>>645 続き ※絵露有無:無

しかし、きのこは妊婦マニアに満面の笑顔で
『Sーま、銀メダルおめでとう☆―でも、自分はこのお洋服、大好きだよ―
金メダルを獲れた時に着ることが出来て一生の思い出となったお洋服だから☆』
と、密かに銀メダルをとても悔しいと思っていた妊婦マニアの神経を逆なでしました。
きのこが、ブカブカのマタニティードレス風の洋服のお腹部分をさすっていると、
きのこはお腹を押さえて苦しみ出しました。なんと、きのこは産気づいたのです。
きのこの異変にひじきはいち早く気付き、救急車を呼びました。
きのこは救急車に乗せられ、大病院の産婦人科病棟に運び込まれました。
『陣痛が5分間隔で来ていますね…陣痛室に運びましょう』
そう言って医者はきのこに陣痛室で陣痛に耐えることを指示しました。
妊婦マニアは家族でもなんでもないのに、無駄にきのこと同じ救急車に乗り、
陣痛室にまでずうずうしく居座り、きのこが陣痛にのた打ち回るのを見守りました。
『痛い痛い痛い…ひじ、助けて…こんなに予定より早く陣痛が来るなんて』と
きのこがベッドで言っていると、頼まれもしないのに、妊婦マニアが
きのこの手を握り、きのこの背中をさすり始めました。
ひじきが妊婦マニアをきのこから引っぺがして、
自らがきのこの手を握り、きのこの背中やお腹をさすったり、
栄養補給のためにバナナをきのこに与えたりしました。
『痛いよ痛いよ痛いよ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!』
後から、ひじきときのこの息子・ハニエルも病院に連れてこられ、
『ママ、痛いよね!!―ママ、痛いけど頑張って!!!!!』とハニエルはきのこに
エールを送りました。きのこは息子の前でカッコ悪い姿を見せるわけには行かないと、
子供みたいに大きな声で泣きわめくのは止め、
『ハニエル、ママ、頑張るからね!さっきも金メダル獲るのに頑張ったけど、
今度はあなたの妹を生むために頑張るからね!』と言いました。
その後、約3時間後にきのこは分娩室に運ばれ、妊婦マニアは追い出され、
ひじきとハニエルときのこの母親に見守られながら、きのこは分娩室で
『うぅぅぅぅぅん…うぅぅぅぅぅぅぅん…ヒッヒッフー…ヒッヒッフー…』と力いっぱい
いきむのを約10回ほど繰り返しました。
その結果、『おぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!』と元気な産声が産室中に響き渡りました。
きのこにそっくりな女の子が生まれたのです。その子は、『ひのき』と名付けられ、
一家4人は末永く幸せに暮らしましたとさ。             おしまい」

―完―