>>71

古賀は無表情なまま、言葉を接ぐ。

「私共で対処しましょう。それが最善です」

「最善と言やぁ、あのお嬢さんだが……」

「問題が?」

「直近の報告で上げた薬を使った暗示と条件付けだけじゃあ、なさそうだ」

 なるほど、と古賀は頷いた。

「私が預かりましょう。身辺も今は片付いていますので」

「いやに物分かりが良いな、旦那」

 すっと澤木の目が細められ、眼光が鋭くなった。射すくめるというよりも、射貫くような強さだ。それに対し、古賀は苦笑する。

「同病相憐れむ。それだけのことです」

 しばらくじっと澤木は古賀の目を見ていたが、不意に視線を外した。彼の前にカフェオレが置かれたのだ。それを一口飲み、表情を緩める。

「まあ、依頼人の素性なんざ、気にするようなことでもないな」

「あちらが彼女を追ってくる様子はありますか?」

「あのお嬢さんよりも、俺と鈴鹿を追い回してるよ。ケジメをつけさせたいんだろうな」

 何でもないことのように澤木は言う。だが、古賀は胸の奥が重たくなってしまう。

「申し訳ありません」

「気にしなくていいさ。そっちも色々とゴタついてみたいだしな。連中とやり合うにも足手まといがいない方が助かる」

「本当に……」

 古賀の顔を見て先が吹き出す。

「そんな顔しなさんな。お嬢さんは旦那に任せるぜ。瀬戸、良い味だった」

 そう言って澤木は古賀に背を向けてしまった。

 静けさを取り戻した店内で、古賀は再び待つことになる。