0008名無し物書き@推敲中?
2018/09/17(月) 22:45:58.12タイトル「恋の股間」
すっかり夜です。暗い部屋のベッドにはキミヒコ君が寝ていました。大きないびきをかいています。時に息がとまると苦しそうな顔で、もぞもぞと動いていました。
「……俺は……悪くない」
顔を左右に振りながら寝言をつぶやきました。体にかけていたタオルケットはけられて腰のあたりまで下がっています。
そのタオルケットの一部が盛りあがりました。ゆっくりと上のほうに動いて、出てきました。頭の先っぽまで皮をかぶったキミヒコ君の息子でした。
息子はうな垂れています。先端から長々と、ため息をつきました。
「……行くか」
けむくじゃらの睾丸を左右に動かして歩きます。胸を通ってアゴに飛び乗りました。頬のふくらみを踏み締めて額に到着。今度はベッドの棚に飛び移りました。そこからカーテンの中に潜り込み、窓枠に移動します。
窓は少しだけ開いていました。息子は難なく通ってバルコニーに出ました。隅に置かれた園芸用の道具を足場にして手すりの上まで来ました。
息子は曲がっていた体を起こしました。空にはポツポツと星が見えます。少し欠けた月も出ていました。
「雨の心配はないな」
手すりに沿って息子は歩きました。仕切り板の手前で引き返そうとして動きを止めました。
すすり泣くような声が聞こえてきたのです。手すりは隣まで繋がっていました。息子は悩ましげにぷるぷると震えて、思い切った一歩を踏み出しました。
息子は再び止まりました。手すりのところに丸まった女陰がいました。全体を小刻みに動かし、湿っぽい音を立てています。
息子はそろりと近づいて言いました。
「何か、悲しいことでも」
「ダメ、こっちに来ないで」
強い拒絶を含んだ声が返ってきました。息子はしょんぼりとして、くるりと向きを変えました。
「……ごめんなさい。少し、待って」
歩き始めたところで声をかけられました。息子が振り返ると女陰が丸まった姿で近づいてきました。
「急に大きな声を出して、ごめんなさい」
「それは構わない。泣いていた理由を教えて欲しい」
「……すごく恥ずかしいことなんだけど」