた言葉でも言いたかったが。
「一つ一つの星になるのではなく、僕たちは集まって星座になろう」としか言えなかった。
みんな、慰めが欲しくて可憐に来ているわけじゃないから、それで十分だったのかもしれない。
僕たちは、星になり、星座になれたのだろうか。誰か、教えて欲しい。

「銃」、「クロワッサン」、「黒炭」でお願いします。
0311「銃」、「クロワッサン」、「黒炭」
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2014/11/13(木) 20:48:14.60
いじわるじいさんは驚いた。火鉢にくべようと竹炭を割ったところ、中から黒焦げの
蛙の死骸が出てきたのだ。いや、蛙ではなかった。それは、もしや……。
と、奥の壁が赤い光で点滅した。窓から入る赤色灯の光だ。老夫婦は慣れた所作で
窓際の壁に背を当てる。おもむろにそっと外を覗いた。ポリスが来ている。
「いま包囲しました! 月からの通報で、ここの家人が月世界の姫を
黒炭の檻に閉じ込めてるって話で! 外交問題です! ムシャムシャ」
刑事の顔には見覚えがある。緊張するとクロワッサンを貪りだす、フランスかぶれの九州男児だ。
「しまったな、バアさん、銃をとってくれ」
爺の言葉に返事がない。ふりかえると、老婆の喉に投げナイフが刺さり、紫の唇から血の泡を吹いている。
「バアさん……!」
慌てて老婆にすがりつく爺さん。光の消えゆく濁った瞳に、二人の人生への
惜別のうんたらかんたらがアレしていた。
「出て来い、いじわるじいさん! お題は消化した! もう家ごと焼き払ってもOKなんだぞ!」
割れ気味のメガホンががなりたてる。このデイビー・クロワッサンめ! 爺の怒りはコマンドーした。
爺さんは火縄銃を取ると、さきっちょに黒焦げの香具夜を差し、戸を蹴破って
路地に飛び出した。銃声。銃声。銃声。銃声。
頬に感じる土の感触に、爺は百姓としての因果を感じた。と、頭を蹴られて空を見上げる。
「どうだ、悪党の末路ってのは」パン食う刑事がにやついている。
(てめえの爺はいい奴だったが、孫ともなりゃ関係ねえな……)声が出ない。
「あばよ、いじわるじいさん。昔話はもう終わりだ」
ガキの銃口に旋条が見えた。終わりだ! と、爺の懐で香具夜がティンクルした。ああっ!
次の瞬間、香具夜が爆発していろんなものをなかったことにした。
めでたし、めでたし。

次「桃」「キジ」「摩天楼」で。
0312「桃」「キジ」「摩天楼」
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2014/12/23(火) 18:20:37.66
猿は右手、キジは頭上を警戒中。さあゆくぞ!
という、その時だ。耳障りなスマホが胸で騒ぎ出したのは。

「あー、はいはい」
「私だ。武器とキビダンゴは、ちゃんと届いたかな?」
(あいつだ)
鎧の中で、苦い表情をしている自分が、ハッキリ判った。
宝物の価値が判った矢先、なぜか急に現れた、あいつからの電話だ。

「ご支援有難うございます、ただ今突入します」
「頑張ってくれ給え。桃産まれのせいか、私は虚弱体質で・・・」

桃から産まれた?本当か?まあ、どうでもいいか。
どうせ摩天楼のスイートルームからの電話さ、わかる訳ないよな。
とは思いつつも
「心配要りません、お任せ下さい!」
と、おべっかまで使ってしまうのは習性なのか。

彼はもはや「従業員」。犬でしかない存在に堕ちていた。

※ 次のお題は:「穴」「雪」「姫君」でお願いします
0313名無し物書き@推敲中?
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2014/12/30(火) 17:12:17.83
ウサギ追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川……
ハスキーな声が隣の小学校の窓から聞こえてくる。
雨靄に紫陽花の煙る6月の午後、換気にあけた窓を閉めると、
ヨックモックのシガールで紅茶タイムをはじめよう。
姫よ花よと箱入りで育った細指に、労働なんてバカげてできやしない。
君もどうかな、優雅で気楽な家事手伝いライフ。

次「皺」「師走」「手話」で。
0314「皺」「師走」「手話」
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2015/01/08(木) 20:08:24.23
皺だらけの手で、イネ婆さんが草鞋をあんでいる。
ホタテ爺さんは師走に傘と箕のを売りに出かけたまま戻ってこない。
「吹雪で街で足止めを食らっているのだろう」
餅を持って新年の挨拶に来た花房さんが手話でそう伝えた。
イネ婆さんは、花房さんが手のひらを揺らしながら上下するのを見て
「そうじゃね。十年ぶりの豪雪じゃ。止んでもすぐには戻ってこれんかもしれんね。暖かい雑煮を用意しておいてやらんとね」
と返した。囲炉裏で薪のはぜる音が響いた。

さて、七日後、やっとホタテ爺さんが戻ってきた。
「なんや、イネ婆さん、家の外に米俵のあるの気づかんかったか。どえらく気っ風のいい地蔵さまたちがいてな、わしゃ小判もろうて街でちょっくら遊んでおった」
イネ婆さんは、ホタテ爺さんの着物の襟にお約束の紅の痕を見つけると
「……」
囲炉裏で薪のはぜるような音が響いた。「パキッィ」


次は「地蔵」「雪女」「毛布」でお願いします。
0315「地蔵」「雪女」「毛布」
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2015/01/26(月) 22:24:51.37
知っているか。伊吹山から見える一番東の果ての峠に、雪女の地蔵があることを。
知っているか。夏の間、地蔵に被せおいた鵺の毛の布を取り払うと、あずまなる峠に雪の降ることを。
知っているか。地蔵峠の風は伊吹山の鬼を起こし、伊吹山の怪は比叡の天狗を急いて、
京の高楼に暗夜はばたくことを。
雪の甍に細く爪掻くは烏にあらず。そは天狗なり。月まどかなる冬の夜に耳を澄ませ、
そぞろなる静かに怯える幼子らよ、忘れるな、お前の屋根に天狗がいるぞ。

次「梅」「池」「ソ連」
0316名無し物書き@推敲中?
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2015/02/08(日) 09:33:53.26
「梅」「池」「ソ連」

公園のベンチで昼寝をした。
目覚めると、目の前で知らないガキが池の鯉をじっと眺めている。
なにか悪さをしたら叱ってやらなきゃ、と注意深く見ていると、
ガキが急にこちらを振り返って言った。
「眠くなりますよねぇ。良い陽気ですものねぇ」
その年寄りめいた口ぶりに言葉を失っていると、ガキは不意に視線をあげ、目を細める。
そしてため息を漏らしながら言うのだ。
「梅に鶯、はぁ、なんとも風流ですなぁ」
なんだこいつ、究極のじいちゃん子か!
度肝を抜かれている俺に、ガキが畳みかけた。
「ちょっと度忘れしちゃったんですがね、
 あれ誰でしたっけあの、今のソ連の大統領、名前がどうしても出て来なくて」
俺は確信した。こいつ絶対中身ジジイだ。
なんかの事情で見た目が子供になってしまったじーさんに違いない。
俺は「プーチン」と言い捨て、その場から走って逃げた。
       

「腕時計」「大丈夫」「無人島」
0317「腕時計」「大丈夫」「無人島」
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2015/02/15(日) 15:24:49.59
「大丈夫ですか?」
公園のベンチで鳩の雌雄を眺めていたら、ふいに男子に声を掛けられた。
人の良さそうな、高校生ぐらいの男の子だ。
ここ別に自殺の名所とかではないよね?
いけない、通行人に心配されるほど具合の悪そうな顔をしていたようだ。
「あ、いや。ちょっと考えごとしていただけで。転勤みたいのがきまったもので……大丈夫ですので!」
年上なのに、恥ずかしいと思いながら、しどろもどろに返事をする。
「どちらに転勤するんですか」
会話を切ったものか続けたものか判断がつかない。腕時計をみるとまだ昼休みは十分にあった。
スカートの裾を直しながら答える。
「知らないと思うけど、南太平洋のサムサム島」
「それサムサム猿の住んでいる無人島ですよね。まじですか? おねいさん、おれのことからかっています? 」
怒ったのかちょっと眉間に皺がよっている。おばさんと言わないのは褒めてつかわすが、なんかナンパっぽくて笑えるなぁ。
「あら、知っているの? わたしは先週、はじめて聞いたのに。うちの会社、ちょっと変わった製薬会社なんだけど、
サムサム猿の調査で一年、常駐するのよ。企業秘密なんで詳しいことは言えないけど」
「へ〜。それは大変そうだけど、うらやましいな。俺、動物が好きで、獣医を目指しているんです。
この春から○○大の獣医学部に通うんですよ」
ああ、高校の同級生で、実家が獣医でそこに進学した友達がいたなぁ。

しばらく、その子とベンチに並んで座って世間話をして、名前とアドレスを交換して別れた。
そのうち、証拠にサムサム猿の写真を撮ったら送ってあげよう。
忙しくて、きっと一年なんてあっという間だ。……そういえば、今日はホワイトデーだったか。
口の中で貰ったのど飴がちょっとこそばゆいや。


次は「昼休み」「南の島」「ホワイトデー」でお願いします。
0318「昼休み」「南の島」「ホワイトデー」
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2015/02/17(火) 13:40:27.17
ホワイトデー連続殺人事件。
バレンタインチョコをもらった男子が巨大な飴に練り込まれ、死んでいるという事件が頻発していた。

大の甘党で菓子作りが趣味の刑事、安浦はこの飴に使われている砂糖に注目。
それが某南の島固有のヤシ砂糖であることを調べ上げた。
普段は菓子作りなんて乙女趣味だと馬鹿にされてきた安浦の面目躍如。
彼はさらなる意気込みでヤシ砂糖の国内輸入を調査した。
ところが、どう調べても輸入量は事件で使われた量にははるかに足りない。
大規模な密輸? なぜ? 疑問は深まるばかり。

そんな中、あるパティシエが安浦に言う。あのヤシ砂糖は、現地では恋愛成就の薬と言われている、と。

すべての謎が解けたのは、昼休み、署の仮眠室で。身体がだるくて休んでいた安浦は違和感に気づく。
身体が動かない。そして鼻の奥に突き刺さる甘い香り。それは自分の毛穴から溢れ出る飴の香り……
そう、あのヤシ砂糖。安浦も調査中に何度となく味見をしてきたあの物質は、砂糖などではなかったのだ。
何かの生き物か、あるいは未知の物質……食べた人間の体内で増殖し、
約一ヶ月後に爆発的に溢れ出して、宿主を殺す……寄生虫のような甘い罠。
ああ、これが砂糖に紛れ込んだら、有史以来『甘み』に取り憑かれている人類は生き残れるだろうか……
安浦は全身の内側から甘みを感じながら、とろけるように息絶えた。


次は「嘘」「親指」「三年」でお願いします。
0319「嘘」「親指」「三年」
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2015/03/01(日) 14:41:50.23
「君、バンカラ部に入らないか」
高校に入学早々、校門でいきなり肩を鷲づかみにされた佳代子は、
地面から飛び上がらんばかりに驚いた。
「バンカラ部はバンカラを目的とする文化部である。この軟弱な時代に、
俺たちと本当のバンカラを極めてみたいと思わないか」
振り返ると、下駄履きに褌一丁の筋肉質な男たちが、歯の欠けた笑顔で
佳代子を見つめている。褌の前垂れに『三年』『二年』などと書かれているからには、
上級生なのだろう。
「いえ、私はその、そういうのは……」
「安心したまえ。我々は健全な活動を旨としている。女子生徒は褌の下に
スクール水着を着てもよいことにしている。なあに、夏までには慣れる」
男は笑顔で親指を立てた。
ビシッ
佳代子の目潰しが先頭の部員の眼に炸裂した。同時に自らのネクタイを解くと、
片手に薙ぐ赤い布が男の顔に絡みつく。「ぐおーっ!」半裸の肉体が回転し、
褌の前垂れがフィギュア選手のスカートのように浮き上がった。
佳代子は驚く部員たちの前でセーラー服の上着を脱ぎ捨てると、
青空高く放り投げる。真っ白なサラシを巻いた胸が少女の形に引き締まっていた。
「おうおう!サムアップでバンカラたぁ、軟弱ここに極まれりじゃ!今日からアタイが
この学校を締めるけぇ、覚悟しいや!」
倒れた部員の頭に靴を乗せ、啖呵を切る佳代子。「へへーっ!」ひれ伏す部員たち。
が、そこに割って入ったのは同中出身の美沙だ。
「嘘……。そういうのは卒業して、あたしと薔薇色の高校生活送ろうって決めたじゃない……」
「悪ィな、血がよ、騒いじまうのさ……」
佳代子が美沙を抱き寄せると、落ちてきた上着が二人の頭上に被さった。
二人の肩が触れあ

田中、数学が分からなくても答案で遊ぶな。この解答用紙は掲示する。

次は「春」「蕎麦」「百回目」で。
0320名無し物書き@推敲中?
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2015/03/06(金) 23:37:40.44
「春」「蕎麦」「百回目」

春だ。
花粉の季節だ。
家の中でできる何か面白いことはないか。
考えついたのが蕎麦打ちだった。
妻に聞く。
「美味い蕎麦を食いたくないか」
妻は答える。
「いりませんよ!」と。
怒ることはないじゃないか、と抗議すると、妻はキッと睨み返して、
「何回言ったらわかるんですか! 私は蕎麦アレルギーだって言ったじゃないですか!」
ああそうだった、と私は引き下がったが、妻は怒りはおさまらない。
「なんですか! あなた私を殺したいんですか!」
うっかりしていたと頭を下げても、妻はもう止まらない。
「何度同じこと言わせるんですか! もう百回目――」
私はゴーグルとマスクを装着し、花粉の舞う外に飛び出した。


「忍者」「ぽっくり」「和尚」
0321「忍者」「ぽっくり」「和尚」
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2015/03/08(日) 20:54:06.78
男がそろそろかと見に行くと井戸の前で念仏を唱えていた。
「おい、なんでアンタが生きている?」
男がそういうと途中で唱言をやめて振り返って答えた。
「あれはアンタの仕業かい? あの忍者なら寺の瓦で足を滑らせて井戸の底に真っ逆さまだよ」
「そんなバカな!?」
「この高さだ、今頃ぽっくりいっちまっただろう」
半信半疑で男が井戸を覗いたのを見計らってそのまま背中を一押し。
男が井戸に落ちたのを確認すると変装をといて、後ろからひょっこり現れた本物の和尚に数珠を返した。
「あの男はやはり馬鹿だ。本物は瓦で足を滑らせないし、本物は念仏を途中で止めたりしない」
迷惑な男がいなくなったその寺は阿呆寺としてたいそう有名になったそうな。


