そう語るのは財務省事務方トップの矢野康治事務次官(58)。
10月末の総選挙に向けて与野党ともにバラマキ合戦のような
経済政策をアピールするなか、財源も不確かな財政楽観論を諫めようと、
「文藝春秋」11月号に論文を寄稿した。

財務事務次官と言えば、霞が関の最高ポストのひとつ。
在任中に寄稿するのは異例のことだ。

「今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって
突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、
この山をさらに大きくしながら航海を続けているのです。
タイタニック号は衝突直前まで氷山の存在に気づきませんでしたが、
日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいています。
ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかがわからない。
そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいるのです」