その日の夜のことだった。S価学会の通名高橋に無理やり、人体の不思議展覧とかいう
本物の死体を展示している気色悪い展示会に連れていかれた、その日の夜のことだ。

この展示会が中国人主催と知ったら、気持ち悪くなってさ。
俺は極度の倦怠感に襲われぐったりしていたんだ。

通名高橋は恋人でもないのにちんちんいじくっていたが、
俺は金縛りにでもあったように、もうろうとしながらそれを眺めていた。
こんなのあり得ないが、あり得るんだよ。
いじくり飽きたのか、通名高橋はにやりと不敵な笑いを浮かべた後、その業病を止めた。
それから、「ふふふ・・・もうこんな事もお終いね」とか抜かしやがったが、
そもそも、お前は彼女でもなんでもない。お前はキチガイだ。

その後、「あなたは悪魔のスイッチを押してしまったのよ・・・」なんて不気味な事を
呟いてから、首筋に針でチクッと蜂の一刺し。どうも、村上春樹の1Q84の主人公に自分を模してるようだ。
しかし、それを遊びかなんかだとは俺は思わない。「極めて危険なステイタスだ」と思った。
俺は取りあえず、また何かされたなと電気メーターを見に行った。
通名高橋はよく俺がいない間に、部屋にずけずけ入ってエアコン勝手につけて帰ったり、
物盗んだりして嫌がらせしていたからだ。

通名高橋は電気メーター見に行って帰って来たらいなくなっていた。ちなみに、今日の電気使用量は標準より微妙に多かった。
こたつの上に置手紙があって、「この節約家!教育泥棒よ!金返せ!」と書かれていた。
あのオウム以上に狂った連中は本当に「まさか」と言う事をやってくる。
むしろ、相手が「まさか」という事をやりたいんだと思う。誰彼なしに、だ。
翌朝起きた俺は名状し難い、あるいは筆舌尽くし難いショックを受ける事になった。
頭を手櫛で解いただけで、髪の毛がばさばさ落ちたんだ。
チクッと蜂の一刺しは毒盛られたってことか。あるいは変な電流でも流されたのか。
それから、俺は恐怖と共に、通名高橋にまつわる鶴のタブーを思い出した。
2015年6月、いつも如く無理やり連れていかれた高知は四万十市のカフェでの事だ。
通名高橋が発達障害(高機能、低機能)に関する会話の途中、突然、自分の能書きを自分で遮って
「あなたはアウシュヴィッツで殺される運命よ・・・」と言った事を。