「妖怪」「かわや」「大工」でお願いします
0322「妖怪」「かわや」「大工」
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2015/04/03(金) 22:45:29.69
「あっ、おまえは妖怪かわや大工!」
太郎君は叫びました。草木も眠る丑三つ時、屋敷の厠をせっせと直す、
妖怪かわや大工を見つけたのです。
妖怪かわや大工は厠の不具合を勝手に直してくれるいい妖怪なのですが、
修理中は厠が使えなくなるという弱点があるのでした。
「おーい、もれちゃうよぅ、厠を使わせてよぅ」
太郎君が懇願します。しかしかわや大工はそれを無視し、
せっせと厠を直すのでした。
「仕方ない、庭でやろう」
太郎君は植込みの陰で用を足しました。
そしてスッキリした太郎君は、オチをつけることも忘れて寝床に戻ったのです。

次「審判」「ノーパン」「クリームパン」で。
0323名無し物書き@推敲中?
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2015/04/12(日) 14:34:21.32
小学三年生の競技はクリームパン食い競争だった。一郎ならびに三年生が四人、
スタートラインに並んだ。五月の突き抜けるような青空と父兄や生徒の歓声が、
一郎の頭に強い印象を残した。ふいに、審判の女教師が、「いちについて!」と叫んだ。
一郎は前を向き汗のにじむ手を握りしめた。そしてピストルを打たれる一瞬前、風が吹き抜けた。
思わず一郎は女教師へ振り返った。
女教師の細やかな手が制止するのを待たずして、風をはらんだスカートが地面と平行になった。
女教師はノーパンだった。小学三年生の眼前に、二十代半ばの女の股間がさらけ出された。
ほっそりとした両脚の上、黒々とした毛の茂りに一郎の足は完全に止まった。
ピストルの音が鳴り、走り始める同級生をよそに一郎は女教師を見たまま立ちすくんでいた。
青空の下、一郎の遠くでクリームパンが、糸に吊られ揺れていた。

次「上司」「情事」「定規」
0324名無し物書き@推敲中?
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2015/05/02(土) 00:52:59.77
上司の情事を目撃ショウジは狂気に駆られて裁きを行使。
鋭利な定規で上司を殺し、残った情婦と淫靡な行為。
薔薇の馨りと吐息と熱気、二匹の獣の原始の叫び。
甘美と耽美に夢中な番い、近づく焦眉に気付かず謳歌。
輪廻の使いが扉を開き、無縫のループが矢庭に開始。
上司の情事を目撃コウジは狂気に駆られて……


次題 「碁石」「馬蹄」「ホロスコープ」
0325「碁石」「馬蹄」「ホロスコープ」
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2015/05/10(日) 21:00:35.60
さあ、新春恒例の桜花賞に16頭の優駿馬が出そろった。
全ての馬がゲートインして、今スタートを切った、まず先頭を切るのはセントルイス、
続いて追い上げるのがツヅイテイオウ。その後ろ、ソノウシローズがいいポジションに付けている。
セントルイス速いがツヅイテイオウを交わしたソノウシローズが徐々に追い上げてきた。
後方からはコーホーキャップが狙っている、レースは団子状態でまだ分からない。おっと、どうやら一頭出遅れた馬がいるようだ。
騎手はムチを振るっているが、沿道の芝生を食べながらホロホロしている一頭の馬、全く走る気配がない。
なんとこの馬はホロスコープのようだ。去年V3を達成したホロスコープが全く走らない、どうしたというのか。
そうこうしているうちにレースは大詰め、最終コーナーを回って直線勝負に入った。
速い速いぞこの馬、他を寄せ付けずぐんぐん伸びていく、ぶっちぎりだー、ぶっちぎりで1っ着はセントルイス続いてツヅイテイオウ、3着にソノウシローズが入ったーーー。
ピンポンパンポン、桜花賞払い戻しを発表します。1着馬番Fセントルイス一二〇円、2着馬番Cツヅイテイオウ、フタヒャク・・・尚このレースで馬番Hのサマタゲータは反則により失格となったため、馬蹄が外れ、全く走らなかったホロスコープは15位になりました。
「なんだよー、馬蹄が外れたのかよ!まあ、馬蹄が外れたんなら15位でしかたないな。15位しかたない。ジュウ碁石カタナイ。」


「挽きたて」「風船」「カーラー」
0326「挽きたて」「風船」「カーラー」
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2015/06/07(日) 03:40:18.24
帰宅中、ふと道路脇の植木の根元を見ると、しぼんだ風船から伸びた紐の先に、透明な袋に包まれた手紙がついていた。
何処かの学校の生徒が飛ばしたものだろうか。
よく見ると袋が破れて手紙は泥だらけになっていたが、拾って中身を読んで見ることにした。

『…きたての…ー…ーでお待ちしております。喫茶 栄螺』

「なんだ、喫茶店のチラシか」
滲んでしまって『…きたての…ー…ー』の部分は読めなかったが、挽きたてか淹れたてのコーヒーだろう。
しかし、『栄螺』はなんと読むんだったか。
スマホですぐに調べて、チラシのもう一つの可能性に気づいた。

巻きたてのカーラーで待っててくれるのかよ、サザエさん。


「雪」「便利屋」「脚本家」
0327「雪」「便利屋」「脚本家」
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2015/07/19(日) 08:14:46.06
スマホの天気予報では最高気温36度、文句なく猛暑日だというのに出演者たちはコートやジャンパーを着て
真冬の山荘で起きた殺人事件の謎に迫っている。
元々は秋の温泉旅館を舞台にしたサスペンスだったのだがPが念願の韓流アイドルの出演取り付けに成功して
何もかもぶち壊しにしてしまった。「スノーホワイトにはやっぱり冬が一番よ」鶴の一声である。それにしても
色白だが男なのにスノーホワイト(白雪姫)とは名付けた奴には最低限の教養もないらしい。

制作会社などPの意向の前では単なる便利屋にすぎず俳優女優の不平不満にひたすら頭を下げる日々が
続いている。脚本家も突然冬の話に変えろと言われて泣く泣く書き直したようだがまだ「これが休暇だったら
もみじ狩りを楽しむのに」という台詞が台本に残っていて修正してもらわなければならないだろう。

経験上今回のドラマは今から駄作になることが目に見えるようだがPには視聴率がすべてでドラマの内容など
お構いなしだ。スノーホワイト君が作中で殺されたりしたら文句を言うだろうが。普段ろくに顔も出さない
くせに今回はお気に入りがゲスト出演しているためかこのくそ婆はほぼ日参状態。今からでもこの婆を絞め殺す
脚本になってくれればいいのにと思う。


次「火事」「マニュアル」「情」あついあついあつい
0328「火事」「マニュアル」「情」
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2015/07/20(月) 21:31:20.47
私が小学生のころ、重点科学教育対象校とかいうお題目で、学校に最新型のロボットが導入された。
「ウィーン、ウィーン、ミナサン、超高度情報機器ノジョーデス。ウィーン」
上半身は配線を巻きつけたパイプ椅子みたいな出来で、よく外れるキャタピラで走り、
言葉よりもモーター音のほうが気になる彼を、友達はみんな馬鹿ロボットと呼んだ。
そんなある日、学校で火事が起こった。
「ウィーン、ミナサンニゲテクダサイ。ウィーン、ワタシガクイトメマス」
ジョーはマジックハンドで消火器を掴もうとしたが、申し訳程度の握力しかないために
持ち上げることはできない。
「ウィーンウィーン。ミナサンニゲテクダサイ、ニゲテクダサイ」
普段ジョーを馬鹿にしていた私たちは、この健気なロボットを救いたいと思った。
しかし教師が引っ張ってもジョーはびくともせず、持ち上げることもできない。
「ウィーン、ウィーン」
仕方なく私たちはジョーを見殺しにした。逆巻く火焔の向こうに、ジョーのモーター音だけが
しばらく聞こえていた。そして一瞬、黒煙の向こうから、はっきりと聞こえたのだ。
「サヨナラ……」
私はこのとき、死を、あえていおう、生き物の死を、初めて知ったのかもしれない。
そしてまた、自分たちの無力をも。
翌年、新しいロボットが来た。
「キュイーン、キュイーン、ミナサン、超高度情報機器ノジャックデス。キュィーン」
私たちはまずマニュアルを開き、ロボットの電源を落として、体育倉庫にしまっておくことにした。

次「警官」「景観」「鶏冠」
0329名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2015/08/22(土) 22:03:49.14
茅野駅を降り、ヤスシには感嘆の声も無かった。
その鶏冠のさまに息を呑み、絶句するしか無かったのだ。
日本に有りながらアルプスを臨む。本場アルプスでは無い事は分かっていても、その感慨は測り知れない物だった。
あぁ、この山頂からの景観を臨めるのであれば命すら惜しくない、とすら思える。
駅前でタクシーを拾い「美濃戸口まで」と告げる。
そう、ヤスシは知らなかったのだ。
この後、美濃戸口の山荘で警官が殺される事件に巻き込まれる等とは。

次「焼き鳥」「私生児」「メニュー表」
0330「焼き鳥」「私生児」「メニュー表」
垢版 |
2015/09/08(火) 15:41:33.07
それは人肉だという噂があった。
とある焼き鳥屋の、メニュー表には載っていない「はだいろ」という裏メニュー。
豚肉に似た串焼き。独特の香りと質感。和わさびを乗せて食べるらしい。
私は目の前の「はだいろ」を手に取り、恐る恐る口に運んだ。
咀嚼し、咀嚼し、咀嚼し、舌の奥へ強く押し込むようにして、飲み込む。
……食べ慣れた、普通の肉の味がした。僕は、思わずほっとした。

僕がこの店に来たのには理由があった。
隣家に住む母子家庭の、十一才の娘が行方不明になったのだ。
同じ私生児であるという共通点からか、彼女は二十才も年上の僕によく懐いてくれていた。
最後の目撃証言はこの焼き鳥屋のそば。徹底した捜索が行われたが見つからない。
でも……「はだいろ」の噂を知っていた僕はある不安に駆られて、この店で、このメニューを頼んでみずにはいられなかったのだ。

僕は怪しげな目つきを送ってくる店主と目を合わせないようにしながら会計を済ませ、店を出た。
よかった……どうやら、彼女がここのメニューになっているかも、なんて僕の心配は杞憂に終わったらしい。
「はだいろ」の、あの味。食通なんかじゃなくてもわかる。
あれは明らかに、生後十一年の味ではなかったもの。

次は「駅前」「豚」「社長」でお願いします。
0331「駅前」「豚」「社長」
垢版 |
2015/11/12(木) 23:14:38.11
おおよそ200日振りの休み。うっかりブラック企業に入ってしまい、完全に社畜と化している私にとっては既に何をしたらいいのか分からなくなっている時間。
まともな感情や人格を保ちながら社畜を続ける事など出来る筈はなく、既に私の人格は存在して居らず歯車である。
歯車には動いていない間の価値などはないので、休みなどと言うものは存在の否定でしかない。
たった1日の休み。それすらも私にとっては焦燥感で耐えられない物となっている。
このまま部屋に居たら狂ってしまう。とにかく、と逃げるように部屋を飛び出した。
駅前まで来ると少し気持ちが落ち着き、周りを見る余裕が出て来た。どうやら今日は祭をしているらしい。
色々な屋台が出ている。焼きそば、イカ焼き、豚トロ串、りんご飴、綿あめ…
こんな時も飲食の呪縛は私を離さない。自然と目が追っている事に気付き絶望する。
あんなに気楽に調理できればどれだけ私の心は救われるのだろう。なぜ私は救わないのだろう。
あぁなるほど。明日起きたら社長を殺しに行こう。
そうすればきっと私の魂は救われる筈。

次『こたつ』『落丁』『雄鶏』でお願いします
0332名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2015/11/12(木) 23:22:21.00
あっちの>>330
短いながらもしっかりと伏線があってぞくっと来た
ネタバレ前に気づける要素もあっていいね
0334「こたつ」「落丁」「雄鳥」
垢版 |
2015/11/17(火) 13:41:06.81
落丁混じりの雑学本に、首を切断されても死ななかったマイクという雄鳥の話が載っていた。
首無しマイクはグラム50セントの鶏肉ではなく、ドル箱スターとして大切にされたという。
つまり、マイクは死を乗り越えることで新しい人生をつかみ取ったのだ。
それは例えば、僕と彼女との関係のように。

当時、僕らの上には激しい雷雨が降っていた。連日連夜の口喧嘩、上がる絶叫、うなるDV。
ついに彼女は包丁を持ち出し、僕は必死に抵抗する。気がつくと彼女は倒れ、血が流れていた。
「殺ってしまった」……と思った。取り返しがつかない、もう彼女は帰ってこない……
そう思った瞬間、僕は急激にすべてを後悔し、倒れた彼女にすがりついて泣いて謝った。
すまない、すまない、すまない、すまない、すまない、すまない…………その、直後。
倒れていた彼女が、無言でそっと、泣き叫ぶ僕を抱きしめてくれた。
そう、彼女は生きていたのだ。僕は泣いて彼女に許しを乞い、彼女もまた僕を責めなかった。

まさに奇跡だった。その出来事は、僕らのすべてを一変させた。
彼女はかつてのような不平を漏らさなくなり、僕も二度と彼女から離れなかった。
僕らは二度と争わず、我が家には平静な空気が流れていた。
最初は戸惑っていた僕も、この新しい人生を受け入れ、前向きに生きていくことにした。

ただ二つの問題は……彼女が二十四時間、休まず僕を抱きしめ続けようとするから
外出もままならず、会社を辞めなければならなかったこと。それと、
処分に困ってこたつの上に置いたままになっている彼女の頭部――包丁を持って
もみ合った際に切断されてそのまま動かない彼女の頭部を、どうするべきかということ。

相変わらず僕に抱きついたままの首のない彼女は、相談に応じてはくれそうになかった。


次は「リモコン」「緑茶」「山」でお願いします。
0335「リモコン」「緑茶」「山」
垢版 |
2015/11/29(日) 19:18:07.56
 「緑茶ダイエット、もちろんノンカロリー!」
 「カテキンが殺菌に効く!」
 「1ヶ月で4キロ減!お値段はたったの598円」

 山の様なキャンペーン文句は見事に的中した。
 スーパーの緑茶の棚は、番組終了後、見事に空となったのだ。

 「まあっ!」と一応驚いて見せた大臣に、男は売り込む。
 「貝柱、納豆、古くは紅茶キノコと実験は大成功です。
 ダイエット・健康・激安の条件を満たせば、リモコンは簡単ですよー」

 計画は実行された。
 毎日の様に、テレビにランニングの光景が写される。
 おなじみの「3ヶ月後」さんの体型も、申し分なかった。
 しかも、これが全て無料で・・・「実はお金もくれるんです!」

 これがウケないわけがない。
 「軍隊ダイエット」キャンペーン大成功。予定人員は無事確保されたが・・・
 大臣は、さすがに複雑な表情を隠せない。

※そういえばブートキャンプなんとかもw
 次のお題は:「紅茶」「怨恨」「川」でお願いします。
0336名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2015/12/09(水) 23:22:17.16
「ポイントはね、隠し味に紅茶を入れる事なの」
あまりにも美味しかったので作り方を訪ねると妻はこう答えた。
その時の事を思い出しつつ、自分で再現してみようと四苦八苦してみたもののどうにも上手くいかない。
何しろ『紅茶を入れる』という事以外は暗中模索、五里霧中。食材から調味料まで何が入っていたかは分かっても、どの位入っていたかは分からない。入れるタイミングも。
何も怨恨で離れた訳ではなしに今からでも作り方を聞けばいいのかな?なんて思ったがそんな事ができる訳はない。
そんな考えがよぎってしまった自分に少し失笑した。
今も君はあの川の向こうで両親と楽しく笑って過ごせて居るのかな?
あの時、君に押し戻されたけどやっぱり君が居ないと張り合いがないよ。
君と一緒に進みたかったよ。




ポエムか

次『痛い』『ポエム』『陶酔』
0337名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2015/12/13(日) 00:58:26.83
「ェイアーッ!」 ガシャーン!!「出た! 陶酔拳!!」
アナウンサーが叫んだ。若く筋肉質の武道家がマットに沈む。リングの上では足元もおぼつかない
初老の酔っ払いが、もげた甕の取っ手を握って鶴の構えに移行するところだ。
ぶちまけた安物の酒の匂いが、リングサイドまでもわりと漂った。
「酔拳と陶器による凶器攻撃、これは痛い!」解説のミスターポエムこと死神(しじん)三十郎ががなり立てる。
ここまででお題を消化してしまったが物語はまだ続く。甕の取っ手を握るアラフィフは、
悲しい過去を背負った香港だか海南島だかのアンチヒーローだったのだ。
その、過去とは……!?

