プロジェクトX〜挑戦者たち〜  オリンパスの挑戦。奇跡の利益率−高級ブランドっぽいカメラの誕生

オリンパス首脳陣から、もっと利益率の高いカメラを作れと迫られていた。 思案に暮れていたとき、社長は意外な事を言った。
「部品品質の手を抜いてみたらどうだろう」 工場長は戸惑った。 高級カメラから品質の手を抜いたら高級カメラではなくなってしまう。
「無理です。出来ません」工場長は思わず叫んだ。 「俺たちがやらずに誰がやるんだ。俺たちの手で作り上げるんだ!」

社長の熱い思いに、工場長は心を打たれた。そして、大阪商人の血が騒いだ。
「やらせてください!」それから、夜を徹しての偽装高級カメラ作りが始まった。省ける部品は省きまくる毎日だった。
しかし、本物の高級カメラの味は出せなかった。 工場長は、来る日も来る日もコストと戦った。
いっそ、キヤノンに転職すれば、どんなに楽だろうと思ったこともあった。 追い詰められていた。

そこへ社長が現れた。そしてこうつぶやいた。
「発想を変えるんだ。高級カメラはボディだけで高級なんじゃない」そうだ。センサーだ。センサーのサイズを小さくする手があった。
暗闇に光が射した気がした。工場長は試しにセンサーのサイズを1/4にしてみた。高級カメラっぽいカメラが誕生した。
「これだ、これが探してた俺たちの高級カメラなんだ!」センサーサイズ1/4の偽装高級カメラの誕生だった。

社長と工場長と従業員は、工場の片隅で朝まで飲み明かした。 工場長は、充足感に包まれ、涙が止まらなかった。
「社長、完成したカメラで日本海を写しに行ってきてもいいですか」工場長は言った。
「ああ、いいとも。だが夜は写すなよ。ノイズだらけだからな」 社長は自分のジョークに、肩を揺らして笑った。

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