そもそも、レンズ内手ぶれ補正の方式は大きなリスクがある。
構成レンズ群の中の一部のレンズ群とはいえ、レンズを構成する光学系を「動かす」わけだ。
それもAFレンズ群のように光軸に沿って前後させるのではなく、光軸と垂直方向にずらす。

わずかでも光軸がずれれば、とうぜん偏心が起こる。
むろん、偏心しても影響が少なくなるようにレンズ設計をするのだろうけれど
(そこが設計者のウデの見せ所であり苦労の種)、
しかし偏心することに違いはなく、
ほんのわずかだと言っても、偏心すればレンズ性能を低下させることにもなりかねない。

「レンズの光学性能を最優先させるために、もし、AFか手ぶれか、どちらかやめていいよ、と言われたらどっちを捨てますか?」と、
以前、いくつかのメーカーのレンズ設計者に同じ質問をしたことがある。
驚いたことに、設計者のほとんどが間髪をいれず即答した。
「もちろん、手ぶれ補正をやめたい」、と。
うーん、どっちかなあ、なんて考える人は誰一人いなかった。

「じゃあ、AFも手ぶれもいらない、と言われたら、どう?」とぼくは重ねてある設計者に聞いたら、
その答えが実におもしろかった。
「AFも手ぶれもいらない、で、いまのレンズ設計技術を持ってして完全MFレンズを作らしてくれれば、
そりゃあ、凄いレンズを作ってみせますよ」と。
「そのうえ、コストアップはそこそこ許す、少しぐらい重くて大きくてもよいぞ、
なんて言われれば、夢のようなレンズができますよ」とも言っていた。