>>426続き)
 
「大きな津波が来てるから、皆、一旦、丘の上に逃げよう」
と何度も何度も避難を呼びかけましたが、誰にも取り合ってもらえませんでした。
 
まもなく大津波が街を襲います。 
丘の上に逃げたのは自分だけ。 
僕は丘の上から、大好きなあの人や、あの人が、津波に飲まれて、流されていくのをただ見るしかありません。
 
ずっと、その繰り返しです。
 
「テレビで通用しないから」「舞台で通用しないから」と、たくさんの芸人が辞めていきました。 
ちょっと待ってくれ。たまたま肌が合わなかっただけかもしれないじゃないか。テレビと舞台が全てじゃない。 
今はYouTubeもある。クラウドファンディングでお金を集めれば、自分の仕事を作ることもできる。
 
「お願いだから、一度だけ話を聞いてくれ」と何度も思いました。
 
はじめてクラウドファンディングをやった日から5年が経った頃、
「クラウドファンディングのプラットフォームを自社で持って、その中で、芸人一人一人が仕事を作れるようにした方がいい」
と吉本興業に打診をして、ようやく話が通り、吉本興業発のクラウドファンディング『SILKHAT』を立ち上げました。
新型コロナウイルスで、芸人の全ての活動が断たれてしまった時、この『SILKHAT』内でウン百件の仕事が生まれ、
多くの芸人から感謝されました。
 
その一連の流れ見ていた梶原君からすると、
「クラウドファンディングをやる西野のコト、あれだけを否定しておいて…」
と、思うところがあったみたいです。(優しいね)
 
手のひらを返されることなんて、声が届かない痛みに比べたら安いもんです。
 
あの日、僕がもう少し上手く説明できていれば、津波に流されていく仲間を見なくて済んだのかなぁと思うことがあります。

(*終わり)