二十四


とうとう三月が来た。美代子は東京に行く前日まで「ル・リアン」の店に立っていてくれた。美代子がこの街を去る一ヶ月前である二月は酷く淋しい気持ちになった。
私は淋しくて身が引き裂かれるような思いを抱きながら仕事をしていたが三月になったら、この淋しい気持ちも一度ピタっと止んだ。
ピタっと止んだかと思ったが、やはり美代子が「ル・リアン」から離れてしまう一週間前になった時に、また淋しい病がぶり返して来た。
私はこの時どこにいても何をしていても淋しくて堪らなくなった。店に美代子がいてもどこか平生の自分を取り戻せずにいた。