>>438 続き ※絵露有無:無

この日、俺たちがサプライズで2曲歌ってとても嬉しかったこと、
俺たちを好きになったきっかけは『花束』と言う曲だったこと、
そしてこの『花束』を聴いてから過去に遡って全曲聴いてくれたこと、
さらに『ヌーパーヌターになったら』と言う曲を今でも聴いていることなどを
ほぼ息継ぎなしで一気にしゃべり倒した。
それはまさにマシンガントークと言うにふさわしいしゃべりっぷりで、
ガチ勢のノリだった。
この「ガチ勢」と言う言葉がクセモノだった。
本当にただの「ガチ勢」なのか?
「ガチ“恋”勢」だったりはしないか?
つまり、「リアコ」ではないか?と言うことだった。
俺はきのこちゃんからガチ勢のノリで来られて、
心の中で舞い上がってしまった。
しかし、きのこちゃんは既婚者だ。
そして、あの若さで3人も子供がいる。
あの細い見た目とは裏腹に3回も出産経験があり、
そして、あのあどけない顔で3人の子供のママなのだ。
俺はきのこちゃんと別れ、1人になったとき、思わずこう口走っていた。
「クソッ…出会うのが遅過ぎたか…」
思わず自分の口から出た独り言に俺はゾッとした。
きのこちゃんは何も俺のことが好きなわけじゃない。
俺たちの作る音楽が好きなだけだ。
あの日、きのこちゃんは俺の作るメロディーが―
そして詞が―いかに素晴らしいかを熱く語ってくれた。
それはもう―あのM岡S造氏もびっくりするような熱さだった。
そのあまりの熱量に俺は思わず勘違いしそうになってしまった。
(そうか…そんなに俺のことが好きか…)
しかし、勘違いしそうになるたび、
俺は首を横にブンブンと振った。
そして、俺は自分自身にこうつぶやいた。
「このバンド名の由来を忘れたのか!?
 このバンドの名前は“bac〇 num〇er”だぞ!!」
そう―なんてったって、このバンドの名前は“〇ack numb〇r”なのだ。
もともと、このバンド名は、付き合っていた彼女をバンドマンに取られたことに由来する。