最初の賞をとった出版社とは、ほぼ縁が切れた。
初版1万近い部数の大半が「罪庫」になったこともあるだろうし、俺が出版初心者過ぎたってこともあると思う。
この辺は後で書く。

実は本が出てすぐに声がかかった出版社がある。かなり大手。
しばらく編集さんと仲良くして、さんざん飯も食わせてもらった。俺がそこそこの年齢でもあるし、
編集さんも社内の有力者だったし、まあ本当にいい店に連れて行ってもらった。
次の本の企画も編集会議で通ったし、書き始める準備もしていた。
けれども、最初の本の売れ行きが悪い、ということで、その出版社の営業からストップがかかった。

泣きそうな顔で謝られた時のことは忘れられん。
あんたにそんな顔をさせてしまったのは俺なんだ、と、土下座したいくらいだった。

賞を取れるいい本を書くことが大事なんじゃないんだ。
売れる本を書かなきゃダメなんだ、と、声をころしながら泣いた。