この監督に奇策はなかったよ



 ハリルホジッチ監督が率いたチームは崩壊していた。
ベルギーで行われた3月の親善試合マリ戦は格下に1―1と引き分けるのがやっとで、内容も乏しいものだった。
監督の指示は「ロングボールを蹴れ」だけ。試合後には選手からの采配批判が相次いだ。

 チーム内には一気に緊張感が高まった。
選手は自分たちの意見を統一するため、選手ミーティングの開催を願い出たが却下された。
危機感を感じたフランス人コーチはハリル監督に進言した。
「このままでは俺たちのW杯への戦いがここで終わってしまう。周囲の意見も聞いた方がいい」。
だが、良くも悪くも自分がすべての指揮官の返答は「ノン」だった。
その態度に、苦楽をともにしてきたコーチも完全に“白旗”。
ハリル監督を支えることをあきらめた。