虫の知らせがわるいからとあんなに御心配くださった僕の計画も、さいさきよくすべりだした、とお聞きになったら、お喜びくださることとぞんじます。
昨日、ここに着きました。で、まずとりあえず、無事でいること、事かうまく運ぶことにますます自信を得たことをお知らせして、姉さんに安心していただきます。
僕はもう、東京のずっとずっと北に居るのです。そして、札幌の街を歩きながら、頬をなぶるつめたい北方の微風を感じているところですが、それは僕の神経をひきしめ、僕の胸を歓びでいっぱいにします。
この気もちがおわかりでしょうか。
僕の向って進んでいる地方からやってくるこの風は、氷にとざされた風土の楽しさを今からなんとなく想わせます。
この前兆の風に焚きつけられて、僕の白昼夢はいよいよ熱して鮮かになっています。