(耕論)女性阻む、硬い天井 宋美玄さん、中村高康さん、木村忠正さん(朝日新聞, 2018-09-19)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13685068.html

女子の入学者数を抑えるため、一律に入試の得点を減点していた東京医大問題。表だって
男女差別を認める人は少ないのに、何が「コンクリートの天井」となり、女性を阻むのか。

(中略)

■弱者への批判と同じ構造 木村忠正さん(立教大学教授)

私は、ツイッターや掲示板、ニュースサイトのコメント欄などに掲載されている数百万にのぼる
投稿を分析し、いわゆる「ネット世論」について研究しています。今回の東京医大の問題も、
得点操作が報じられた8月2日以降、ネット上の言論空間で発せられたさまざまな意見に目を
通しました。

医療現場の現状など問題の根深さを考える内容が目立ちましたが、中には女子大の存在への
異議や、入試で女性枠は認められているのに、男性を優遇する得点操作を許さないのは「男性
差別ではないか」という趣旨の投稿もありました。女性への優遇措置だけが社会的に認められ
ているのはおかしいという、男性からの「逆批判」と言えます。

女性に向けられたこうした批判は、ネット空間で「生活保護」や「LGBT」「沖縄」「障害者」など、
社会的弱者や少数派へ向けられる批判やいらだちと同様の論理構造です。根は同じところに
あると思います。

ネット世論は保守的傾向が強いとされますが、「嫌韓・嫌中」を、憎悪に近い過激な言説で繰り
返し投稿する人は投稿者の1%もいません。むしろ、ネット世論に通底する主旋律は、弱者や
少数派が立場の弱さを盾に取って権利を主張し、利益を得ていると考える層が形作っています。
いわゆる「弱者利権」へのいらだちや違和感です。