>>140 続き ※絵露有無:無

それでもヌケートをしたいとひのきは言った。
きのはひのきに教え諭すように、
「ハニエルに続いて、ひのき―あなたまでもが
それでもヌケートをしたいと言うんだね?
 ママも散々、あなたのおじいちゃんとおばあちゃんから言われてきたことだけど、
 ヌケートはあくまでも習い事ね。
 ヌケートばかりではなく、日々のお勉強やお片付け、お手伝いなど
 人として基本的なことをちゃんとやった上でヌケートをしてね。
 選手として一流になろうとする前に、
人として一流になってね。ママも頑張るから…」と言った。
僕は思わず、
「jajaja…きの、ひのきはまだ4歳だよ。
 そんなに難しくて厳しいことを今から言わなくても…」と苦笑いした。
そんな僕にきのはこう言った。
「今は分かってくれなくてもいい。
 自分も4歳の時、おとなたちの言うことをよく聞いていなかったから。
 だけど、自分は繰り返しこの子たちに伝えていく。
 そして、背中を見せていくから。
 ひじ、選手時代にあなたは自分に言ってくれたよね?
 『僕の背中を見ろ!』って。
 ヒラマサ五厘の直前、ケガで思うような練習が出来ない自分に
 厳しくも優しくそう言ってくれたよね?
 あなたが自分にそうしてくれたように、自分も子供たちにそうしようと思う」
こうして、きにゅう家で開催されたきのとひのきの誕生日パーティーは終わった。

3人の子供たちやきののご両親が寝静まった後、僕はきのを抱きしめてこう言った。
「今日はほとんどひのきが主役になっちゃってごめんよ、きの」
すると、きのはニッコリ微笑んで、
「自分は世界中のファンのみんなからお祝いしてもらえているから、
それだけで胸がいっぱいだよ」と言った。
僕はそれでもまだ物足りなくて、きのにこう言った。
「きの、何回でも何十回でも何百回でも言うよ。
 お誕生日おめでとう、きの。
 生まれてきてくれてありがとう、きの。
 ハニエルもひのきもえのきも君と結婚しなければ出会えなかった。
 まずは君ありきだ。
 君なしでは僕の人生はありえない。
 28歳も君が幸せな人生を送ることを心から祈っている。
 これからも夫婦2人3脚で歩んでいこう。
 ありきたりだけど、どうか言わせておくれ。
 “I love you.”」
僕はこう言って、きのと長い長いキスを交わした。

―完―