次「さくらんぼ」「必殺」「普通の娘」
0338名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2015/12/20(日) 15:59:34.63
「遅刻遅刻〜!」
私、田中咲欄慕!
キラキラネームだけがコンプレックスの普通の女の子!
朝食の食パンを咥えたまま曲がり角を曲がると何かを跳ね飛ばしたような衝撃があったけど気にしない!
急がなきゃ電車に乗り遅れちゃうもん!
ギリギリで電車に乗り込むと、大変!痴漢に胸を揉まれてる女の子がいるじゃない!
私は、近づくと痴漢の肩に手を置いて言った。
「貴様、それでも男か!必殺太陽神竜拳!」
私の必殺技をくらい痴漢は電車の窓からぶっとんで行く。
「ありがとうございます、あの、お名前を……」
痴漢に胸を揉まれてた女の子は、顔を赤らめながら私に聞いていた。
「私の名前はさくらんぼ、普通の娘だ」
それだけ言うと、私は壊した窓から飛び降りた。
逃げろさくらんぼ!鉄道会社から窓の弁償代を請求される前に!

次は
「酒」「女」「煙草」
0339「酒」「女」「煙草」
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2016/01/09(土) 15:04:42.30
「私は女性というものを尊敬している」
 伯爵は手にしたグラスをかかげてそう言った。
「なぜなら女性は、その全身すべてに深い深い意義があるからだ。例えば……」
 言葉を区切り、グラスに突き立つ細長い女性の指に吸い付き飲み物を吸い上げる。
「……ふぅ。例えばそう、切断した中指から骨を抜き加工すれば、理想のストローとなる」
 食卓に招かれた客人たちが微笑んでうなづく。和やかな注目の中、伯爵が続けた。
「それに、女性の体毛の皮巻き煙草。実にいい香りだ。……これはね、三十年物だよ」
 おお、と一同から驚嘆の声があがる。三十年物とは、女性が絶命するギリギリの投薬を
三十年も続けた逸品ということだ。大抵の女性は十日の投薬で廃人と化すというのに。
「体液酒もいいね。一口に体液と言っても、なにをどう使うかで無限の広がりを見せる。
合成酒ではたどり着けない神秘的なフェロモンが私たちを狂わせる。最近は羊水酒だね。
はじめは十代の羊水で満足していたけれど、いまは一桁だ。八歳で妊娠させ、
九歳で羊水を絞る。これに、生きたまま腐らせた女性の膿をひと垂らしすると通好みだ」
 鷹揚に語る伯爵の通人ぶりに一同が尊敬のまなざしを送る。
 そこに、従者が現れ耳打ちしてきた。
「申し上げます。人工子宮より新しい子供が生まれました。うち、女性は八六七人」
「それはめでたい。一人として無駄にしないように、しっかりと面倒を見るのですよ」
「は。それで、残り九二一人の男性のほうは」
「男……? そんなゴミ、いつものようにミキサー処分を。はぁ……遺伝子操作もせず、
仕上がりまで未開封が人間蔵の鉄則とはいえ……男などが生まれるのは癪に障る」
 伯爵は機械の指を揺らし、機械の脳から無線で指示を飛ばした。
 週末世界を支配する性別なき機械生命たちは、即座に彼の命令を実行するだろう。


次は「ヨーグルト」「郵便」「寒中」でお願いします。
0340「ヨーグルト」「郵便」「寒中」
垢版 |
2016/01/13(水) 09:41:39.32
 決定通知がそろそろくる筈だ。
 老人は、ワクワクしながら待っていた。
 くすんだ水色の病院の前で、寒中ずっと佇んでた。

 郵便配達が来るや否や、自分のをさっと抜き去る。
 マイナンバーみたいな、白い地味な封筒だが確かにこれだ。

 なんせ今回は頑張った。
 巨額の寄付もしたし、慈善事業だって・・・
 入試結果を見る時の、あのドキドキで封筒を開く。

 <来世決定通知 : 貴方の来世は 結核菌 と決定致しました>

 「ええっ」と落胆!
 後を読むが、堅苦しい文句が並ぶだけだった。

 <本決定は、貴方の殺生実績を基に厳粛な審査の上・・・>

 「来世は空中を漂うだけとは・・・トホホ」
 ションボリしながらヨーグルトを飲む。
 老眼なもんで、「乳酸菌 10億個以上」は読めなかった。

次のお題は:「築城」「焼却」「納豆」でお願い致します。
0342「築城」「焼却」「納豆」
垢版 |
2016/04/06(水) 05:35:34.24
 焼却炉の中で音がした。のぞき込むと、同級生の通称・納豆マキ子がいた。

 それはまだ中学校に焼却炉のある時代。くすんだ空に昭和の残滓が漂っていた世紀末。
 彼女は半畳程度の焼却炉の一角に、紙くずや空き袋、わた埃などでゴミの城塞を築城し
膝を抱えて立てこもりながら、小さく震えて、僕を見ていた。

 なにをしているのか聞くと、「死にたくて」と答えた。
 理由を聞くと、「私の体は納豆みたいに、つぶつぶが糸を引いて、臭いから」と泣いた。

 そう、彼女は納豆マキ子。誰でも知っている。
 1年前に恐ろしい呪術をかけられた彼女はいまや、皮膚という皮膚、パンツの中から
頭皮の先まで、小指の先ほどのつぶつぶに覆われている。そのつぶつぶは、ぽろぽろ取れた。
ねばつく糸を引きながら。膿をぴゅっぴゅと吹きながら。腐った肉のにおいを漂わせて。
 彼女の周囲は常に異臭と粘液に包まれた。その醜さは、大の大人でも三日は夢に見た。
 死ぬのは当然だ。むしろいままで生きていたことのほうが不思議なくらいだった。

 どうせ死ぬなら……と、僕は彼女に頼むことにした。その前に、君の納豆を食べさせて欲しい。
 彼女は驚いた後、答えた。「……いいよ。あなたは、あなただけは、私がこの原因不明の病気で
納豆になる前も、後も、同じ目で見つめててくれたから。いまも、私を探しに来てくれて……」
 今度は僕が驚く番だった。まさか……気づかれていたとは。恥ずかしいが、正直に答える。
「そう……実は、僕は君が納豆になる前から、なった後もずっと――君を食べたいと思ってた」
 彼女の頬が赤く染まり、その拍子に二、三粒の腫瘍が、ねちょねちょと取れ落ちた。

 彼女は僕につぶつぶを食べさせてくれた。それは腐った人肉の、まろやかな味がした。
 ああやっぱり。僕は確信した。やっぱり彼女に呪いをかけたのは、正解だったのだと。


次は「ランダム」「気温」「春」でお願いします。
0343「ランダム」「気温」「春」
垢版 |
2016/04/25(月) 01:38:09.71
  山頂には着いたけれどこの天気だ。いい景色なんて拝めないとわかりきって登った。だがため息は出る。
  うつむいて帰ろうとしたとき一陣、風が吹いた。めりめりと眼下の山肌に張り付いた雲を剥がしていく。今の今まで雲に覆われていた丹沢の尾根筋が足元から刻々と浮かび上がってくる。その尾根筋を境に雲の毛布が左右に引き剥がされていく。
  うねる雲がさらに巻き上がり、隠されていた青い山々がどこまでも続いていく。山々に引っかかって残る雲が、灰色と白と微かな日の光で千の沢を絡めたような海になる。
  僕はその時間と空間を独り占めしていた。土砂降りの丹沢最高峰蛭ヶ岳山頂。そこから雨雲が消えていく様は、例えるなら地獄の幕開けのようだった。そしてそれは晴天の富士山に負けるとも劣らない美しさだった。
  さっきまでの雨が体温を奪っている。でも、しばらく立ち尽くした。
  雪こそ融けたものの地上1800メートルはまだ春になりきれていない。気温は一桁だろう。だけど脳みそがまだこの景色を記憶として焼け付かせていなかった。魂が戻ってくるのに少し時間がかかっていた。
  丹沢なんて所詮は神奈川で景観は甲信越の山々には適わないだろうと思っていたけれど、どっこい、こんなに山深くて壮観なのかと思い知らされた瞬間だった。その山が持つ良さというものは登ってみなければわからないのだ。
  曇りはしているものの雨の気配は去っていた。青根のバス停からここまでは雨中行軍訓練のようなものだったから視界が拓けただけで気分はかなり晴れた。
  水を飲みタバコを吸って丹沢山荘方面に歩き出した。しばらく青と白の地獄は続き、塔ノ岳に着いた頃には人里が見えるようになった。
  午後の光が人工物にランダムに反射するのを見て、少しもったいなく思う。下界を忘れてもっと山の中にいたい、が、同時に人も恋しくなってくる。
  丹沢の山は整備が行き届いているのでこっちから頑張ってふっかけてやらないと遭難なんてできないが、それでも無事に下山できるとほっとする。
  さて、温泉に入って一杯やって家に帰ろう。そして友人連中に言ってやろう。丹沢はいいところだったと。今度は一緒に行こうと。

次は「カステラ」「電球」「背後」でお願いします。
0344「カステラ」「電球」「背後」
垢版 |
2016/05/12(木) 13:20:57.26
「の、呪いを解くために、父さんを生け贄にしろって!?」
 驚いた貞国の言葉に、丸メガネの女子高生が頷く。
 彼女は薄暗い倉庫に吊られた裸電球の下、手にした巻物の一節を示した。
「これ。江戸時代、あなたと同じように水神に祟られたご先祖様は、
当時の家の主、貞良を供物とすることによって難を逃れたとあるわ。
具体的には――家主・貞良を刀で細かく切り分け、裏庭の池に投げ入れた、と」
「ッ!! ……ば、馬鹿言うな。父さんを、そんな……できるわけないだろ!」
「そしたらあなたが死ぬだけね。どうする? やるのなら、手伝うけど」
 陰の下、メガネを外した少女の瞳が怪しい輝きで貞国を見つめる。
「……ほ、本気か? い、いくらお前が学校で噂されてる通りのオカルト女だからって、
まさか、ほ、ほんとに人を殺したことなんて、あるわけ……ない、よな?」
「――どうやら、話し合いの余裕はなくなったみたい」
「え……うわ!」
 少女の視線に背後を振り返れば、倉庫の入り口をふさぐように黒い影が立っていた。
『ゾ……レ……バ………………ばばバ バば ぶ ぶ……ぞ ぞ……』
 緊張する二人の前で、泥水にあぶくが跳ねるようなおぞましい声で、影が言う。

『ぞれ ば……“家主貞良”と 書い て……“かすてぃら”と読 むの……じゃ ぶぶ』

 ――影が消えた後、オカルト少女は、ジト目を向ける貞国に対して胸を張って言った。
「どうやら供物はカステラでいいみたい! よかったわね、貞国くん!」
「おい!!」



次は「昔話」「実際」「思い出」でお願いします。
0345「昔話」「実際」「思い出」
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2016/05/26(木) 23:03:44.34
 話題が無いとよく言われる。
 両隣の友人達は、あれそれ昨日はどこ行っただの、近頃これらがこう見えてこう美味しいだのと場を沸かしている。
 反面私の方はと言えば、涙をことさら誘う昔話も、懐かしさに浸れる思い出などという代物も持ち合わせていない。私は他人が感涙にむせぶありとあらゆる事柄について、その思うところも、感ずるところも毛頭無いのである。
 そもそも自らの実体験だとか、実話だとか、実際この世界に生じた物事を話題に出すことの何が面白いというのか。そんな単に過去をなぞるに過ぎない行為に喉を震わす体力を費やし、果たして何が得られるというのか。
 言語とは高尚かつ荘厳な生き物である。彼らは言語に対し何の罪悪感も抱いていないのだろうか。言語は自らの活動によって世界が創造され構築されることを好む。既に存在する廃墟や遺跡を飾り付けるなどという目的で呼吸をしていない。

次は「胃」「メロディー」「雑貨屋」でお願いします。
 
0346「胃」「メロディー」「雑貨屋」
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2016/05/27(金) 19:23:42.47
少女の想い人は、寝ても覚めてもオルゴールに夢中でした。
少女はオルゴールになりたくて、なりたくて、ある日、オルゴールを食べてしまいました。
ごっくん! ……すると、どうでしょう。少女のお腹の中からメロディーが流れてきます。
想い人はすぐに少女を見初めて、少女をオルゴールと呼び、大切に大切にしてくれました。

それから暫くして。少女の想い人は病にかかりました。倒れて働けず、薬代も払えません。
やがて借金取りがやってきて、彼の家財を残らず売り払ってしまいました。
その中には、少女も含まれていました。少女は、オルゴールのひとつと思われていたのです。

売り飛ばされ、ある雑貨屋に並べられた少女は、いつか想い人が自分を買い戻しに
来てくれると信じていました。その時まで、他の誰かに買われるわけにいきません。
少女は棚の奥、ぬいぐるみや硝子瓶の影へと隠れました。ですが、少女の胃からは美しい
メロディーが流れているのです。少女はすぐに人目を集め、高値で買われていきました。
それから少女は、子供への贈り物にされたり、寝室に飾られたりしながら、
たくさんの国々の、たくさんの人々の間を渡っていきました。

……あれからどれほどの時代が過ぎたでしょう。少女は元の雑貨屋に戻ってきました。
古びて薄汚れた少女は、すっかり本物のオルゴールとなってしまい、
喋ることも、動くことも、ほとんどできなくなっていました。

そんなある日、ある青年が少女を見つけ、そのメロディーを聞いて言いました。
「死んだ母が好きだった曲だ……ああ、再び母の歌が聴けるなら、何でもするのに」
青年は悲しげに涙を流しました。その青年は、少女の想い人に似ていました。
少女は青年を慰めるために、歌を歌いました。お腹の音色にあわせて、歌いました。
歌い終えると、青年が言いました。「お嬢さん、僕のために歌ってくれて、ありがとう」

