だれもが親に恵まれるわけではありません。給食費を払っていない家庭は、その背後に複合的な問題を抱えていると私は考えています。親にメンタルヘルスなどの問題があり家計の管理が不十分だったり、借金や、DVや虐待があったり。
経済的に困難な家庭に、社会的孤立など困難な状況が複合的に重なっていることも多いと考えています。
確信的に払わない親の場合でも、子どもにとって必要なお金を出さないわけですから、子どもが育つ上で何かしらの問題を抱えている家庭だといえます。
2014年に、千葉県銚子市の母子家庭が県営住宅の家賃を滞納し強制退去となった日に、母親が無理心中をはかり、中学2年生の女子生徒が亡くなるという痛ましい事件が起きました。
この家庭は国民健康保険料を滞納していました。
このような事件となれば、だれでも同情しますが、その一歩手前で見つける必要があります。問題が深刻になる前に、シグナルとして表れるのが「給食費未納」なのです。
本来であれば、給食費未納から福祉につなげられればいいのですが、いまはそのシグナルを見逃すだけではなく、子どもの肩身の狭くなる方向に追い打ちをかけようとしているわけです。
行政による「虐待」と言われても仕方がないと思います。
また、給食費未納ばかりが問題にされていますが、中学校給食がないことによってひもじい思いをしている子が存在していることにも、注目してほしいと思います。
給食費などの支援を受ける就学援助を受けていたとしても、学校給食がない地域に住んでいると給食費相当の支援はありません。
ベストセラー小説『ホームレス中学生』(田村裕)でも、ご飯のにおいがする教室や食堂を避け、体育館で一人バスケットボールの練習をして空腹を紛らわしていたエピソードが書かれています。

欠食児童対策からはじまったことからわかるように、給食は子どもの食のセーフティネットです。いま、子どもの相対的貧困率は16.3%と深刻です。
給食のない中学では、朝ご飯を食べない子がお弁当も持ってきていないこともあります。子どもの食のセーフティネットとして、全国的に中学校給食を完全実施すべきです。
また、0.9%の給食費未納をバッシングするのではなく、子どもの貧困のシグナルとしてとらえ、給食費未納を福祉の支援につなげるスクールソーシャルワークの対象として見直すことが求められているでしょう。