マリア様のスタチュー化記念に、彼女の心境に注目して考察をしてみました。

DLCの舞台である『狩人の悪夢』は、現実世界の狩人を囚えて悪夢の中で彷徨わせます。これが呪いであり、漁村民が願ってゴースの赤子が叶えたことです。
自分たちを理不尽に苦しめて蹂躙したビルゲンワース(とその末裔)への復讐です。

マリアは悪夢の生成に直接関わる人物ではなく、あの地を彷徨う他の狩人と同じように漁村の呪いに巻き込まれた一被害者だと思われます。
被害者とは書きましたが、彼女が漁村の襲撃に加担していたのなら当然の報いと言ってもいいかもしれませんし、そうであろうと私は考えています。
ゲールマンが漁村の襲撃に関わっていたのは遺児撃破後の人形の話により間違いないでしょう。(DLCのトレイラーでも漁村を歩く彼らしき姿が確認できます)
ならば、ゲールマンを慕い、彼の弟子であったマリアもこの襲撃に参加していたはずです。

逃げ惑い抵抗する漁村民を捕縛すること。これが漁村における狩人(の前身となる集団)の役割だったと思われます。
想像になりますが、マリアも初めのうちは師であるゲールマンを手伝っていたのではないでしょうか。
何の罪もない村民の脳内から瞳を探す、実験という名の非道な虐殺に彼女も加担していたのです。
しかし、無辜の民を好奇心から弄んだ挙句殺していくことに良心が耐えられなくなり、愛刀である落葉を漁村の井戸に捨てて逃げたのでしょう。
そしてそう遠くない内に死を迎え、漁村民が造り出した悪夢に囚われてしまったのです。

現実世界の漁村から逃げ出したマリアは、漁村民による悪夢に囚われてなお自分の罪を直視することが出来ませんでした。
荒廃した漁村は彼女にとって向き合えない過去であり、恥であり、自分を苛む恐怖の対象でした。故に誰の目にも触れることがないよう守っていたのだと思います。
シモンはそんなマリアの心境を見抜き、「憐れな、そして傲慢な話」と語ったのではないでしょうか。

最後に、「実験棟のマリア様」についても考えてみたいと思います。
実験棟はマリアの後代である医療教会の犯した罪の跡です。進んで患者になった者もいましたが、皆そうであったかは甚だ疑わしいと言わざるを得ません。
無辜の市民を実験台とする点で、その構図は漁村とよく似ています。(悪夢の漁村と直接くっついたのはこの点で共振したからかもしれません)
マリアは実験棟の被験者に漁村民をダブらせ、彼らの世話をすることで贖罪の感覚を得ていたのではないでしょうか。
自分の罪には向き合えない、だから境遇が似ている実験棟の被験者たちの面倒をみることで、少しでも罪の意識を和らげようとしていたのです。

Bloodborneという人智を超えた存在をめぐるお話の中で人間らしい苦悩と弱さを見せたキャラクター。
それが時計塔のマリアだったのではないでしょうか。