>>828続き)
 
仕事は山積みです。 
各セクションのクリエイターさんから信頼されることも僕の仕事です。 
誰よりも映画『えんとつ町のプペル』と向き合って、徹底的に予習をして、
どんな意地悪な質問がきても返せる体を作り込みます。
 
さらには、何度も飲みに行って想いを語り、たくさん頭を下げる。 
クリエイティブ部分で納得がいかないことがあれば遠慮なく、言う。 
ただし、言葉は選んで。それでも言いすぎてしまったら、キチンと謝る。 
どれだけ意見が衝突しようとも、崩れない信頼関係を築いておく。 
 
スタッフが眠った後は、アトリエに籠り、映画『えんとつ町のプペル』を一人でも多くの人に届ける作業に着手。
この連載も、その一つ。 
朝までに二仕事ほど終わらせておいて、リーダーの覚悟を形として見せ、チームをまとめる。 
2020年に入ってからは、眠れない日がずっと続いています。
 
映画『えんとつ町のプペル』は、もうとっくに、多くの方からの期待を背負っています。 
100年に一度のウイルスに襲われて、世界中が涙した年の最後に、とびっきりの奇跡を待っている人がいます。
「あんまり無理をしないで」とも言われますが、ここで無理をしなかったら、どこで無理をするんだ。
あと少し。もう少しだけ頑張ります。
 
毎晩、震えています。 
「お客さんが、映画館に来てくれなかったらどうしよう」と不安にならない夜はありません。 
そして、その不安は、どれだけ努力しても消えることはありません。 
「ずいぶんな場所に首を突っ込んじゃったなぁ」と思います。
 
だけど、あそこで「やります」と手挙げて良かったと思っています。 
あそこで手を挙げなければ、劇団ひとりさんの言うとおり、僕は絶対に後悔していました。 
手を挙げたことによって、期待と同じ量だけの恐怖や、どれだけやっても拭えない不安と引き換えに
「納得のいく作品」を残すことができます。