>>41続き)

ボロキレが垂れているセットは、そのままだと「ゴミ山」に見えますが、
その前に綺麗な『机』と綺麗な『ミシン』を置けば、あら不思議、そこは「仕立て屋」に見えてきます。
こんな感じの工夫が数百個あるのが「舞台」です。

そして、『えんとつ町のプペル』の舞台化の最大の課題は、「ラストシーンの『船』をどう表現するか?」です。
難易度で言うと、「星空」を表現する方がまだマシで、「船」は本当に難しい。
「小舟」であれば、そこまで難しくはないですが、
『えんとつ町のプペル』の煙の空に飛ばすのは30メートルほどの大きな船です。

こんな話をすると、「そこは大きな船を想像してもらいましょう」という意見も出るのですが、
ここが舞台の面白いところで、
「実際に再現する部分」と「お客さんの想像力に補わせる部分」があるのですが、
お客さん側に立ってみた時に、「想像力で補いたい部分」と「実際に再現してほしい部分」があるんです。

で、「船」は、まさに「実際に再現して欲しい部分」で、僕がお客さんなら、
「船はご想像にお任せします」とされてしまうと、裏切られたような気持ちになります。
「いやいや、船を舞台上に作るのが難しいのは分かるけど、そこをなんとか頑張ってよ」と。

僕のモットーは「良い意味でも、お客さんの期待を裏切ること」ではなく、
「お客さんの期待を超えること」です。
皆が船を期待しているのであれば、その期待からは1ミリも逃げずに、船を出して、
その上で、期待を超えます。

ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』は、30メートルの船を、たしかに舞台上に存在させます。
そこから逆算して。舞台セットをデザインしました。お楽しみに。