小学校ニ年生の我が子の運動会にやって来た。

場所取りも荷物運びも万全、俺のペンタックスも充電満タンでスタンバイOK、早朝から慌ただしく朝食や弁当作りを頑張っていたカミさんもワクワクしている。

いよいよ我が子の徒競走だ。直線50mを6人並んで走る。俺はゴール先の延長線上でカメラを構えた。周囲はサンデーカメラマンのパパママだらけだ。

スタート! みな一斉に連写を始めた。

「ガシャンガチャンバリンゴリンガリン!」

俺の自慢のペンタックスのシャッター音はけたたましく隣りのママさんが構えるビデオの音声に割り込む。
子供が俺のファインダーの中で大きくなって来た。あと10mでゴールだ。

俺のペンタックスのコンティニュアスAFが唸りを上げる!

「おーにょにょにょ? んにょにょゴリッ☆、にょーすにょにょにょ」

我が子は一位だ、ゴールテープがいよいよ目前に迫るその時!

「にょーーーーーー!!」

(AF迷走後の無限遠リセットと思考放棄によるレリーズ受付け中止)

決定的な瞬間は撮れなかった。
価格コムのペンタックスマニアが言うように、AFもAEもISOも全てマニュアルでやれば良かった。いや、それならスマホで充分だった。

「一位だよ凄いよ!どう?パパいい写真撮れた?」

カミさんと子供に合わせる顔が無い。