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極道同士でことを構えれば安い命が安易に死ぬ。しかしそれがどれだけ安かろうとも消耗と濫費は団体としての力に着実に影を落とし、崩れた均衡はまた新たな火種を呼ぶ。
何よりも公安にぶっ込んでくる口実を与えるのはどの組も忌避したい展開であった。

そこで、組のシノギの一つである興業に、莫大な金を張り合う博打という形で物事を行く末を委ねる方法が好まれた。
その内実はどうあれ、この見せ物が多くの観衆を呼び寄せ熱狂させたのは事実であり、それがまた組のシノギとして利潤を生んだ。

組は各々、選んで連れてきたプレイヤーをこの鉄火場に立たせ、いわば代理に抗争を委託する。
無論、公平な勝負であろうはずはない。組の安い命の立て替えとしてもてはやされるプレイヤーの命はどこまでも軽んじられる。しかしこのような見せ物として場に引きずり出されるプレイヤーの多くは他に生き場所を見出せないアウトローばかりであった。

日の目の当たらない、いわば電脳空間でのみ行われるこの興業的抗争を人々は「代理戦争」と、あるいは「バーチャロン」と隠語で呼び交わしていた……。
とかなんとか。