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 愛子の家は、車で三十分。方向音痴の俺は、車があってもとても辿り着けないだろう。
 あれ? ちょっと待てよ。
「おい」
「なんだ?」
「愛子、今家にいるのか?」
「いる。ラインを送ったら、怒りつつも『家にいるよー』と返事が返ってきたからな。彼氏と一緒らしい。あいつが疵物になるのを、何としても阻止せねばならん」
「よし、もっとスピード出せ! もうどうでもいいから! どうなっても構わねえ」
「よしきた。『お前のことが好きだ。結婚してくれ』これで行け」
「わかった」
 十五分後。二人とも合鍵はある。インターホンを押さず、いきなり扉を開けた。
「愛子!」
 暫くして居間と玄関を繋ぐ廊下に、愛子が出てきた。
「あれー? どうしたの君達」
「愛子! す、好きだ! 結婚してくれ!」
「もしこいつより俺のことが好きなら、俺と結婚してほしい。そんな、どこの馬の骨かわからん奴じゃなくて」
 後ろから彼氏が出てきた。
「愛子は俺の女だ」
 斉藤は動じない
「愛子、そいつに自己紹介しろ」
「ええ? ええと……私のこと? 私は普通の女の子みたいに、羞恥心なんかないんだー。だから、おっぱい見せられるよ。ほら。おまんこはね、エロマンガみたいに綺麗じゃないから、見せないけどね」
 そう言いながら、愛子は上半身に身に付けているものを全て脱いだ。
 彼氏は無言で出て行った。やってらんねえよ、という捨て台詞を残して。