酒を飲みながらお金をとって歌うって、やっぱりあまりよろしくないよね
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岸田:少し話は変わりますが、若い頃、ライブをやっているときに声が出なくなるという恐怖感がすごくあって。もともと歌がそんなに上手じゃないし、謙遜ではなく、テクニックがないんです。

中野:驚きました。その話にはみんな、勇気をもらうのでは。

岸田:野球選手だと、こういう球が来たらこういう方向にこうやって打ち返すことができて、しかも怪我をしないフィジカルの強さとか、そもそものバットコントロールのセンスとかありますよね。

でも僕はそういうのとは全然違って、自分の歌い方での自分の味みたいなものを正解にして始まってしまって、しかも、もともとはギタリストだったので歌に興味があるわけでもない。

そういう状態でずっと歌っていたから、ちょっと精神的にへこむことがあったりプレッシャーがかかったりすると、声が出ないんです。

「この曲のこの部分、うまく歌いたいけれど、うまくいかへんちゃうかな」と考えながらライブをやって「やっぱうまくいかへんかった」ということを積み重ねていました。

そんな時、奥田民生さんと一緒にバンドをやる機会があって。彼はすごく繊細な方なのですが、酒を飲んでライブをしていたんです。「えーっ!」と思ったものの、真似をして僕も飲んでやってみたら、なんだかどうでもよくなったんです。

中野:感覚を麻痺させたから? 

岸田:どうでもよくなったら声が出たんですよ。でもその時点で負けやなと思いました。酒を飲みながらお金をとって歌うって、やっぱりあまりよろしくないよね、と。今でも声が出なかったりうまく歌えないことはしょっちゅうありますが、心理的にどうでもいい状態を作ることが、最近やっと少しできるようになってきました。でも、一流の方たちは20代くらいで、そういうことがもうできているんですよね。

中野:早く体得している人もいますよね。

岸田:だから僕は長生きをしないと、と思います。