『とある国の監獄にて』2/2
鉄格子をすり抜けスーっと入ってきた死神は、二人に向かって、地獄の底から響くような声でこう言いだした。
「今夜、この中の一人を迎えに来る。その一人をお前達に決めさせてやろう。フフフ・・・」
そう言うと死神はまた鉄格子をすり抜けスーっと闇の中へ消えた。
覚悟は出来ていたはずのサムも、いざ死神を見ると怖じ気づいた。
「まだくたばるのは御免だ」するとアレックスも「同じだ」
しばらくの沈黙のあとで口を開いたのはアレックスだった。
「ここには三人の人間がいる。あんたも死にたくないようだからこうするしかない」
腹をさするアレックスを見てサムはようやく理解し頷いた。

翌朝、食事を運んできた看守がサムとアレックスの顔を鉄格子越しに眺め一言つぶやいた。
「昨晩、ここで何かあったのかしら?」
「べつに」と返すアレックス。
そしてサムとアレックスは生き延びることが出来たのである。
たとえそれが監獄の中の日々であろうとも。(了)