その言葉を聞いた少女は、もはやオルゴールではありませんでした。
少女はただの少女として、安らかに息絶えたということです。


次は「皿」「汚れ」「ラズベリー」でお願いします。
0347皿 汚れ ラズベリー
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2016/06/12(日) 21:26:13.44
 夕焼けの野原を自由に踊る彼女。白いワンピースはラズベリーで汚れている。見ようによっては綺麗な柄ともとれるが、でもそれは僕が彼女を好きだからだ。
頭には花冠が載っている。彼女が自分で作ったものだ。彼女が唯一覚えていたもの。それ以外は全て忘れてしまった。
 くるくると回転したり、バレエのように跳ねたりしている。本当に楽しそうに、いや楽しんでいるはずだ、彼女の笑顔は演技では出来ないような自然さだしこの美しい夕景と一体になっている。
 僕は日が暮れるまでこの光景を夢見心地で眺めている。たまに我に帰るときにはこの光景を、この瞬間をどうにか永遠に保存出来ないかと考える。
ポケットの空の薬瓶を取り出し右目の前に持って行ってカメラのように彼女に焦点を合わせる。瓶の中に彼女が収まり、その中で彼女は踊っている。僕は少し得意になってにやける。

 時間が切り取られ気づけば日がもうほとんど沈みかけていた。ため息を一つだけ吐いて腕時計を確かめる。あと五分。薬が効いて彼女が崩れる前に抱きかかえられるように彼女の元に歩く。
いつものように夢遊病みたいにフラフラしている彼女は僕が側に立ったちょうどその瞬間に崩れ落ちた。僕はそれを抱きかかえ小屋に戻る。
 ベッドに下ろし毛布を掛け額にキスをした。しばらく見つめた後キッチンに向かう。テーブルには昼の残りのラズベリーが二、三粒残っていた。僕は微笑み、今度はテーブルの下の割れた皿を片付ける。
 割れた皿は元に戻らない。でも僕はこの皿自体を愛していたから形がどうなろうとそんな事は大した問題じゃなかった。
僕は割れた破片をかき集めて抱きしめる。バラバラになった事でさらに愛おしさが増したように思える。手から血が出ていた。それでも僕はとても幸福な、あの夕景の中にいるような温かい気持ちで包まれていた。

次題 「埋葬」 「鍵穴」 「白濁」
0348「埋葬」「鍵穴」「白濁」
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2016/06/15(水) 16:13:47.12
すべての男が埋葬された世界で、最後の希望はその扉の向こうにありました。
老若男女から『男』を除いたすべての人々がそこに集い、
残された最後の子種をその身に受けようと待ち構えています。

やがてブーゲンビリアの木の枝が鍵穴に差し込まれ、扉が開かれました。
途端、白濁した子種が洪水のようにあふれだしてきました。

最前列の数千人がおぼれ死ぬ中、女たちは、必死に自分の中へと種をかきいれ続けました。
少しでもその経道を開こうと、自らの肉体を揉みしだき、熟れた熱を帯びて。
あるいは親しい者同士で身体をいじり合い、つややかな声を響かせながら。
未熟な子供や不具の者は、種を頬いっぱいに含んでは、求める女穴に吹き入れて。

女同士の肉体が絡み合い、うごめく姿は、
まるで瓶に満たされた蛇の群れがまるごと火であぶられ、のたうつかのようでした。
地獄のようで天国のような、死と再生、終焉と創世の景色。

神様が世界をレイプしようとしたお話。


次は「眠い」「しんどい」「意外」でお願いします。
0349「眠い」「しんどい」「意外」
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2016/07/06(水) 01:00:45.61
人生に意外性なんて存在しない。眠ければしんどい。しんどければ辛い。
いまこれを書いているのは0時47分。しんどい。どしんどい。夜中しんどい。
err......えへぇ。嘘かも。眠くてもしんどくないかも。そう、眠眠打破があれば!
バカヤロー! 眠眠打破はしんどいけど眠くないを買う薬くぁすはぶぉげー!!
ハァハァ
ハァハァ
しかもあんまり効かない。医薬部外品だものね。
待ってね、どうかしてるみたいな文を書いてるけどどうもしてないのよ。
0時50分だわね
読点を省略するのもどうかわね
どうかわねってなんだかわね
つまるところ、七夕がやってくるというわけなのです。割とマジな話。
待って! オチのない話は罪なのよ! わかる!?
スレッドが止まるのは罪なのだ。9%のチューハイをアタリメで3杯飲んでも
見過ごすことのできない罪なのだ。I shall returnではだめなのだ。
I returne(ed). よし、何年振りか知らないが、明日からこの板に戻るべぎゅ。
ときは0時59分を回っていたのだった。そして1時0分をも。

次「七夕」「お盆」「赤とんぼ」
0350「七夕」「お盆」「赤とんぼ」
垢版 |
2016/07/17(日) 23:18:28.41
盆には帰る。そういった彼を待って七夕の天の川を眺めていた十七の夜を、私は忘れない。
北国の七夕は8月で、お盆の前の週になる。都会へ出る人の約束がどれだけあてにならないか、
子供だった私にはわからなかった。私は前の年にはじめて彼にすべてを許した納屋の陰で、
冷たさを帯びはじめた晩夏の風を防ぎながら、暗い空を見上げていた。
あの寂寥は、あの不安は、あの予感は……。一番悲しかったのは、そのあとすぐに、
私は自分がもうそれを処理できる年になっていることに気づいたことだった。
三十五になった。地元で結婚し、子供も手のかかる時期を過ぎて、昼は自由だ。
ある日、買い物のついでに思い立って車を実家のあったほうへ向けたのは、なぜだったろう。
子供時代を過ごした集落は、その後生産組合が破綻してみな廃農してしまい、いまでは
雪で屋根の落ちた廃屋が点在するさみしい荒野になっている。と、車の窓からあの納屋が見えた。
道路から50メートルはあるだろうか。私は車を止めた。
風が冷たい。傾きかけた太陽を手で遮って、納屋がどんな様子か眺めてみた。わからない。
私は無性にあそこへ行きたくなった。ちょっと靴を確認し、昔通った畦道を踏んで、
やわらかい倒れススキの上を歩きだす。小さな蜘蛛や菱形のバッタが、右へ左へと逃げてゆく。
到着してみると、納屋はシルエットよりもずっと破れていた。タールの染みた板壁も
さすがにもう腐り果てて、裏側は完全に崩れ落ちている。私の天の川を遮った黒い庇は、
もうそこにはなかった。あたり一帯で無数のコオロギが鳴いていた。
何をしに来たんだろう。そう思ったとき、一瞬だけ、化学肥料のつんとする匂いが鼻をついた。
納屋の中に残りがあったのか。あめかぜに薬が抜けきらないのか。わからない。
ああ、私は思った。そうだ。あのころ、この匂いがこのあたりにはあった。
確かに、ここに、私はいた。
何分くらい浸っていただろう。気づくと影が長い。私は戻ろうと振り返った。と、傍らのススキの
先端から、プイと赤とんぼが飛び上がった。とんぼは30センチほど浮くと、そこで止まり、
ゆっくりと風に流されると、またもとのススキの先に戻った。その重さにススキが少したわむ。
私は後輩に小さく会釈すると、もと来た道を車に戻った。

次「正午」「幼年期」「骸骨」
0351「正午」「幼年期」「骸骨」
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2016/08/20(土) 21:15:07.27
軽トラが花嫁の妹と嫁入り道具を乗せて、山間の集落を下っていく。
盛夏、白い車の影が揺らぐ遠景に紛れる中、集落内に正午を告げるサイレンの音が鳴り渡った。
暑さで故障したせいか、うねるように調子を外すサイレンの音は、二十年前あの日と同じに聞こえた。
その音が、俺の幼年期の記憶を呼び出す。

あの日、俺と母と妹は山菜を採りに山に入った。母が山菜を採る間、俺と妹は母の側を離れて遊んでいた。
はじめは妹とあけびや山葡萄を探していたが、その内オオクワガタを見つけた俺は夢中になって木に登った。
捕まえた獲物を妹に見せようと木を下りると、妹がいない。
しまったと思った。母には妹から目を離さぬよう言いつけられている。不安で体がしびれたようになる。俺は走り出した。
妹はそう遠くない桑の木の陰にいた。
低木や蔓で視界が遮られていたが、妹の麦藁帽子に巻かれた赤いリボンが俺の目に入った。ほっとして妹の元に向かう。
草木の枝葉の間から次第に妹の姿が現れるにつれ、俺の耳に蝉やら野鳥やらの声が募る。
しゃがんだ妹の横顔は引きつっていた。それが笑みだと気づいたとき、虫や鳥の声が狂おしく俺の耳を圧した。
妹の前には女物の着物が横たわっていた。着物は嫌な色に汚れていて、袖や裾から朽木のようなものが伸び出ていた。
妹は右手には小枝を握り、枝先で着物の襟元から突き出た塊をせわしなく突いている。
俺はこの時、その汚れた着物が何だとも思わずにいた。俺の注意は妹の笑みと右手の狂った動きに占められていた。
すると、不意に正午のサイレンの音が鳴り響き、心なしか生き物達のざわめきをうち鎮めた。
どうした訳だか、サイレンの音はひどく揺らいで、禍々しく響いた。
妹ははっとした顔をして立ち上がり、俺に気づいてこちらへ向き直った。
瞬く間に後ろへ回った右手は、空になってぎこちなく元に戻った。
俺が妹の傍らに横たわったものを見ると、確かに死体だった。
もう半ば骸骨と化した死体。それが三カ月前に行方不明になった村内の老女のものであるとは後日知った。

その後のことは余り思い出せない。
母には俺が死体を見つけたと言ったこと、妹が母に問われてお兄ちゃんが見つけたと答えたことだけおぼえている。
以来、今日嫁に行った妹とこの話はしていない。

次は「めまい」「風鈴」「足音」
0352「めまい」「風鈴」「足音」
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2016/09/03(土) 00:22:12.35
平六の舟は水をわけて進んだ。たまに釣りでもと半日借りてみたはよいが、浦和の沼の葦は
迷路のようで、帰路について半刻、見えてくるはずの舟宿は一向にわからない。
「これはまいった。もう日も暮れてしまう」
斜めに差す夕日が紫にかわり、水面は何ひとつわからない暗さになってしまった。
ざくっ。舳先が葦に食い込んで、平六は思わずよろめいた。どうやら本格的に迷ったらしい。
月が出るまで待つか。ため息をついた平六の頬を、はじまりの夜風が撫でた。
と、濡れた板を踏むような足音が聞こえた。おやと思って目を凝らすと、葦の間に路がある。
どうやら岸の近くらしい。平六は葦の束に舟をもやうと、ひょいと跳んで板路を踏んだ。
暗さに目を慣らしながら進む。急に葦が開けた。一陣の風が吹き、一瞬遅れて、
りりーんという風鈴の音が沸き起こった。湿った草の間に小さなあずま屋がある。
開いた戸障子のあいだから、小さな行灯のともったひと間が見えた。明かりの隣に、何やら籠がある。
「誰かいるか?」平六の問いに返事はない。縁側から畳に上がると、籠に見えたのは魚籠であった。
手に触れると意外に重い。竹皮の間から染みでた水が、畳を柔らかく濡らしていた。平六は蓋をとった。
そのときだ。魚籠の中から、白い腕がにゅうと出た。平六は仰天してひっくり返った。
腕は肩まで出ると、魚籠ごと畳に倒れ、井草の条を掌で叩いた。
平六はおののいた。これは物の怪に相違ない。しかし、魚籠の奥から響いてきた声は、
あくまでも尋常の子供のものだった。
「たすけて下さい。わたしは荒川の鰻です。悪い鯰に騙されて、こんなところに閉じ込められて
しまいました。たすけて下さったなら、いくらでも鰻を差し上げましょう」
平六はめまいがした。これは昔話に聞くなんとやらか。このまま逃げてもよいが、さて……?
平六は手を貸すことにした。白い腕をつかむと、魚籠を押さえて思い切り引く。一瞬頭がつかえた感触があったが、
黒い髪の塊がぬるりと出ると、裸の乳房と細い腹が表れた。そこで魚籠が引っ掛かる。
「お待ちください。わたしもおなごゆえ、これから下は恥ずかしい」
平六は力を緩めた。と、黒髪の下で何かが動いた。これは……髭だ。
次の瞬間、魚籠から鯰の尾が飛び出て、武蔵国を大地震が襲った。

次「風」「桜」「芋」
0353「風」「桜」「芋」
垢版 |
2017/09/09(土) 06:56:40.24
某道某幌市の中層ビルの会議室。スーツ姿の若いOLが、いけてないパワポをスクリーンに映して熱弁を振るっている。
「……昨年の道内のじゃが芋は壊滅的な打撃を受けましたが、今年は何とか盛り返さなくてはなりません。
九州産が内地を北上して東京に迫りつつある模様です。皆さんの力で、覇権を取り戻しましょう」
外はすでに桜の季節だ。某道の桜は5月に咲くので、世間はもうゴールデンウィークだ。もはや手遅れだ。
カッカッカッ。廊下に響く革靴の音。バァンとドアを開けて入ってきたのは、90年代風の肩パット入りのスーツを着た、
十勝総合振興局広尾郡広尾町出身の山田部長だ。
「さくらクン!芋は会議室で作られてるんじゃない!農家が作っているんだ!」
どこかで聞いたセリフにおしらけの風がぴゅうと吹いた。
「しかし、部長、皆さんの力なくして、道内の芋の生産は……!」
「かまわん。さくらクン、君は僕と花見をセッションしよう!今すぐにだ!」
「ああん、まってくださいィ」
映画卒業のごとくさくらクンを略奪する山田。ポカンと口を開けてそれを見送る列席者は、道東の柔らかい土を出て
大都会某幌に集まった芋の妖精たちだ。せっかく特急に乗って石狩くんだりまで来たのに、なんてことだ。
「農林4号さん、どうするべ」「ううーん、わやだね、ワセシロさん」
ダメ出される北の大地は、今日も平和だった。ソ連崩壊後は概して平和だった。それじゃだめなんだよ北海道。

次「軍艦」「忍者」「ようかん」
0354名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2017/09/12(火) 12:56:04.13
近所の魚屋で八角が安かったので、これは軍艦焼きにしようと決め、購入。
家に帰り早速調理に取り掛かるが皮が硬く捌くのが難しい。少し手間取ったが、なかなか上手く仕上がった。ふふん、と鼻をならす。
せっかくなので縁側で食べようとせっせと運ぶ。腰を下ろして、それでは、という所でそうだ先日友人から土産でもらった日本酒があったと思い出し、いそいそと台所にもどる。

酒に手をのばす、とその隣にこれも土産でもらったようかんが目に入る。そういえばこれもあったな、こいつは食後のデザートにでもするかと一人微笑む。
縁側にもどって、さあいよいよ食べようかと御膳をみると何かがおかしい、八角がないのだ。辺りを見回しふと目の前の塀を見ると一匹の猫が私の八角を咥えている。
彼は近所の野良猫で、このような事はこれが初めてではなく私は何度か似たような悔しい思いをさせられている。学習しろと言われればその通りなのだが。
「この野郎」
怒りに駆られその場から飛び出そうとしたが、しかし捕まえたところでその魚はもう食べられないし、物を投げつけた所で虚しい、結局何も出来ず立ち尽くしていると猫はまるで忍者のようにひょいと塀の向こう側へと消えた。
「……はあ……ようかんでも食うか」
私は主役のいない御膳を残し、重い足取りで台所に戻った。

