"福岡で一番かわいい女の子"として17歳の時に地元・福岡でモデルデビューし、数年の間に人気女優に上り詰めた今田美桜。大学進学を望む親の反対を押し切って女優への道を選び、努力を重ねた甲斐あって、2018年放送のドラマ「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」で注目を浴び、大ブレイクを果たした。

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今田の演技力は高い評価を得ていて、2021年公開の映画「東京リベンジャーズ」では第45回日本アカデミー賞の新人俳優賞を、2022年放送のドラマ「悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜」では第112回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の主演女優賞を受賞。着々とキャリアを積み重ねる今田の活躍は、今後も目が離せない。

そんな今田が出演するにあたって、「とてもわくわくしています」と語った作品が、2020年に放送されたドラマ「親バカ青春白書」。授業や学食、サークル活動など、女優活動を優先したため通うことができなかった大学の生活を体験できる、というのが「わくわく」の理由であり、リアルでは見られなかった今田の大学生姿が見られる作品でもある。

本作の主人公は、ムロツヨシが演じる小比賀太郎こと"ガタロー"。本業は小説家で、若い頃に妻・幸子(新垣結衣)を亡くしている。そのせいもあってか、永野芽郁が演じる一人娘のさくらを溺愛し、親バカが高じてさくらと一緒の大学を受験するという暴挙に出る。そして2人とも合格してしまったことで、ハチャメチャな大学生活が幕を開ける。

本作で今田が演じるのは、大学で2人と出会い、さくらの親友になる山本寛子。おっとりしていてピュアで天然なさくらとは対象的に、気が強く恋愛にも積極的、友達を思いやる優しい面も持つ。

そんな寛子が最初に登場するのは入学式。ガタローの横を駆け抜けた時にぶつかってしまったことで、3人は出会うことになる。このシーンで、ガタローとさくらが親子と知って目を丸くして驚く様子には、大きな瞳がチャームポイントの今田ならでは可愛さがある。

教室ではさくらの横に自分から座るなど気さくな雰囲気で、笑顔もとても親しげ。しかし、さくらが会話で天然ぶりを発揮すると、「何言ってんのこの子?」という心情が伝わる表情を見せる。

話が進むと、さくらが思いを寄せる畠山雅治(中川大志)、今どきの若者でYou Tuberの根来恭介(戸塚純貴)、お金にしっかりしていて日々バイトに明け暮れる衛藤美咲(小野花梨)など、仲間も増えてゆく。そんな中で、会話中に的確なツッコミを入れたり、さくらと畠山の恋路を邪魔するガタローに目を剥いて意見したりする寛子の姿には、とても存在感がある。

物語を通じて、今田が演じる寛子は表情豊かでしっかり自分を持ち、その演技力によって心情もちゃんと伝わってくる。ムロツヨシや戸塚純貴など、濃すぎる俳優陣の中にあっても存在がかすれないのは、強気で友達思いという芯のある"山本寛子"というキャラクターを、今田が十二分に演じているからだろう。

また、今田自身が本作の撮影を楽しんでいることも、寛子が存在感を放つ理由に思える。さくらとガタローがバイトするカフェでの会計の時、柱につかまりながらさくらに話しかけるシーンがあるのだが、その時の寛子には妙な可愛さがある。今田が楽しんでいるからこそ、そんな何気ないシーンが印象に残るシーンになるのだろう。

子離れができず四六時中さくらにくっつきたがるガタローと、おっとりしていておとなしい娘のさくら。そして今田が演じる寛子や、中川が演じる畠山ら、愉快で濃いメンバーが織りなす笑いあり、涙ありのドラマを、その演技にも注目しながら満喫してほしい。

文=堀慎二郎