優秀な人間は東葛から芸大系に行く。
音楽コース云々を持ち出したところで、津田沼高に進学した時点で「並」なのである。
だが、ピアノも三味線も、多くの人は弾くことが出来ない。だから「天才!」などと言われる。
ブタダシは後者の中に身をおいた。優秀な人には相手にされなかったのだ。何かを残したか?評価されたか?「何が悪い」というだろうが、一番醜いのは、いまだに自分がひとかどのものとうぬぼれている点にある。
早稲田と言いたくて仕方ないのだ。財津に詐欺師と言われたと喧伝したくてたまらないのだ。照子がコルトーの譜めくりをしたことを自慢したくてたまらないのだ。並みであるのに。
とはいえ、「俺は東大を出たんだよ」という社会人がたくさんいることは事実だ。ブタダシもそうした人の一人にすぎない。

ほんの少しでも、自分を高めようと努力し、自尊心を消失するよう努めたらいいのではないか。社会人をやりながらアカデミック、ジャーナリスティックな業績を残している人はいるし、セミプロのミュージシャンもいる。
過去の素晴らしい思い出は、老年になってから振りかえればよいではないか。