箱館の近くのシノリ(志海苔)の村に一人のアイヌの少年がいました。
少年は、ずーと前から欲しかった「マキリ(刀)」を和人の鍛冶屋に打たせました。
このために一生懸命狩りをしました。そして念願のマキリをてにいれました。
少年は大喜びでいろんな物を切ってみましたが、どうにも切れ味が悪く何も切れ
ません。この為に自分がどんなに頑張ったか、考えると悔しくなりマキリを作った
鍛冶屋に行き抗議しました。鍛冶屋は「切れないわけが無い」と言って聞きません。
少年は「切味のいいマキリを作ってくれ」と怒鳴ります。
2人の口論はエスカレートして行きました。少年は「こんな何にも切れない物なんて
マキリじゃない」と叫びました。この時です。鍛冶屋はものすごい形相で怒ったのです。
腕の悪い鍛冶屋は本土にいた頃から同じような事を民衆から言われ続けてきたので
しょう。自分の腕をアイヌの少年に馬鹿にされ、彼の自尊心を傷ついたのです。
鍛冶屋は少年からマキリを、もぎ取り「このマキリが切れないのか!?何もきれないの
かぁ!!」と怒鳴り散らし少年に斬りつけました。少年は逃げましたが、傷が深く
間もなく死んでしまいました。