『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)が最終回を迎え、1週間。うだるような暑さと痛いくらいだった日の光がいくらか和らいで、すっかり夏の終わりを感じるようになってしまった。

【写真】『真夏のシンデレラ』森七菜、間宮祥太朗らキャストがクランクアップ

 湘南の海で繰り広げられた男女8人の甘酸っぱく、時にはほろ苦い恋物語が大きな見どころだった本作。だが、夏海(森七菜)、愛梨(吉川愛)、理沙(仁村紗和)の女性3人、健人(間宮祥太朗)、修(萩原利久)、守(白濱亜嵐)の男性3人、それぞれの友情もキラキラと輝いていた。

 特に修と守は、同時期に愛梨に恋をしたライバル同士でもあった。最初に愛梨にアプローチしたのは恋愛上手でモテそうな守。空気が読めず、失礼なことでも遠慮なく口にしてしまう修と比べて、守は自分をよく見せようと嘘をついてしまうことがあるが、それも方便として相手と楽しくコミュニケーションをとれる人である。しかも修の性格も理解しているから、彼が愛梨に惹かれていると気がついた時にすぐ、その恋路を邪魔することもできただろう。でも、守はそういうことをしなかった。むしろ、愛梨がスタイリスト試験に落ちてしまって落ち込んでいることを教え、励ますようにすすめるなど恋愛に不慣れで自分の気持ちの動きに戸惑っている修をサポートし、恋が上手くいくようにアシストしたのだ。それにより、修は不器用ながらも自分の言葉と行動で愛梨にアプローチができ、その真っ直ぐさに惹かれた彼女と晴れて付き合うこととなった。守の修を思いやる気持ちがなければ、叶わぬ恋となっていたかもしれない。

 守のすごいところは、修と愛梨が惹かれあっていると分かっていながら、自分の気持ちを押し殺さなかったことだ。愛梨にしっかりと振られることで、「俺の方がいい男なのに」といった鬱屈した気持ちを残さず、切り替えて修を応援する。守はやはりかっこいい男だ。次の夏までには彼にぴったりの恋人が見つかって、健人たちを含めたトリプルデートができますようにと願ってしまう。

 さらに夏海と別れてしまった健人に、修と守は諦めるなとアドバイスしている。実際に諦めなかったふたりの言葉は重みがあるが、そのシチュエーションが健人の別荘で飲みながらなのでどことなく軽く、切迫感はあまりない。人は大切な決断をする最後ほど、背中を押してくれる人や言葉が欲しくなる。きっとふたりには、もう健人が夏海を諦めるつもりではないということが分かっていたのだろう。大切な友人として最後のひと押しが修と守の言葉には詰まっているような気がした。

 それぞれの事情を察しながら、悲観的になりすぎず励まし合う女性陣の関係性も素敵なものだった。夏海、愛梨、理沙は仕事に恋に悩みながらも、自分の力で生きていこうとする自立した女性だ。それぞれが大変な思いをしているのは分かっている。だから彼女たちは一言目には「大丈夫だよ」「いいねえ!」と互いを肯定するようなポジティブな言葉を発するのではないだろうか。夏海と健人、修と愛梨、理沙と宗佑。様々な思いの葛藤や紆余曲折があり、思いを通じ合わせることができた3組だが、さっそく理沙は遠距離になってしまうし、今後どうなるかは誰にも分からない。それでも不安を口にせず、このあとのデートのことのような少し未来のことを楽しみにして笑いあう。このちょっと大人のキャッキャとした雰囲気にこちらも温かい気持ちになるのだった。

 大人になればなるほど、恋は好きだという気持ちだけでは進んでいかないし、真剣な分、悲しい気持ちは大きくなる。でもそんなネガティブな感情を吹き飛ばしてくれるのは強い絆で結ばれた友情のパワーなのだと本作は気づかせてくれた。一般的にひと夏の恋は、暑くて短い夏という季節のイメージから儚く散る恋として描かれがちだが、本作で夏海たちが手に入れた恋や友情はずっと続く尊いものだ。どうかこれからも8人が仲良くあってほしいと願っている。