イニエスタという人間。日本はその指にぴったりとはまる指輪

今や日本国内のサッカーファンのみならず、多くの注目を集めるアンドレス・イニエスタ。
スペイン時代をつぶさに取材してきたスポーツ紙『マルカ』の代表番記者が、彼をレジェンドならしめた背景に迫る。

イニエスタがヴィッセル神戸に加入して、Jリーグを取り巻く環境は変わった。
神戸戦のチケットは完売し、一般メディアが頻繁に取り上げるようになった。
2011年、バルセロナ時代にクラブワールドカップで来日した際には都内の地下鉄に乗る写真がネットの話題となった。

「イニエスタにはピッチの上でより多くの違いを生み出す能力がある。我々にとって最も特別な選手だね。
シャビは決してボールを失わず、難しいシチュエーションに追い込まれた時に、
誰もが真っ先に居場所を探すタイプの“操縦者”だ。
一方、イニエスタがもたらすのは“不均衡”。ドリブル、1対1の並外れた強さ、ラストパス。
あまりそうとは見えないが、スピードも素晴らしいよ。足だけでなく、頭の回転もね」

イニエスタの人間性や人生観をひとつの指に例えたとしたら、この国の「敬いの文化」はその指にぴったりはまる指輪のようだ。
イニエスタはこれまで一度もスキャンダルを起こしたことがなく、相手を不快にさせる発言をしたこともない。

むしろその真逆だ。カタルーニャの置かれた立場について語ったのも、健全性、対話、そして敬意を求めるためだった。
それがピッチ内外を問わぬ、イニエスタのDNAなのである。