>>ジャップマン
途中までな。
眠りの世界に割り込んで来たのは、ドライヤーの音だった。目覚めてゆく意識 。ぼやけた視界を音の鳴る方に向けると、女の黒髪が少しずつ鮮明になってきた。
「ごめんね。起こしちゃった?」
女は鏡台の前に座り、髪を乾かしながらこちらを見もしないでそう言った。シャンプーの香りが部屋を満たしてゆく。長い髪が女の背中を半分だけ隠して、その隙間から時折、水色の下着が姿を見せていた。
「おはよう。早いね。もう仕事?」
ベッドから起き上がり朦朧とした意識の回復を待って、女にそう返した。
女とは昨日の夜に知り合ったばかりだった。クラブで踊る二人組の女。声を掛け、無視をされなければ一次試験は合格だ。
ひと息ついてこっちで飲もうよ、それで女が付いてくれば、あとは余程の粗相がない限りは性交まで辿りつける。

他愛の無い話で盛り上がり、頃合いを見てどちらを気に入ってるかを遠回しに言えば、もう片方は上手い事引いてくれる。
あとは、「セックスがしたい」の代わりに「終電が無くなった」といい、「オーケーよ」の代わりに「うちに来る?」で商談成立だ。
異性の体温が最大の娯楽なのは男も女も変わらない。