>>827続き)
 
そこまでおかしな判断じゃないと思ったのですが、劇団ひとりサンは少し厳しい顔で言います。
「お前、絶対に後悔するぞ」 
収録の帰り道、その言葉がずっとグルグルと頭の中を回ります。
 
デザインの「デ」の字も知らない社長がデザインした「誰も要らない商品」 
エンターテイメントと集客のイロハを知らない地元議員が張り切って仕掛ける「絶対に面白くなさそうなイベント」 
…これまで、「餅は餅屋」と割り切ることができない素人が起こしてきた事故現場を何度も何度も見てきたので、
「一世一代の大勝負である映画『えんとつ町のプペル』でその事故を起こしてなるものか」と思っていました。
 
でも、よくよく考えてみればお笑い始めた時も僕は素人だったし、絵本を描き始めた時も素人でした。
その中で、もがき、勉強し、毎晩眠い目をこすって、「そんなやり方はダメだ」と同業者から叩かれて…
それでも、結果を出してきました。 
いつも始まりは素人だったんです。
 
「ヘタクソなことぐらい分かっている。それでも何とかする」という挑戦を繰り返し、
その姿勢を応援していただき、ここまでやって来ました。 
なのに、どうして映画になると「素人なのでここはプロに任せます」と僕は言っているのでしょうか?
 
そもそも『えんとつ町のプペル』を、お前以外に誰が書けるんだ。 
お前の物語だろ。 
大きな夢を語って、日本中から迫害されたお前の物語だろ。 
それをお前が語らなくてどうするんだ。
 
自問自答を繰り返し、覚悟が決まります。 
「ここで大人になって逃げてしまったら、僕は一生後悔する」 
我慢たまらず、すぐに吉本興業と今回のアニメーションを制作してくださっているスタジオ4℃さんに連絡。 
「僕に全部やらせてください」という話をさせていただきました。 
映画『えんとつ町のプペル』の製作総指揮が僕に決まった瞬間です。