近年、様々な差別問題が可視化され、その解消が求められている一方で、
単に自分が気に食わない状況に過ぎないことを「差別だ!」「自分たちは
被害者だ!」とクレームを入れるケースが増えているように感じますが、
「男性差別の訴え」はその典型例でしょう。

では、「差別」の定義とは何でしょうか? 私は以下3つの要件を満たして
初めて差別が成立すると思います。

(1)権力を持った者や集団内の多数派により(権力勾配性)、
(2)人種、性別、家柄等、本人の意思ではどうすることも出来ない属性
 を理由に(デモグラフィック(人口統計学的)特性)、
(3)集団内のスタンダードに満たない不利な状況に置かれること(相対的不利益)。

これらの3つの要件に当てはめて、女性専用車両が差別に該当するか否かを
判断してみたいと思います。

(1)の権力勾配性は、実施母体が鉄道会社という他の通勤手段を選択しにくい
インフラ産業ゆえに該当する可能性はあるでしょう。(2)のデモグラフィック
特性は性別なので当然該当します。

ですが、(3)の相対的不利益が該当しません。たとえば電車が10両編成のうち
1両だけ女性専用車両を実施していたとして、他の9両に乗ることは「集団内の
スタンダードに満たない不利な状況」では無いからです。もし男性が10両中4両
しか乗れないのなら不利な状況に置かれていると判断出来ますが、男女分け隔て
無く乗車出来るのは9両という圧倒的多数であり、むしろスタンダードそのものです。

このように、男性差別を叫ぶ人たちが用いる「差別」という言葉が誤用なのです。
差別だと疑われる事象が生じている時、相対的不利益に該当するか否かを測る基準
となるのは集団内のスタンダードです。女性専用車両というスタンダードではない
ものを相手取って、「差別だ!」というのは完全に筋違いと言えるでしょう。(勝部元気)

(引用元)http://webronza.asahi.com/culture/articles/2018041100005.html