群像に提出後、こんなん書いている。

ラウンジには新入生と見られる学生たちが、それぞれ講義が始まるまでの時間を過ごしていた。
まだ大学の講義の初日とあって、一人でいる学生も多かった。
私は一人でいる学生の一人に声を掛けようと辺りを見回した。ラウンジには、いろいろな人がいたが、私は話しやすそうな人を観察していた。
あんまりおどおどした人を避け、服装が派手すぎず、かといってダサ過ぎず、自分の身の丈に合った人がいないかをそれとなく観察していた。
一人でいる学生のなかに同性の大人しく本を読んでいる男を見つけて私は話しかけた。
「あのう、おはようございます」と言って男の様子を観ていると、男が「はい」とはっきりと明るい様子で受け応えをした。
男は短髪で、清潔感のある服装だった。カーキ色の細身のパンツに、真っ黒なジップのついたニットというシンプルコーデであったが、
足元のゴツめのブーツがアクセントになっていて、とても洒落っ気があった。
トップスが良くても、パンツと足元のバランスが悪い人は多い。ボトムスから靴にかけてバランスが良い人を私は好んだ。
内向的だが、自分で自分を何度も鏡で見返しているからだ。
「今から社会学概論の講義を受けられる方ですか?」
「ええ」と言って男が社交的な笑みをこぼした。男の様子から、話しかけられて、まんざらでもない様子だった。
今日は入学式の後、講義の始まりの日である。まだユニバーシティという空間にどんな人間がいるか、今は誰もが知らない。
大学生になったばかりで誰もが出会いを求めているのだ。