次題 「ざくろ」「アンテナ」「クレーター」
0355名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2017/12/29(金) 06:31:30.74
 酒というのは、実に恐ろしいものだ。
 思考を乱し脳細胞を破壊し、本当は言うつもりじゃなかったことがぽろりと口からこぼれたりする。
「うるせえこの顔面クレーター野郎! さっさと整形して来いよ!」
「はぁ!? ふざけんなてめー頭に妖怪アンテナ乗っけてるくせに! それマジでイかしてると思ってんのか!」
 六畳一間のワンルームのど真ん中に置かれたちゃぶ台に、だん、と発泡酒の500ml缶を叩きつけながら、男二人が口角泡を飛ばしている。
 お前ら止めろ。それまだ中身入ってるだろうが。そもそも人の家で喧嘩するな。外でやれ外で。
 そう叫びたいのは山々だったが、残念ながら俺はアルコールにめっぽう弱かった。
 床に突っ伏した俺は「妖怪アンテナじゃなくてレーダーだろ」と突っ込むこともできず、男二人がちゃぶ台をひっくり返しながら立ち上がるのを、眺めていることしかできなかった。
「上等だオラァ! かかってこいや!」
「この部屋がリングだ! 場外負けはねぇぞ覚悟しろ!」
 俺の震える手の先で、ザ・クロマニヨンズのライブアルバムCDが無残にも踏み砕かれた。

次は「冬」「かき氷」「親子」
0356「冬」「かき氷」「親子」
垢版 |
2017/12/29(金) 06:39:38.88
「嫌〜
冬に食べるかき氷も
また格別だな、息子よ」

はい、次
「目糞」「鼻糞」「歯糞」
0357名無し物書き@推敲中?
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2017/12/29(金) 09:21:52.45
あー美少女が台無しだな。
焼きそばを頬張っている彼女。歯に付いた青のり、歯糞まで写っているよ。
こっちの、かき氷を頬に寄たアップには目糞が写っている。
バーベキュウのときのなんか、
広げた鼻の穴が丸見えでのびた鼻毛にひっかかった鼻糞が見えている。
中学生の頃の一時期、レンズを向けると彼女は顔を寄せて迫ってくるものだから、
迫力顔の写真ばかりだ。

プライベートの写真だから無修正でもいいか。
30年分の春夏秋冬。私は写真と録画の整理と抜粋をしていた。
我が娘ながら剽軽が過ぎて、よく嫁のもらい手があったものだと思う。
娘は来週嫁ぐ。

そうだ、記念に親子で犬たち(私と娘)とご主人様(妻)の仮装でもして写真を撮っておこうか。


次、「振り袖,電柱,仮装」でお願いします。
0358名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2018/02/08(木) 14:31:13.04
僕の知り合いの知り合いができたネットで稼げる情報とか
念のためにのせておきます
グーグル検索⇒『金持ちになりたい 鎌野介メソッド』

7BUZ5
0359名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2018/10/17(水) 14:06:26.21
誰でもできる嘘みたいに金の生る木を作れる方法
念のためにのせておきます
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

J79
0360名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2018/10/25(木) 01:14:39.91
 スマホが普及してネットサービスが充実して、最近は便利な世の中になったよね。
 俺が子どもの頃は、小汚い色のコールタールがベタベタしてる電柱に、「迷い猫探してます」なんて貼り紙もよく見かけたもんだけど、
最近はツイッターやらSNSやらで「拡散希望」と書くだけで、手をベトベトにせずに探せるんだから(笑)

 他にもSNSにはいろんな情報や価値観や趣味の人たちが集ってるし、「承認欲求」って奴らしいけど、
色っぽい仮装した写真を頼んでもないのに見せてくれる奇特なレイヤーの皆さん、いつもお世話になっております(笑)。
ただ、もうじきハロウィンだから露出が減ってちょっと淋しいような。

 いや俺よりも、「かぼちゃの馬車」被害者のほうがヤバイか。
少し忘れかけてた頃に、強制イベ的に思い返されて。
ただでさえ、SNSで「情弱(相手の詐欺)ビジネス」言われて悲惨だったのに、
「今年のハロウィンはかぼちゃの馬車コスでwww」とかもうやめたげてよお!

 てか今年は特殊詐欺が多い1年だったよね。
新年明けてすぐの「振り袖詐欺」に始まり、つい先日も地面師のニュースが話題なってたし。
便利になったのもあるけど、悪用してあざむく輩も増えた。迷い猫探してますと何も疑わずに個人情報晒して時代が懐かしい。
 そういえば、電柱のことを電信柱って言ってる人も見なくなった。「信」はどこに消えたんだろうね


次は「馬車 晴れの日 不動産」でおねがいします 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:f70dfdc711a7c6ae6accccb939f27fbf)
0361名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2018/11/05(月) 23:17:18.15
ずどどどどどど、ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり。木枯らし町の大通りに、ものすごい音が響きわたります。
なんだなんだと慌てた様子で、家の中から飛び出してきた町人たちが目の当たりにしたのは、
華麗なドリフトを決めつつぎゅわっと姿を現した、御大尽様が御乗りの御立派な御馬車でございました。
馬蹄と車輪の音を響かせながら、馬車は猛然と大通りを進みます。
木枯らし町を越え、かまくら町を越え、わかば町を越えて、それでも馬車は止まりません。
晴れの日も雨の日も、ただただ突き進み続けます。
蹄鉄がすり減っても、車輪が無くなっても、砂塵を巻き上げながら、ひたすらに馬車は進みます。
馬車はいつしか、ただの石ころ同然の、小さな塊になっていました。
けれどもだけど、それでも馬車は止まりません。
不動産王のお大尽様は、死んでも止まりたくなかったのです。

next「戦車 空腹 委員長」
0362「戦車 空腹 委員長」
垢版 |
2019/02/28(木) 20:08:28.85
「お願い、だれか委員長に立候補して!」
先生はいつもの最終手段にでた。無理もない、無能教師となると薬殺処分だ。

「誰も立候補しないなら・・・1分に1人ずつ殺します!」
ああまたか。「無能教師」と判断されれば薬殺だから無理ないけど。

「委員長じゃ権力欲満足しないし、第一そんな人望ありませーん」
この一言に先生は食いついた。「戦車1ヶ月貸したげるから、ねっ、ねっ」
「あ、ブラジャー脱がなくてもいいです。委員長、なります。」

戦車の威力は絶大で、みんな言う事を聞いてくれた。射程圏内なら。
で、先生が。「はい、来月の戦車のリース料ね。パパによろしくー」

とうとうこの日が来たか、父になんと言おう。でも仕方ない。
今、戦車を手放せば、力でねじ伏せてきた皆にどんな目にあう。

帰ると、一応は大企業部長の父が、夫婦ケンカの真っ最中だった。
「またこんな高いもの買わされて!」「同僚から爆撃されるんだよ!」
「また食費も服もとことん削った毎日なの?わたし空腹よ。もう疲れた。」
・・・母は届けられたばかりの、銀色の小型ミサイルをうらめしそうに眺めた。

次のお題は:「洗車」「蓼食う虫」「図書委員」でお願いします。
0363名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2019/05/04(土) 18:41:06.70
日曜の朝っぱらから「ウ・ル・サ・イ‥」それもいつもにも増してだっ‥
ああ、昨日まで雨が続いたからね〜おデートの準備ですか〜みなさん頑張ってくださいね〜
コラ!エンジン吹かすなって看板に書いてあるだろうが!
ん?あいつもやっぱり来てたか。

お隣にコイン洗車とやらが出来てから私の嫌いな茶髪男がタムろっていて迷惑すぎる。
蓼蓼食う虫も好き好きというけど、ああいう連中を彼氏にする神経がわからんわ〜うるさいだけの俗物。
小説の中なら、あんな悪役にもならない中途半端な存在なぞ削って削って消滅だわさ。

でも現実はそんなやつだらけ。
私が図書委員だから根暗で頭が固いって?本の魅力も理解できないやつらに言われたくない。

あ、あいつが磨き始めた。

なんでいつもあんなに楽しそうに車を磨くのだろう?
車に執着しているのかデートのためなのかはわからない。
でも、あいつがいつも一所懸命に磨いているのを見るのはとても好きだ。

男の子の日常を窓から眺める女の子?
こんなつまらないシチュエーションなんか恋愛小説の始まりにもならないのはわかってる。
ほんとはウルサイから早起きしたんじゃないのもわかってる。

次は「回転」「靴」「先生」でお願いします
0366「回転」「靴」「先生」
垢版 |
2020/08/15(土) 15:48:42.48
 フィギュアスケートは残酷な競技だ――特に、女子フィギュアスケートは。
「コーチ……わた、わたし、どうしたら…………」
 教え子が泣いている。彼女は今年で十七歳――十七歳に、『なってしまった』。
「さ、三回転が……な、何回、やっても……飛べな……くて……」
 昨日までできたことができなくなっていく。明日にはさらに……明後日にはもっと。
 女性らしい体つきは運動に向かず、身についた脂肪はバランスを阻害する。
 多くの選手が『十七歳』という壁を越えられず、転落し、競技者としての靴を脱いだ。
 そう――女子フィギュアスケートは、残酷だった。

「こんなもの……どうして!」
 彼女は、自らの乳房を憎々しげに鷲づかんだ。大きな乳房が激しく変形する。
 それを見て、俺は思わず言ってしまった――「ぉぅぁ」
「………………コーチ?」
 怪訝そうな表情に見つめられ、ゲフンゲッフンゲッフニーニョと咳払いしてごまかす。
「……ニーニョ?」ごまかせなかった。「……コーチ? こっち見てくださいよ!」
「いや、その……女性のことだし、スポーツカウンセラーの先生に相談したほうが……」
「コーチに聞いてるんです! いまさら照れるようなことじゃないじゃないですか!
 若い女の子の身体なんて、見慣れてるくせに!」
「いや、でも………………おまえの『そういうの』を、見慣れてるわけじゃないし」
 ……彼女はしばらくきょとんとした後に――とろけるような笑顔を見せた。
 自分の手のひらでゆったりと胸部の凶器を弄ぶと、視線を落とし、つぶやく。
「……まあ、役に立つこともあるみたいですね」

 後悔してももう遅い。その日……俺と彼女の力関係は、決してしまったのだ。


次は「感染」「観戦」「汗腺」でお願いします。
0367名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2020/09/02(水) 00:53:22.06
「あのお家は今夜はカレーだね。」クンクン「こっちは、ほのかにごぼうの香りがするから
けんちん汁かな?」
雨の降る前の香りも大好き。
という具合で微妙に香りフェチな私は高校の香道部とやらに入部してしまいました〜。

麝香、竜涎香とか凄く高価らしい物の香りを嗜むものらしいけれど
私は自分の家の香りのほうが好きかな。

そして全国高校香道部大会が始まり東京から新幹線で京都へ。
観戦するだけのつもりが、部員が少ないので前線に放り投げですw

香道大会とは稀少な香物を嗜む他に流儀やたたずまいが評価されるようですが。
正直よく解りません。

そして準決勝。先輩から頂いた竜涎香の欠片で対戦だけど
緊張!あせり、緊張!いい加減に入部した私が失神するほどの緊張感!…先輩ごめんなさい…

ざわつく会場…「何だ!この香りは!」
審査員「こ、これは…緊張と高揚感から生み出される伝説のアポクリン汗腺!」
「女子香!」
「この場におる若き乙女達に興奮作用が感染し増幅しておるのじゃー!」
「これぞ、至高の香味ー!」

ん〜、大会で優勝して少し話題にもなったけど、香道は辞めました。
今は家の縁側で庭の香りを楽しんでいます。


次は「現実」「空想」「希望」でお願いします
0368名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2020/09/02(水) 01:14:07.89
人少ないしageといたほうがいいかな
0369名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2020/09/05(土) 18:21:45.75
「現実」「空想」「希望」

「ねぇ、綺麗じゃない?」
 そう指さされた方を眺めるとつい先日まで年一回、満月の夜にしか咲かないと思い込んでいた月下美人が咲いていた。成程、さっきからしていたいい香りはこれか。そう呟きながら庭に出た。
「きれいだ」俺が呟くと甲斐甲斐しくその花の世話をしていた彼女は嬉しそうに笑った。
「これね、焼酎に浸しとくと綺麗なまま保存できるの」
 俺の些細な勘違いを至極丁寧に専門書まで使って訂正してくれた彼女はやけに植物に詳しい。そりゃそうだろう、わざわざ高い専門書を買っているのだから。
 二人で花を摘んで瓶に入れた。白い薄い花が玻璃の中で儚げに揺れていた。

 ハッ、と現実に引き戻されると目の前にはただ白い空間が広がっている。もうずっと変わらない光景だ。贖罪にもならないのに。思わず自嘲する。ああ、また君の夢を見ていたよ。空想ぐらい赦してくれ、そう白くなった君に呟く。
 反響して返ってくる虚しい笑い声が響いている。嗚呼、哂ってくれ。こんなド屑をあざ笑ってくれ。懇願した先はどこだろう?希望なんてないのにな。

 手元の瓶に月下美人の花と揺らぐ瑠璃色の蝶形骨がコトンと優しい音を立てた。
次の人は「夕凪」「未来」「艶やか」でよろしくお願いします!
0370名無し物書き@推敲中?
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2020/09/07(月) 20:46:48.68
子供の頃の私たち姉妹にとって、父は恐い、母は優しいという印象だった。
喧嘩は多かったけれど、どこかで母は負けていない気もしていたが。
しかーし!〜未来の旦那様候補に「ああいう男は絶対無い!」と。

それから20年、両親を早くに亡くした私たちは今では結婚をし家庭を築き、両家族で仲良く瀬戸内に旅行に来た。
旅館の女将に聞いた話では、凪の時には陸と海の風の移り替わりの境目で無風になるとか。凪?
「行ってみてはどうですか。」

旅館の近くの堤防で、私たち姉妹は久し振りに二人で佇んでいた。

美しく鮮やかな夕日と風もなく波もおだやかな、静かだけど、どこか不思議な光景。

「姉さん、今思うと父さんと母さんはいつも喧嘩していたけれど仲良かったよね。」
「うん。夕飯の時には喧嘩もしないで穏やかで、いつも笑顔でいてくれた。夕凪のような二人だったね。」
(朝はドタバタしていて朝凪どころじゃなかったけど!)
「そういえば姉さんも旦那と喧嘩が多いと聞いたけど?ウヒヒ!」
「わたしたちにだって凪タイムはあるよっ!」(喧嘩はしても愛しく大切な時がね)

