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■歌舞伎版の「船」は、どう表現する?

少しだけ種を明かすとミュージカル版の方が、そもそも会場の『東京キネマ倶楽部』の内装が
船っぽいのもあって、それがラストシーンの「船」の助けになっているのですが、
新作歌舞伎『プペル ~天明の護美人間~』は、そうはいきません。
会場である『新橋演舞場』は船にはなりませんし、「少し模様替えすれば船になるような舞台セット」は、
『えんとつ町』だとできそうですが、『江戸の町』だとチョット難しそう。

「江戸の町→船」の変身をすると、「瓦屋根がある船」みたいになってしまって、それはそれで、
「ああ、あそこ(屋根部分)は何ともできなかったんだなぁ」という印象を持たれてしまいます。

となると、舞台のセリ(中央の穴ぼこ)から、船を出すしか無さそうですが、
セリから出せる船のサイズには、まぁまぁ限界があります。
せっかく「船」が登場したのに、それが、こじんまりとしたものだったら、一気に拍子抜けしてしまいます。
それに…「世界に持っていく」ということを考えると、「バカでかい舞台セット」は、相性が良くありません。
「バカでかいセット」ありきで作ってしまうと、その作品は、なかなか海を超えません。

踏み込んだ話になりますが、世界展開を見越すならば、日本公演終了後の「機動力」も考えて、
作品を作っていかないといけないわけですね。
#このあたりが西野っぽい

先日、『スナック西野』のゲストに来てくださった市川海老蔵さんに、
「歌舞伎は、何を持って歌舞伎なのか?」という根源的な質問を投げたところ、
「歌舞伎役者が出ているものが、歌舞伎です」と返ってきました。

なるほど。
となると、海外に絶対に持っていかなきゃいけないのは、「歌舞伎役者」で、
海外公演は「多くの歌舞伎役者が海を渡る」という前提で、
そこから逆算して舞台セットをデザインした方が良さそうです。