「オーディションのリハーサル室に入ってきた瞬間、この子だな、と直感しました。綾瀬はるかには、ヒロインに必要な人を惹きつける何か≠感じたんです」

綾瀬はるか「肌が出た衣装でのアクションや新しい髪型など挑戦しがいがあった」

2004年にドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』のプロデューサーを務めた石丸彰彦さんは綾瀬はるかさんとの出会いをそう振り返る。

「オーディションに他の人は制服っぽい衣装で来る中、ヒロインが陸上部の役だったので、彼女だけジャージで来たんですよ。走り方が綺麗だったのが印象に残っています。病気で、か細くなっていく役で、何話までに何キロと減量計画を立てました。卵の白身だけを食べて頑張る姿を見て、僕は一人静かに頭を下げましたね。今思えば、彼女の天下一品の負けず嫌いさに惹かれたんだと思います。僕自身ドラマのプロデューサーとして駆け出しの頃。とにかく人の心に刻まれる作品をと挑んでいたので、あんなに一生懸命だった夏は、後にも先にもないかもしれません」

以来、綾瀬さんの出演ドラマの大半に脚本家の森下佳子さんと共に関わり、「自分のプロデューサー人生は常に綾瀬はるかを軸に考えるようになっていた」という。かつて現場では石丸さんの叱咤激励が飛び、綾瀬さんを泣かせたことも一度や二度ではないとか?!

「お互い一生懸命だったんですよ。このニュアンスはダメ、このセリフはこういうトーンで、とか僕はわりと言うタイプ。『白夜行』の綾瀬さんが育ての親を殺すシーンでは、僕は感情的に泣いて欲しくなかったけど、何度やっても涙が出てしまう。泣いたらすぐ拭く≠ニ決めたが、結局本番でも泣いていました。撮影後、彼女に『よかったですよね、あれで』って言われて、頭にきてケンカしました。我ながら大人気なかったけど(笑)。でも、意見をぶつけ合ったのはあれが初めて。自信がついてきたんだなと思って、ちょっと嬉しかったかな。まぁ98%はムカついたけど(笑)」
石丸彰彦
1997東京放送入社。プロデューサーとして綾瀬はるかを起用し、脚本家の森下佳子と組んで『世界の中心で、愛をさけぶ』『白夜行』『MR.BRAIN』『JIN―仁―』『義母と娘のブルース』などヒット作を連発。現在はTBSホールディングスのグループ経営企画局長。