よろしくおねがいしま〜す



 アスファルトを反射する熱射に当たりながら駅の外で煙草をふかし友人を待っていると、隣から「久しぶ り」という声が聞こえた。僕には女性の知り合いなんてものはいないので無視をしていると、また「久しぶり」という声が聞こえた。
しかし僕には女性の知り合 いなんて「久しぶり」いないので無視して「久しぶり」いると、「久しぶり」
 さすがに鬱陶しくなったので横を振り向くと、日子が立っていた。「二 年ぶりだね」と日子が言う。僕は静かに頷いた。二年前とは服装から髪型まで大違いだった。肌をこれまでかと露出させ髪の毛は長くパーマを当てている。
なぜ 違いがわかったかというのは、僕には女性の知り合いなんてものはいないからであって、日子と何か深い関係になったというわけではない。
一度創作文芸板なる インターネットのオフ会で会っただけだ。アドレスの交換なんてものはしていないし、オフ会だって僕は無言だったので喋ったのは一言二言だけだろう。そんな 僕を向こうが覚えていたということに少し嬉しく感じたけれど、
だからと言って何かがあるわけでもない。
僕は吸殻を指で弾いて飛ばし――これは昔の彼女の癖 で、いつの間にか僕にもうつっていたものだ――「二年ぶりですね」と言った。
「二年前とは大きく変わって」と日子が言った。確かに二年前とは僕は大違いだった。精神を病んで自殺未遂をしてからというもの薬漬けになり体重は三十キロ以上増えて、坊主を伸ばした状態で金に近い色にまで脱色していたし、髭も蓄えていたから。
「日子さんこそ、女らしくなって」と冗談めかして言うと、日子は小さく笑った。「いろいろあってね」「僕だっていろいろありましたよ」

 日子の提案で僕達は近くの喫茶店へと寄った。その際友人には「今日はちょっと無理になった」とメールをしておいた。