ホンダはバカでかいエゴを持っています

健闘虚しくベスト16で大会を去った西野ジャパン。最後のCKを「自己過信」と断じたのはあのジョルカエフだった。(C)Getty Images

「アンクロワイヤーブル!(信じられません!) アンクロワイヤーブル!」
「ここでは雷鳴が轟いています!」
「このまま日本が勝てば歴史的です!」
 
 日本がベルギーを2−0でリードし、大番狂わせが起きそうな気配が漂ったとき、フランス最大民放局『TF1』の実況アナはこう叫んでいた。
 
 やがて2失点を喫してベルギーに追いつかれて以降も、現地ゲスト解説者の1998年世界王者、ユーリ・ジョルカエフは、香川真司の動きとパスワークに注目
しながら「素晴らしいプレーですね。カガワは若い子たちの模範になりますよ。まさに育成センターで教える通りのプレーです」と称えていた。
 
 
 最終盤、本田圭佑が直接FKを蹴る寸前だった。彼の指示で、ベルギーの一枚目の壁の裏に、日本選手による壁が作られた。
この大胆なアイデアと行動を見て、実況アナがこう語り出した。
 
「日本人はみな非常に遠慮深くて控えめですが、実はこのホンダはアティピック(異形)なんです。
彼は他の日本人とはまったく違っていて、バカでかいエゴを持っています。しかもものすごいエゴなんです。
彼は自分がなにをしたいのかがはっきり分かっていて、いつも自信満々なんですよ。なんでもやってのけるのです」
 
 実際に本田のFKはクルトワを脅かした。そして直後にCKを蹴るのだが……これが致命傷となる。
あっという間にベルギーのカウンターの餌食になったからだ。そのとき、世界王者ジョルカエフが静かに口を開いた。
 
「エクセ・ド・コンフィアンス(過信)ですね。自己過信がこれを招いたのです。3点目を入れられると過信して、ゴールを狙った。
その結果ベルギーに絶好のカウンターチャンスを与えてしまったのです。自己過信はいけない。過信せず、延長戦に行くべきでした」
 
 このジョルカエフの静かな口調が、スローモーションのようにベルギーのカウンターに乗って流れ、気づくと試合は終了していた。