土曜夜。浅草の某牛丼チェーン。
並か小を頼んでから小丼が出てくるまでの間、そんなに虫が飛んでるような店ではなかったのに、ずっと虫を追い払うように掌で空を切る仕草。
店員に丼を出されると、食ってるか食ってないんだか分からない様子で、斜め上の何かに向かって話しかける素振り。声は発しないけど、口は終始もごもご動かしている。
その間、スマホを取り出して眺める様子は一切なく、そもそも携帯の類を持ってる様子でもない。
本人を直接眺めでもしたら、刺されるんじゃないかと思えるくらい、精神を病んでいるか、はたまた薬なのか、常人には図れない狂気じみたものを感じた。
身なりに汚れた感じは無く、スキンヘッドに短く整えられた髭。星柄が散りばめられたハーパンはきらきらしていて、首元にはヘッドホン、足元は黒のニューバランス。体型はガチムチでも増してやデブでもなく、普通体型からガリの間といったところ。
既に空になった丼を前に、席を立つでもなく、スマホを取り出すでもなく。何かをつぶやくように再び口をもごもごさせながら、両手は椅子の下でひらひらさせる動作をひたすら繰り返していた。
生きているけれど、正常な魂はそこには無い感じ。怖かった。