俳優の岸井ゆきの(31)が、日本映画専門チャンネルにて9月3日午後9時から放送される日曜邦画劇場にゲスト出演する。岸井が主演した映画『ケイコ 目を澄ませて』が同枠でテレビ初放送されることを記念して、このほど取材会に出席した岸井が、“俳優”という職業について思いを語った。

【場面カット】まるで別人…聴覚障がいのボクサーを演じきった岸井ゆきの

 同作は、岸井が第46回日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞。さらに第77回毎日映画コンクールでは日本映画大賞や女優主演賞をはじめ5部門を受賞するなど、大きな話題に。2009年のデビュー以来、NHKの連続テレビ小説『まんぷく』、NHKよるドラ『恋せぬふたり』をはじめ、数々の映画やドラマ、舞台に出演している岸井だが、今回“主演”として高い評価を受けた。

 「俳優という仕事でご飯を食べていけない時期が長かった」と語る岸井に、“俳優”という職業がどんな存在なのか問うと「演じることへの興味から始まったんですが、はじめはセリフがない役しかなかったので、『本当にこれがやりたいんだろうか』と考えていた時期もあった。そんなとき、演劇のオーディションで“物作り”を1からやらせていただいて、役の大小ではなく、みんなで1つの作品を作ることが好きなんだとわかった」と振り返る。

 そして、その後さまざまな演劇のオーディションに、自分で売り込みにいったそうで、「ステージに立っているうちに、だんだん、その演劇を見てくれた人が映画やCMに呼んでくれるようになった」と話す。

 今ではさまざまな作品に引っ張りだこの岸井だが、もともと“俳優”にこだわりがあったわけではない。「だから今でも俳優とは別にバイトをしていても全然いいというか、しながらでもやりたい。正直に言うとバイトは辞めていなくて、籍はまだ置いている。可能性を少し残していないと不安なんです。帰る場所があるってうれしいし、選択肢を1個残しておきたい」と明かした。

 続けて、最近は農業にも興味があるとし、「芸能界はやっぱり特殊な世界で、あまりにも自分が普通だと思う感覚が強いから、なにか残しておきたい気持ちはいまだにあって。俳優1本です!という感じではなくて、実はもう1個あるよっていう余白を残しておきたい気持ちはあります」と語った。

 同作は、聴覚障がいと向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子氏をモデルに、彼女の生き方に着想を得て、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督が新たに生み出した物語。岸井は、ボクシングの動きと聴覚障がい者の手話の表現を身につけ、声を発することなく、感情表現が不器用なキャラクターに挑んだ。