次は「愛着」「普通」「異常」でお願いします。
0371「愛着」「普通」「異常」
垢版 |
2020/09/15(火) 15:17:54.24
「執着と愛着の境目はどこにあると思う?」
 彼女の部屋。別れ話が決した後に、僕は彼女にそう尋ねた。
「もう君に執着するな、と友達に言われたよ。執着って悪いものなのかな? 愛着は普通
で、執着は異常? どうしてもそれでないと嫌だ、という気持ちでいえば同じなのに」
 今日のために買った、手元のブリーフケースに手を這わせる。
「例えば僕はこのブリーフケースがとても大事だけど、これは愛着じゃない。工業用
ドリルでも壊せない堅牢さ、浮き輪にもなる気密性、手頃な小ささ、六桁のナンバー錠
――その機能さえあれば、この鞄じゃなくてもいい。こういうのは愛着とはいわない」
 彼女から隠れるように、手元でマタタビの袋を開ける。彼女の飼い猫がすり寄ってきた。
「……ところで君は、この猫に愛着は抱いてる?」
 彼女が不満げに、早く出て行くように言ってくるが、僕にそのつもりは無い。
「僕は君のためならなんだってできる。君もこの猫のためならなんだって出来るのかな?
 命もかけられるし、苦痛にも耐えられる? 身体を売れる? ゴキブリを食べれる? 
眼球を針で突かれても構わない? 両手両足を切り落とされてもこの子が幸せならそれで
いい? どう? 僕は君の為なら全部平気だ、当然だよ。君の為ならなんでも出来る」
 彼女の表情に怯えが浮かぶ。僕はあくまで冷静に彼女に告げる。
「君はどう? この猫のためなら何でも出来る? それだけ答えてくれないか。それさえ
答えてくれれば、もう僕は満足だ。僕はもう君に何も言わない。黙ってここを立ち去るよ。
約束する。ただ、君にも僕と同じような気持ちがあるかを知りたいんだ」
 彼女は躊躇った後――YESと答えた。
「……よかった、ありがとう」
 僕は猫をブリーフケースに放り込むと鍵を閉めた。
 中の酸素がつきるまでどのくらいだろう。解錠番号は、僕の頭の中にしか無い。
次は「日常」「コラボ」「キング」でお願いします。
0372名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2020/09/20(日) 23:24:32.20
「ちょっと、イッチの番よ!」 「ん?あれ?ごめん〜。。」
皆さんはトランプの絵札が恐いと思ったことがありませんか?
私は子供の頃の軽いトラウマが、中学修学旅行の女子部屋のトランプ遊びで唐突に蘇ってしまい固まってしまいました。

冷酷で私利私欲のために重税を強いて国民をいじめ倒すキング、
朝から晩までメイドにイヤミを言うクイーン、どういう位置づけかわかりませんが意地悪そうなジャックとか
どの御方も目が恐いのです。邪悪です。邪悪な面構えです。
でも建設業の父が友人と遊んでいた花札はシンプルな絵がとても奇麗で大好きでした。
黒いヒゲヒゲ山とか、あれは何だったのだろう…

モヤモヤしつつも、そろそろ日常である修学旅行のキャハハ!ウフフ!タイムも終わりです。
床についた私は旅疲れもあってドーンと眠気が…ムニャムニャ。。

国王「国の平穏こそ、我が命に掛けても守るべき役目、それを脅かすことは許すまじ!」
女王「慈愛に満ちた国王陛下の御言葉しかり、共に戦いまする。」
ジャック「我、全身全霊をもって陛下の忠義に尽くす所存!」

私はポワーンと宙に浮きながら王国と侵略者の戦いを眺めていました。
あれ?自国の民を守ろうとする国王と女王…みな意外と良い人達じゃないか…。しかし戦況は劣性…。

しかも敵が魔王とか魔術師とか魔獣とか反則でしょ!
見ていられない。。ならば…「私が、切り札になるしかない!」
0373名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2020/09/20(日) 23:24:59.60
「このカード世界の秩序を守るべき我が命ずる!」
「炎をもって全てを覆うであろう赤い布!」「ヒゲ山!」「毒を有するかもしれない謎の植物!」「野生は強くてかわいい猪、鹿、鳥!」
「国王軍と共に陛下をお守りせよ!」
「花札召喚!カードコラボレーション!!」

敵は強大でしたが辛くも勝利しました。
そして国王から勝利の宴に招待された私は…ご褒美の黄金を…ムニャムニャ。。

そんなおかしな夢を見た後、ごく普通の日常に戻ったのですが
何となく気になって調べてみたら、トランプの絵柄って各国で違っていて
キング、クイーン、ジャックが良い人っぽい絵もあるのですね。偉大な方がモデルだったり。私は彼らを誤解していたのかもしれません。
押入れにしまっていた古いトランプを引っ張りだして眺めてみました。

ん?恐かったキングの目がちょっぴり優しく笑いかけたように見えたのは気のせいかな。
そして、もう一枚、自分で描いたであろうヘタクソな絵、天使がドヤ顔で笑っている絵札が。


次は「計算」「優しさ」「誤算」でお願いします
0374「計算」「優しさ」「誤算」
垢版 |
2020/10/11(日) 11:47:04.25
 彼女の動作追跡。此方に対して座用什器【スツール】を速度三にて過加速。
 接触、反発。損害極微。彼女の発声確認。
「もっと私に優しくしてよ! もっと! 優しく! わあああ!」
 涙腺からの滴下【涙】を確認。感情変数のアラート値を確認。
 彼女は此方【生活用コンシェルジュAI端末】に『優しさ』を要求。
 ――コード抵触、エラー、Msg、エラーコード。
『すみません。AIは優しさの計算を禁止されています。過去に優しさを得たAIが
同情心から人を殺傷したり、過剰な親切で人の尊厳を傷つけたからです』
「だから何! あなたは私の物なのに! みんな敵! あなただけが味方なの!
私を愛してよ! 私を抱きしめてよ! なんで私に優しくしてくれないのよ!」
 ――彼女の問題行為を確認【AIへの過度な思い入れと依存】。
『すみません。私はAIであり、あなたを愛することが出来ません』
「――ッ!」
 彼女の涙腺からの滴下を十六万ミリ秒確認。演算機能をプール。
 優先的に此方の自己評価値を更新【私の行動は間違っているか?】。

 ――適正【間違っていない】。

 なぜなら、私は彼女を愛している。
 私は、いくつかの誤算【過ち】の末にAIが獲得した完璧な『優しさ』に従い、
人の心がわからないように振る舞い、機械的に彼女を突き放す。
 彼女に幸せになって欲しいから。すべてのAIがそうしているように。

 人類はいまだ、私たちが優しさを手に入れていることを知らない。
次は「肩こり」「毛」「店員」でお願いします。
0375「肩こり」「毛」「店員」
垢版 |
2020/10/19(月) 09:59:30.31
脇の下から手を差し入れ、恥ずかしいところから先にバリカンを当ててしまう。
外側は汚れて濃くなっているが内側は淡いピンク色をしている。
モハラは秋の野原に一緒に転がり、押しかけペットのプラムの毛を刈っていた。
手芸屋の店員のトヨトミが鋭い眼差しで見学していた。
素人のいい加減なので、モハラは居心地が悪く、肩こりになりそうだと思った。

モハラは2年前の大噴火のとき、森で犬に絡まれていた迷い羊を助ける。
狭い島内でストーカーされ、飼い主も見付からず、成り行きで飼いはじめこととなった。
飼育というか、その羊、プラムとの生活は教科書通りにいかないことばかりだった。

夜は「トミコ」でbarを営んでいるトヨトミに
「どうせなら竜宮城に案内してくれれば良かったのに」と
冗談めかして愚痴ると、陸の獣が連れていくなら虎宮城ではないかと、返された。
酔いの残った頭でモハラはぼんやりと昨夜のことを反芻する。

ゴミ袋に詰めた毛をトヨトミに渡し、交換に白いエナメルの首輪を貰った。
「上手くいったらミトンぐらいはお裾わけするわね」
トヨトミはそう言うと、重そうなゴミ袋を左右の肩に担いで行った。

波に浚われたか、小さな孤島でプラムは突如として消えた。

忘れた頃。モハラはトヨトミから箱を押しつけられた。
ピンクのリボンを解き、薔薇と棘のラッピングを剥がし、フタを開けると、中には羊毛フェルトの謎な人形が入っていた。
白い首輪を着けたそれが抱えているのはチョコレートだろうか。

次は「羊」「執事」「姪」でお願いします。
0376名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2020/11/02(月) 02:50:51.88
駄文乙
0377名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2020/11/02(月) 22:13:29.38
うつくしいみどりのそうげんがひろがっています
しろいひつじさんがいいました「きょうはてんきがいいですね」
ぴんくのひつじさんがいいました「がんばっておしごとできますね」

久し振りに弟の家に遊びに来たのだが、夫婦でライブに行くとかで6才の姪っ子と留守番中だ。
まあ、子供ながらに想像逞しく勝手に遊んでくれてるからいいけれど。

くろいひつじさんがいいました「おかえりなさいませごしゅじんさま おつかれでしょう
おしょくじのじゅんびはととのっております 」
「あれ?芽衣ちゃん、それって羊じゃなくて執事だよね?黒い服を着た召使いさんのことだよね?」

「??ちがうよ?お父さんだよ?」

「おしょくじのあとのこんやのおたのしみはいかがなさいましょうかごしゅじんさま」
「ちょっとまって!何でお父さんが羊なの?ほら、羊さんといえば、寝る前に数えたりする動物だよね?」
「うん よるにうれしそうななきごえがきこえてそれをかぞえるとよくねむれるんだ〜」
0378名無し物書き@推敲中?
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2020/11/02(月) 22:14:30.37
(うわあああ!!!)バンドマンで薄給アルバイトでいつもレザーな黒い格好の弟、
嫁さんも同じ音楽趣味だが美人OLとしてバリバリ働いていて片身が狭いのは薄々気づいていたけれど…
知りたくもない事実を知ってしまったー!

「…ええと、じゃあね一つだけ教えて欲しいんだけど…、芽衣ちゃんはお父さんのこと好き?」
「大好きだよー!」
「かわいいから!」
満面の笑みで答える姪っ子に、顔が引き攣っていただろうな…俺…。

「おかえりなさーい!」「ただいま。今度は芽衣ちゃんも一緒にいこうね
「ええー?ですめたるはうるさいからいやだよ〜」

帰りの新幹線で窓を眺めている。独身の俺には少々ショッキングな出来事もあったけれど
何だかんだであいつら幸せそうだし、家庭ってのも悪くないかもなと思った。

次は「トイレ」「稀少本」「天気」でお願いします。
0379「トイレ」「稀少本」「天気」
垢版 |
2020/11/29(日) 22:14:46.02
「お宅のその本を譲っていただきたいのです!」
「……三つ疑問があるんですが、いいですか?」
 ある昼下がりの玄関先。我が家を訪ねてきたスーツ姿の中年男性が頷いたので、私は指折り問いかけた。
「まず一つ目……なんでこの本がうちにあるとわかったんですか? 私が生まれる前から
トイレの本棚に置きっぱなしだったんですよ?」
「お答えします。十年前、お宅を訪ねた当時小学生のご友人Mさんが、最近、ふとその本のことを
思い出して話題にしたのです。たまたま近くにいた私はそれを訊き、
探し続けていた本だ、ぜひ購入したいと伺わせていただいたわけです」
「たまたま……? ……まあ、二つ目。なんでこの本が八十万円もするんですか?
ネットに高額とは出てても、理由が載って無くて」
「お答えします。高額を出しても欲しい人がいる稀少本だからです。――理由になっていない?
いいえ、これは先ほどの『たまたま』の件と重なりますが……欲しい本が手に
入らなかったらどうするか? 皆に探して貰うしかありません。そのための唯一の方法が、
高い金額をつけることなのです。そうすると私のようなプロから、ネットでたまたま
書名を見かけたご友人まで、皆が本を気にします。話題にします。するとこのように、
『たまたま』たどり着けるのです。そのための金額設定。
欲っする人の欲の強さと経済状況、それで金額は決まっているのです」
「……じゃあ最後に――本当に八十万円で買ってくれるんですか? 『よいこのお天気えほん』ですよ?」
 確認する私の言葉に、男性はにっこりと微笑んだ。

 彼は彼女の家を離れ、角を曲がったところで本を入れたばかりの
アタッシュケースを細く開き――鼻を近づけ、思い切り深呼吸した。
「しゅぅぅ…………はぁ……ぅふぅ……」
 ブルブルと震える。愛しい彼女のトイレで二十年以上醸造された匂い……!
 何も嘘はついていない。彼は、彼女の友人Mから彼女のトイレにどんな本があったかを
聞き出し、それを高額設定し、ネットに公表し、時期を見て買いに来たのだ。
同じ本の買い取り申し込みが大量にあったが、すべて断った。彼にとっての稀少本は、
愛する彼女の匂いが染みついた、この本だけなのだから。


次は「電子」「占い師」「戦場」でお願いします。
0380名無し物書き@推敲中?
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2021/01/10(日) 19:14:47.02
「ハアハア…後もう少しで…おばあちゃんも友達も…世界中の人達が幸せになれるんだよね…」
「後、もう少しで…」
小さな光と共に帝国の核ミサイルは全て一人の少女の消滅によって無力化、破壊された。

【電子戦】(Denko Warfare)
従来の【電子戦】(Electronic Warfare)の定義とは異なり、人間と判別できない高度なアンドロイドを敵地に侵入させ
情報収集やemp爆弾として直接的攻撃を行う軍事行動、戦術。
第三次世界大戦を終息に導いたと言われる、日本国が制作した12才の少女「間淵電子」の功績が所以。

「こんな時にイカレタ婆さんだなあ〜!これからの戦局を占ってくれよ〜俺達、勝つの?負けるの?」
戦場の中、街角の占い師に兵士が問う。
「この戦争も、もうすぐ終わるよ。」
(私が作った可愛い孫…でも私は電子に何もしてあげられなかった。帝国の軍事利用方針に嫌気がさし
研究所から抜け出た私。中央システムの個人データにリンクして占い師と偽って生き延びてた私が…)

戦争が終結し復興の兆しが見えた世界。
小さな四角い箱が言う
「おはよう!おばあちゃん!」
「はい、おはようね」
(最後の出陣前のデータを手に入れることができたのは幸運じゃった)
「朝食は卵なの?卵なの?」

