【若桜木虔 公募ガイド連載メモ】
・視点を置く登場人物が多いと一般読者は登場人物に感情移入して読みにくい。長命のプロ作家を志すのなら単独視点を心がける。
・エンターテインメントで読者を獲得する秘訣は、物語のエピソードを、時系列に忠実に並べて書くこと、それでなおかつ面白いことである。
・登場人物を使い捨てにしない。冒頭のほうで出てきた人物が途中から出なくなるとか、重要人物が後半になって忽然と出てくる、といったアンバランスな物語構成は、できるだけ避けなければならない。
・新人賞選考において“泣かせる物語”は圧倒的な強みを発揮する。選考委員を泣かせることができたら、他の些細な欠点・弱点などは、消し飛んでしまう。
・「この分野に関する知識なら、おそらく自分は誰にも負けない」という自負があったら、その分野の蘊蓄を、とことん詰め込むこと。
それと同時に、読者が大泣きしてくれるように、主要登場人物の置かれた立場と、巻き込まれる事件・事故などを工夫すること。
・新人賞とは応募者の創造力・想像力を見るもの、どれだけ応募作に新奇のアイディアが盛り込まれているかを見るもの。新奇の斬新なアイデアがあれば、技術の拙劣度などは容易に撥ね返す。
・未成年者の非行(喫煙・飲酒・暴走族)、リストラ離婚、DV、虐め、セクハラ、パワハラ、引き籠もり、自殺未遂、不倫、ストーカー、オタク、フリーター、ホームレス、売春、水商売、オカマ、同性愛、
鬱病、統合失調症、性同一性症候群、カルト宗教などは、あまりに大量に新人賞応募作で送られてくるので、下読み選者が真面目に読まない。
・時事ネタは、新人賞を狙う多くのアマチュアが「こういうテーマの物語は受ける」と勘違いして好んで取り上げるのだが、新人賞は基本的に応募者の創造力・想像力を見るもので、
「どこかで見たような物語」は「創造力・想像力不足」と見なされるし、他の応募者と似た物語は「独創性に欠ける」と見なされ、どれほど面白くても落とされる。
〈続く〉