>>764続き)
 
■お客さんが最高で、そして優しかった
 
昨日の放送でもお話ししましたが、新作歌舞伎『プペル ~天明の護美人間~』は、
内容も最高なんですが、お客さんも最高で、本当に、子供からお爺ちゃんお婆ちゃんまで、そして、
歌舞伎通から、歌舞伎初心者まで、いろんな方がいて、連日大盛り上がりで、そして、皆優しかったんです。
 
千秋楽の前日(ぼたんチャン回)の公演も、急遽、公演中止になったのですが、
「中止」の決定が出たのは、本当に開演直前で、役者さんもスタッフさんも会場に入っていたんです。
皆、今日も公演するもんだと思って、役者さんはメイクを始めていたんです。
 
そんな中で、メンバーの中から体調不良が確認されて、
「お客さん、ならびに役者&スタッフの安全第一だ」という判断で、急遽、公演中止が決定しました。
皆、寝耳に水だったんです。
 
劇場の前には、たくさんのお客さんが並んでいて、そこにスタッフが出ていって、
「すみません。今日は『公演中止』とさせていただきます。本当にすみません」と頭を下げたわけですが、
それに対して、言葉を返すお客さんが、ただの一人もいなかったそうです。
これは、お客さんの対応にあたったスタッフ、皆が言っていました。
 
あまりにも開演直前での中止の発表だったので、
スタッフは、罵声を浴びせられることも覚悟していたそうなのですが、
ただの一人もそんなお客さんはおらず、それどころか、
「覚悟をもって中止にしてくれてありがとうございます」という言葉を頂戴しました。
 
その言葉は、僕の方にもありました。
観たくて観たくてたまらなかったハズなのに、そんな言葉をかけてくださって…
本当に、舞台というのは皆で作るものなんだなぁとあたらめて思いましたし、
この人達のことや、この人達が大切にしている文化を、
なんとしてでも守っていかなくちゃいけないと思いました。