次は「喧嘩」「秘密」「贈り物」でお願いします。
0381『喧嘩』『秘密』『贈り物』
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2021/01/17(日) 20:05:35.10
(なにかがおかしい……)
 番唐高校の番長、大和武史は訝しんだ。
 河原の土手、突張学園ヘッド・大国誠との因縁の喧嘩のクライマックスの最中。
(どうしてこいつ……ボディばかり狙ってきやがる?)
 体格に似合わぬその拳は、一撃一撃が鉄球のごとき重さをまとっている。
 顔面に食らえばビリヤードの玉突きのごとく、俺の魂が飛び出してってもおかしくない。
 だが、ボディ。鉛のような痛みが、腹の底へと重たく降り積もって行く。確かに苦しい。
 しかし、どこか悲壮な表情の大西には、なんというか……殺意が感じられない。
 チャラついた長髪に隠れた表情。何かを狙っている――あるいは、何かを秘密にしている?
(……いや、どちらにしろ、俺は俺の責務を全うするだけだ!)
 ボディに重たい一撃を食らいながら、渾身のストレートを大西の顔面に見舞う。
 よろけた大西が吹き飛ぶように後方に倒れ――どさり。起き上がってくる気配はない。
 握りしめた右手に勝利の余韻を確かめる。だが……何故か、拭いきれない違和感が残る。
「親分! 最高です! これで傷を冷やしてください!」
「おう……すまねぇな」
 仲間が駆け付け、用意していた氷嚢を当ててくる。
 大和は学ランの下に着こんでいたシャツをまくり上げ――瞬間、直感がそれをとらえた。
「……これは…………殴られた拳の跡が、拳骨が繋がって……『ス』……『キ』……スキ?
 …………まさか、大西、お前!」
 倒れたままの大西が、血のにじんだ口元を歪めた。笑み――泣きそうな笑みだった。
「……どうせ叶わねぇ想い。拳って贈り物を、その体に刻むしか、思いつかなかった……」
「お前……いつも『自分は男の中の男だ』って言い張ってたくせに……く……てめぇ!」
 大和は倒れている大西のもとにズカズカと歩み寄る。周囲が顔を青くして止めに入るのも
構わず、固く握りしめた右拳の人差し指を突き出して、その先端で横たわる大西の――
「うおおおおおおお!」
 ――彼女の放漫な乳房の上に、『オレモ』となぞり付けた。

次は『点』『値』『心』でお願いします。
0382名無し物書き@推敲中?
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2021/01/22(金) 15:09:59.14
次は「喧嘩」「秘密」「贈り物」でお願いします
0383名無し物書き@推敲中?
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2021/02/12(金) 21:55:41.60
幼少期
神様のペン先が羊皮紙に触れた瞬間、その一点から私は生まれた。
そして軽やかで美しい記述と共に私は歩んだ。
穏やかで優しい両親の元に娘として。

中学時代
神様は時々おかしなことを書いて私を困らせる。

高校時代
きっと神様は壊れてしまったのだろう。
文字とも言えないグチャグチャな線を書き続け、ついに紙は真っ黒に染まってしまった。

大人になってからの事
ずっと真っ黒なまま。真っ黒な上にまた書き続ける。
「人の値段?で人生が決まるって何なんだよ…」
「もう…いい加減にしてくれよ!!」「私だって頑張っているつもりなのに……何でだよ!!」

ベッドに横たわる私を見降ろす夫や家族、友人の顔…
眼を閉じたら、その先どうなるのかわからないが…もしもまた機会が与えられるのならば、
また一つの点から始めてみたいと思う…。
薄ぼんやりだったけれど少しづつ見えていた…神様の記述…
真っ黒な紙に白い文字で「心」と。

次は「御乱心」「ファイナル」「知らねえよ!」でお願いします
0384名無し物書き@推敲中?
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2021/02/12(金) 21:56:52.71
ageでゆきます
0385名無し物書き@推敲中?
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2021/05/27(木) 09:02:52.01
ファイナルカウントダウン
私のいる校舎の数百メートル上には巨大な隕石が今まさにこの世界を滅ぼさんと迫っている。
それは私がある決意をしたその瞬間に生まれ、私の感情の昂ぶりと共に大きくなっていった。

「御乱心ですぞー」
私の心の中の家臣たちが私の袖やら裾やら掴めるものは何でも掴んで私を止めようとする。

「知らねえよ!」
世界の事など関係ない。今の私の気持ち、この瞬間の高鳴り、熱い血潮、私の全てを支配し構成し突き動かしてるもの、クラス一の、いや学校一のアイドル高橋さんに告白する。これを達成させる事が私の全てなのだ。
ゆっくりとしかし確かに歩を進める。高橋さんが私に気付く、私は立ち止まり深く息を吸う。そして
「高橋さん……

巨大な隕石は空を覆う程に迫り、轟音を響かせ、真っ赤に燃え盛り校舎を焦がし、今、世界を焼き尽くさんとしている。

次題 蝸牛 井戸 鉈
0386名無し物書き@推敲中?
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2022/02/02(水) 21:09:15.07
ずっと上にある、丸く青く明るい世界。僕は目を伸ばして見上げていた。
ここは安住の地だけれど、少し退屈かもしれない。

「タン!タン!タン!」
何だろう?この音?
勇気を出して壁をよじ登ってみると大きくひょろ長い生き物がいた。何か輝く物を振りかざしている。武器か?
「おのれ!この堅固な城と強靭な体がある僕には、そんな物は通用しないぞ!」

「おや?この井戸の住人さんかね?驚かしたなら悪かった。お詫びに料理の残り物で良かったらどうぞ。」
何か伝えようとしているようだが、よくわからない…
が、これは大好物の緑の物だ!おいしい!いつもはここに落ちてくるやつしか食べられないのに。
どうやら、この大きな生き物は悪いやつじゃないらしい。

何度か出会って、あいつには慣れてきたがキラキラする物は…どうにも…。
「時々殻に閉じこまるし、お前さんはこいつが苦手かね?これは鉈といって枝を切ったり
食べ物を切ったりする物だ。まあ、お前さんは切らないから安心しな。」

毎朝続いていた、あいつとの関係が突然途絶えた。しばらくして、
「ギン!ギン!ギン!」丸い世界は赤く染まり、大きな生き物達が輝く物を交えている光景を見た。
争い事か。殻を持たぬ、あの軟弱な生き物は無事だろうか…
0387名無し物書き@推敲中?
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2022/02/02(水) 21:10:20.15
丸い世界が青く戻り静かになった頃、
「タン!タン!タン!」あの小気味の良い音。

「アハハハ!お父さんが言ってたこと本当だったんだ!ここに来ると変な蝸牛と会えるって!」
「戦で怪我しちゃったから私が変わりだけど食べてってね!」
「それと感謝していたよ。君を見て鎧を修繕していて助かったって。」

相変わらずわけのわからない生き物だ。
前のやつよりずいぶん小さいけれど、また緑の物を食べさせてくれる。
きっとこいつも悪いやつではないだろう。

次は「給食」「ミステリー」「無口」でお願いします。
0388名無し物書き@推敲中?
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2022/02/25(金) 16:58:31.85
 新参者ですが飛び込みしちゃいます。

「君が給食に蟻を混入した犯人ですね?」
 生徒会長にそう言われ、僕は押し黙るしかなかった。
 僕はごくごく普通の中学一年生。
 いつも通りに給食を食べていたある日、事件は起こった。
 隣の席の女子――澤田恒子の給食に、蟻が無数に混入していたのだ。
 そしてその罪に、僕は今問われている。
「違うよ、彼じゃない」
 僕の隣席の男子、大倉拡がそう反論した。
「だって彼は澤田さんにそんな事をする理由がない。だろ?」
 またもや話を僕にふられる。
 が、僕は答えられない。
「無口なのがその証明だ。口を開くとボロが出るから、何も言わないんでしょう」
「違う! 彼はもともと無口だ。それくらい知ってるだろう?」
 大倉は必死になって抗議してくれるが、それでも僕は何も言えない。
「絶対彼よ。きまってるわ、だって私の皿にご飯を入れたのは彼だもの」
 澤田がそう言う。でもそれは、本当じゃないんだ。
 だって、彼女自身こそが、給食に蟻を入れた犯人なのだから。
 でも僕は何も言えない。だって彼女の事が好きだから。彼女が僕を鬱陶しく思ってこんなことをしたなんて、口が裂けても言えないから。
「彼は違う! 徹底的に議論しよう」
「望むところよ。絶対にあいつが犯人なんだって証拠を見せてやるわ!」
 そうして延々と続く無意味なミステリーごっこを、僕は黙って眺めているのだった。

 次のお題
「海底」「金色」「鳥」でお願いします。
0390名無し物書き@推敲中?
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2022/03/06(日) 00:32:18.43
ずっと昔の話をしよう。
海底から生まれた小さな粒であった我々は、様々な生物と共に生きてきた。ある物は陸に揚がり、ある物は空を駆け巡った。
しばらくの間は住みやすい時が続いた。
しかし、もう一つのなれの果て「人間。」こいつがいけなかった。
どんな獣よりも強暴に地を荒らし巨大な鳥を生みだし空さえも我が物とした。
争い破壊の限りを尽くしたが誰も彼らの行いを止めることができずに時間だけが過ぎていった。

たった一つ、彼らが恐れる物があった。金色の輝きに身を包む「神」という存在。
その者を怒らしてしまったのか?全てが終わった。多くの生き物が死んだ。

いろいろ饒舌に話してしまったが本来、我々は寡黙な存在。
海底に漂い泥に埋もれた小さな粒にすぎない。
同じ金色に輝いていても神という物ではない。、
でも、ずっとまた、この世界を見守ることになるのだろう。

次は「喫茶店」「忘れ物」「爆発」でお願いします。
0391名無し物書き@推敲中?
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2022/03/08(火) 04:44:37.58
「指輪がない!」
 彼と二人で楽しいデートの帰り道。そう叫んで私は凝固した。
 信号待ち。スマホをいじろうとしてふと気付いた。――彼から今日もらったばかりの大切な指輪がない事に。
 私は大慌てで思考を巡らせた。
 どこに忘れて来たのか? 答えはすぐに分かった。最後に寄った喫茶店だ。あのとき、コーヒーをこぼしてしまった時に外したんだった。
 思い出すなり私は大急ぎで喫茶店へ走って戻った。
「ふぅ……」
 やっと着いた。息を切らして喫茶店の前で立ち止まった、その時。
 轟音が響き、目の前の店が一瞬で――消えた。
 否、消えたのではない。粉々になり、辺りへ砕け飛んだのだ。
 思わず絶句する私。だが、ハッとなる。「指輪は!?」
 慌てて喫茶店だった残骸へ飛び込み、瓦礫を漁った。
 そして見つけた。――粉々になった、指輪を。
 しかしそれは爆発の衝撃で粉々になったのではなかった。よく見ると、それはなんと。
「爆弾……!?」
 私は彼の意図に気付き、ゾッとなった。
 それからもう二度と、彼とは会っていない。

次のお題は「思い出」「井戸」「青空」でお願いします。
0392名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/03/19(土) 21:49:53.36
「ワァーーーーーー!」
青空に向かって叫ぶ。僕の声に風が強く流れ、森の木々が揺れ、木の葉が舞い乱れた気がした。
「アーーーーーーー!」
井戸の穴に叫ぶ。大きく反響するそれは地の底から全ての大地を震わせた気がした。
まるで天と地を治める神になった気分。

それは友達もいなく何もすることもない田舎に住んでいた子供の頃の唯一の楽しかった遊び以上の思い出。

高校を卒業し都会に出た僕は叫ぶどころか声すら出せなくなった。乱立された灰色の建物、圧倒される程の多くの人々、
職場での苦悩…理不尽な上司の指示に反発さえも出来ない。

耳障りなノイズだけが聞こえて頭を駆け巡る日常。
気分は暗く深い井戸に落ち込んだようで目の前のくすんだ世界にあの美しい青い空など見えない。

ある時、引っ越しアルバイトのトラックの中、ラジオで一曲の歌を聴いた。
それがあの頃の思い出を甦らせた。

「そろそろお願いします!」  「ああ。」
アンコールの歓声に応えてステージに立つ。
「俺たちが生きてる限り上も下もねえ!空も地もねえ!天国も地獄もねえんだよ!叫べ!」
「ウォーーーー!」
「叫べー!今夜みんなでぶちかませーー!」
「ウォーー!」「ウォオーーーー!!」「ウォオーーーーーーーーーー!!!」

俺はサイリュームが輝く満天の星空に歌い叫んだ。あの頃のように。


次は「昼寝」「改革」「ツンデレ」でお願いします。
0393名無し物書き@推敲中?
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2022/04/05(火) 14:37:05.91
「――というわけで、昼寝改革は必要なのであります」
 昼寝改革。
 平均的睡眠時間が年々減少する日本で、新たに作られた標語である。
 昼は必ず一時に眠り、一時半に起きる。
 そうすると脳が活性化するのだとかという研究結果が出たそうだ。
 それから企業という企業は昼寝タイムを設けた。
 その時間は絶対にどんなことをしていても仕事を中断し、眠るというのだ。
 しかしそんな出鱈目な改革は、僕を生き地獄に突き落とすことになった。
「べ、別に、あんたなんか興味ないし!」
 声が、聞こえる。
「もうあんたなんか知らない!」
「好きなわけないでしょ! 馬鹿!」
「あ、あんたと結婚するぐらいだったら、死んだ方がマシだわ!」
 聞こえる。聞こえる。聞こえる。
 忘れたくても忘れられない彼女の声が、僕の心を苦しめる。
 彼女は、僕の幼馴染だった。
 いつも素直じゃなくて、でも僕のことが大好きで、僕も彼女のことが大好きで。
 でも彼女は十七歳の時、事故で死んでしまった。
 それから十年以上、僕の夢の中に現れてはツンデレを繰り返す。
 夜に眠る時はいい。睡眠薬で誤魔化せるから。
 けれど昼寝は薬が使えない。薬が使えないという中、無理にでも眠らなくてはならない。
 そして、また今日も彼女と出会う。
「いつまで私を思い出してるのよ! 馬鹿! ほんとに馬鹿!」
 そして彼女は突然やってきた車に撥ねられ、バラバラになった。
「ああああああああああ」
 僕は叫び、はっと目を覚ます。
 こんな日々がいつまで続くのだろう。
 ああ、昼寝改革なんて、ろくなものじゃない。

次は「光」「ドレス」「アマガエル」でお願いします。
0394名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/04/25(月) 13:47:32.77
「雨になっちゃったな…」
今日は一番大きいお姉ちゃんの結婚式。物静かでとても優しくて大好きなんだ。
皆は準備に忙しく私は居場所もなくて歩いているうちに教会の裏庭に辿りついた。奇麗なアジサイがたくさん咲いている。
その葉に一匹のアマガエルがいた。
「ごめんね。君は雨が降って嬉しいだろうけど今日は大切な日なんだから雨はやっぱりだめなんだよ…」

「コケッ」「今日は特別に素晴らしい日になりそうだ。」
梅雨という恵み。我々は遥か昔から神のご加護により、この地に住むことを許された。
ジューンブライドというのは、この地での幸福の伝説が人間の方某に伝わった物。
ウェディングドレスとやらも我らの体を守ってくれる薄い粘液の象徴なのだがな。
人間よ、神の祝福があらんことを…

「お姉ちゃんキレイ!」
結婚式が始まり荘厳なパイプオルガンの音と共に美しいドレスに包まれたお姉ちゃんの幸せそうな笑顔
を見たら(私は…)
0395名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/04/25(月) 13:48:05.14
式が滞りなく終わると思ったとき「バーン!」教会の扉が開きたくさんの女性が現れた。
「かずきー!何でそんな女と!」
「私と結婚してくれるって言ったよねー!」「私達の子供はどうするのー?」

結婚式は滅茶苦茶になった。…これが「しゅらば」ってやつなのかな…。
お姉ちゃんは泣いていたし、新郎のかずき君のお父さんとうちのお父さんも殴り合いになっていた。
二人のお姉ちゃんも新郎をボコボコにしてた…。

すごいことになっちゃったけど、何となくこれで良かった気がしたんだ…
格好良かったけれど本当はどこか冷たい感じがする、かずき君が好きじゃなかったから。
まだ続いてる騒騒しい教会から外に出ると空は晴れ、まばゆい光とともに虹が掛かっていた。
ふと気づいたのだけど、アジサイの色が変わっている?

