「売り上げ倍にしたら特別ボーナス出しちゃるて言うとってくれたやないですか!」
社長のデスクを手のひらで叩き激昂する広能ゴルゴに対し、ソッポ向いたままマニキュアを塗りながら
「わしはそがいなこと言うとりゃせんわ。よしんば言うたにしろや、そんな昔のことなんて知るかい」
と、小馬鹿にしたような口ぶりで返す山守ゴルゴに鼻息の荒さを無理に圧し殺し
「ああ、そうですかい。担いだ神輿が間違っとった…」
「ま、好きに言わんかいや。なんでもええがの、ここの払いはこんながやっとけ」
あまりの山守ゴルゴのケチ臭さに、先日ひそかに会った岩井ゴルゴの一言一言が心に現実さを伴い刻まれていくのを自覚する広能ゴルゴであった。