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「クラウドファンディングストーリー 共感で世界を動かした10のケーススタディ」出川光

 吉本興業がプロデュースするクラウドファンディングサイト「SILKHAT」の企画者でもある西野亮廣すん、お笑いという垣根を音速で飛び越えて、次々と実験的なクリエイティブを試みている彼の、初めてのクラウドファンディングの担当者も私だった。(中略)
そう、ここ旧新宿区四谷第五小学校は、吉本興業の東京本社なのだ。
「急なのですが、明日の13時からキングコング西野の打ち合わせをお願いします」
 以前から付き合いのあった吉本興業の社員から、メールが送られて来たからなのだが、たったそれだけの情報で、指定された場所にやって来てしまった。
 意を決して小さな教室のドアを開けると、既に5〜6人が集まっていた。まごついていると、手前の方に座っていた女性が椅子を引いてくれた。(中略)
全員がボケたりつっこんだりしながら転がるように進む雑談にただ圧倒されていると、教室のドアが開いた。シルクハットにレザーのサスペンダー、ヴィンテージのトランクケースという古めかしい出で立ちの、西野亮廣さんだった。
 空気が一瞬で変わった。全員がさっと立ち上がり「おはようございます!」という声が飛ぶ。完全に出遅れた私が立ち上がったときには「誰かと思いましたよ」「西野さんのその帽子、マジシャンですか」「それはないでしょ」「アッハッハ」と威勢のいい雑談が始まっていた。西野さんは、名刺入れを持って突っ立っている私にすぐに気がつき、「こんにちは、西野さんです。こんな見た目してますけど、旅芸人じゃないですよ」とにっと笑うと、彼の目の前の席に移動するようジェスチャーした。それに呼応して「じゃあ私はここですね」「君はそこやろ」と、全員があっという間に席を変えて姿勢を正す。「じゃあ始めましょうか」と西野さんが大きく手を叩いたのを合図に打ち合わせが始まった。