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ルイ・ダヴィッド(フランス1748〜1825)「ソクラテスの死」
1787年 油彩 カンヴァス 621x979cm ニューヨーク メトロポリタン美術館


ソクラテスは、古代ギリシアの哲学者のなかで最も偉大な人物の1人であり、高邁な有徳の士、優秀高貴な人格の人でもあった。
彼は、その思想で若者たちを堕落させたというばかげた罪状で死刑の宣告を受ける。
ソクラテスにとって、死を免れるのは容易なことだったが、合法的な裁判で下された裁定である以上、評決に甘んじる道を選ぶ。
プラトンは、ソクラテスの牢獄での最後の日のことを感動的に述べている。
彼は感情あらわに嘆き悲しむ弟子たちを戒めたあと、毒杯をあおって威厳ある死を遂げた。道徳的な自己犠牲を主題にしたこの作品は、≪ホラティウス兄弟の誓い≫と同じく、制作当時の政治事件に照らして構想された。
ソクラテスは、いかなる個人の事情よりも国家への義持を優先させるべきだという思想を体現していたのである。
サー・ジョンエア・レノルズは、ミケランジェロのシステイナ礼拝堂天井画とラファエロのヴァチカン宮殿居室壁画と比較しても、この作品は「あらゆる意味で完璧だ」と評している。