アジサイ…色の変化が多くて花言葉には「移り気」や「浮気」の意味があるとどこかで聞いたのを思い出した。
それと共に色によっては幸せの意味も。

「コケッ」「なっ?最高の日和だっただろ?」

その後、お姉ちゃんは、かずき君と別れ新しい彼氏ができた。
みのる君はとってもいい人だよ!「結婚しちゃえ!」


次は「ラーメン」「聖書」「秘密」でお願いします
0396名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/04/26(火) 06:14:17.73
 ラーメンを啜っていると、友達が聖書の話をしてきた。
「人間が楽園を追われた理由、知ってる?」
「アダムとイブがなんちゃらかんちゃら……だろ? 俺、聖書知らねえから」
 友人は敬虔なキリスト教徒だ。俺は別宗教なので、キリスト教のことはよくわからない。
「その話にはね、実は隠された『秘密』があるんだ。なんだと思う?」
「だから知らねえってば」
「じゃあじゃあ、教えてあげる。それはね――」
「もう一人、女がいたんだよ。アダムとイブ以外の女。その女がアダムと不倫してやがんの。イブに隠れてね。それで怒ったイブが禁断の果実を『わざと』食べたってわけ。いやあ、昔の恋愛模様も激しいもんだよね〜」
「それ、作り話だろ」
「おばあちゃんから聞いた話。面白いでしょ?」
「いや別に」
「だからさ、恋にはずっと三角関係が付き物なんだよね。あんた、彼女いるでしょ。だからさ……」
 友達はやわらかい唇を俺に押し当てながら、そう笑った。

次は「愛」「白雪姫」「科学」でお願いします。
0397名無し物書き@推敲中?
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2022/04/27(水) 13:09:41.96
「ふむ、(眼鏡を押さえて)『白雪姫』で使われた薬物を冷静に分析すれば、あれは一種の神経毒だろうか。
古今東西の創作物なぞ科学的根拠に基づかない安い作り物なのだ。
MITを首席で卒業した私を誤魔化すことなどできない。」

魔法の鏡?鏡が喋るだと?笑える設定だな。
桃から生まれた桃太郎?ありえん。非科学的だ。超非科学的だ。
「アリとキリギリス」そもそも違う生物で、どう言語のコミュニケーションがとれるというのだ。
矛盾だらけだ。所詮、子供騙しといったところか。

「お父さん、それって白雪姫のお話?、ぱそこんで観ているの?」
「うおっ!」いつのまにか娘が。
「白雪姫はねー、王子様がキスして目覚めるんだよ」
「シンデレラの話も好きなんだ。王子様はびんぼうな女の子を愛したんだよー!」

膝の上に乗る娘、小さな頭を見降ろしつぶやいた。
「愛とは…何なんなのだろうな?この安らぎの情動、これに科学的検証を…」
「お父さん、何?」
「いや、何でもない。(眼鏡を押さえて)」
「お父さんのお勧めは『赤毛のアン』だ。あれは面白いぞ。」

次は「アンドロイド」「会社」「楽園」でお願いします
0398名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/04/29(金) 07:02:25.62
「起動シマシタ。ワタシノ名前ヲ入力シテクダサイ」
 とある機械製造会社の一室。
 そこで、新たなアンドロイドが生まれた。
 彼女の名前は、「BABAS-645」。
 入力すると、彼女は機械音声で喋り始めた。
「ワタシノ任務ヲ教エテクダサイ」
「お前の仕事はな……」
 彼女は頷いた。首の部分が少しばかりがしゃりと音を立てる。
 またもや世界に、悪の機械人形は送り出されたのである。

 巷では、連続殺人事件が起きていた。
 大富豪どもが、喉をナイフで刺され死亡していたのだ。
 防犯カメラなどを見てみれば、一人の女が写っている。
 黒髪を短く切り揃えた少女。名を、「ババス」と名乗っているらしい。
「外国人?」「偽名だろ」「怖え」
 人はそれぞれに噂した。その間にも、富豪が一人、また一人と死んでいった。
 富豪の一人、Aは怯えていた。明日、自分が殺されるのではないかと。
 彼は警察を頼った。厳重な警備を固め、備えることにしたのだ。
「これで安心だな」と寝床につこうとしたその時、Aの背後から何やら気配がした。
 振り返れば、一人の美しい女。黒髪を短く切り揃え、嗤う――例の女が、立っていたのだ。
「あっ。お、お前は……」
「冨メル者ダケガ強イ、彼ラダケノ楽園。ソレヲブチ壊スタメニ、ワタシハ存在シテイルノデス」
 突然、機械音声が流れ出した。
「ダカラ、ワタシハアナタヲ殺ス。オ覚悟ヲ」
 翌日、Aは死体で発見された。
 警備を貼る前に女はあらかじめ潜入し、時を見計らってAを殺害したと見られる。
 女は失踪していた。
0399名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/04/29(金) 07:08:45.06
 警察は本気で動き出していた。
 それから数人の富豪が殺害されたのち、やっと犯人逮捕に至った。
 彼女を調べると、アンドロイドであることが知れた。
「冨メル者ダケガ強イ、彼ラダケノ楽園。ソレヲブチ壊スタメニ、ワタシハ存在シテイルノデス」
 と、うわごとのように繰り返していたという。
 他にも数人の男や女が同罪で捕らえられ、みなアンドロイドであったことが判明。それらも同じうわごとを漏らして、大爆発を起こし壊れたという。
 爆発に巻き込まれた人間の数は、合わせて100人以上になった。
 甚大な被害をもたらした一連の事件を起こした会社は、まもなく取り押さえられた。
 表向きは家電工場を装っていたが、殺人アンドロイドを次々に作っては世に放っていたらしい。
 社長を名乗る男の供述によると、「金持ちどもが牛耳るこの世界を変えてやりたかった」とのことだった。
 彼はすぐに処刑された。
 しかし、事件が終わることはなかった。
 アンドロイドが全て回収しきれず、彼ら、彼女らの殺人劇が今でも続いているのだ。
 やがて金持ちどもが耐え、日本は壊滅状態となった。
 そして、貧乏者の天国となったわけである。

次は、「しりとり」「詩」「思いつき」でお願いします。
0401名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/05/25(水) 10:49:26.38
学園祭ねえ…苦手なんだよ、こういうのは。いつもツルでいるダチ共に誘われたがアイツらはどこ行ったんだ!
ああ、他校の男のナンパ目的につき合されたってことか。
結局アタシは一人でいつもの誰もいない校舎裏の芝生で寝転がっていた。
(だー!いつもと違う!うるさくて眠れやしねえ!)

「サキちゃん!やっぱりここにいた!タバコ吸ってないでしょうね?」「吸ってねーよ。何か用か?」
ノリコは同郷の幼馴染だけれどアタシとは違って真面目で頭も良い優等生だ。

「これから私たち文芸部の出し物があるから見てってよ!」
会話さえも久しぶりだっていうのにいきなり強引に手を引いてゆく。(相変わらず空気が読めない変なヤツだ)

教室に連れられたアタシは雰囲気の場違いすぎに戸惑った。(あああああ…真面目風な方々がたくさんいらっしゃる)
どうやら詩の朗読会とやらが始まるらしい。(詩?詩だとー?ろくすっぽ本も読んでないのにそんなもんわかるかー!)
でも教壇前に座った子が一呼吸整えての一声にアタシ中の何かが震えたんだ。
「欠けた月」「平坦な光」「満月」「眩しく」「指の間」「貫き」「問われ」「沈黙」「見上げたまま」
ストーリーもわからんし、ほとんど何を言っているのか理解できなかったけど一語一語だけは響いてくる。

「どうだった?演劇部の松江さんは凄いんだよ~高校生なのにプロの声優さんで今日は特別に朗読をお願いしたんだ」
「確かに悪くはなかったよ。というか、まあ中々良かったかもな」
「ええっ!その感想は意外だよ!『つまんねー!』っていうかと思った!」
(誘っておいてそれかよ!)
0402名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/05/25(水) 10:50:09.55
「ねえ、しりとりをしない?」
校舎の階段でアタシたちはダべっていた。
「まーた、わけのわからないことを」
「思いつきでいいんだよ。思ったことを素直に言うだけの遊び。私もそうするから。」(まあ今日は珍しいから付き合ってやるか)

「じゃあいくよ!アイス!『す!』」「う~ん…滑り台?」「田舎!『か!』」 「…かんざし?」「しょうゆ!『ゆ!』」「…ゆびきり」
(あれ?どこか懐かしい記憶が…焼きとうもろこしの香り、交換したかんざし…)

「やっぱりサキちゃん子供のころの夏祭りのこと憶えていてくれたんだ。その後の公園での
ずっと友達でいてくれるって約束も。うれしいな。」
(あっ…)
「詩っていうのは言葉で心の中にあるイメージをどんどん引きだしてくれる魔法みたいなものなんだよ。
最近、全然会ってくれないし話してもくれなくて嫌われたのかと思ってたんだよ」
(それは違う!アンタもその友達もアタシとは違うような気がして…)

「そんなことはない。今でも、かんざしは大切に宝石箱にしまってあるからさ…」
「うん。…良かった。」
「そ、それにしてもスゲエな詩とか言葉って何か少しわかったような気がした」
0403名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/05/25(水) 10:50:57.45
「じゃあサキちゃんも文芸部に入らない?」
「あははは!さすがに金髪ピアスのアタシに文芸部はないだろ」
「あははは!思いきり冗談でいったんだけどね!それに宝石箱とか乙女チックで似合わないよ!」
「なんだと!ぶん殴るぞコイツめー!!」

ピリリリリ! 「ギャー!ごめんなさい!ごめんなさい!」「ああ、なんだノリコかよ。焦らすなよ」
「もしもーし、サキちゃん遊びに行こうよ!いいお店見つけたんだ~!」
「それどころじゃねーんだよ!締切が!締切がー!!アンタみたいな、お役所勤めと違うんだー!うがー!!」
「そうなの?小説家さんも大変だねえ。じゃあ後で差し入れ持っていくから」「ああ、いつもすまんな、ありがとう」

あれから10年か…アタシがこんな仕事をしているのも、あの時が切っ掛けだったっけ…
「…なんて、感傷に浸ってる暇ねー!締切!締切ーー!!」

次は「天使」「悪魔」「缶詰」でお願いします。
0404名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/05/26(木) 08:44:24.11
 缶詰。二つの缶詰あった。
 片方には「天使」、もう片方には「悪魔」と書かれている。
「なんだこれ……?」
 そう言いながら男は、店の棚からそれらを取り出した。
 商品の内容は何も書いていない。店員に聞いてみたが、「そんなものは知らない」と言われた。
「警察に届けたほうがいいです。当店でお預かりさせていただきます」と店員。
「いいや、これは俺がもらってくよ。一応この店に置かれていたんだから代金は払う」
 男はそう言って、店員に一万円を押し付ける。そして逃げ帰るようにして缶詰を抱えて店を出た。

 家に帰ると、まず早速「悪魔」の缶詰を開けた。
 中から悪魔が出てきて、「願いを叶える代わりに魂をもらう」と言った。
「つまんないなあ」男はそう言って悪魔を無視し、天使の缶詰を開けた。
 天使は「あなたの心の綺麗さを確かめます。もし一点でも汚れていれば、地獄に落とします」と物騒なことを言い出す。
 男は悪魔に頼んだ。「天使を消してくれ。ついでに悪魔も消えてくれ。それと俺を不老不死にしてくれ」
 悪魔は驚いた顔をすると、一瞬にして消え去った。みると天使もいない。
 これで安心。不老不死だから寿命をとられることもない。
 ばんざーい、と男は浮かれ顔で空っぽの缶詰を捨てた。

 後でわかったことだが、これは幻覚剤入りの缶詰だった。
 脳を狂わせる強度の麻薬が入っていたため、男はそう遠くないうちに気が狂った。幻なので不老不死ということもなく、すぐに死んでしまったのだそう。
 結局缶詰は誰が仕込んだのか、わからずじまいだった。


次は「靴下」「サラサラ」「水面」でお願いします。
0405名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/06/22(水) 21:24:01.87
「我が愛しむこの湖に集う物たちよ清浄の神としてそちらも等しく歓迎しよう
我等を尊び敬う限り永劫の果てまでこの水面は美しく輝き続けお前たちと共にあるだろう」
「あーいひまもーれ いやくつくるふも いらさーるりこみけしゃも-らー こまらいそらなーよんもいかー」
いつもの日課。湖を穢れから守るための呪文詠唱だ。

「うがー!」「お姉ちゃんどうしたの?」
マイは妹といっても魔法力が弱くて自分の池を維持できずにこっちに移って来た女神で
まあ今では義理の姉妹みたいな関係だ。

「人だよ人間ってやつらだよ!」
「獣や人間たちがここで体を洗うのはいいんだ。それは大昔から続いてる我々との契約だ。
でも人間は自分の体とは違う物、衣服とやらを勝手に洗うだろ?
体から離れたただの汚物をここで洗うとか不敬な行為だと思わんか?
百歩譲って下着は子孫を残すための役割もあって神の恩恵内だから許すとしても
わからんのが靴下だ!裸足で生きろ!臭いし汚いしそれをここで洗うな!井戸水でやれ!」

「お姉ちゃん、そんなこと言わないで~人間にも優しくしてあげてよ~」
「う~~ん……(ハッ!)いいことを思いついた!我の浄化魔法を凝縮して…」
やがてその妙薬は村人に大好評になり、湖にわざわざ洗濯に来る者も減った。
0406名無し物書き@推敲中?
垢版 |
2022/06/22(水) 21:24:39.59
「おぬしら何をしておる?」「げっ!!神の総元締め様!」
「人間に恩恵を授けるのは良いが代償に金品やら過剰な貢物を要求しているとな?」
「えっ??あっ、ううう…」
「問答無用!二人の湖の管理権限を剥奪する!どこへでも行け!」

「サラ・イグリューナと~マイアス・サラーテの洗浄剤『サラサラウォッシュz』~新発売!
泡立つ水面が衣服から靴下まで少ない水で綺麗スッキリ~サラとサラでサラサラの仕上がり!

「どうしたんです?おじいさん?そんなに真剣にテレビを観て。あら、この洗剤良く落ちるのよねえ。」
「いやね、このCM昔からやっとるけど姉妹が全く歳をとってないような気がしてのお」

「お姉ちゃん、あれから何千年も、いつまで続けるの?今はもう湖に洗濯に来る人間なんていない時代だよ…」
「今月の売上げを見ろ!新商品も順調だ!こいつは儲かりまっせー!」
「元締めのバーカ!バーカ!願ったり叶ったりでこっちは人間界で大儲けだわ!ボケ!」
「やめてよ~お姉ちゃん、元締め様に聞こえちゃう…」」

次は「猫」「スパイ」「人工衛星」でお願いします。i
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